「うぉぉぉぉお!『Iya,Cthugha』!」
先生の叫びとジャティスの哄笑が、この世界の果てに木霊する。
時の流れを操作した【ペネトレイター】での早撃ちに、外宇宙の邪神【炎王クトガ】の力を上乗せしたそれは、小隕石くらいなら楽々木っ端微塵にできるだろう。
「ヒャハハハハハハ!」
しかしジャティスはそれを恐れることなく、真っ向から迎え撃つ。
だったら…!
「そこ」
俺はぶつかる寸前、その弾丸の空間を操作する。
「っ!?アハハハ!」
消えた弾丸に一瞬呆けるジャティスだが、すぐに背後に気付いたのか、真っ黒な女神でその弾丸を迎え撃つ。
「いいねぇ!いいよぉ!」
「この…!だったら!」
今度は先生とジャティスの距離をゼロにする。
先生は既に【クイーン·キラー】による、次の一手を用意していたのを、知っていたからだ。
「ナイス!『Iya,Indra』!」
外宇宙の邪神【金色の雷帝】の力を纏った、超至近距離からの超電磁砲撃。
壮絶な勢いに、撃った先生の方が反動で吹き飛ぶ。
それにも関わらず…
「ヒャハハハハハハ!」
ジャティスは笑いながら、先生に突撃する。
そんなジャティスに、先生は【ル=キル】を召喚。
近過去のジャティスを消し去ろうとする。
「…身震いするほどの神秘だよ。グレン」
あいつ…いつの間にあんなに近く!?
すぐにその場を離脱先生だが、ジャティスは追いかけず、腕を広げ詠唱を始めた。
「『我は神を斬獲せんと望む者·我は始原の祖と終を知ろうとする者』」
ジャティスの背後の女神が持つ黒剣が輝きだし、それを滅茶苦茶に振るい出す。
「グレェェェェェェン!!」
「ぐぅ!?」
「先生!」
俺はすぐに【次元跳躍】で、先生を俺の側まで飛ばす。
「…読んでたよ。アルタイル」
…嘘だろ!?
あいつ、こっちに振ってきやがった!
俺はすぐに結界を張り、その剣を真っ向から迎え撃つ。
結界自体は破られたが、この糸の頑丈さは変わらない。
「残念、僕が正義だ」
「嘘…だろ…!?」
俺の糸が、ジャティスの剣に押し負け出した。
マズイか…!?
「2人とも!」
だがヤバいと悟った瞬間、俺たちを光の風が吹き飛ばした。
ナイス、システィ!
「なるほど。瞬間的にイカータの風で2人の次元位相を半ずらしにして、吹き飛ばしたんだね。その瞬間、ここにいない者は斬れない。くくく…やるねぇ?」
遙か頭上で左手を掲げるシスティは、そんなジャティスを無視して、風の砲弾をぶつける。
熱エネルギーを瞬時に霧散させるその風は、一瞬で絶対零度まで寒くなる。
更にはシスティの風は、ジャティスが存在するこの位相次元だけじゃなく、その周囲の多元世界·平行世界すら纏めて吹き荒らし、薙ぎ払う。
量子的同位相·多重次元同時攻撃。
「残念。僕が正義だ」
だがそんな必殺の一撃さえ、ジャティスには届かない。
「くっ!?」
「下がってシスティーナ!いやぁぁぁぁぁぁあ!」
次にリィエルが【
あらゆるものを切り裂く、想いの概念攻撃。
理を超えるその一撃は、ジャティスの背後の女神に防がれる。
「っ!?」
「まさかあの君が、その境地に達するとは、感慨深いものがあるね。性質上、君の天と僕の天は、近いものがあるらしい。ともすれば4人の中で一番厄介なのは、君なのかもしれないね。だが…」
ジャティスが腕を振ると、それに連動するように女神が腕を振り、鍔迫り合っていたリィエルを吹き飛ばす。
「その程度の剣技で、斬られる訳にはいかないなぁぁぁぁあ!」
「っ!?いゃぁぁぁぁぁぁあ!」
リィエルが咄嗟に防御で放つ【
「うわぁぁぁぁぁぁあ!」
「追撃、いくよ」
吹き飛ばされるリィエルを追いかけるジャティス。
させるか…!
