ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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よろしくお願いします。


後日譚編第4話

文字通り次々と世界を飛び回って、【無垢なる闇】と戦い続けるグレン。

世界を飛び、次元を飛び、時代を飛び、戦い続けたグレンだが、ついぞ【無垢なる闇】に勝つことは無かった。

結果だけ見れば痛み分けだが、いつもその世界は惨たらしく崩壊していく。

そんな中、ある世界…グレンが便宜上名付けた、写し身の世界にて。

一人の少年と出会った。

 

「ねぇ。お兄さんはどこから来たの?」

 

(…あれ?暗示が切れてたのか?)

 

十にも満たないであろう、大変身なりのいい少年が、ボロマントを被ったいかにも怪しいグレンに声をかけてきた。

 

「どこからだって?そうだな…すごく遠くからだ」

 

先日さっさと覚えた言葉で、グレンは少年にそう返した。

 

「遠くから?海外?」

 

「…いや、それよりずっと…気が遠くなるほど遠くからだ」

 

首を傾げる少年に、グレンは苦笑いを浮かべる。

いくら教職を生業としていたとはいえ、かなり複雑な説明をしなくてはいけない。

 

「それより変な格好だね。お兄さん、もしかして…魔法使い?」

 

(…ほう)

 

思わず感心するグレン。

この世界には魔術や魔法の類はない。

この魔法使いも、世間一般的な絵本や物語のようなものを想像してのことだろう。

だがそれを抜きにしても、グレンの暗示を見破った少年の()()()()に、グレンはただ感心した。

 

「ああ。実はそうなんだぜ?」

 

「ヘぇ…!お兄さんはここで何をしてるの?」

 

「この世界で、やらないといけないことがあってな」

 

そう言ってグレンは言葉を詰まらせた。

既にこの世界にも、【無垢なる闇】の介入した痕跡がある。

ただイタズラに、不安にさせる必要も無いだろう。

そう思い黙っていると

 

「寂しくないの?帰りたくないの?」

 

そう言われると、今度こそグレンは驚愕に目を見開いた。

 

「そうだな…帰りてぇよ」

 

「後悔はないの?」

 

「ないな」

 

自分でも驚くほど即答したグレン。

その信念は今も尚変わることは無かった。

そしてすぐにグレンは、その場を立ち去ったのだった。

この世界の破滅の原因となる、天の知恵派教団。

そんなカルト教団の本部を奇襲し、あっさりと撲滅させたグレン。

だが【無垢なる闇】の悪意は、またもやグレンの上を行く。

 

「クソッタレがァァァァァァァァァァァ!!!」

 

【無垢なる闇】の計画…それは天の知恵派教団を囮にし、外宇宙とこの世界の存在の壁を、取っぱらってしまうことだった。

そうなると何が起こるか?

答えは外宇宙の存在が、この世界に流れ込む、だ。

 

〖キャハハハハハハハハハハハ!!〗

 

だが追いついた時には、既に手遅れだった。

今度こそ倒す…そう決意して挑むグレンだったが、ここまでの戦いで力を使い果たしつつあったグレンは、結局敗北してしまうのだった。

 

 

 

大災厄。

そう名付けられたあの日から、グレンは最初に出会って、たまたま生き残った少年…ジャスティンとこの世界を旅していた。

外宇宙とこの世界を繋ぐ門がまだあるため、【無垢なる闇】がまだこの世界にいるからだ。

だがこの世界を滅ぼした罪を被せられたグレンは、ジャスティンと共に放浪していたのだが、ついに捕らえられ、処刑台に乗せられた。

 

「…やっとか…」

 

だがこの土壇場においてもなお、グレンは小さく笑った。

 

「やっと尻尾を掴んだぜ…。正直もうダメかと思ったが…割と分の悪い賭けだったぜ…。いや、そうでもないか」

 

グレンは自分の命を使った、【無垢なる闇】を引きずり出した。

そうして再びこの世界において、戦いを始めるグレン。

 

「ォォォォォォォォォオ!!!」

 

グレンは己の存在すら削りながら、【無垢なる闇】と激しい戦いを繰り広げる。

たとえ勝てたとしても、もはやグレンという存在もまた、消えてなくなるだろう。

だがたとえそうなるとしても、【無垢なる闇】は滅ぼさなくてはならない。

そう誓った。

誓ったはずなのに…

 

「し、師匠…!?」

 

「ジャスティン!?」

 

