ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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アルタイルは基本的にはツッコミ要因。
でもたまにボケます。
真顔でボケる人です。
人を弄るのは大好きです。
それでは、よろしくお願いします。


貴方と私の忘レナ草

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

「平和だね〜…こういう日が続けばいいのになぁ…」

 

「先生、知ってます?そういうのを…」

 

キャアァァァァァァァァァ!!!

 

「…フラグって言うんですよ?」

 

廊下に響き渡る女子の悲鳴。

何やら冗談では無く、ガチの悲鳴だ。

 

「はぁ…分かってんだよ!そんな事!」

 

俺と先生は声の方へと、走り出す。

何やら女子達が大騒ぎしている部屋に、入り込む。

その先には

 

「し、白猫…?」

 

「…システィーナ?」

 

「嫌!イヤァァァァァ!!来ないで!近寄らないで!!」

 

恐らく着替えの最中だったのか、半裸のシスティーナが、部屋の隅で震えている。

…しまった…ここって女子更衣室か…。

たしかに俺達、錬金術の授業してたもんな…。

いや、そこはもういい、諦めた。

それより、目の前の緊急事態だ。

 

「貴方達、誰なの!?来ないで!ここはどこなの!!」

 

「アイル君!先生!システィを助けて下さい!」

 

俺は、泣きそうな顔で助けを求める半裸のルミアの肩に、俺の制服をかけながら尋ねる。

 

「ルミア、何があった?」

 

「分からないの!次の授業の為に着替えてたら、急に…!」

 

「システィーナ、ロッカー開けたらおかしくなった」

 

リィエルの言葉を受け、先生が中身を確認すると

 

「これは…【忘レナ草】!?白猫の奴、コレの香気に吸ったのか…!?」

 

忘レナ草って…この間言ってたヤツか!?

とにかくまずは、大人しくさせないと…。

 

「…大丈夫だ、俺はお前の味方だ。ここにお前を傷つけるような奴はいない」

 

先生が、両手を広げながら優しく近づき、目線を合わせる。

俺も似たようにしながら、システィーナを優しく見つめる。

…少し、悲しいがこうするしかないかな。

 

「初めまして。俺はアルタイル=エステレラ。皆からはアイルって呼ばれてる。よろしくね?」

 

出来るだけ、小さい子供を相手するように、心がけながら接する。

 

「…は、じめ…まして…」

 

「うん。いい子いい子。さぁてお嬢ちゃん、こっちを注目!」

 

おどけながら、先生の手を指さすと、突然先生の手から1輪の花が出てくる。

 

「お近づきの印にどうぞ、お姫様」

 

「…え?」

 

驚きのあまりポカンとしながら、花を受け取るシスティーナ。

 

「さっきも言ったが、ここにお前を傷つける奴はいない。いたとしても、俺達が守る。だから…信じてくれないか?」

 

先生が穏やかに、それでいて真摯に語りかけたおかげか、やっと大人しくなったシスティーナ。

 

「あの…先生、アイル君。システィーナは…?」

 

ルミアの顔色は、見るからに悪い。

それもそうか。

姉妹同然に育った奴から、『貴女、誰?』って言われれば、堪えるよな。

 

「とりあえずは医務室だけど…その前に…」

 

俺は再びホールドアップする。

今度は、無意味と知りながらも、自分の身を守る為に。

 

「ここ…女子更衣室なのな…」

 

そう、俺は来た時から気づいてたから、あまり見ないようにしていたけど、多分同罪だよな。

冷静さを取り戻した女子達のボルテージが、上がってきるのだろう。

何やら…部屋が暑い気がする。

 

「…一思いにやってくれ」

 

「ふっ…かかってこいやァァァァァ!!」

 

俺と先生、対照的な反応だが、行き着いた結末は一緒だった。

 

 

「前にも言った通り忘レナ草ってのは、人の記憶に作用する魔術的効果を持った草だ」

 

そうキリッと話す先生だが、その姿はボロボロ。

さっき、女子生徒達にエグい暴力を受けたのだ。

俺?同じ状況だけど?

