リアルだと、リンみたいな子がタイプです。
それではよろしくお願いします。
これは何でもない平和な日常。
彼らの思い出、
「まったく…なんでお前達だけで、こんなとこ行こうとしてんだよ。危ないだろ」
「なによ…私達が女だからって…」
「そう言ってこの間、腕掴まれてビビってたのは、どこの誰だっけ?」
そう言い返すと、システィーナは唸るだけで言い返さない。
俺達が出会ったのは、南地区の奥にあるブラックマーケット街の入口だ。
たまたま休みであり、久しぶりに足を運んだのだが、妙に小洒落たナリの少女達を見かけた。
それがシスティーナ達三人娘だったのだ。
「いくらリィエルがいるからって、ちょっと無防備過ぎだ。お前達なんてただのカモだろ」
「ルミア達はともかく、私は昔お爺様とよく来てたのよ。それにここは見た目以上に治安はいいでしょ?」
「まあ、ルチアーノ家が元締めだからな…」
ここは完全な非合法なのだが、労働者階級層と密接に関わっており、無くては困るので事実上黙認されているエリアだ。
そんなここら一帯は、ルチアーノ家が取り纏めており、あの家に喧嘩売ろうなんて無謀者はいない。
裏社会は表以上に力が全て。
それ故に、逆に治安がいいのだ。
まったく…仕方ねぇな。
「ほら、行くんだろ?速く行くぞ」
こうして俺は、3人を連れてこの街に引き返す事にした。
何気なく振り返り、3人の服装を見る。
システィーナは、上品なブラウスにスカーフタイ、ハイウエストのジャンパースカートにロングブーツ。
ルミアは、カジュアルなコルセットドレスにストール、編み上げミドルブーツ。
リィエルは、少し意外な格好だった。
フリルで縁取りされたキャミソールにホットパンツ、ロングタイプのボーンサンダル。
髪を結ってる紐も、何時もよりオシャレだ。
「3人共、良く似合ってる。可愛いぞ」
「ッ!///あ、ありがとう…!///」
「あら、どうも。最近慣れてきたわね…」
「ん。ありがと」
それぞれの反応を見て、俺は自分の格好に確認する。
無地の黒シャツにカーキのパーカー。
黒のスキニーパンツにハイカットスニーカー。
ファッション性より機能性をとった格好は、彼女達のそばに達には少し分不相応か。
そう思っていると、不意に顔を赤くしたルミアが近付いてくる。
「あ、アイル君も…格好いいよ?///」
「ッ!…ありがとう///」
そんな顔を赤くされながら言われたら、こっちも恥ずかしくなってくる…!
「ねぇ、システィーナ。2人共顔赤い。病気?」
「ある意味そうね」
「だったら…医者に連れてかないと」
「お医者さんでも、無理なんじゃないかしら?」
システィーナとリィエルの、そんな会話は俺達には聞こえていなかった。
「それにしても…色々あるんだね…」
ここらの地理をある程度知っている、俺とシスティーナを先頭に、おっかなびっくりのルミアと、いつもの無表情のリィエル。
「持ち込める物を持ち込める分だけ持ってきて、片っ端から売り捌いてるようなもんだからな」
「実はここって地図にも乗ってないのよ。まあ、私は知ってるけどね!」
「何胸を張ってんだか…。まあ、とにかく1度迷ったら大事だから俺達から離れるなよ…って!システィーナ!勝手にいなくなるな!」
いつの間にかいなくなったシスティーナを、俺はルミアとリィエルの手を取って追いかける。
「あ、アイル君!?///」
「ルミア。顔真っ赤?やっぱり病気?」
「ふぇ!?な、何でもないよ!?」
そんなやり取りをスルーしつつ、人ごみを掻き分けてやっと追いつく。
「おい!勝手にいなくなるな!このバカ!」
「ご、ごめん…。でもほら見て!!」
