ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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という訳で、ロクでなし魔術講師追想日誌。
とうとう踏み込みますよ。
基本1話で収めようとしてるので、長くなったり短くなったり。
話をすっ飛ばしたり、しなかったり。
それではよろしくお願いします。


ロクでなし魔術講師と追想日誌
生き急ぐロクでなし


これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

「まったくもう!アイツと来たら!」

 

ま〜た、不機嫌だな、システィーナの奴。

その不機嫌具合が、床にまで伝わってるし。

 

「まあまあ、落ち着こう、システィ?」

 

「これが落ち着けるものですか!何よ!『気分が乗らないから今日の授業はこれで終わりです』って!終鈴までまだ20分もあるのよ!」

 

ルミアが鎮火を試みると、あえなく失敗。

システィーナが怒っている理由は、ひとえに我が担任、グレン=レーダス先生だ。

まあ、相も変わらずのやる気の無さなのだが、

 

「でも今日の分は終わらせてたじゃん。内容だって、安定の分かりやすさだし」

 

「そういう問題じゃない!アイツの態度の問題なのよ!」

 

俺も鎮火に加わるも失敗。

しかしコイツが怒っている本当の理由は…

 

「まったく…何時もちゃんとしてって言ってるのに…」

 

「まったく、心配ならそう言えばいいのに」

 

「そうだよ。言葉にしないと伝わらないよ?」

 

「ふぇ!?///」

 

そう、このままだとグレン先生がクビにされるかもしれないという、心配からのもの。

つまり、ただのツンデレだ。

 

「さっきのはいくら何でも、やりすぎだよ?」

 

ルミアにそう指摘され、システィーナも少し思い当たる節があったのか、言葉を詰まらせる。

 

「う、うん…。実はこのところ、悪い事が重なっちゃって…」

 

「悪い事?」

 

「うん、買ったばかりのノートに落書きされたり、実験でいつの間にルーン刻印用の染色液が髪についてたり、楽しみに取っておいたお菓子が消えてたり…少しイライラしてた…かも…」

 

お菓子…か…

 

「もう、八つ当たりはダメだよ」

 

「そうだぞシスティーナ。お菓子は俺だ。ごめん。明日代わりを用意してくる」

 

「ちょっと待ちなさい!今、すごい素直に謝ったわね!?」

 

システィーナが思いっきり俺に詰めよる。

 

「いや、実際に食ったのは先生だけど、俺もいいんじゃないって言っちゃったし…。お詫びじゃないけど、今度新作の苺タルト持ってくるから、それでチャラにして」

 

「うぅ…アイルのお菓子…美味しいし…!仕方ないわね!」

 

チョロいな…コイツ。

 

「アイル君?」

 

「はいはい、ルミアのも持ってくるよ」

 

「やったぁ♪」

 

そんなこんなで、次の魔導戦術論の実践演習の為に急ぐ俺達だったが…

 

「な、何よそれ!?」

 

「蛇だ」

 

「見ればわかるわよ!何でここにいるのかってことよ!?」

 

「今日の授業で使うからだ」

 

んー、この2人の会話は、相変わらずリズミカルだな。

見てて聞いてて面白い。

 

「あの…先生、その蛇大丈夫なんですか?」

 

ルミアが恐る恐る先生に尋ねる。

ほとんどの生徒が遠巻きに見ている中、ルミアは近付いてきたのだ。

流石のタフさだ。

…え?俺?

俺も近付くタフな奴の1人だ。

 

「大丈夫だろ。あの【ラナード蛇】は基本的に大人しいからな。…基本的には」

 

「お、よく知ってるなアルタイル。それにコイツは、学院飼育用に毒抜きもされてるからな」

 

あ〜なるほど。

だから…

 

「ええっと…先生…」

 

「噛まれてますよ、頭」

 

あんなにガジガジされてても、平気なのか。

まあ、痛いはずだけど。

なんせ、顎の力半端ないからな、あれ。

 

「ギャアァァァァァァァァ!!!痛えぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

ああ、あんなに暴れたらほら、絞め技食らってるし。

 

「はぁ…。『雷精の紫電よ』」

 

 

「さてと…それじゃあ、始めるか」

 