…あそこまで酷い目に合うなら、1人くらい覚えておくべきだった。

まあ、それはともかくこの草は特に、人間関係の部分に強く作用する。

その部分を封印…つまり忘れさせてしまうのだ。

 

「じゃあ…システィはずっと…このまま何ですか…!?」

 

「ルミア…元気だして」

 

悲しそうに目を伏せるルミアの頭。

リィエルも心無しか、元気がない。

俺は2人の頭を、優しく撫でてやる。

 

「違うぞ?ちゃんと解毒して、後はきっかけされば、元通りさ。ですよね、先生?」

 

「ああ、今セシリア先生が方陣を…」

 

「グレン」

 

先生の話を切って、医務室に入ってきたのは、手伝いをしていたはずのアルフォネア教授だ。

 

「セリカ。状況は?」

 

「それなんだが…実はセシリアの奴、途中で血を吐いてぶっ倒れたらしくてな…。血まみれの姿で、方陣のど真ん中でぶっ倒れてるのを見た時は、何かの悪魔召喚式かと思ったぞ…」

 

うわぁ…。

容易に想像がつく。

 

「だから、まだ時間がかかる。すまないな」

 

そう言ってアルフォネア教授は、部屋を出ていく。

 

「…まあ、何にせよ、元に戻す手段は分かってるし、目処も立ってる。落ち着け、な?」

 

「うん…。システィ。もう少しだよ?」

 

ルミアがベットにいるシスティーナの手を、優しく握ろうとした時、その手をシスティーナが払い除けてしまい、俺達の袖を握りしめてしまう。

…これは、マズったかな?

 

「システィ…ううん、システィーナ。…それが私の名前…なんですよね…?」

 

「うん…。そうだよ、システィーナ=フィーベル。私の大切な友達。この子はリィエル。何か思い出した?」

 

「ルミア…リィエル…。ううん、 ダメ。何も…何も思い出せないんです…!私、貴女達なんて知らない!怖い…!怖いんです…!」

 

「よーしよしよし。落ち着こうな」

 

また癇癪を起こす前に、先生が宥める。

 

「…先生、システィーナを頼みます。ルミア、おいで」

 

ルミアを少し離れたところに呼ぶ。

別のベットに座らせて、ゆっくりと話す。

 

「…あれの匂いに当てられた奴は、ダウナー気味になっちまう。簡単に言えば、鬱状態だ。今、システィーナにあまり踏み込まない方がいい」

 

俺は出来るだけ優しく、ルミアと目線を合わせながら言う。

そんなルミアの顔は、やるせなさと悲しさに満ちていた。

 

「わかってるよ…!でも…!」

 

「だよな、無理だよな。簡単には行かねぇよな」

 

俺も挨拶した時、結構キタもんな。

ルミアなんて、もっとクるよな…。

俺は俯くルミアの頭を、抱き寄せる。

 

「…大丈夫。治療法は確立してる。だから、落ち着け。俺達もいる。だから…信じよう」

 

「…アイル君…!」

 

静かに泣くルミアの背中を、優しく撫でる。

システィーナも大事だけど、こっちのメンタルも気にしないとヤバいな。

そう思いながら、俺は祈るように背中を撫で続けた。

 

 

その後はルミア達をクラスに返させて、様々な魔術的措置を施されたシスティーナと、俺と先生で学院内を歩き回った。

ショック療法とは言い難いが、少しでも助けになるようにと行ったものだ。

先生のおかげか、徐々に今自分が置かれた現状を、理解しだしたらしい。

ただ…

 

「システィーナが、先生に対して素直過ぎる…」

 

思わず呟く俺。

何かある度に、先生にしがみつくんだよな。

思わずゾワッてする光景なんだよ、これが。

まあ、是非とも普段からこうであって欲しい。

 