システィーナがヤケに興奮して見せてきたのは
「それって…アルカヘスト蒸留器か?」
「そう!しかもセラネス魔術工房製よ!」
アルカヘスト蒸留器というのは、上部にパイプが繋がった同棲のポットで、錬金術の儀式を行う為の必需品である。
セラネス魔術工房というのは、最高級品を製作している工房だ。
この工房の商品を持っているのは、1種のステータスのようなものだ。
たしかに…造りはいいな。
「この間ウィンディが、高笑いで自慢してたね…」
「だな…システィーナは悔しかったんだろうな…」
俺とルミアはその様子を苦笑いで見守る。
そんな俺達に店主が話しかけてきた。
「お目が高いね、お嬢さん。見たところ、学院生だね?これなら…3リルと5クレスってところかね?どうだい?」
「さ、3リルと5クレス!?」
ルミアが驚きのあまり、口に手を当てる。
俺も唖然とする。
3リルとは金貨3枚、5クレスとは銀貨5枚だ。
俺の給料何ヶ月分だよ…。
まあ、ここからがここの流儀だけどな。
「もちろん銀貨でもいいよ?その場合は、35クレス。銀貨35枚さ」
「し、システィ…?流石にこれは…」
「ふふ、ルミアは素直すぎよ。まあ見てて」
そう言ってシスティーナは、値切り交渉を始めた。
その結果…
「ガハハハ!参ったねお嬢ちゃん!1リルと6クレスだ!持ってけ泥棒!」
「す、すごい…半額にした…」
「ふふ、ここでは提示金額をそのまま鵜呑みにしたらダメよ。騙される方が悪いんだから。とはいえ、私も予算のほとんどを使い切っちゃったけど…これでもいい買い物よね!」
そう気分上々で財布を取りだしたところで、俺はその財布を取り上げる。
「はいそこまで。おいおっさん。ガキ相手にあんまアコギなこと、してんじゃねぇよ」
「まったくだぜ。あくどい事しやがる」
うん?後ろから聞きなれた声がする。
振り返ればそこには
「「「グレン先生!?」」」
変な風呂敷を持ったグレン先生がいた。
…ああ、今日だったか。
「まったく…こんなパチモンに騙されやがって…」
そう言って先生は、商品を取り上げて指で弾く。
「ほらこの音、明らかに使ってる銅が悪い」
「「「「?」」」」
それは流石によく分からん。
見た目で分かるほど、精通してないし。
「まあ、銅の質はともかく、ここ。明らかに厚く削りすぎだよね。熱伝導率が命のこれに対して、あのセラネス魔術工房がこんな雑な事するかね?まあ、造りはいいし…良くて5クレス。銀貨5枚ですか?」
「おお、そんなところだ。よく分かったな」
俺達がそんな話をしていると、店主が爆笑して両手を上げた。
「アハハハハハ!いや、参った!兄さん達、たまったもんじゃないよ!」
「アンタがあんないいものを、あんな値段で売るかよ。その時点でダウト確定だ」
そこでやっと状況に追いついたのか、システィーナがハッとして、店主に噛み付いた。
「お、おじさま!私を騙したのね!」
「おや?ここのルールは何だったっけ?」
「う…。『ここでは、騙された方が悪い』」
結局、コイツの自業自得だ。
俺はため息をつきながら、システィーナの財布を投げ返した。
「まったく…。アルタイルはともかく、お前達みたいな温室育ちのお嬢がこんなところに来たところで、毟り取られるのが関の山だろうが」
店主の元を去り、俺達はグレン先生と共に行動していた。
先生の不思議な言い回しに、システィーナガ不思議そうに先生に聞く。
「『アルタイルはともかく』って…どういう事?」
「コイツ、ここの定期巡回のバイトしてるしな」
「…え?えぇぇぇぇぇ!?」
「定期巡回って…ここ、ルチアーノ家のシマでしょ!?何で貴方が!?」
あれ?先生なんで知って…?
