ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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あれ?強引に入れたら滅茶苦茶長いぞ…?
それではよろしくお願いします。


魔術学院ワクワク体験学習会

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

魔術学院東館5階。

俺とシスティーナともう1人、ある人にそこにある、学院生徒会室に呼び出された。

 

「月日が流れるのは、本当に早いわ」

 

「何黄昏てるんすか。要件は何です?」

 

「ちょっとアイル!先輩にそんな態度…!」

 

そう、俺達を呼びつけたのは、生徒会長のリゼ=フィルマー先輩。

 

「あら、そうね。ごめんなさい。早速本題に入るのだけど…実は今度、生徒会主導で魔術学院体験学習会を開く事になりました」

 

「…は?マジで?この魔術学院で?」

 

「すごいじゃないですか!」

 

そもそもこの魔術という学問自体が、かなり秘密主義の学問だ。

そんな学問を追求する魔術師、そして魔術師の巣窟であるこの魔術学院は当然、閉鎖的空間である。

そんな場所にしては、斬新な試みではある。

あるのだが…

 

「そんな事回してる余裕、今の生徒会にあります?ただでさえ、各委員会及びクラブの予算決議や、次期生徒会長選の用意、クライトス校との生徒交流会…えげつないくらい、ブッキングしてますよね?」

 

「そう、そこが問題なの」

 

そう、今の生徒会は相当の案件を積んでいる。

昨日ですら、俺もかなり遅くまで手伝っているくらいだ。

そしてリゼ先輩は、深く重いため息をつく。

 

「実は今回の件、学院側がかなりの見切り発車で押し切っちゃって、教授達や講師達への根回しもまだ。なのに既に満員御礼。私達も重なる仕事で後手に回ってる。しかも学院理事会が乗り気なせいで、中止にも出来ない。そんな切羽詰まった状況なのよ。だから…」

 

「断る!」

 

まだ何も言っていないリゼ先輩のお願いを断ったのは、3人目の同行者であるグレン先生だ。

 

「どうせ、講師役を引き受けてくれって話だろ!誰がやるか!そんな面倒臭いこと!」

 

そう言って脱兎の如く逃げ出す先生。

 

「こら!先生!少しは真面目に…ってもういない!?」

 

「逃げ足速かったな〜…。まあ、交渉は俺達で引き受けますよ。それが呼びつけた目的でしょ?」

 

俺は話を聞いて、大体の予想をつけていた。

こうなる気はしていた。

 

「その通りです。ごめんなさい。本来外部の貴方達に頼む事では…」

 

「任せてください!先輩の為なら、たとえ火の中水の中です!」

 

…そういえば、システィーナはなんでここまで、先輩に協力的なんだ?

そう疑問に思いつつ、俺達は各講師陣への交渉を始めたのだった。

 

 

 

「断る!」

 

「そこを何とか…ハーレイ先生…」

 

断り方が、グレン先生と同じだぞ。

俺達の話を聞かずに、そのまま歩き去っていくハーレイ先生。

説得虚しく、これで見事に全滅。

先程も説明したとおり、魔術師とは、魔術という学問を研究する、研究者だ。

それ故、自身の研究に没頭する人が多く、こういう事をする暇など無いのだ。

 

「…ハーレイに言う事を聞かせればいいの?」

 

「ん?まあ、極端な事を言うなら。でもあそこまで意固地になられるとな…」

 

ルミアの後ろから、ボソッと聞いてくるリィエルに、俺が肩を竦めながら答える。

 

「ん。分かった。私に任せて」

 

は?何を?

そう口にする前に、リィエルが飛び出した。

そして気付いた時には

 

「ハーレイ。システィーナ達のお願い、聞いて。さもないと…」

 

ただでさえ怪しい、ハーレイ先生の髪の毛が、綺麗に切り落とされていた。

まあ、結構なお手前で…って!そうじゃない!!