あの人、助けてやったのに何事も無く始めやがった。

それはともかく始まったのは、『魔術戦における毒の手口と対処法』だ。

本来の魔術戦とはかけ離れた内容にも思えるが、ところがどっこいそうでも無い。

古来より毒とは、1番人を殺している。

高名な魔術師然り、多くの権力者もまた、毒殺されているパターンは多い。

そしてもう1つ、魔術によって生成される毒なら、魔術で対応出来るが、毒虫や、皆が気付いていない、足元のケースの中にいる本物の毒蛇などが持つ、天然の毒となるとそうはいかず、特殊な触媒を用いた薬を調合しなくてはいけない。

 

「なるほど…その為の、その蛇何ですね?」

 

「いや違うぞ?」

 

そこは嘘でもそうだって言えよ。

 

「へ?じゃあ、なんの為に…?」

 

「フッ…決まってるだろ?可愛い子ちゃん達を、キャーキャー言わせたいからだろ!」

 

「最低最悪な理由だった!?」

 

そのまま再び始まる痴話喧嘩。

クラスの誰もが諦めたように見ていたが…

 

(((((…ん?)))))

 

皆ある事に気付いた。

いつもなら詰め寄るシスティーナだが、今回は距離をとっている事に。

 

「…ん?…ほーん、ひょっとしてお前…?」

 

「な、何よ…!?」

 

コイツまさか…蛇が苦手なのか?

なんて、分かりやすい…!?

当然その事に気付いた先生は、過剰に弄り倒す。

思えばそれが、いけなかったのかもしれない。

はたまた、システィーナの不注意だったのか。

 

「お、『大いなる風よ』!」

 

「バッ!?バカ…!ぎゃああああああ!?」

 

情けない声で吹っ飛ばされる先生。

しかしそれでは怒りが収まらず、小石を蹴り飛ばそうとでもしたのだろう。

 

「ッ!?システィ!ダメ!!」

 

「システィーナ!やめろ!!」

 

「え?」

 

パリンッ!

 

毒蛇が入っていたケースを蹴り割ってしまったのだ。

その事に気付いたクラスメイト達が、慌てて逃げ出す。

しかしシスティーナ本人は、パニックになってしまい、動けずじまい。

そんなシスティーナに狙いをつけた毒蛇は

 

「システィ!逃げて!」

 

「クソ!間に合え!」

 

慌てて駆けつけたが、一歩間に合わず。

瞬く間にシスティーナに近づき、そのままその毒牙を突き立てた。

 

「…あ」

 

ケースに入っていた毒蛇、【クシナ蛇】の毒は即効性だ。

あっという間に毒が回ったシスティーナは、そのまま気を失ってしまったのだった。

 

「システィ!!!」

 

「システィーナ!!!」

 

 

 

その日の夜、ルミアは制服に着替えて、夜の学院に忍び込み、北にある【迷いの森】に来ていた。

そこで彼女は、昼の会話を思い出す。

 

 

 

「触媒が無い…ですか?」

 

アルタイルは、介抱してくれているセリカ=アルフォネアに尋ねる。

 

「そうだ。そもそもコイツの毒自体は、さほど強力では無い。放っておいても治る程度のものだ。しかし、解毒剤の触媒になる【ルナール草】が季節的に不足していてな。敷地内の北にある【迷いの森】に生えることがあるが…望み薄だな。最近は聞かないし。それに夜に光る草だから、夜じゃないと見つからない。そこまでの手間をかけるものでもないからな。まあ、大人しく眠っとくといい」

 

この毒の症状は、主に

・発熱

・吐き気

・手足のしびれ

・頭痛

・吐き気etc…

等で特に死に至る事は無い。

 

 

 

などと言う話だったが、苦しむ親友の姿にいてもたってもいられなかったルミアは、この森に1人でやってきたのだった。

そのまま暗闇に怯えるルミアだったが、

 

「ええい、ままよ!」

 

(私だって魔術師なんだから。多少の危険は乗り越えないと!)

 

気合いを入れ直したルミアが、1歩踏み出した。

この時のルミアの誤算は、その危険度を測り間違えた事だった。

 

「はぁ…!はぁ…!ど、どうしよう…!?」

 

森の中から出てきたのは、【シャドウ・ウルフ】。

ルミアの手にはあまる魔獣だ。

 

「ら、『雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ』!」

 

ルミアは白魔術などは得意だが、その反対、攻性呪文などの黒魔術は苦手なのだ。

なまじ追い払おうと攻撃したのが悪く、中々当たらないルミアをただの獲物としか認識されなくなったのだ。

魔力が尽き、体力も尽きかけたその時、ついにそのまま爪牙に襲われてしまう。

 

(システィ…ごめんね…!)

