ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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連続投稿です。
今回の小話はシリアスです。
もう一度いいますどシリアスです。
よろしくお願いします。


小話2

目の前には糸で吊るされた3人の男。

全員、天の知恵研究会の外道魔術師だ。

俺はその3人を冷たく見上げながら

 

「…」

 

トドメの一撃を躊躇っていた。

 

事の発端は偶然だった。

いつもの日課のランニング中に、気になって少し遠いが、フィーベル邸まで走りに来たのだ。

このフィーベル邸には頑丈な結界が張ってあり、そんじゃそこらのやつには崩せない。

だからよっぽどの事が無い限り、ほぼ安全と言って差し支えないのだ。

 

「まあ、問題なしだよなそりゃ」

 

杞憂に終わったと思い、グルっと回って引き返そう。

まさにそう思った直後、見つけてしまった。

 

「…?あいつら…!?」

 

3人組の男だ。

黒づくめの格好をした連中だった。

その内の1人が袖をまくっており、その腕には、天の知恵研究会の紋章が刻み込まれていた。

 

「…『疾』!」

 

咄嗟に【ラピッド・ストリーム】を発動し、手袋をつけながら一気に近づく。

こちらに気づいたが、お構い無しに首に糸を巻き付け、引き摺る。

そのまま【疾風脚(シュトロム)】という技術で一気に路地裏を駆け抜ける。

ちなみに昔爺さんに教わって、使用歴の長い俺より、最近グレン先生に習ったシスティーナの方が上手かったりする。

 

「オラッ!!」

 

ある程度距離を取ってから、俺は3人を纏めて、地面に叩きつける。

結構な勢いで叩きつけたが、頑丈な3人なのか、フラつきながらも立ち上がってきた。

 

「貴様…何者だ!?」

 

「我々の崇高な使命を邪魔する気か小僧!」

 

怒りながら聞いてくる連中に俺も言い返す。

 

「当たり前だろ。手は出させねぇ」

 

とはいえ、多勢に無勢。

実力は…どうだ?

1人当たりは俺と差程変わらないだろうが、3人となるとヤバい。

 

「ならば…覚悟はいいな?」

 

そう言って身構える3人に対し俺は先手を取る。

 

「『吠えよ炎獅子』!」

 

【ブレイブ・バースト】を発動する。

それを目くらましに利用し、結界の構築と【グラビティ・タクト】を発動する準備をする。

 

「ぬるい!『霧散せよ』」

 

「『雷帝の閃槍よ』!」

 

「『冴えよ風神・剣振るいて・天駆けよ』」

 

1人に【トライ・バニッシュ】で打ち消され、残り2人にそれぞれ【ライトニング・ピアス】と【エア・ブレード】で攻撃してくる。

俺は【ライトニング・ピアス】を打ち消し、【エア・ブレード】は結界で防ぎ、反撃する。

 

「『集え暴風・散弾となりて・打ち据えろ』!」

 

【ブラスト・ブロウ】で纏めて吹き飛ばす。

そんな雑な攻撃は当然防がれるが、ここで俺の下準備は完了した。

 

「『三界の理・星の楔・律と理は我が手にあり』」

 

【フォース・シールド】で防いでる3人をその上から纏めて吹き飛ばす。

 

「ガハッ!」

 

「何!?」

 

「これは…!?」

 

吹っ飛んでいく3人を俺は引力で引き寄せながら、糸の弾で撃ち抜く。

更に射程に入った3人を纏めて、糸を使い鞭の要領で薙ぎ払う。

 

「「「ガハァ!?」」」

 

壁に叩きつけ、動けない3人を俺は糸で縛りあげて吊るした。

俺は槍を編んで貫こうとして

 

「…」

 

躊躇っていた。

理由は簡単だ。

()()()()()()()()()()()

今までは成り行きで戦っていた。

テロリストの時は恐怖と焦りから。

競技祭の時は頭に血が登っていた。

だが今は違う。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

どんどん息が荒くなる。

心臓が張り裂けそうだ。

そんな様子の俺を見て、チャンスと思ったのか。

 

「『雷帝の閃槍よ』!」

 

1人が俺に向かって攻撃してくる。

 

「ッ!?」

 

俺は咄嗟に雷避けの結界を張り防ぎながら

 

「…あ」

 

反撃に槍で心臓を突き刺していた。

赤い糸で作った槍が、更に赫くなる。

刺された奴は血を吐き出し、項垂れる。

あ…死んだ、俺が…殺した。

 

「あ、あぁ…」

 

殺した…殺した…殺したころしたころしたころしたコロシタコロシタコロシタ…

 

「『雷槍よ』」

 

俺の意識が飛びかける瞬間、誰かが【ライトニング・ピアス】で残りを纏めて殺した。

後ろを振り向き、誰かを確認した。

 

「無事か?エステレラ」

 

「アル…ベルトさん…」

 

それはアルベルトさんだった。

味方である事を確認した俺はそのまま気を失った。

 

「…遅れてしまい、すまなかった…」

 

最後に聞こえたのは、アルベルトさんの謝罪だった。

 

 

俺は【疾風脚(シュトロム)】を使い、駆け抜けていた。

理由は1つ、ある少年を助けるためだ。

 

「間に合ってくれ…」

 