 

「何しとんじゃァァァァァ!!!?お前はぁぁぁぁ!!!?」

 

「コラァァァァァァ!!!リィエルゥゥゥゥゥ!!!」

 

「ごめんなさい!!この子にはしっかり言いますので!!」

 

俺が慌てて糸で縛り上げ、ルミア達が無理やり、リィエルの頭を下げさせる。

しかし当然、意味は無く

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!?」

 

これまた脱兎の如く逃げ出していく。

まあ、無理もない。

リィエルの表情で脅されたら、下手に怒鳴られるより、怖いよな。

 

「あ。待って、ハーレイ。まだ説得が足りない?だったら…」

 

「「「物理的な説得はダメ!!!」」」

 

女が3人集まれば姦しいと言うが、男が混ざっても一緒らしい。

その騒がしさを聞きつけたか、はたまた偶然か

 

「何してんだ?お前ら」

 

「「「「あ」」」」

 

グレン先生が現れた。

 

 

「結局、集まらずか…。お前らちょっと安請け合いしすぎたぞ。何故そこまでする?」

 

俺達(主に俺とシスティーナだが)は、軽くお叱りを受けていた。

 

「その…私、1年の時凄くわがままって言うか、傲慢だったんです。友達もルミアしかいないし。アイルとは犬猿の仲だったし。何で皆に嫌われてるのかすら、分かってなかったんです」

 

そんなシスティーナに、根気よくあれこれ教えたのが、リゼ先輩だったらしい。

犬猿の仲というか、俺が無視していたというのが正解だ。

俺はその時のアイツが、死ぬ程嫌いだったし。

『真銀の妖精』なんて言われてるけど、1番やり合ってた俺に言わせれば、あの時に比べれば、今なんてまだマシだ。

でもある時から、上から目線の鼻につく奴から、ただクソ真面目な奴に変わったんだよな。

システィーナとちゃんと話すようになったのも、それからだ。

そうか、リゼ先輩の影響だったのか。

 

「そんな先輩も、もうすぐ任期満了です。先輩はこの学院が好きで、私はそんな先輩の手伝いをしたいんです」

 

なるほど…それがコイツの手伝う理由か。

 

「なるほどな…。で?お前は?」

 

「ん?俺?俺は…」

 

たしかに先輩は、この学院が好きだ。

その理由も、先輩の本心も知ってる。

だから俺は…

 

「…ま、システィーナと似たような理由ですよ」

 

「…ふぅ。仕方ねぇ。昼飯の弁当3 日分。それで俺が手伝ってやる。講師枠の1つも俺が引き受けるし、見繕ってやる。ただし…俺なりのやり方でやるからな、文句は受け付けん」

 

「「ッ!?ありがとう…ございます…!」」

 

どういう風の吹き回しかは知らんが…ありがたい反面、何故か嫌な予感もある。

でもこの際、藁にもすがろう。

こうして俺達は何とか都合をつけたのだった。

 

「ルミア。あれってつんでれ?ウィンディが言ってた。『男のつんでれは見苦しい』って」

 

リィエル、歯に衣着せなさい。

 

 

そしてついに迎えた当日。

子供達が楽しそうにしている中、意外な人物を見つけてしまい、頭を抱えた。

 

「何故ベガがいる…!?」

 

「あ、ベガちゃん手を振ってるよ!」

 

隣のルミアは、呑気に手を振り返してるし。

俺も一応手を振っておくが、ぶっちゃけ気が気じゃない。

 

「…これ、本気なんだよな…?」

 

「…多分…本気だと思うよ…?」

 

俺達は手元にある日程表を見て、絶望する。

 

「…終わった未来しか見えねぇ…」

 

「あ、あはは…」

 

ルミアも苦笑いが精いっぱい。

先生に詰め寄ってるシスティーナなんて見てみろよ。

顔が真っ青だぜ。

かく言う俺達も同じなんだろうけど…。

そして無情にも本鈴が鳴り、体験学習会が始まってしまった。

 

「うふっ!みんな〜おはよう♪魔法少女セリーヌちゃんだよ〜♪」

 

現れたのはアルフォネア教授だ。

いつものゴシックドレスでは無く、どこぞの魔法少女のような格好だ。

…はっきりいって、痛いくらいにヤバいコスプレだ。

 

「な ん で す か こ れ」

 

「これは酷い…オェッ」

 

「仕方ねぇだろ!アイツのまんま出す訳には、いかねぇだろ!?…でも想像以上に痛いな、吐きそう」

 

「あはは…流石に…痛いかな…」

 

