ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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最終決戦編第7話

「うぉぉぉぉお!『Iya,Cthugha』!」

 

先生の叫びとジャティスの哄笑が、この世界の果てに木霊する。

時の流れを操作した【ペネトレイター】での早撃ちに、外宇宙の邪神【炎王クトガ】の力を上乗せしたそれは、小隕石くらいなら楽々木っ端微塵にできるだろう。

 

「ヒャハハハハハハ!」

 

しかしジャティスはそれを恐れることなく、真っ向から迎え撃つ。

だったら…!

 

「そこ」

 

俺はぶつかる寸前、その弾丸の空間を操作する。

 

「っ!?アハハハ!」

 

消えた弾丸に一瞬呆けるジャティスだが、すぐに背後に気付いたのか、真っ黒な女神でその弾丸を迎え撃つ。

 

「いいねぇ!いいよぉ!」

 

「この…!だったら!」

 

今度は先生とジャティスの距離をゼロにする。

先生は既に【クイーン·キラー】による、次の一手を用意していたのを、知っていたからだ。

 

「ナイス!『Iya,Indra』!」

 

外宇宙の邪神【金色の雷帝】の力を纏った、超至近距離からの超電磁砲撃。

壮絶な勢いに、撃った先生の方が反動で吹き飛ぶ。

それにも関わらず…

 

「ヒャハハハハハハ!」

 

ジャティスは笑いながら、先生に突撃する。

そんなジャティスに、先生は【ル=キル】を召喚。

近過去のジャティスを消し去ろうとする。

 

「…身震いするほどの神秘だよ。グレン」

 

あいつ…いつの間にあんなに近く!?

すぐにその場を離脱先生だが、ジャティスは追いかけず、腕を広げ詠唱を始めた。

 

「『我は神を斬獲せんと望む者·我は始原の祖と終を知ろうとする者』」

 

ジャティスの背後の女神が持つ黒剣が輝きだし、それを滅茶苦茶に振るい出す。

 

「グレェェェェェェン!!」

 

「ぐぅ!?」

 

「先生!」

 

俺はすぐに【次元跳躍】で、先生を俺の側まで飛ばす。

 

「…読んでたよ。アルタイル」

 

…嘘だろ!?

あいつ、こっちに振ってきやがった!

俺はすぐに結界を張り、その剣を真っ向から迎え撃つ。

結界自体は破られたが、この糸の頑丈さは変わらない。

 

「残念、僕が正義だ」

 

「嘘…だろ…!?」

 

俺の糸が、ジャティスの剣に押し負け出した。

マズイか…!?

 

「2人とも!」

 

だがヤバいと悟った瞬間、俺たちを光の風が吹き飛ばした。

ナイス、システィ!

 

「なるほど。瞬間的にイカータの風で2人の次元位相を半ずらしにして、吹き飛ばしたんだね。その瞬間、ここにいない者は斬れない。くくく…やるねぇ?」

 

遙か頭上で左手を掲げるシスティは、そんなジャティスを無視して、風の砲弾をぶつける。

熱エネルギーを瞬時に霧散させるその風は、一瞬で絶対零度まで寒くなる。

更にはシスティの風は、ジャティスが存在するこの位相次元だけじゃなく、その周囲の多元世界·平行世界すら纏めて吹き荒らし、薙ぎ払う。

量子的同位相·多重次元同時攻撃。

 

「残念。僕が正義だ」

 

だがそんな必殺の一撃さえ、ジャティスには届かない。

 

「くっ!?」

 

「下がってシスティーナ!いやぁぁぁぁぁぁあ!」

 

次にリィエルが【絆の黎明(デイブレーク·リンク)】を放つ。

あらゆるものを切り裂く、想いの概念攻撃。

理を超えるその一撃は、ジャティスの背後の女神に防がれる。

 

「っ!?」

 

「まさかあの君が、その境地に達するとは、感慨深いものがあるね。性質上、君の天と僕の天は、近いものがあるらしい。ともすれば4人の中で一番厄介なのは、君なのかもしれないね。だが…」

