ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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ここで出てくるスープは、我が家で実際に作られるスープです。
本当はもっと細かい工程とかあるはずですが、母親しかレシピを知らない為、かなりざっくりとしています。
それではよろしくお願いします。


仮病看病☆大戦争

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

さて突然だが俺達は今、アルフォネア邸の前にいる。

 

「先生…起きてるかな?」

 

「んー。ま、大丈夫だろ」

 

「そうね、絶対に起きてるわ。『解錠』」

 

 

事の発端は、数時間前。

突然グレン先生が体調を崩し、早退した所から始まる。

…何か、変だな。

あの高熱だ、立ち上がるのもかなり辛かったはず。

なのに午前中は普通に授業してたよな?

それに…この状況。

2,3日は休んでも問題ないし、予め用意されていた自習用課題。

そして極めつけは、アルフォネア教授とセシリア先生が不在である事。

そう考えていると、突然隣から物が軋む音がする。

音の方を見ると、システィーナがすごい形相で、羽根ペンを握りしめている。

 

「し、システィ?どうしたの?」

 

「何か…怒ってる?」

 

その様子に気づいたルミアとリィエルが、不安そうにシスティーナの様子を伺う。

 

「…おい、システィーナ。あれって…」

 

「アイルも気づいた?多分…そういう事よ。…ッ!ねぇ、3人共。提案があるんだけど…」

 

 

そうして俺達は(俺とシスティーナは別目的で)、先生の看病にやってきたのだ。

アルフォネア教授から鍵を受け取っている俺達は、早速居間を覗く。

うわぁ…中ぐっちゃぐちゃ。

ワインは開けっぱだし、本が置きっぱだし…。

あれ、【ジョン=シープス】じゃん。

バカさ加減が好きなんだよなぁ。

 

「先生の部屋は…どこ?」

 

「たしか2階よ」

 

「ん?何で…ああ、猫騒ぎの時」

 

「ッ!?///思い出させないで!///」

 

悪ぃ悪ぃ。

何で知ってるのか気になった時に…。

猫騒ぎっていうのは、変身の授業の時、勝手に変身したシスティーナが、戻れなくなった事件があったのだ。

その時たまたま何の事情も知らないグレン先生が、猫システィーナを引き取ったのだ。

 

「ここよ」

 

俺はノックしたから、声をかける。

 

「先生ー?生きてるー?」

 

「か、勝手に…殺すな…」

 

ありゃ、弱ってるねぇ…。

あれ?もしかして…ガチ?

それはともかく、看病をするにあたって、まずは役割分担かな。

 

「俺は掃除するから、ルミアとリィエルは、買い出し頼めるか?これ、買ってきて欲しいものリストと店の場所。金はリストにある物を買う分なら、俺の金使っていいから。リィエル、何があっても、絶対にルミアの傍を離れるなよ。システィーナは、先生の部屋を頼む」

 

「分かった!出来るだけ抑えるね!」

 

「ん。行ってくる」

 

「ええ、任されたわ」

 

俺達は各自の分担に別れて作業する。

今の片付けから手をつける。

コルクを閉めて、空いた瓶はまとめる。

洗い物もして、本も一箇所に、巻ずつにまとめてとく。

出来るだけ手早く、テキパキと進めていると

 

「この『バカ』ァァァァァァァァァ!!!」

 

「フンギャアァァァァァァァァァァ!!!」

 

「は!?何事!?」

 

俺は慌てて先生の部屋に飛び込んで…

 

 

「お前はバカか!」

 

「もう!ダメでしょシスティ!先生は具合悪いんだよ!!」

 

「だって…だって…!」

 

「「だってじゃない!!」」

 

魔術で先生をすっ飛ばしたシスティーナを、叱り飛ばしながら、俺達は先生の手当をする。

 

「次!チェンジ!リィエル!」

 

俺達はリィエルとシスティーナをチェンジさせ、システィーナに掃除、俺達は別の作業に取り掛かる。

 

「アイル君、これでいいの?」

 

「おう、サンキュな」

 