隠れ家で眠らせたはずのジャスティンがその場に現れ、【無垢なる闇】に人質にはされてしまった。

その一瞬の隙が、せっかくギリギリまで追い詰めた【無垢なる闇】に攻撃を与える事となった。

そして【無垢なる闇】の世界の破壊に巻き込まれたジャスティンは、世界の虚無に呑まれてしまい、グレンもまた世界の虚無に呑まれる。

そして…

 

〖えー、【無垢なる闇】交通をご利用いただきー、誠にありがとうございますー!ただいまー、終駅を出発ー、終駅を出発ー!次の駅はー、始駅ー、次はー始駅ー!〗

 

 

 

…まだ先は長いな。

僕はたまたま一人になった特務分室の待機室で、一人物思いに耽ける。

結局あの【正義の魔法使い】は本名すら明かさず、そしてあの真に邪悪たる闇は、未だ理解の及ぶ敵では無い。

だがそれでも…

 

「歩み続けるだけでいい…か」

 

なら僕も歩み続けるさ。

あの後…この世界、ルヴァフォースに流れ着いた僕は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そして正義を成すために、ひたすら悪を撲滅し続けている。

そんな中だった。

 

「ちっす」

 

「ッ!?」

 

イヴから紹介された新入隊員、グレン=レーダスを見た時、何故か懐かしい感覚になった。

そんな心底意味不明なことを考えながら、僕達は形式的に挨拶をする。

この時の僕はまだ知らなかった。

この出会いこそ、全ての運命の始まりだったことを。

 

 

 

「…ここは?」

 

気付けば俺は、どこかの村の寝室で寝ていた。

だが生きている以上、こうしてはいられない。

直ぐに【無垢なる闇】を追いかけようとして、違和感を抱いた。

 

「…あれ?」

 

吹き飛ばされた右腕がある…!?

いや、それ以前に…!?

 

「体が小さくなってる…!?」

 

すっかりガキに戻っていたのだ。

そしてそのせいか、はたまた俺の原初なのか。

ここの場所について、分かってしまった。

 

「こ、ここは…!?この村は…!?」

 

〖キャハハハハハ!アハハハハハハハ!〗

 

世界のあらゆる汚音と不快音を煮詰めたような、悍ましき怪音。

それでいてこの世界の至高の楽器と演奏家達を寄り集めて、神域の楽曲を合奏させたかのような美音。

この世のありとあらゆる邪悪なるを集め、煮詰めたような混沌。

それはまさに、人の形をした深淵の底の底。

万千の色彩と混沌が織り成す純粋…即ち【無垢なる闇】だった。

 

〖気づきましたかぁ!?おめでとうございます、先生!そう、ここは貴方の故郷、()()()()()()()!いまは聖暦1841年!あの戦いの13年前!ここは()()()()()()()()()!全ては振り出しに戻りましたー!ま、当然ですよね?さっきの戦いで存在を使い切っちゃったんですから!〗

 

「…」

 

〖しばらくしたらこの村に、帝国宮廷魔導師団特務分室執行官NO.18【塔】のアンリエッタがやってきます!そして実験動物として使われる中、【正義の魔法使い】が…帝国宮廷魔導師団執行官NO.21【世界】セリカ=アルフォネアが助けてくれます〗

 

「…」

 

〖そして貴方は【グレン=レーダス】という名前をもらい、()()()()()()()()()()()()!多くの迷いや葛藤、冒険や戦いを経て、また私の前に現れて下さいね!〗

 

「…」

 

 

待て…待ってくれ。

色んなことがありすぎて、全く思考が追いつかない。

それはつまり…俺のこれまでの歩んできた道も。

乗り越えた苦難も、抱えた葛藤も。

俺が得た答えも、決意も。

全て…全て…。

 

〖うん、そうですよー?()()()()()()()()()()()()()()()()()()?的な?〗

 

「…ぁぁぁぁぁ…!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

許さねぇ…許さねぇ…許さねぇ!

こいつだけは絶対に…!!

だがそう思ったところで、何もかもをなくした俺には到底敵うわけなく、全てが漂白されていく。

そして…。

全てが反転する。

次、俺が目を覚ます時…俺は…もう…。

ははは…ふざけんなよ、畜生…。

こんな底なしの理不尽…。

この世にあっていいのかよ…?

 

 

 

 

 

 

バカね、先生!

そんなの決まってるじゃないですか!

あっていいはずがないわ!!!

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