ルミアすらフォロー出来ない始末。

前途多難すぎるだろ…。

しかし、いざ講義が始まれば、そこはグレン先生のような師匠。

何も知らない子供達でも、しっかり理解出来る素晴らしい講義だった。

 

「…すげぇな」

 

「うん。私達も勉強になるね」

 

そしてそれは、子供達だけではなく、俺達や先生すらも、学ぶ事が多い有意義や授業だった。

しかし、問題だったのは実技のときだ。

 

「え?魔法が使えない?大丈夫!このセリーヌちゃんにおまかせ!」

 

そう言って取り出したのは、可愛らしくデフォルメされた魔導器だ。

たしかにこれなら、手軽に魔術を体験出来る。

 

「り、『リリカル・マジカル・バーニング・素敵のお花よ・咲き誇れ』!」

 

なんて長くてチャーミングな呪文だ…。

そう呑気な考えは、とてつもない爆発と共に吹き飛んだ。

ついさっきまでの牧歌的風景は消え去り。

代わりに爆心地のクレーターが広がっていた。

誰もか唖然とする中、アルフォネア教授の媚び媚びの声が響く。

 

「やったね!大成功♪さあ、他の皆もやってみよう!」

 

「何しとるかァァァァァァァァ!!!!?」

 

俺は思いっきりアルフォネア教授の胸ぐらを掴みあげる。

 

「どこが花だよ!?花火にしてもやりすぎだろ!?」

 

「これでも抑えてるんだぞ?こんな地味なのじゃ…」

 

「アンタ基準で考えるなよ!?痛々しいのは格好だけにしろ!!」

 

そんな俺達を尻目に、子供達はすっかりと恐怖仕切ってしまっていた。

 

 

「さてと…次は安牌だな」

 

「アルフォネア教授は?」

 

「先生がおしおき中in【愚者の世界】」

 

「あぁ…。それにしても安牌って…セシリア先生だよね?」

 

「そうね、次は魔術学薬ね」

 

セシリア先生はあの超虚弱体質さえ無ければ、問題無いのだ。

そう、超虚弱体質さえ無ければ。

聞けば、元は教職を目指していたとか。

 

「私、頑張ってきますね」

 

うん、守ってあげたいこの笑顔。

 

「…分かりました。無理はしないで下さい」

 

「セシリア先生。これ、私が用意したヨタクの実の果汁です。咳止めになります」

 

「ありがとうございます。行ってきますね」

 

こうして始まった講義は、アルフォネア教授同様に、とても分かりやすかった。

そして他の講師達とは違い、ただ研究を発表するのでは無く、自身の理想や目的をしっかりと教えてくれたら。

この人らしい、とてと優しい講義だった。

 

「…セシリア先生の講義も、いつか受けてみたいな」

 

「うん。…私もセシリア先生くらい、はっきりとした目標を見つけないと…!」

 

「張り切りすぎるなよ」

 

それにしても…法医呪文って軍用魔術だったのか。

『戦場で傷ついた兵士を、いかに早く戦いに復帰させるか』。

その為に作られた魔術…か。

随分と皮肉なもんだ、殺す為に治すんだから。

 

「ご清聴…ありがとうございました…ゴホッゴホッ…」

 

あ、流石に限界が来たか。

俺はすぐに駆け寄って、支える。

 

「セシリア先生、大丈夫ですか?」

 

「は、はい…。ゴホッ!すみません…」

 

「喋らないでください。ええっと…」

 

やべぇ…どれだ…!?

ルミアに視線で合図を送ると、指をさして教えてくれた。

これか…!?

 

「先生、これを…」

 

「アイル君!?それじゃないよ!?その隣!」

 

「え!?マジか!?セシリア先生ダメ!」

 

嘘だろ!?違ったのか!?