 

ジャティスが腕を振ると、それに連動するように女神が腕を振り、鍔迫り合っていたリィエルを吹き飛ばす。

 

「その程度の剣技で、斬られる訳にはいかないなぁぁぁぁあ!」

 

「っ!?いゃぁぁぁぁぁぁあ!」

 

リィエルが咄嗟に防御で放つ【絆の黎明(デイブレーク·リンク)】が、激しい衝突音を響かせて、女神の一撃とぶつかる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「追撃、いくよ」

 

吹き飛ばされるリィエルを追いかけるジャティス。

させるか…!

 

「ルミア!止めるぞ!」

 

「うん!やらせません!」

 

ルミアが空間を凍結させ、ジャティスの動きを止める。

 

正義(ジャスティス)

 

俺が【グラビティ·タクト】で、重力を超圧縮して押し潰そうとする。

 

正義(ジャスティス)

 

俺とルミアが2人で空間を超圧縮させ、ブラックホールを作り出す。

 

正義(ジャスティス)!」

 

「「こ…のぉ!」」

 

ジャティスを次元すら超えて、遙か彼方の奈落へと追放する。

 

正義(ジャスティス)ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

だがそれすら破られてしまい、俺たちもその衝撃で吹き飛ばされる。

 

「キャァァァァア!」

 

「ルミア!」

 

ルミアを抱きとめながら、俺は何とか体勢を整えて着地する。

俺が直ぐに顔を上げるとそこには、無数の人工精霊(タルパ)が隊伍を組んでいた。

一体一体が伝説級(レジェンド)…いやの力を持つその大軍を見て、一瞬心が暗くなるがそれを強引に押し留める。

 

「この…なめんな!」

 

「調子に…乗ってんじゃねぇ!」

 

俺の次元切断と、先生の【イクスティンクション·メテオレイ】が、その大軍を次々と撃墜していく。

 

「ヒャハハハハハハ!いいよ!そうでなくては!さぁ、もっと君の正義を見せてくれ!!グレン!!!」

 

「どやかましぃ!!!」

 

 

 

一体どれだけ戦ったのだろうか…。

ここでは時間の流れが曖昧で、全くあてにならない。

時間が狂い、空間が歪み、次元が裂け、理が書き換えられる。

幾度も世界が文字通り震撼する戦いの中、システィーナたちはさらに成長を遂げていた。

 

「『Iya,Ithaqua』!」

 

システィーナの風は、もはやとある大いなる神性そのものと化す。

次元の裏側にまで及ぶ光の風が起こす衝撃波で、ジャティスの天使を尽く切り刻む。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

ナムルスが一時的に、自分の力をルミアに分け与えることで、真の意味で【天空の双生児(タウム)】となるルミア。

右手に【銀の鍵】、左手に【黄金の鍵】。

二つの鍵を自在に振るうその姿こそ、この神性の真の姿だ。

 

「ッ!」

 

そして気付けば、リィエルは()()()()()()()()

剣を極めるあまり、ついに剣すら要らなくなったのだ。

斬ると認識した時には、既に斬り終えている。

絆の黎明(デイブレーク·リンク)·神域】を以て、ジャティスを抑え込む。

 

「『宙の最果て·星々の錨·我は六天三界を穿つ者なり』!!!」

 

そしてアルタイルの重力も、限界を突破し新たなステージに上がる。

【UNLIMITED CROSS RANGE】が、ルミアと二人で至った天とするなら、これはアルタイルが自力で至ったもう一つの天の領域。

 

「星天神秘…【WORLD ANCHOR】!!!」

 

一定領域ではなく、世界そのものの重力を掴み、支配する。

文字通り世界の重さを乗せた【アリアドネ】の一撃が、ジャティスを女神ごと押し潰さんと襲いかかる。

 

「ヒャハハハ!!ヒャハハハハハハハハ!!!」

 

だがそれだけの力を持ってしても、ジャティスとは互角。

右腕と女神を振るいながら、全力で人工精霊を量産していく。

そんな遥か高みにいるジャティスに、4人はさらに位階を上げて喰らいつく。

そう…4人は。

 

(クソ…!クソ!クソ!!クソ!!!)