 

つい恐怖に身を固めてしまうルミアだったが

 

「『雷帝の閃槍よ』」

 

「ッ!?…え?」

 

どこからとなく飛んできた【ライトニング・ピアス】が、【シャドウ・ウルフ】を貫いた。

森を包む暗闇から出てきたのは

 

「無事か、ルミア」

 

「アイル君…!」

 

全身黒い格好に身を包んだアルタイルだった。

 

 

 

「…はぁ。ったく…」

 

昼間の時の顔を見て、嫌な予感はあったんだ。

だけどまさか、本当にこうなるとはな…。

 

「あ、アイル君!ありがとう!私…!」

 

怖かったのだろう、心細かったのだろう。

そういった感情が決壊して、涙ぐみながら走りよるルミアに

 

「ふん!」

 

「痛ァ!?」

 

俺は割と遠慮なく拳骨を落とした。

 

「たわけ!こんな夜に、しかもこんな場所で何してやがる!?」

 

「う、うぅ…」

 

「お前が何考えてるかは分かる!だかなぁ!1人でここは危険すぎるだろ!ましてはお前は、俺以上に戦闘慣れしてねぇんだぞ!あのまま犬っころの餌になる気だったのか!?そんな事してアイツが…俺が心配しないとでも思ったのか!?」

 

そう、俺が1番怒ってるのは、何かあったらという不安からだ。

まあ、システィーナと一緒だな。

それはともかく、本来ここは学生だけでは立ち入り禁止区画だ。

だから俺も、夜闇に紛れるように目立たない格好で来たのだが…仕方ない。

死なば諸共って事だな。

俺はすっかり落ち込むルミアの頭を撫でてから

 

「…おら、行くぞ。さっさとルナール草取ってトンズラするぞ」

 

「…う、うん!///」

 

そう急かしたのだった。

ちなみに…この時ルミアは、顔を真っ赤にしてたのだが、俺は暗さゆえに気付かなかった。

それから俺達はこの森を彷徨いながら、触媒を探し回った。

帰りは俺が入った場所から、ずっと糸を巻き付けである為、問題ない。

そのまま奥に進み続けていると、ルミアの様子がおかしい事に気付いた。

 

「…休むか、疲れたし」

 

「へ?」

 

俺は困惑するルミアを無視して、腰に巻き付けあるウエストポーチから、キャンプ用の火起こしキットを取り出す。

 

「ほら、その辺の枝とか集めて!」

 

「う、うん!」

 

俺はルミアが薪代わりのものを集めてる間に、結界を張る。

持ってきた枝に火をつけて、焚き火を起こす。

その温かさにどんどん眠くなってきたのか、ルミアは俺が貸したパーカーを被りながら、ウトウトしだす。

 

「…いくら空調調整術式があるからって、無茶しすぎだ。バーカ」

 

俺はそのまま眠ってしまったルミアを寝かしながら、温めたコーヒーを飲み干し、背負って探索を再開した。

 

 

「ん…んぅ…?」

 

「あ、やっと起きた」

 

しばらく歩いていたら、ルミアが目を覚ます。

少し目をパチパチさせて、状況を確認していたが、少しずつ理解し出したのか。

どんどん顔が赤くなってくる。

 

「あ、アイル君!?///わ、私歩けるよ!?///」

 

何を言い出すかと思えば、まだ体力は戻ってないだろうに。

 

「バカ、軽度のマナ欠乏症を起こしてたんだぞ?まだ立つのがやっとのはずだ」

 

「う、うぅ…///」

 

「俺に心配かけさせた罰だ。大人しくおぶられとけ」

 

そう言って歩き続ける。

ルミアの柔らかさを、気にしないようにしながら。

その横顔を見て、ルミアはある事に気付く。

 

(あ…耳赤い。それに心臓も…バクバクいってる。そっか…アイル君も意識してくれてるんだ)

 

そう思うと、自分の体重をアルタイルの背中に預ける。

 

「…ありがとう。よろしくね、アイル君」

 

「…おう///」

 

 