そう言って俺はルミアが買ってきてくれた材料を使って、あるものを作り出す。

鍋に水を張り、鶏肉を入れる。

それを煮込みながら、スライスしたジンジャーやガーリック、唐辛子入れて、味の調整。

後は煮込んでいくだけ。

何だが…。

 

「…また上、騒がしいな」

 

「だね…もう、リィエルまで…!」

 

「ハイハイ、そう怒るなって。ルミア」

 

「でもアイル君!」

 

「分かってるよ。だから作ってんだろ。ほら、見に行くぞ」

 

 

結局リィエルもしっかりとやらかしており、俺とルミアに叱られるのだった。

その後俺達は、それぞれの作業に没頭する。

 

「「〜♪」」

 

「仲良いな、お前達は」

 

「「グレン先生」」

 

先生が俺の方に近付いてくる。

 

「何作ってんだ?…ほう、綺麗な黄金色のスープだな」

 

「ちょい待ち。…うん、こんなもんでしょ。はい先生、味見してみる?」

 

軽く味見した俺は、そのまま先生にもそう提案する。

 

「…いい匂いだな…」

 

「まあ、ジンジャーとかガーリックとか入ってますしね。とにかく騙されたと思って飲んでみなって」

 

恐る恐る飲んだ先生の目が、見開かれる。

 

「…!これは…美味いな!」

 

「でしょ?どうよ、婆さんの直伝!吐いててもこれだけは、飲めるんだよ!」

 

とはいえ、婆さんの方が美味いし、時間も足りない。

本当はもう少し煮込みたいところだ。

 

「とはいえ、もう少し味の調整をしたいので、お楽しみは後で」

 

「おう。さてとルミアは何を…?」

 

先生の言葉が止まる。

だろうな、俺も絶句しちゃうから、見ないようにしてきたのだが…。

 

アルタイル。ルミアの奴…何してるんだ?

 

薬の調合だって

 

あれが?

 

指さす先にあるのは、材料達。

毒々しいキノコ、正体不明の骨、百足のような蟲、苦悶に満ちた顔を浮かべた人面石。

ルミアは俺達の視線に気付いたのか、いつも通りの優しい笑顔で

 

「先生、先生の風邪は厄介なものと見ました。ですので、帝国王家直伝…お母さん直伝の薬を調合してますので!」

 

ガァン!ガァン!

 

容赦なく人面石を砕く。

何故か石が泣いているが、それを無視して鍋にぶち込む。

よく見ると鍋の中は、表現のしようも無い禍々しい色をしている。

 

((魔女の大釜!?))

 

鍋からは俺の鍋とは違う意味の刺激臭が、周囲を飛ぶ虫を落とす。

 

〖シャアァァァァァァァァァ!!!〗

 

「「ヒィィィィィ!?」」

 

「もう!ダメでしょ?めっ!」

 

なんか触手出てきたんだけど!?

笑顔で沈めてるし!

滅茶苦茶怖いんだけど!!?

 

お、おい!アルタイル!何で止めなかった!?

 

止めれるか!というか自業自得だろ!

 

俺達がコソコソと言い合いをしていると

 

「はい!先生、出来ました!出来たてが1番効果があるので、ここでどうぞ!」

 

「え…えぇと…」

 

「材料費が高くって、お小遣いをほとんど使っちゃったんですけど…気にせずにグイッと!」

 

((それ言われたら、気になるヤツ〜!!))

 

そんな健気な笑顔で、そんな事言われたら…

 

「あ、ありがとうな!ルミア!」

 

男は…引けない…!

グレン先生…!その生き様、しかと目に焼き付けたぜ!!!

 

 

「さてと…大丈夫だろうか?」

 

再びシスティーナに先生を任せて、ルミア達は買い出し、俺は火の番をする。

ついこの間も、ベガが流行り風邪をひいて、寝込んでいた。

あの時は突然来たからビックリしたが、恐らく先生もそろそろ…

 

「『大いなる風よ』!」

 

ドンガラガッシャーン!!!

 

「はぁ!?またおっぱじめた!?」

 

あのバカ…!