俺は王女護衛の任を受け、このフィーベル邸の周囲を監視していた。

そこに天の知恵研究会が襲う準備をしており、俺は奇襲かけた。

難なく殲滅した後、残党の確認をしていると少し離れた所で、爆煙が見えた。

俺は建物の上に駆け上がり、それを確認する。

 

「あれは…アルタイル=エステレラか?」

 

グレンの教え子が、外道共と戦っていた。

一応優勢みたいだかエステレラは素人だ。

何が起こるか分からないので、助けに向かった。

俺は即座に【ラピッド・ストリーム】を発動、彼の元へ急いだ。

 

「『雷帝の閃槍よ』!」

 

丁度追いついた時、外道共の1人が攻撃していた。

俺は直ぐに打ち消そうとしたが、それより速く、

結界で防ぎ、槍で貫いてしまった。

 

「…あ」

 

間の抜けた声が聞こえ、その赤い槍は更に赫くなっていた。

膝が崩れ落ち、意識が飛かける前に

 

「『雷槍よ』」

 

残りを始末する。

その声に俺の存在を認識したのか、それとも限界を迎えたのか。

こちらを見て、そのまま意識を失ってしまう。

 

「…遅れてしまい、すまなかった…」

 

俺に出来るのは殺めさせてしまった謝罪だけだ。

手早く後処理を済ませ、俺はグレンに連絡をとった。

 

「…俺だ。今から話がある。まだ家だろう、そこにいろ」

 

 

「…俺だ。今から話がある。まだ家だろう、そこにいろ」

 

突然、アルベルトから連絡が来たと思えば、ここに来る?

何しにだよ。

今日は休みだからダラケようと思ってたんだか…

 

「セリカ、これからアルベルトが来るってよ」

 

「アルベルト…ああ、【星】か。分かった」

 

俺はアルベルトが来る事を伝える。

連絡が来てから10分後、ノックがする。

 

「グレン、出てくれ」

 

「はいよ、アルベルトだろ」

 

そう言いながら、出ると案の定アルベルトだ。

だが、そこにいるのはアルベルトだけでなく

 

「アルベルト、朝っぱらから…!?アルタイル!?何があった!?」

 

アルベルトはアルタイルを背負っており、その顔は真っ青だった。

 

「話は後だ。それよりベッドを」

 

「あ、ああ!こっちだ!セリカ!手伝ってくれ!」

 

俺はセリカを呼びながら、アルタイルを寝かせる用意をした。

 

「…それで?何があった?」

 

アルタイルを寝かした俺達はアルベルトから事情聴取を行った。

 

「現在、帝国政府は正式に王女護衛の任を決定した。編入生を隠れ蓑に魔導兵を送り、俺はその補佐を行う事になっていた。その最中に、フィーベル邸に天の知恵研究会が襲う算段を立てていた。俺はその連中を始末したが、別働隊の存在に遅れて気づいたのだ。その時には既にエステレラが交戦中だった。駆けつけた時には丁度…エステレラが1人殺した直後だったのだ」

 

「「なっ…!?」」

 

殺した…アルタイルが?

人を殺しちまったのか…?

 

「これは弁解の余地もなく、俺の落ち度だ。お前の教え子に余計な危険を負わせただけでなく、あまつさえ人を殺させてしまった。グレン、本当に済まなかった」

 

アルベルトが頭を下げる。

その様子にやっと理解が追いついてきて、俺はアルベルトの胸ぐらを掴みあげていた。

 

「アルベルトてめぇ!!何してやがった!!あいつはまだガキなんだぞ!?人を殺す事の意味もわかってないガキなんだぞ!?それをてめぇ!!」

 

「グレン!やめろ!」

 

セリカが強引に俺を引き離す。

 

「離せセリカ!!この野郎には1発入れねぇと気がすまねぇ!!」

 

「お前は教師だろ!」

 

その言葉に俺は止まる。

 

「お前は…あいつの苦しみに唯一寄り添ってやれる教師だろ?今はそっちを優先すべきじゃないか?」

 

「…クソが!!」

 

思はず拳をテーブルに叩きつける。

そうだ、何よりアルタイルが優先だ。

俺はあいつの教師なんだ。

俺がしっかりしねぇと…!

 

「今回の件、軍がアルタイルに目をつけないように最善を尽くす。格上の外道魔術師3人を纏めて相手取り、無力化していたあいつの力を軍は必ず目をつける。そうならないように俺の方で改竄しておく」

 

「…頼むぞ【星】」

 

「言われずともだ【世界】よ。最後に…すまなかったと伝えてくれ」

 

そう言ってアルベルトは家を出る。

俺は項垂れたまま、どうするか考えていた。

 

「…まず、家に連絡を入れなくてはな」

 

「…頼む。俺はアルタイルの様子を見てくる」

 

俺はどうするか悩んでいた。

まず、白猫達には絶対にバレちゃならねぇ。

あいつらなら間違えなく自分を責めちまう。

 

「今度の遠征学習で、吹っ切れてくれるキッカケがあるといいんだが…」

 

こうなるとサイネリア島の【白金魔導研究所】はまずかったかもしれねぇな…。

先行きが全く読めない不安を抱えながら、俺は拳を握りしめる事しか出来なかった。




そしてこのシリアスを抱えたまま遠征学習編に突入します。
この辺りからアルタイルの様子が少しづつおかしくないります。
なんの覚悟もなく、いきなり人を殺せるかって言ったら無理ですよね。
この遠征学習で命について何を掴むのか、気にしてやってください。
それではありがとうございました。
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