そんなこんなで無事に【ルナール草】を見つけた俺達は、俺が繋いできた糸をたどって、無事に森を抜け出した。

その時には既に夜が明けていたが、俺達はその足で、システィーナの元に駆けつけたのだ。

 

「そんな…!?」

 

「嘘だろ…!?」

 

しかしその部屋にあるベッドに、システィーナはいない。

代わりに白い葬送花、アレンシアの花が1輪。

あの時サラッとだが、アルフォネア教授が言っていた。

 

(『体質次第では、急激に悪化して、最悪死に至る時もある。…まあ、稀なケースだがな』)

 

「システィ…!」

 

「バカ野郎…」

 

「あの〜…?」

 

誰か知らないが、後にしてくれ。

 

「ごめんね…!ごめんね…!」

 

「ルミア…アイツの分まで生きよう…」

 

「2人共〜…?」

 

だから今は…。

 

「アイル君…私…!」

 

「俺も一緒だから…な?」

 

「2人共!!」

 

あ〜もう!さっきから誰だよ!?

 

「うるせぇな!!今それどころじゃね…えぇぇぇぇぇ!!!システィーナァァァァァァァ!!!?」

 

「え?…えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

「2人揃って勝手に殺さないでよ!!!」

 

いやだって…えぇぇぇ!?

ルミアもビックリしすぎて、ボロボロ流してた涙が止まってるし!

 

「いや、だって…この花!?」

 

「カッシュが間違って持ってきたのよ…」

 

「ウィンガーーーーー!!」

 

あのバカ、シメてやる!

 

「そ、それよりシスティ、どうして!?」

 

「ルナール草が俺ん家にあったんだよ」

 

システィーナの代わりに答えたのは、先生だった。

 

「「グレン先生!」」

 

「セリカが自分の研究用にとってあったんだよ。ただ探すのと調合に手間取っちまったせいで、徹夜だけどな…」

 

なるほど…ところで先生。

徹夜明けにしては、すごい気迫なんだけど?

 

「ところでお前達、それはどこで手に入れたんだ?」

 

「「ッ!?」」

 

ヤバい…!どうする!?

 

「み、南地区のブラックマーケットですよ!?」

 

「そ、そうです!流石に季節じゃなかったですから、探すのに苦労して…!?」

 

「…ほう?」

 

ルミアの咄嗟の嘘に、俺もアドリブで被せる。

そんな先生は、俺達をジト目で見てから、紙を取り出した。

 

「これはな、【迷いの森】に敷設されている、行方不明者捜索用の結界に、引っかかった魔力反応だ。数は2つ。そしてこの反応…不思議とアルタイルとルミアに似てる、というかそっくりなんだが…知ってるか?」

 

…な、何ぃぃぃぃぃぃぃ!?

そんなものあったのぉぉぉぉぉぉ!?

俺とルミアは思わず顔を見合わせる。

 

((…はぐらかす!))

 

「へ、へー!そうなんですね〜!」

 

「き、奇遇ですね〜!」

 

「「「…アハハハハハ!」」」

 

しばらくの沈黙後

 

「んな訳あるかぁぁぁぁぁぁ!!!このバカ共ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「ご、ごめんなさ〜い!!!」」

 

ダメでした。

しこたま怒られた俺達は、今日は帰らされ、厳重注意と反省文、そして明日からの1週間の間、学院への奉仕活動が言い渡された。

 

 

 

「…ふぅ。気持ちいい」

 

何とか先生からのお説教を乗り越えた私達は、家に帰ってお風呂に浸かっていた。

昨夜の疲れが溶けだしていくのを感じながら

 

「あぅ…///」

 

昨夜のアイル君を思い出した。

助けられた事、怒られた事、背負われた事。

色んな事があった。

特に背負われた時の温かさ。

思ってたより遥かに大きい背中。

服の上からは分からなかったが、かなりガッチリとした肉体。

腕も筋肉質だった。

鍛えてるというより、無駄を省いているといった感じの筋肉美だ。

 

「〜ッ!?///何考えてるの!?///」

 

こんなはしたない事考えたらダメ!

顔が熱い…!

これは、逆上せたせいだよ!

そうだよね!

私は誰に言う訳でもなく、心の中で必死に言い訳をした。




短編集の難しいのは、いまいち時系列がわかりにくいんですよね…。
途中で呼び方を変えてしまったので、その辺の齟齬が起こらないようにしないと…!
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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