ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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実はアルタイルとベガは、その名前の由来にちなんで、7月7日を誕生日としていたのですが、この話を読んでからルミアの誕生日を調べたところ、同じでしたね。
…これ、本当に知らなかったんです。
いや、本当に。
それでは、よろしくお願いします。



任務に愚直すぎる男、アルベルトの落とし穴

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

ある日の朝のこと

 

「おはよう…ふぁ〜あ…」

 

「おはよう、アイル君!眠そうだね?」

 

「ちょっとな。おはよう、システィーナ、リィエル」

 

「おはよう、アイル。もっとシャキッとしなさい!」

 

「ん。おはよう」

 

いつも通り、噴水前で待ち合わせた俺達はいつも通りに、先生を待つ。

 

「アイル…首尾は?」

 

「上々。ウィンディに頼んで、持ってきてもらう手筈だ。そっちは?」

 

「問題無しよ」

 

俺とシスティーナはルミアの死角で、コソコソと話す。

俺が寝不足の原因にも関係する事だ。

 

「お〜す…お前ら早いな…ふぁ〜あ…」

 

あ、グレン先生が来た。

 

「おはようございます!先生!」

 

「おはようございます。…俺より眠そうですね」

 

「もう!先生まで!シャキッとして下さい!」

 

「ん。おはよう、グレン」

 

俺達は毎日恒例のやり取りをして、登校する。

 

「そうだ!2人共、実は私、お弁当作ってきたんです!お昼一緒にどうですか?」

 

お!ルミアの弁当か!

 

「じゃあ、ご相伴に預かろうかな。楽しみにしてる!」

 

「ありがてぇ!」

 

「そりゃあ、先生はずっとシロッテの枝ですしね。何日ぶりのまともな飯?」

 

「うるせぇ!」

 

俺が先生をからかって、先生が怒る。

そんな俺達を、それぞれ呆れたように、楽しそうに、相変わらずのボーとした目で見る、三人娘。

そんな当たり前の平和な日常。

それを見る存在がいる事に、俺は気付いていなかった。

 

 

午前中の授業が終わり、やっとこさ昼飯。

だったのだが…

 

「うぅ…皆、ごめん…」

 

「まあまあ、そういう事もあるって!」

 

「そうだぜ!まだ勉強中なんだろ?」

 

すっかり落ち込む涙目のルミアを、俺と先生が必死に励ます。

その様子を見ていたシスティーナが、呆然と呟く。

 

「まさかルミアが、砂糖と塩を間違えるなんて、ド定番を起こすなんて…」

 

そう、実はミートパイに使う塩と、プリンに使う砂糖を逆に使ってしまったのだ。

 

「ルミアのお弁当、変。ミートパイが甘くて、プリンが塩っぱい」

 

「うぅ…」

 

「「お前はちょっと歯に衣着せろ!」」

 

俺と先生がリィエルの頭に、軽くチョップを落とす。

 

「俺だって同じ事してるし!何だったら、フランベしすぎて、天井焦がしたりとか!色々してきてきてるから!」

 

「それはそれでヤベェな」

 

俺は自分の失敗談を、冗談めかして披露する。

先生のツッコミは無視だ。

 

「…アイル君。待ってて。このままなんて…私のプライドが許さない!」

 

「…!おう!次に期待してるぞ!ルミア!」

 

「うん!次は最高のお弁当を用意してみせる!!」

 

…うん、とりあえず乗ってみたけど、すごい熱意だ。

なんせ目と背後に炎が見てるくらいだ。

 

「ねぇ、システィーナ。2人は何してるの?」

 

「リィエル、見てはいけないわ」

 

「お前達、腹減ったんだが?」

 

何だよ、ノリ悪いな。

後システィーナ、俺達を不審者扱いするな。

そんな訳で、1歩出遅れて食堂についたのだが。

 

「やべぇ…すげぇ人。えっと…先生とリィエルはいつも通り?」

 

「おう、頼むわ。俺達は席取ってくる」

 

「ん、よろしく」

 

そう言って、2人が人混みに紛れていく。

 

「…システィ、そんな目をしてもダメだよ?」

 

「な、何言ってるのよ!?///…そういうルミアは、何か嬉しそうね!どうしてかしら〜?」

 

「え!?///えっと…!///」

 

後ろで何やら騒いでるし。

何してんだが…。

無事料理を注文し、先生達が確保した席でメシを食べている時、何やら厨房が騒がしい。

何事かと様子を伺うと、何やら若い料理人が、とんでもない事をしていた。

 

「…あんなギャグ小説の技を、実践させてるのか…!?」

 

もはや呆れるしかない。

 

「はぁ…いいなぁ。私もあれくらい、料理出来たらな…」

 

「いや、あれは真似したらいけないから」

 

そんな見当違いな羨望を向ける、ルミアの様子を伺う。

 

(…気付いてはいなさそうだな)

 

そしてそんな俺の様子を、コソッと観察システィーナ。

 

(…気付いてはいなさそうね)

 

 

 

そして放課後。

 

「悪いな、ルミア。手伝わせちゃって」

 

「ううん、気にしないで!」

 

((ここで時間を稼がないと…!))