俺はすぐに上に駆け上ろうとしたのだが、

 

「うおわぁぁぁ!?」

 

「ゲェ!?」

 

先生が階段から落ちてきていた。

あまりに突然の事に対応出来ず、

 

「「だあぁぁぁぁ!?」」

 

「先生!逃がさないわ…よ…?」

 

「システィ!?アイル君!?大じょ…う…?」

 

「…グレン?アイル?格闘の練習?」

 

皆が何故固まるかと言うと、俺と先生の体勢にある。

上から落ちてきた先生の顔が、俺のすぐ目の前にある。

普段はからダラしない人だが、顔は整っている。

体も服の上からは分かりにくいが、しっかり鍛えているのが分かる。

咄嗟に先生が俺の後頭部に手を添えて、頭を打たないようにしてくれたのだろう。

そのせいで更に近付いており、まるでキスする直前みたいな体勢だ。

 

「いてて…ったく。アルタイル、大丈夫か?」

 

「え、えぇ…」

 

当の本人はまるで気付いていないのか、普通にしている。

 

「…お前、こう見ると、可愛げある顔だな」

 

「は!?」

 

「男前だし、性格よし、家庭的…文句無しだな」

 

「な、何言って…!?///」

 

「顔真っ赤だぞ?…クク、可愛らしいじゃんか」

 

ちょっと待て、何で俺が口説かれたんだ!?

そういうのはシスティーナに…!?

…いや、焦点があってねぇな、こりゃあ。

 

「お、『大いなる風よ』ぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「何でさァァァァァァァァ!!!!?」」

 

 

 

「もう!システィ!先生は()()()()()()()()()()()!!」

 

「あはは…マジで俺が体調悪かったとはな…」

 

「そ、そうですね…///」

 

あの後、本格的に熱が出だした先生をベットに運んだ俺達は、そのまま俺の作ったスープを飲ませている。

 

「ん?アルタイル、顔赤いぞ?風邪移したか?」

 

「誰のせいだよ!?ったく…今年の流行り風邪は厄介で、初期症状が分かりにくいんですよ。俺も、ここに来てから初めて気づいたし。しかも多分、この間ベガがやってなかったら、来てても気づいてなかったでしょうし」

 

ルミアが1番早く気づいていたらしく、あの魔女の大釜も、マジで薬だったのだ。

 

「それはそうと…マジでどうしたんだよ、白猫。今回はなんか変だったぞ?」

 

たしかに騙されたからにしては、少し過激すぎたような…?

 

「その…サボられて私達を放っておかれるのが、寂しかったんです!普段から私達の為に忙しくしてるのは知ってますが…だったら、そう言ってくれたら…」

 

「…悪かったな。流石に大人げなかったな。もう二度とこんな事しねぇ」

 

そう謝りながら、先生はシスティーナの頭を撫でる。

そんな光景を穏やかな気持ちで見ていると、突然部屋のドアが開かれ

 

「グ〜レ〜ン〜?」

 

「ゲェ!?セリカァ!?」

 

アルフォネア教授が早めのご帰還。

 

「お前、大人しくお留守番もできないのか?あっちこっち滅茶苦茶だったぞぉ…?」

 

「「あ」」

 

あぁ、2人のせいで滅茶苦茶なんだな、部屋の中。

 

「ま、待て!セリカ!」

 

「問答無用!おしおきだァァ!!」

 

「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「教授!待って下さい!これは…!!」

 

先生が窓を突破って逃走。

アルフォネア教授がそれを追いかけ、更にその後ろをシスティーナが追いかける。

 

「…帰るか」

 

「そうだね」

 

「ん」

 

俺達は素知らぬ顔で、帰り支度を整え、外に出る。

 

「さ、3人共!?助け…」

 

「「自業自得」」

 

「…らしい」

 

「「そんなァァァァァァァァァァァ!!!」」

 

そんな2人のアホな悲鳴が、この大きな空に響き渡ったのだった。




おまけ

「ゴホッゴホッ!…クソォ…マジで移るとか…」

「兄様、ルミアさんが来ましたよ!」

「…まさか…」

「アイル君!お薬持ってきたよ!はいあーん」

(こ、こんなに嬉しくないあーんって、未だかつてあっただろうか…?)
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