あちらを含め、こんな自己満足小説を楽しんで頂き、ありがとうございます。
それではよろしくお願いします。
これは何でもない平和な日常。
彼らの思い出、
「「「…」」」
茂みから覗き込む、3人の女子生徒。
言わずと知れた三人娘、ルミア、システィーナ、リィエルだ。
そんな3人が見つめる先には
「…」
1人の黒髪の男子生徒…アルタイルだ。
そんな彼の側に走ってくるのは
「おまたせ!ごめんね、アルタイル君」
「いや、別に。さっき来たばっかりだから。…で?要件は?えっと…ユミルさん?」
1人の女子生徒。
首元のリボンを見たところ、同学年だ。
見た目は綺麗というより可愛らしい、特に怪しい噂も出ない普通の女の子。
アルタイルはそんな女子生徒に先を急かすように、手に持っていた紙…彼女が書いたラブレターをヒラヒラさせる。
それを見た彼女は、顔を真っ赤にしながら指をモジモジさせて、やがてアルタイルの顔を真っ直ぐ見る。
「大好きです!///私と付き合って下さい!///」
「…ごめん。君とは付き合えない」
アルタイルは静かに、しかしハッキリとその告白を拒絶する。
彼女はさっきまで赤かった顔色が、青色に変わる。
「ど、どうして…!?」
「どうしても何も、君とは初対面だし」
「その…付き合ってから知っていくのも、いいと思うの!まずはお試しとか…!」
「たしかにアリなのかもしれない。でもその行為は、不誠実な行為だ。君のその勇気ある行動に、泥を塗るような真似はしたくない。だから…ごめん」
そこまで言って頭を下げれば、彼女は諦めたのか静かに涙を流しながら、引き返していく。
「…ふぅ」
その様子をアルタイルは、疲れたように見つめるのだった。
「お疲れ様、アイル」
「ッ!?システィーナ…ルミアにリィエルまで…趣味悪ぃぞ」
「ついさっきここで、ルミアが告白されてたのよ」
突然現れた3人に驚きつつ茶化すと、どうやらルミアもここで、告白されたらしい。
「なるほど…毎度お勤めご苦労さん」
「アイル君も、お勤めご苦労さま」
ルミアとお互い労い合うと、お互い疲れたようにため息をついてしまう。
「2人共モテるわよね。これで何回目?」
「アイルも突き合いの申し出?…果し合いは受けないの?」
「だから突き合いじゃなくて、付き合いだって…」
俺はため息をつきながら、リィエルの頭を撫でる。
その時、俺のポッケから何か落ちる。
「アイル君。何が落ちたよ…?ッ!?これは…」
「ああ、悪いなルミア。ちゃんと返事しとかねぇとな…。メンドイけど」
ルミアが拾ったのは、俺宛のラブレター。
相変わらずのかなりの量だ。
ここだけではなく、ロッカーとかにもある。
たまにカッシュとかが受け取る事もあるのだが、その度に殴りかかってくるのはやめて欲しい。
「…アイルもちゃんと返事書くのね。大変じゃないの?」
大変じゃないと言ったら嘘になる。
でも…
「まあ、勇気を出して手紙をくれた訳だし、俺も最低限の筋は通さないとな。まあ、簡潔に返事をするだけだしな」
『アイルも』って事は…ルミアもか。
大丈夫かな?
俺と違って、バカ真面目に対応してるしな…コイツは。
そう思いつつ、そこに踏み込まずに
「さてと、戻るか」
俺は校舎に向かって歩き出した。
「ルミア…あんまり悠長にしてる暇はないわよ!」
「し、システィ!?///何言ってるの!?///」
「ルミア?アイルと突き合いたいの?」
「〜ッ!?///リィエル!///」
そんなプチ騒ぎには気づかなかった。
「ちくしょう…何で俺が…」
「まあ、ドンマイ」
「うるせぇ!俺はお前みたいに、給料発生しねぇんだよ!」
何をゴチャゴチャと言ってるかというの、またもや、オーウェル教授の発明に付き合わされる羽目になったのだ。
「ふははははは!よく来た!我が名誉助手アルタイル君!我が好敵手にして、心友のグレン先生!そしてその教え子の三人娘!」
「誰が名誉助手だ!」
そうツッコミながらも、もはや無意味なのは知っているので、ため息をつきながら、先を促す。
長くなるのでまとめると、今回開発したのは遠い未来訪れる、高齢化社会問題を解決する為の新薬。
その名も
「【超モテ薬】だ!」
「「「「…」」」」
何とも言えない空気が俺達を包む。
「これを使えば、どんな奴でもモテる!傾国なんて目じゃないくらいモテる!ある例外を除いて、この薬からは逃れられん!まあ、精神支配系魔術をガッツリ応用した、思いっきり違法な薬だからな!これを無差別に使って、若者達に産めや増やせや…」
「「この、大バカもんがーー!!」」
俺達は壁に、オーウェル教授の顔をめり込ませる。
「…異性の想いを…引き寄せられる薬…」
「あのオーウェル教授があそこまで自信満々に言うんだから…きっとよっぽど凄い効果があるんでしょうね…」
「ふ〜ん…」
そう言いながら、右手を伸ばす先生。
先生…何考えてるか…丸分かりだからな?