「…さて、なるべく記憶を失う前の環境にいた方が、戻りも早くなる。てな訳で、俺の担当クラスの生徒達と一緒に授業を受けてもらう。…大丈夫か? 」

 

「…」

 

やっぱり怖いらしい。

まあ、無理もない。

知らない環境に知らない人。

頼れるのは俺達だけ。

 

「…システィーナ、無理強いはしない。だけど、自分で決めるんだ」

 

「…やってみます」

 

しばらく迷った末に、決意を決めたらしい。

 

「いつまでも、『先生』や『アイル』に、ご迷惑をかける訳には…」

 

「よく言った…偉いぞ」

 

「俺達も側にいる。頑張ろう」

 

先生が頭を撫でると、嬉しそうに、気持ちよさそうに、表情筋を緩ませる。

 

((まるで子猫だな…いや、マジで))

 

 

教室に入った俺たちを待ち受けたのは

 

「先生!ルミア達から話は聞いたぞ!」

 

「システィーナ、大丈夫なのか!?」

 

システィーナを心配するクラスメイト達だ。

彼らが、純粋に心配しているのは分かる。

だけど今はマズイ。

 

「いや…いや…!た、助け…!」

 

今にも爆発しかけた瞬間

 

「いい加減にしろ!!!お前達!!!」

 

「大丈夫だよ…。皆心配してるだけだから…ね?」

 

先生が鋭く一喝する。

俺はシスティーナと目を合わし、出来るだけ優しく頬を撫でる。

 

「…う、うん…」

 

「よしよし。いい子いい子」

 

ふぅ…何とかなった…。

 

「俺達が信じるコイツらを、信じてくれないか?」

 

そう言うと、深呼吸をして俺達からすこし離れる。

やがて決心がついたのか、俺達からそっと離れ、皆と向き合う。

 

「その…ごめんなさい。皆さんの事…誰一人知りませんが…とてもいい人達なんだって事は、何となく分かります。だから…その…こんな私ですが、よろしくお願いしますね?」

 

頭を下げてから、微笑む。

 

((((((あ、あれ…?))))))

 

その時、男子諸君に衝撃が走った。

やれやれ…単純なこった。

 

「はい、よく出来ました。ほれ、苺タルトをやろう」

 

「ッ!?苺タルト!」

 

「リィエルの分もあるから、座ってろ!」

 

俺は対リィエル鎮圧用武器、量産型苺タルトを1つあげる。

 

「…!美味しい!アイルが作ったんですか!?」

 

「まあな。お褒めに預かり恐悦至極」

 

「よーし!お前ら、授業始めるぞ!」

 

先生が俺達に号令をかける。

こうして始まった授業は、システィーナの件も鑑みて、復習になった。

 

「うぅ…難しいな…」

 

だがどうやら、ここ最近の事は、知識であっても覚えてないらしく、珍しい事に中々進まなかった。

しかし、俺が動く前に他の男子達がこぞってかまいだした。

まあ、馴染ませる為にも、放っておく方がいいかな。

 

「良かったね…システィ」

 

「とりあえずは、だな。ルミア、大丈夫か?」

 

「…とりあえずは、かな」

 

ルミアの顔色は未だに良くない。

俺はなんて言っていいか分からずに困っていると、不意に、何かが光った。

その光は真っ直ぐに、システィーナに向かっている。

 

「ッ!?システィーナ!!」

 

俺は咄嗟に結界でシスティーナを守る。

 

「ヒッ!?」

 

「アルタイル!そのまま守ってろ!」

 

そう言って先生が外を確認している。

 

「システィ!?大丈夫!?」

 

「ルミア!今は来るな!」

 

俺は今にも飛び出してきそうなルミアを、来ないように制止させる。

クソ…この事件、やっぱり悪意的なものがあるのか。

 

「先生、見つけましたか?」

 