慌てて取り上げようとした時には、既に飲み干されていた。

 

「…これ…精神高揚剤だ…」

 

かなり強いやつで、一舐めで十分なやつを瓶1本分飲み干しちゃった。

俺の不安を現実にする為か

 

「ふふ…うふふ…アハハ!」

 

突然笑い出すセシリア先生。

 

「アハハハハハ!!!ガハァ!!ハハハハ!!!ゴフゥッ!!アハハ!!!ゴホッ!ゴハァ!!!」

 

笑いながら血を吐き散らす先生に、その血を全身に浴びながら、呆然とする俺。

その様子は狂気的で冒涜的で、地獄だった。

ついに血を吐ききり、気絶したセシリア先生。

誰も彼もが呆然とする中、

 

『気をしっかり』

 

ベガの声が俺に届く。

 

「…はっ!!ルミア!システィーナ!手伝え!セシリア先生!生きてる!?…脈はある!急げ!」

 

ルミアに治療を任せ、俺は即席で儀式場を整える。

そうして何とか、一命を取り留めたのだった。

 

「…グレン。セシリア、死んだの?」

 

「まさかのアルタイルがやらかすとは…。これは予想出来なかった…。すまん、セシリア先生」

 

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 

「アイル君!しっかり!アイル君のせいじゃ無いんだよ!?アイル君のお陰で、早めの対応が出来たんだよ!?」

 

あの後、気絶したセシリアを運び、被った血を洗い流した所で正気を取り戻したアルタイル。

今ではすっかりナーバスになってしまい、部屋の隅で蹲っていた。

そんな彼を、ルミアが必死に励ます。

何とかアルタイルが、精神が立ち直った時には、最後の講義を務めるグレンが教壇に立っていた。

 

「2人共。セシリア先生…まあ、アイルもだけど。大丈夫?」

 

「「何とか…」」

 

「2人共、お疲れ様。…本当に…お疲れ様」

 

いつの間にか来ていたリゼが、システィーナの隣に立っていた。

リゼの哀れみが多分に含まれたその言葉に、2人はなんとも言えない顔をする。

 

「さて…噂のグレン先生の講義。お手並み拝見ね」

 

 

 

 

「さて、楽しい楽しい体験学習会、それも大詰めだ。ところでお前達に聞きたいがある。…これまで様々な魔術の鱗片に触れてきた訳だが…どう思った?つまらなかった?期待外れだった?違うな。正解は…『魔術って本当は恐ろしいものだ』…違うか?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

子供達は、言い当てられた事に驚いている。

 

「もっと楽しいものだと思った。もっと夢のような術だと思った。…今お前達が不貞腐れてるのは、そんなところだろ。全くを持ってその通りだ。1歩使い方を間違えたら地獄。それが魔術の、厳然たる事実。それ以上でも以下でも無い」

 

先生はそこで話を切って、淡々と言い放った。

 

「魔術なんて、お前らが思ってるほど崇高じゃないし、凄いものでも無い。ロクでもない、下らないものだ。そんなものに夢見るのはやめときな」

 

「ッ!?」

 

システィーナが突然立ち上がる。

おそらく初期の頃を思い出したのだろう。

 

「システィーナ。…信じろ、先生を」

 

俺はシスティーナの腕を掴んで止める。

ルミアも、優しく手を握り、落ち着かせる。

 

「…って、前ならそう言ったんだろうな。だがこの学院には、その危険を知ってもなお、人の理性で御せるようにと、頑張ってる奴がいる。その危険を知ってもなお、己が夢を実現させる為に、魔術を学ぶ奴がいる。 その危険な魔術によって、産まれた奴もいる。その危険を知ってもなお、その力で大切なものを守ろうと戦う奴もいる 」

 

「…」

 

「結局のところ、魔術ってのは無色の力だ。そこに良しも悪しもない。それをどう使っていくのか、それは自分で考えるしかないんだ。魔術を学ぶ以上、避けては通れない道だ」

 

「…」

 

「夢や憧れだけで、この道を選ぼうとしてるなら…もう一度だけ、よく考えて欲しい。自分が一体魔術を使って何をしたいのか、何を目指すのか。そこをよーく考えて欲しい。それでもなお、本気でこの道を進むというのなら、アルザーノ帝国魔術学院は、お前達を歓迎する。俺達講師陣、教授陣が全力でお前達をサポートする」

 

その言葉を受けた子供達は、目を輝かせて先生を見てめる。

 

「さて、最後の講義のテーマは、『現代魔術師の在り方と生き方』。…この学院に勤め始めてから、俺なりに得た答えをお前らに伝えようか…」

 

こうして最後の講義が始まる。

その講義は、グレン先生の講義の中でも一際いいものだった。

こうして体験学習会は、何とか成功出来たのだった。

 

 

 

「何黄昏てんだよ」

 

「先生」

 