「待ちなさい」
ほら見ろ、案の定システィーナに止められてるし。
「一体どういうつもり?」
「どうもこうも…報告の為にもキッチリと、効果を見とかねぇとな!」
「何よその顔!絶対にロクでもない事考えてるでしょ!?」
「ちょっ!?離せよ白猫!」
「離すわけないでしょ!?そんなにモテたいの!?」
下らない揉み合いの末、瓶が高く飛ぶ。
いつの間にか蓋が空いてたらしく…
「きゃあ!」
ルミアにそれがしっかりかかってしまう。
「ルミア!?大丈夫か!?」
俺は慌てて手巾を貸すが、あっという間に乾いてしまい、拭けなかった。
「私は大丈夫だけど…」
「ならいいけど…。2人共!ふざけるならもっと周りを…?」
あれ?いつの間にかいない?
「ルミア…よく分からないけど…くっつきたい…」
「我慢出来ない…貴女が欲しい…」
「ルミア…俺の女になれよ…な?」
「ちょっ!?皆…!?どうして…!?」
これは…何事…?
あまりの光景に唖然としていたが
「キャッ!?システィ!?」
ルミアの悲鳴じみた声でハッとした。
「ルミア!『身体に憩いを・心に安らぎを・その瞼は落ちよ』!」
【スリープ・サウンド】で、3人を眠らせる。
「ルミア、大丈夫か?」
「う、うん…」
俺はルミアを起こしながら、オーウェル教授に尋ねる。
「どういう事ですか?見境無さすぎません?」
「うむ…。元々異性にしか効かないようになっている上に、ほんの数量で常識の範囲内で効くようになっていたはず…」
少し考えて、何か閃いたらしい。
「なるほど、元々彼女は薬を使わなくてもモテる!そこにあの薬を1瓶丸ごと使ったせいで、モテ度が天元突破したのだろう!最早性別や理性など、全く関係無くなったのだろう!」
「はぁ!?何それ!?」
どんなぶっ飛んだ理屈だよ!
その時、突然ドアが破られて
「「「「「「寄越せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」」
大量の生徒が押し寄せてきた。
「ゾンビかァァァァァァァァァァァ!!!!?」
俺は直ぐにルミアを抱き上げて
「さ、『三界の理・星の楔・律と理は我が手にあり』!」
【グラビティ・タクト】で飛び越えて、全力疾走。
縦横無尽に駆け抜け、ひたすらに逃げ回る。
「あ、アイル君!?アイル君はどうして…!?」
「知るかそんなもん!きっと…!?」
きっとそれは…薬なんて効くまでもないのだろうが、そんな事、口が裂けても言えない。
「きっと?」
「何でもない!///それよりしゃべんな!舌噛むぞ!!」
クソ…!キリがない!
どうする!?
そう焦っていると
「2人共!こっちです!」
声の方を見ると、医務室からセシリア先生が手を振っている。
俺達は躊躇いなく医務室にに飛び込み、何とかやり過ごした。
「…た、助かりました、セシリア先生」
「あ、ありがとうございます、セシリア先生」
「2人共災難でしたね…。私は専門家ですので、大丈夫ですよ。それよりも、ここの結界は即席です。アルタイル君は、結界術得意でしたよね?すみませんが、強固にして貰えないでしょうか?」
「了解です。ルミア、待ってて」
俺はすぐに外に出て糸で結界を張る準備をする。
…いや待て、何かおかしい。
この結界…精神防御用の結界じゃない。
…まさか!?