 

俺達は今、リゼ先輩の手伝いをしている。

実は今日このタイミングに、予めこっちがお願いしていたのだ。

俺は少しでも時間を稼げるように、わざとスローペースで仕事をこなしていた。

…そろそろか。

 

「先輩、次はありますか?」

 

「…いや、もういいですよ?お疲れ様です」

 

「「お疲れ様です」」

 

俺達はカバンを取りに教室に戻る。

そして戻った瞬間…

 

パンッ!!!

 

「「…え?」」

 

そこには打ち合わせ通りのケーキやお菓子やジュースと、一斉に鳴らされたクラッカー、そして垂れ幕がかかっていた。

ただし、文字が聞いてたのと違う。

 

『アイル&ルミア!誕生日おめでとう!!!』

 

「…やられた。俺もハメられてたって訳か」

 

「そ、そんな事って…!?皆揃って、私達を欺いてたの!?」

 

ていうか、もう1つケーキがあるし。

そんなどこか気が抜けていると、突然窓が破られ、何者かが侵入してくる。

俺は咄嗟にルミアを庇い、身構えるが

 

「全員、動くな!」

 

その鋭い声に聞き覚えがあって、唖然としてしまった。

誰もが固まる中、1番復帰したグレン先生が、その闖入者に尋ねる。

 

「…何してるんだ、アルベルト?」

 

そう、突然乱入してきたのは、アルベルトさんだった。

当の本人は、状況が飲み込みきれてないのか、油断なく指を構えたまま、睨んでいる。

 

「…これは…どういう事だ?」

 

「いや…白猫主導の、サプライズパーティーだが?アルタイルも騙してたが」

 

「…システィーナ=フィーベル、復讐とは?」

 

「復讐!?去年私がやられたので、仕返しにやり返そうとはしましたけど…」

 

「…ウインディ=ナーブレス。後始末とは?」

 

「こ、ここの片付けの事ですわ!ナーブレス家の使用人達にお願いしてあるんですの!」

 

しばらく黙り込んだと思ったら、指を下げてドアへと向かう。

 

「…ふっ。邪魔したな」

 

そう言って姿を消したのだった。

 

「…何なの?」

 

「…何なんだろうね?」

 

 

 

 

「あ〜…まさか俺まで騙される側だったなんて…」

 

「アハハ…ケーキまで作ってたから、仕掛け人側って思うよね」

 

俺とルミアは夕焼けの帰り道を歩く。

なんでもリゼ先輩も仕掛け人だったらしく、仕事もこうなる様に調整してあったらしい。

…本当に、デキる人だよな、あの人。

そんな事を考えながら話していると、いつの間にかフィーベル邸の前の通りまで来ていた。

 

「…アイル君。これ!」

 

そう言ってルミアが2つの小包をよこす。

 

「これは…」

 

「うん、プレゼント。青いリボンがアイル君で、赤いリボンはベガちゃん」

 

「ベガの事まで知ってたのか…」

 

そう、実はルミアと俺は誕生日が一緒なんだが、ベガも俺と同じ日に産まれているのだ。

なんとも、不思議な話である。

 

「ベガちゃんのは、3人で選んだけど…あ、アイル君のは…私が選びました!///」

 

「…ありがとう。俺達からもこれ」

 

そう言って俺も2つの小包を渡す。

 

「俺とベガからそれぞれだ。受け取ってくれ」

 

「…!うん!ありがとう!じゃあね!///」

 

そう言って、ルミアは踵を返す。

俺もフィーベル邸の敷地内に入ったのを確認して、帰り道を急いだ。

 

 

その夜、ルミアに貰った小包を開けると

 

「…ハンドクリームか…」

 

中から、綺麗な缶に入ったハンドクリームが出てきた。

俺はそれを少しとり、手に塗り込む。

 

「…いい香り」

 

そう呟きながら、こう思っていた。

…ダブっちゃったな〜。

 

 

 

アイル君から貰った小包。

中を見ると

 

「ハンドクリーム?」

 

可愛らしい缶に入った、ハンドクリームが入っていた。

私は少しとり、手に塗り込む。

 

「いい香り!…でも、何処かで…?」

 

嗅いだことがある匂いに、不思議に思う。

 

「あら?ルミアそれは?いい香りね」

 

「あ、システィ。アイル君から貰ったの!」

 

「ふーん…あら、これ。アイルが使ってる香油と同じ香りね。たしか…チェリーの花の香り」

 

アイル君と…同じ?

 

「システィ。何で知ってるの?」

 

「前に朝練の時、使ってるのを見たのよ。その時香りも嗅がせてもらったの。初めての香りだったから覚えてるわ。それにしても…自分の使ってるものと同じ香りのものを、渡すなんて!アイツも大胆ね」

 

たしかに…!

まるで、アイル君の所有物って言われてるみたいな…!///

って、何考えてるの!?はしたないよ!!///

 

「顔真っ赤よ、ルミア!そんなに嬉しかった?」

 

「し、システィ!からかわないで!!///」

 

私はこれ以上からかわれないように、自室に逃げ込む。

 

「…ッ!うぅ〜!!///」

 

耐えきれず、私はベッドに顔を埋める。

しっかりと貰ったハンドクリームを握り締めながら

 

「やっぱり私は…!///」

 

彼の事を想うのだった。




おまけ

(あぁ〜!キモかったかな〜!!///俺なんであんなもの〜!!)

「兄様?どうしたのでしょうか?」

「男の子ですね…あなた」

「そうして成長してゆけ、アルタイルよ」
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