俺は屋上で片付けをサボりに来たのだが、先にアルタイルがいた。

 

「…今日の先生の講義で思うところが」

 

「ほぅ。話してみろ」

 

あの講義を聞いて、今のコイツが何を思うか知りたかった俺は、話すように促した。

 

「…前に、魔術を学ぶ理由、言いましたよね。たしかにベガと2人で生きていくには金がいる。だから魔術関係の職種は金になるし、軍属を望んだのは、1番稼ぎがいいからでした。でも…最近のゴタゴタに関わるようになって、本当にそれでいいのかって思うようになったんです」

 

俺は黙って先を促した。

 

「この手を血で濡らして、本当にこんな事したいのか?たとえ俺の中で、それに足る覚悟を得たとしても、俺はそんなに戦闘狂だったのかって思ったんです。…そしてそれは、多分違う」

 

アルタイルは手をグーパーさせながら、その手を見つめる。

 

「俺の歩く道の先に何があるのか、一体何処を目指すのか。それをもう一度、考え直さないとなって。強いて一つ挙げるなら…ある魔術師のようになりたい、ですかね」

 

へぇ、コイツが珍しい事を言う。

こう見えてコイツはリアリストだからな。

 

「誰だよ、その魔術師は?」

 

そう聞くと、アルタイルはニヤって笑いながら、口に指を当ててこっちを見る。

その顔は、年相応の子供の笑顔だ。

 

「…秘密!」

 

そう言って俺の隣を走り抜ける。

 

「ほら!あんまサボってると、リゼ先輩に怒られますよ!」

 

「やれやれ…それはお前もだろ」

 

そう言って俺達は、夕焼けの校舎に戻ったのだった。

 

 

その後俺達は、アルタイルの店で祝賀会を行った。

まあ、どんちゃん騒ぎの中、俺がトイレに抜け出した帰りに

 

「グレン=レーダス様」

 

突然むず痒くなるような呼び方をされ、振り返ればそこにはベガがいた。

 

「あー、ベガだっけか?その様付けやめてくんね?こう…むず痒い」

 

「では…グレン先生と。先生はあの時、『自分が一体魔術を使って何をしたいか、何を目指すのか。そこをよーく考えて欲しい。』そうおっしゃましたよね」

 

「ああ。お前には何かあるのか、ベガ?」

 

そう聞くと、少し表情が暗くなる。

そして不安げに

 

「…分かりません」

 

そう呟いた。

 

「…ほう?」

 

「私には、まだよく分からないんです。私には兄様達みたいな、確固たる意思はありません。ただ、この力を制御する為に、魔術をお爺様や兄様に教わっていただけなので。ですから…私も何かを見つけたい。私にしか出来ない、私にしかない、そんな道を見つける為に、学院に通いたいです!…それじゃあ、ダメでしょうか?」

 

どこが不安げだか、揺るがない決心を持ったその瞳は、アルタイルによく似ていて。

俺は自然と口元が緩んでいた。

 

「…歓迎するさ。そういうのを探すのも、学院ってやつさ。その手伝いも、俺達がやってやる。だから…勉強頑張れよ、ベガ」

 

俺は優しく頭を撫でながら、そう優しく伝えてやる。

そうすると嬉しそうに

 

「はい!頑張ります!それでは今夜は楽しんで下さい!おやすみなさい!」

 

「おう、おやすみ」

 

そう言って車椅子を器用に動かすベガを見送って、アイツらの所に戻ろうとすると

 

「どうわぁ!!!?」

 

「…」

 

すぐ後ろに、エンダース=トワイスがいた。

マジで気付かなかった…!?

 

「…孫達をよろしく頼むぞ」

 

そう言ってスタスタと奥に消えていった。

俺は不思議に思いつつ、アイツらの元に戻ると

 

「よし!俺達の勝ち!」

 

「やったね!アイル君!」

 

「くぅ〜!まだよ!もう1回よ!」

 

「苺タルト…!負けない…!」

 

苺タルトを巡って、チーム戦でブラックジャックをやっていた。

俺は肩を竦めながら

 

「お〜い!お前ら!ディーラーは俺に任せろ!」

 

その賭けに参加するのだった。




おまけ

「…(スッ)」

「…(コソ)」

「そこ!賄賂しない!」

「あ、あはは…」

「?」
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