俺はすぐに医務室に戻るとそこには
「何があったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
血まみれの美女が2人、抱き合う淫靡で背徳的な光景だった。
「セシリア先生…興奮しすぎて、鼻血吹き出して倒れちゃって…」
「効いてたのかよ!?とんでもない絵面だわ!B級ホラーも真っ青だぞ!!いや、真っ赤だけどさ!!」
そんなコントをしていると、突然ドアが破りれる。
「「「「「天使様はここかァァァァァァァ!!!」」」」」
「げぇ!?俺の糸のバリケードはどうした!?」
「「「「「愛があれば問題ない!!!」」」」」
「大ありだバカヤロウ!!!ええい!逃げるぞ!」
俺はまたルミアを抱えて、逃避行に繰り出した。
しかし、何時までも人1人を抱えたまま、全力疾走出来る訳なく
「ゼー…ハー…ゼー…ハー…!クッソ!どこまでも…!お前ら疲れねぇのかよ!?」
「「「「「愛があれば問題ない!!!」」」」」
「そんな気がしたよちくしょう!!」
「アイル君!もういいよ!」
俺の顔色がそんなに悪いのだろう。
ルミアが決意を込めた顔で俺を見る。
「このままだとアイル君が…!私に構わずに…」
「俺が構うんだよバカ!!!いいから守られてろ!!!」
俺はルミアの言葉を遮る。
当たり前だ。
ルミアを…他人にやる訳ねぇだろ…!!!
しかしマジで八方塞がりだ。
どうする…!?
「「「「「「「「「そこかぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」」」
ゲェ!?前からも!
しかも先生達いるし!?
「【スリープ・サウンド】しっかり決まったよな!?」
「「「愛さえあれば問題ない!!!」」」
「万能だな!!!?愛って!!」
マジで手詰まりだな…!?
そう思った時
「『動くな』!」
その声と共に、前後から迫っていた愛の亡者共が、一斉に動きを止める。
その正体は
「お前達、相変わらず変なトラブルに巻き込まれているな」
「「アルフォネア教授!」」
よし!アルフォネア教授が味方なら…!
味方なら…味方…なら…?
「ええと…アルフォネア教授?なんかルミアに…近すぎない…?」
「ハハハ!私は
「「
ごっつ効いてるじゃん!
しっかりアウトじゃん!
ガッシャァァァァァァァァァァン!!!
「げぇ!?アルフォネア教授の拘束を解いた!?どうやって!?」
「「「「「愛さえあれば問題ない!!!」」」」」
「もういいわ!!!」
そうして、全ては愛ゆえに。
愛の為に引き起こされる。
「「「「「「「「「「戦争だ!!!」」」」」」」」」」
「勝手にしてろ…」
「あ、あはは…」
俺達は目の前で起こる、神話の再現を呆然と見つめるだけだった。
そんな中、突然現れたオーウェル教授。
「ふっ…完成したぞ!【反モテ薬】!」
「今まで何してたって言いたいけど…名前から察するに、中和剤?だったらちょうだい」
「いや、これは中和剤では無く解毒剤。彼らに使う物だ」
…唐突に物凄い嫌な予感がする…!?
「ええっと…この状況で…どうやって?」
ルミアも嫌な予感がしたのか、脂汗をかきながら、恐る恐る尋ねる。
その質問に答えるように、懐からボールを取りだし、そのボールに着いている紐に火をつけた。
「この私特性の魔導爆弾を使い、爆風で全てを吹き飛ばしつつ、学院中に薬を撒き散らす!これが最適解だとも!フゥーハハハハハハハハハ!!!」
「「…」」
きっと俺達は無表情なのだろう。
そして
「ふざけんなぁァァァァァァァァァァァァァ!!!」
俺の魂の叫びと共に、爆弾が爆発して全てが吹き飛んだのだった。
「あ、あはは…大変な事になったなぁ…」
私の周りには、私とオーウェル教授以外の皆が倒れていた。
私はアイル君がギリギリで張ってくれた結界のお陰で、無事に事なきを得た。
私はオーウェル教授に、ずっと疑問に思っていたことを聞く。
「あ、あの…どうしてアイル君には効かなかったんでしょうか?」
オーウェル教授は周りを見渡して
「ふむ。…今なら言ってもいいだろう。実はだね、ルミア君。この【超モテ薬】は、とある条件を満たした人物には効かないのだよ」
「特定の条件…?」
「うむ、魔術理論的には、恋愛感情を誘発させる魔力波は無意識の対人感情に乗せて放出される。つまり…使用者が意識している相手には届かない、という事だよ」
意識している相手…ってつまり!?
私の顔が一気に暑くなる。
「あ、あのあの!オーウェル教授!?///」
「ふっ。分かってるとも。そんな無粋な真似しないとも。青春、結構。命短し恋せよ乙女。先達として、応援してる」
そう言って帰ろうとした瞬間
「逃がすかボケぇぇぇぇぇぇ!!!」
アイル君のドロップキックが炸裂。
そのままオーウェル教授は、復活した皆にボコボコにされるのだった。
でも、一つだけ腑に落ちない。
それはあの時
『きっと…』
アイル君は、何か言おうとしてた。
あれは一体なんだったんだろう?
おまけ
「はぁ…///」
(あんなこと言いそうになって…俺のバカ!)
「兄様?顔が真っ赤ですよ?」
「なんでもない!」