あ、まさか
「先生、もしかして知ってます?」
「おう、この間のゴタゴタの礼の時にな。お陰でお前のバックボーンも知れたしな」
あぁ…この間ルチアーノ家が動いたらしいけど、その時だったのか。
「バックボーンって大層な…」
「待って待って!?勝手に話進めないで!どういう事!?」
そうだな…流石にリゼ先輩の事は言えないし…。
あっちにするか。
「うちの爺さんと、ルチアーノ卿は古い付き合いらしくてね。たまに店にも顔出すんだよ。その付き合いで斡旋してもらってるの」
「アイル君って円卓会の一席に座る人と知り合いだったんだ…」
そんな話はさておき
「で?先生。何故に…ん?リィエル?」
突然リィエルが、先生の袖を引っ張り、アピールしだす。
なるほど…見て欲しいんだな。
俺とルミアはワクワクしながら、動向を見守ったが
「何やってんだ?バカか?」
バカはアンタだよ、大バカもん。
思わず俺達はため息をつく。
そんな先生にリィエルは、ムスッとして先生の脇腹を思いっきり抓る。
「いてててててて!?」
「…グレン、嫌い」
そのままそっぽ向くリィエルと、落ち込むシスティーナ。
そんなグダグダな状況に、苦笑いしながらルミアが先生に尋ねる。
「その…先生はどうしてここに?」
「まあ…その…女の子へのプレゼントを探しにな」
コラコラ…そんな言い方したら…
「…集合!」
「うおっ!?」
ルミアが突然俺の腕を引っ張って、道の端による。
ていうか、滅茶苦茶力強い!
いつの間にか、システィーナ達も復活してるし!?
「ちょょょょょっと!?どういう事よ!?」
「いや、知らねぇよ。後お前は落ち着け」
「そうだよシスティ!ほら、深呼吸して!」
「「ヒッヒッフー…ヒッヒッフー…」」
「それラマーズ法だから!後、リィエルまでやらんでいい!」
それはともかく、事情は知っているのだが、流石に個人的な事は言えないので、適当にはぐらかそうとしたのだが…
「いらっしゃい、お姉さん。その黒漆のような髪にこ髪留めなんて…」
いや、なんで俺はこんな事してるんだ?
買いに来たはいいが、軍資金が心許ないという事で、オーウェル教授から巻き上げた…という言い分で、俺が交渉して回収した物品を売り捌いていた。
そうして無事、軍資金を貯めた俺達がやってきたのは
「ここって…オークション会場?」
「そう。その中でも闇オークション会場だな」
まあ、あるとしたらここだろうな…。
「おい、アルタイル。間違えないんだよな?」
「…リゼ先輩に調べてもらったんで、ほぼ間違え無いと思うけど…」
俺と先生がコソコソと話していると
「き、貴様はグレン=レーダス!?」
「え?…な!?ハーキュリーズ=レイモンド先輩!?」
いやなんて器用な間違え方!?
そのままいがみ合い、消えていくハーレイ先生。
しかし先生とリィエルを除く俺達は
(((何だろう…?この後の展開が読めるんだけど)))
そして、始まったオークション。
先生…というか俺達のお目当ての品は、前座として出てきたのだが
「「10リル!」」
案の定、ハーレイ先生と被ってしまった。
全く…なんて予定調和。
呆れてくる。
「「15リル!」」
またダブってるし…
「先輩…ここは可愛い後輩に譲ってくださいよ。16リル」
「誰が可愛いだと!?反吐が出る様なこと言うな!17リル」
「これでも先輩の事、尊敬してるんすよ?器みせてくださいよ。20リル」
「白々しい…!21リル」
「おやぁ?レートの上げ方がみみっちいですねぇ?25リル」
「グッ!?いいだろう…!40リル」
「先ぱ〜い?いいんですか?お金あるんですか?ほらぁ、俺ってお金持ちィ!45リル」
「ふん、私には貴族の嗜み、小切手があるのだよ!50リル」
「だァァ!あれに魔術的価値なんてないでしょ!?80リル」
「やかましい!貴様こそ手をひけ!100リル」
「100リル!バッカじゃないの!?120リル」
「バカなのは貴様だ!現実を見ろ!150リル」
「これからの魔術研究どうすんのさ!?俺が降りたら150リル払うんすよ!160リル」
