何故かって?妄想全開だからです。
それではよろしくお願いします。
これは何でもない平和な日常。
彼らの思い出、
「浮気調査…ですか?」
⦅はい、それを貴方に頼みたいのです。アルタイル君⦆
システィーナから借りた通信宝石で話す相手は、彼女の母親、フィリアナ氏だ。
「失礼ですが…あのレナードさんですよね?浮気なんてそれこそ…」
⦅私もそう思いたいのですが…⦆
俺はふと思い出す。
たまたま帰ってきていたのだろう、レナード氏とフィリアナ氏。
その視線の先にいる、楽しげに歩くルミア達三人娘。
紛れもない家族の一コマ。
…俺やベガには、一生届かない夢。
この依頼は、きっとそんな夢のような世界を壊してしまう。
でも…もし逆なら?
その証拠が無かったら…守れるのか?
そう思った時には、口にしていた。
「分かりました。頑張ります」
⦅…ッ!ありがとうございます。それと…私達家族の事は、気にしないで下さいね⦆
そう言って通信が切られる。
…見透かされたか。
「ほらよ、システィーナ」
「お母様、どうしたの?」
「…んにゃ、あっちで賊に襲撃されたらしい。無事に撃退したけど、こっちにも来るかもしれないから、今晩、護衛をお願いされたんだよ。だから…一晩世話になる」
適当に嘘をつく。
「そうなの!?無事なら良かった…。分かったわ!用意はしておくから!」
「ああ。こっちもとりあえず一旦帰って、着替えとかの用意してくるわ」
こうして俺の秘密の戦いが始まった。
「いらっしゃい!アイル君!」
「突然すまんな、ルミア。お邪魔します。これ、手土産の苺タルト」
「ッ!苺タルト!」
奥からリィエルが、ものすごい勢いで迫ってくる。
「リィエル!めっ!」
「リィエル!ダメよ!」
「むぅ…」
何だ?何事だ?
「実はね…」
リィエルの偏食を問題視したフィーベル家は、リィエルに苺タルトの制限を強行。
こっそりと隠し持っているらしい。
「なるほどな…。ならこれもお預け」
「ッ!?」
あ、後ろにガーンって文字と落雷が見えた。
それくらい露骨に落ち込んでいるらしい。
「とにかく中に入れてくれ」
「そうだったわね!ようこそ!」
おいしい晩飯をいただき、風呂にも入らせてもらった。
「さてと、間取りは確認した。この家の結界も確認済み。正直…抜けるとは思えないけど…」
という表向きの仕事をこなしつつ、本当に欲しいもの、この家の間取りを手に入れた俺。
さてと、後はタイミング…!?
「今一瞬…?気のせいか…?」
確認を取ろうとした時
「アイル君!コーヒー飲む?」
「ああ、ありがとう。…気のせいか」
俺は部屋から出て、ルミアからコーヒーを頂くことにした。
ここはフィーベル邸の屋根裏。
「何で…アルタイルが…!?」
「今のも、先輩の教え子さんですか?」
「クソ!何でアイツが…!?アイツがいるとなると、相当難易度が上がったな…!」
そんな会話をするのはグレンと、その後輩である【ロザリー=デイテード】だ。
ひょんな事から、彼女の依頼を手伝うようになったグレンは、今回も巻き込まれていた。
その内容は『浮気調査』。
対象、レナード=フィーベル。
依頼人、フィリアナ=フィーベル。
つまりアルタイルと同じ事件を、追いかけているのだ。
その最中、使い魔を放ち様子を伺うことにしたグレン。
その使い魔が目撃したのが、アルタイルだったのだ。
「…まあいい。アルタイルにも気づかれないように動くぞ」
暖炉の前の安楽椅子に座り、ルミアがコーヒーを淹れてくれるのを待つ。
ふと、コーヒーの独特のいい香りが近付いてきて
「おまたせ、アイル君」
「ありがとう、ルミア」
サイドボードには、カップとおかわりの入ったポット、後は皿に出された、俺が持ってきた苺タルトがあった。
「リィエルには内緒だね?」
そうお茶目に笑うルミアに、俺も思わず笑う。
「だな」
俺は1口啜ってから、1口齧る。
「…うん、美味しい。タルトにもよく合う」
「本当?美味しい?」
「ああ、うちで出せるぜ?」
「もう!茶化さないで!」
「「…アハハハハハ!」」
そのまま2人でゆったりとした時間を過ごす。
特に変わった事はしない。
ただコーヒーを啜り、タルトを齧り、少しお喋りする。
そんなありきたりな食後の時間なのだが…
「なんというか…熟年夫婦みたいだな…」
「うぇっ!?///」
「は?…あ」
しまった…!口に出てた…!?
「待て!ルミア!///今のはその、違っ!///いや、違くはないけど…!いいから、落ち着け!///」
慌てて弁明するも、真っ赤になってアワアワしているルミアは、全く聞かず
「わわわわ!?///私達が…ふふ…夫婦…!?///」
「ルミア!?カップ置け!じゃないと…!?」
動揺したルミアがカップを落としてしまい…
「あつッ!?」
「ルミア!」
(ゲロ甘ぇ…)
(甘々…)
透明になる魔術で、覗いていたグレンとロザリーが、同じ事を思った瞬間だった。
カップを落として中身のコーヒーを被ったルミアは、そのままお風呂に直行。
俺も片付けをして部屋に戻るふりをして
「…ここだな」
レナード氏の部屋に直行。
こっそりと忍び込むも
「うへぇ…指輪だらけだな」
そういえば、指輪を使った魔術が得意なんだっけ?