 

ただ1人、グレンだけは変わらないまま。

つまり…明らかに置いてけぼりであり、()()()()()となっていた。

 

(やっぱり借り物の力じゃ、この辺が限界だ!俺の基礎スペックが低すぎる!)

 

特別何かあった訳ではない。

元々あった生来の差が、ついに誤魔化しきれない程にまで広がっただけ。

だが…それでも…。

 

(俺は…!俺はぁ…!!)

 

それでもグレンは戦い続ける。

全てにケリをつけるために、戦い続ける。

 

(俺はセリカの意思を継ぎ、この世界を、アイツらを…学院の連中を守る!それだけだ!正義も夢も理想もどうでもいい!身近な大切なもん守れてりゃ…それで十分なんだよ!)

 

だが手に込める力と心の焦燥とは裏腹に。

グレンと4人の力は離れていく。

そして、正義も夢も理想もどうでもいい…そう思えば思うほど…願えば願うほど。

白い髪の懐かしい誰かが、悲しげに目を伏せるような…。

 

「関係ねぇ…!」

 

それに目を背けるように、グレンは奥に手を切る覚悟を決めた。

ジャティスの神秘は無敵だ。

だが魔術である以上、絶対などありえない。

 

「ジャティスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

戦いの潮目が変わったと判断したグレンは、一気に接近する。

 

(先生!?ダメだ…!まだ早い!)

 

「待って!まだ…!」

 

「みんな!先生の援護よ!」

 

「うん!」

 

「ん!」

 

だがそれに気付かなかったシスティーナたちは、グレンの援護に回る。

アルタイルも舌打ちを打ちつつ、援護に回る。

グレンを襲う天使たちを、暴風で吹き荒らし、次元追放し、切り裂き、押し潰す。

 

「ウォォォォォォォォォォオ!!!」

 

アルタイルたちが開いた血路を、グレンは真っ直ぐ駆け抜ける。

 

「来るのかい!?ついに来てくれるのかい!?ハハハハハハハハ!いいぞ、いいぞ、グレェン!魅せてくれよ!君自身の正義を!!今こそ僕が待ち望んだ一大決戦!!僕のすべてをかけた大勝負の時!!一体どっちの正義が真に上なる正義か…勝負だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「やかましいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

懐に手を入れたまま駆け抜けるグレンと、両腕を広げたまま動かないジャティス。

ジャティスは自身の神秘【ABSOLUTE JUSTICE】に絶対の自信がある。

故に動かない。

故に…その慢心をグレンは貫く。

 

(それが…その慢心が、テメェの敗因だ!)

 

グレンが懐から取り出したのは、持ち手に禍々しい呪符が巻かれ、折れた刀身に法則否定のルーンが刻まれた、真銀(ミスリル)の剣だ。

これこそセリカが残した最終奥義。

自身の魔術特性(パーソナリティ)【万理の破壊·再生】を、第七階梯(セプデンテ)の矜持にかけて生み出した、セリカ最後の固有魔術(オリジナル)

その剣の名は…

 

「【万理破壊の世界剣(ロウ·ブレイカー)】!!!」

 

それはセリカ秘伝の解呪(ディスペル)術式…否、摂理·法則·律法(ルール)破壊の式。

この世界のあらゆる魔術や魔法、異能や神秘の類を否定して破壊、触れただけで消滅·無効化させる一刀。

 

「っ!?」

 

(へっ、今さら気づいたか!もう遅ぇ!)

 

グレンの剣を目の当たりにし、ハッと目を見開くジャティスを心の中でほくそ笑み

 

「ウォォォォォォォォォォオ!!!」

 

その剣を心臓目掛けて突き刺した。

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