「だったらさっさと降りろ!170リル」
「何意地はってるんすか!?180リル」
「貴様に後塵を拝する事だけは認められんのだァァァ!200リル」
こうして続くデッドヒート。
現在343リル。
しかし全ての手持ちをかき集めても、ピッタリしかなく、この額を提示したハーレイ先生の勝ちになってしまう。
…仕方ねぇ。
「はい、これ使って」
「アイル君!?」
俺は財布から1リルを出して、先生に渡す。
「っ!?…いいのか?」
「まあ、流石にね」
「恩に着る!344リル!これでどうだ!」
そうしてやっと
「落札!344リルで落札です!」
やっとこさ前座のアイテム【月光のアミュレット】を競り落としたのだった。
こうして俺達はブラックマーケット街を後にし、北地区の学生街まで戻ってきた。
「先生!」
「リン!?」
そこで待っていたのは、リンだった。
「お前…どうして?」
「先生が例の件で、南地区に行ったって聞いて…いても立ってもいられなくて…」
「それで待ってたのか…ほらよ。これだよな?ていうかこれじゃねぇと、シャレにならねぇ…」
先生がアミュレットを放り渡すと、リンはしばらくまじまじと見た後
「あぁ…これです…!先生…!ありがとう…!うぅ!…ありがとう…ございます…!」
ボロボロと泣きじゃくりながら、アミュレットを抱きしめていた。
「礼ならアルタイルにいいな。コイツが色々融通効かせたり、最後の一手をくれたりしてくれたした」
「アイル君が…!?ありがとう…!本当に…ありがとう…!」
「どういたしまして。ほとんど先生が頑張ったんだけどな」
そんな話をしていると、不意にシスティーナが近づいてくる。
「…お幸せにね、リン。お金の管理だけはしっかりと手網を握らないとダメよ?」
…コイツ…やっぱり勘違いしてるな。
「…アハハ!システィ。何か勘違いしてない?」
「「「…え?」」」
おや、後ろの2人もか。
仕方ねぇな。
「3人共、よく聞け」
実はこのアミュレット、元々リンの物なのだ。
事の発端は、リンがひったくりにあったところから始まる。
幸い犯人はすぐに捕まったのだが、肝心のアミュレットは、既に売り捌かれており、追跡不可能だったのだ。
リンは苦し紛れに、グレン先生に相談。
そして俺はその先生から、オーウェル教授の橋渡しと、リゼ先輩経由でアミュレットの行方を捜索の相談を受けたのだ。
その結果今日、あの闇オークションで売られるという情報をキャッチ。
「これ…本当に大切なものなの…。私、領地経営に失敗して、没落した貴族の末裔なの。何もかも差し押さえられて、でもこれだけは手元に残せたの。だからこれは、故郷や祖先を感じられる大切なもの…本当に…良かった…!」
再びそっと抱きしめるリンを見て、ホッと息を吐く俺達。
「あの…2人共…!これいくらでしたか…!?今は無理でも…一生懸命に働いて…だから…!」
「いらねぇよ」
「…え?」
「ま、盗品扱ってるようなヤバい場所だしな。軽く脅したらあっさりだったよな?アルタイル?」
先生がそれでいいなら…
「ま、あの時ほど先生の悪人面はそうそう拝めなかったよ」
そう言って俺達は、リンと別れて帰路に着くのだった。
「…なんて言うかよ、目の前で泣かれたら…どうにかしてやりてぇって思うのが男だろ?な?」
「無理に俺を引き込まないで下さい。…まあ、全面的に同意するけどさ」
「それはそうと、これからどうするんです?先生」
「だよなぁ…稼ぎはゼロ、手持ちもゼロ、挙句の果てにアルタイルに借金…ハァ…」
「…先生の給料が入った時、倍返すなら、飯の用意しましょうか?」
「いいのか!?」
「とはいえ、1人で用意しするのはしんどいな…。システィーナ、手伝ってよ。…これを機に、先生の好みを把握しとけ」
「…ッ!?!し、仕方ないわね!手伝ってあげるわよ!アイル!」
「お前ら、助かるぜぇ!」
こうして俺達は穏やかに帰り道を進むのだった。
おまけ
数日後…
「アルタイル!もう少し味付け濃いめにしてくれ!白猫はもっと、肉をくれ!」
「「施される側が注文するな!」」
「…?2人のお弁当、美味しい」