俺は魔力感知の術【デティクト・マジック】を応用した、結界を張り魔力を可視化させる。
彼は魔導省の官僚。
なら当然、相手は魔術師の可用性が高いと、睨んだ俺は、レナード氏の魔力じゃない物を探る為に、これを使った。
「あった」
それは、本棚の奥の方から出てきた。
正体は、ダイヤがついている指輪だった。
「…ビンゴ…か」
…これを伝えなくては、いけないのか。
アイツらのこの平和な世界を壊さなくては…いけないのか…。
「…やだなぁ…」
出来るなら、隠蔽しちゃいたい。
でもそれはきっと…この家族の為にはならない。
どうすれば…!?
「…説明してもらうぞ、アルタイル」
「…先生?」
部屋に入ってきたのは、グレン先生と、見慣れない女性。
なんで?どうして?
色んな疑問が浮かぶ中、俺が口にしたのは
「…どうしよう、先生」
自分でも恥ずかしいくらい情けない声で、助けを求める言葉だった。
「…なるほどな、お前もフィリアナさんから…」
「はい。でも…おかしくないですか?」
「ああ、おかしい。何で同じ人が、同じ内容を、別々の人物に依頼したのか」
「唯一違う点は、指輪の情報の有無」
「そうだ。そしてロザリーは、直接依頼として。お前は、白猫が持っている通信宝石越しに今日、頼まれた」
「フィーベル夫妻は今、帝都にいて、明日帰ってくる。なのに直接、依頼を受けた」
「そしてお前は、白猫が持っている私物で話を聞いた。つまり…」
「アンタが偽物だな。フィリアナ=フィーベル」
俺達は目の前にいる女性、フィリアナ=フィーベルを睨みつけた。
「…お前は誰だ?」
結論から言えば、浮気はしていない。
ただ、部屋にあった指輪には、極微細な呪いのルーンが、びっしりと刻まれていた。
効果は簡単に言えば、相手の愛情を自分に向けさせるもの。
しかも身につける必要はなく、あるだけで効果を発揮する類のもの。
下手人は若い女性だった。
彼女はレナード氏に横恋慕したのだ。
だが、相手は極度の愛妻家のレナード氏。
指輪なんてもの、簡単には受け取らない。
だから、前に1度立ち寄った際に、直接仕掛けたのだ。
愛情自体が手に入れば、後は長いスパンでレナード氏が手に入る。
そして呪いが十分にかかったところで、探偵のロザリー氏に、嘘偽りの依頼をして回収。
全ては、若さゆえの抑えきれない衝動によって引き起こされた、哀しき愛の暴走。
「…というのが、この騒動の真実です」
「そうだったのですね…。ありがとうございます。アルタイル君」
俺は昨夜の謎解きの事を、フィリアナ氏に報告。
正直、これが第三者による犯行で、ホッとしている自分がいる。
「これ、依頼料です。受け取ってください」
渡されたお金が入った小袋を俺は、静かに返した。
「お金はいりません。…ですが…お願いがあります」
「え?何ですか?」
「…どうか、夫婦で仲良くいて下さい。ルミア達、貴女達の話をする時、いつも嬉しそうなんです。いつも、心配してます。今回も、嘘の襲撃事件をでっち上げましたが、すごく心配してました。今も、きっと今晩の献立を考えながら、買い物してると思います」
そこまで言って、言葉を切る。
「そんな当たり前の幸せな光景が、消えて欲しくないんです。だから…だから…」
あれ?何言ってるんだろう?
訳わかんなくなってきた…。
頭がごちゃごちゃしてくる中、フィリアナ氏の手が、俺の背中を摩る。
「あの子達の事を、それだけ心配してくれて、ありがとうございます。えぇ、最後まで一緒に寄り添いますよ、あの人に」
そう言ってやはりお金の入った小袋を置いて、去っていこうとするフィリアナ氏。
しかし途中で振り返って
「何時でも家に来てくださいね。未来の義息子君♪」
何やらとんでもない爆弾を置いていった。
「…はぁ!?///」
俺は思わず立ち上がって振り返る。
その顔は、イタズラが成功したような子供みたいな顔だった。
そのまま立ち去るフィリアナさんを
「…勘弁してくれ…///」
俺は呻きながら、見つめるしか無かった。
「あら?勉強お疲れ様、3人共」
「お母様!どうして!?」
「ふふ、アルタイル君に会っていたのよ。昨日のお礼をね」
「そうなんですね…」
「…ルミア、彼はとてもいい子ね。彼の事、しっかり掴まえておかないとね」
「お義母様!!!?///」
「彼なら何時でも大歓迎だわ〜」
「お義母様!!!///」
おまけ
「彼の趣味は?好みは?ちゃんと知ってるの?」
「お義母様!?///お願いだからですから…!」
「大丈夫よ、お母様。ゴールイン間近よ」
「まあまあ♪」
「システィ!///」