「ルミア!止めるぞ!」
「うん!やらせません!」
ルミアが空間を凍結させ、ジャティスの動きを止める。
「
俺が【グラビティ·タクト】で、重力を超圧縮して押し潰そうとする。
「
俺とルミアが2人で空間を超圧縮させ、ブラックホールを作り出す。
「
「「こ…のぉ!」」
ジャティスを次元すら超えて、遙か彼方の奈落へと追放する。
「
だがそれすら破られてしまい、俺たちもその衝撃で吹き飛ばされる。
「キャァァァァア!」
「ルミア!」
ルミアを抱きとめながら、俺は何とか体勢を整えて着地する。
俺が直ぐに顔を上げるとそこには、無数の
一体一体が
「この…なめんな!」
「調子に…乗ってんじゃねぇ!」
俺の次元切断と、先生の【イクスティンクション·メテオレイ】が、その大軍を次々と撃墜していく。
「ヒャハハハハハハ!いいよ!そうでなくては!さぁ、もっと君の正義を見せてくれ!!グレン!!!」
「どやかましぃ!!!」
一体どれだけ戦ったのだろうか…。
ここでは時間の流れが曖昧で、全くあてにならない。
時間が狂い、空間が歪み、次元が裂け、理が書き換えられる。
幾度も世界が文字通り震撼する戦いの中、システィーナたちはさらに成長を遂げていた。
「『Iya,Ithaqua』!」
システィーナの風は、もはやとある大いなる神性そのものと化す。
次元の裏側にまで及ぶ光の風が起こす衝撃波で、ジャティスの天使を尽く切り刻む。
「はぁぁぁぁぁ!!」
ナムルスが一時的に、自分の力をルミアに分け与えることで、真の意味で【天空の
右手に【銀の鍵】、左手に【黄金の鍵】。
二つの鍵を自在に振るうその姿こそ、この神性の真の姿だ。
「ッ!」
そして気付けば、リィエルは
剣を極めるあまり、ついに剣すら要らなくなったのだ。
斬ると認識した時には、既に斬り終えている。
【
「『宙の最果て·星々の錨·我は六天三界を穿つ者なり』!!!」
そしてアルタイルの重力も、限界を突破し新たなステージに上がる。
【UNLIMITED CROSS RANGE】が、ルミアと二人で至った天とするなら、これはアルタイルが自力で至ったもう一つの天の領域。
「星天神秘…【WORLD ANCHOR】!!!」
一定領域ではなく、世界そのものの重力を掴み、支配する。
文字通り世界の重さを乗せた【アリアドネ】の一撃が、ジャティスを女神ごと押し潰さんと襲いかかる。
「ヒャハハハ!!ヒャハハハハハハハハ!!!」
だがそれだけの力を持ってしても、ジャティスとは互角。
右腕と女神を振るいながら、全力で人工精霊を量産していく。
そんな遥か高みにいるジャティスに、4人はさらに位階を上げて喰らいつく。
そう…4人は。
(クソ…!クソ!クソ!!クソ!!!)
ただ1人、グレンだけは変わらないまま。
つまり…明らかに置いてけぼりであり、
(やっぱり借り物の力じゃ、この辺が限界だ!俺の基礎スペックが低すぎる!)
特別何かあった訳ではない。
元々あった生来の差が、ついに誤魔化しきれない程にまで広がっただけ。
だが…それでも…。
(俺は…!俺はぁ…!!)
それでもグレンは戦い続ける。
全てにケリをつけるために、戦い続ける。
(俺はセリカの意思を継ぎ、この世界を、アイツらを…学院の連中を守る!それだけだ!正義も夢も理想もどうでもいい!身近な大切なもん守れてりゃ…それで十分なんだよ!)
だが手に込める力と心の焦燥とは裏腹に。
グレンと4人の力は離れていく。
そして、正義も夢も理想もどうでもいい…そう思えば思うほど…願えば願うほど。
白い髪の懐かしい誰かが、悲しげに目を伏せるような…。
「関係ねぇ…!」
それに目を背けるように、グレンは奥に手を切る覚悟を決めた。
ジャティスの神秘は無敵だ。
だが魔術である以上、絶対などありえない。
「ジャティスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
戦いの潮目が変わったと判断したグレンは、一気に接近する。
(先生!?ダメだ…!まだ早い!)
「待って!まだ…!」
「みんな!先生の援護よ!」
「うん!」
「ん!」
だがそれに気付かなかったシスティーナたちは、グレンの援護に回る。
アルタイルも舌打ちを打ちつつ、援護に回る。
グレンを襲う天使たちを、暴風で吹き荒らし、次元追放し、切り裂き、押し潰す。
「ウォォォォォォォォォォオ!!!」
アルタイルたちが開いた血路を、グレンは真っ直ぐ駆け抜ける。
「来るのかい!?ついに来てくれるのかい!?ハハハハハハハハ!いいぞ、いいぞ、グレェン!魅せてくれよ!君自身の正義を!!今こそ僕が待ち望んだ一大決戦!!僕のすべてをかけた大勝負の時!!一体どっちの正義が真に上なる正義か…勝負だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「やかましいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
懐に手を入れたまま駆け抜けるグレンと、両腕を広げたまま動かないジャティス。
ジャティスは自身の神秘【ABSOLUTE JUSTICE】に絶対の自信がある。
故に動かない。
故に…その慢心をグレンは貫く。
(それが…その慢心が、テメェの敗因だ!)
グレンが懐から取り出したのは、持ち手に禍々しい呪符が巻かれ、折れた刀身に法則否定のルーンが刻まれた、
これこそセリカが残した最終奥義。
自身の
その剣の名は…
「【
それはセリカ秘伝の
この世界のあらゆる魔術や魔法、異能や神秘の類を否定して破壊、触れただけで消滅·無効化させる一刀。
「っ!?」
(へっ、今さら気づいたか!もう遅ぇ!)
グレンの剣を目の当たりにし、ハッと目を見開くジャティスを心の中でほくそ笑み
「ウォォォォォォォォォォオ!!!」
その剣を心臓目掛けて突き刺した。