「いや、無理だ。ポイントがありすぎる。…アルタイル。お前に頼みたい事がある」

 

その頼み事とは…犯人探しだ。

 

 

 

「…そこまでだ」

 

「ッ!?貴方は…!?いつの間に!?」

 

「いつでもいい。今ならまだイタズラで済む。というか、済ませる」

 

「ふん!私はかなりの魔術師一族の出で、歴代最高の実力者と言われる程ですよ!そんな私に貴方のような、一平民が勝てるとでも!?」

 

「…ほう?」

 

「まさに『井の中の蛙大海を知らず』です!行きますよ…!」

 

 

 

「まさに『口程にもない』って奴だな、下らねぇ」

 

「酷い…女の子を殴るなんて…!」

 

「知るか、んな事。テメェが売った喧嘩だろ。顔をぶん殴らなかっただけ、有難く思え。…という訳で、捕まえました。各証拠も、じきにリゼ先輩から届きます」

 

俺はさっき屋上で捕まえた女を、引きずりながら、先生達の前に転がす。

 

「本当に容赦無いよな、お前…」

 

「これでも、俺もかなり堪えてますんで。憂さ晴らしも兼ねてます」

 

しっかし、まさかコイツが犯人だったとはな…

 

「一体どういうつもりだった?【アイシャ=クレジール】」

 

こいつの名は、アイシャ=クレジール。

1年生の中でも、トップクラスに優秀らしい。

 

「お前は模範的な生徒だったはず…どうしてだ?」

 

アルフォネア教授が、静かに尋ねる。

ついに観念したのか、グレン先生を見上げる。

 

「…だって、愛していたんです。こんなに苦しくて苦しくて…でも、遠くから見るしかなくて…。でもアイツは、ずっと側にいて…!」

 

まさか…先生の事が…?

 

「バカ野郎…愛が重すぎるぜ、お前。全く…お前くらいのガキの頃には、熱に浮かされたように、恋しちまう事があるんだ。…学院を卒業するまで、その想いは大切にしまっておけ。その頃には、また違ったものが見えてるはずだ。そんな事もあったから…若かりし頃のいい思い出になるさ」

 

「そんな…!?」

 

切なげな顔をして、駆け出すアイシャ。

ウゼェくらいカッコつけてる先生が、せめて受け止めようと構えたのだが…

 

「愛してます!愛してるんです!お姉様!!!」

 

「キャア!?」

 

「「「「…は?」」」」

 

なんと抱き着いた先は、先生では無く、システィーナ。

なるほど…つまり…。

 

「『学院を卒業するまで、その想いは大切にしまっておけ。その頃には、また違ったものが見えてるはずだ。そんな事もあったから…若かりし頃のいい思い出になるさ』だっけ?いや〜、至言だったねぇ〜、グ・レ・ン・先・生?」

 

「ねぇ、どんな気持ち?今、どんな気持ち?自分に惚れてると勘違いして、格好つけたけど、盛大に外した今、一体どんな気持ち?」

 

今、この場で、最高にイジリ倒すしかない!!!

俺とアルフォネア教授の最高のイジリに、先生が吠える。

 

「だァァァァァァァァ!!!うるせぇ!!!笑うなら笑ぇぇぇぇぇぇ!!!ガチ百合なんて、予想できるかァァァァァァァァ!!!」

 

「「アハハハハハハハハハ!!!」」

 

程なくして、解毒の儀式が施されてしばらくして、記憶が戻った。

ルミアが泣きながら抱きつき、大騒ぎ。

そして結局いつもの光景がそこら中で見かけられる事になるのだった。

しかし1つ疑問、というか疑惑。

アイツ、時々挙動が不自然だけど…まさか覚えてるんじゃねぇか?




おまけ

「アイル君…何か手馴れてたね」

「うん?そうか?まあ、子供に接するみたいに接してただけたけど…。ルミア、何拗ねてんだ?」

「なんでもないよ!」

「んん?」
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