ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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リィエルの話は基本ぶっ飛んでるけど、そのぶっ飛び具合を上手く書けないんですよね。
やっぱ作家さんはすごいな…。
それではよろしくお願いします。


さらば愛しの苺タルト

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

 

「うん、是非もないよネ!」

 

「ぶっちゃけハーピー先輩の気持ちが分からんでもないから、どうしようもない!」

 

ある日の放課後、ルミア達から持ちかけられた相談に、俺達2人は頭を抱えていた。

この学院では、大きな試験などで単位を落とすと、当然追試がある訳だが、その担当監督官は担任以外から選出される。

今回リィエルの担当が、ハーレイ先生だったのだ。

当然、あのハーレイ先生は激怒。

ここまではまだよくある事なのだが…

 

「まさか、【制約(ギアス)】まで使ってくるとはなぁ…」

 

制約(ギアス)】とは、相手の行動を制限する白魔儀だ。

その拘束をもって、リィエルから苺タルトを食す行動を奪ったハーレイ先生。

解呪条件は、1週間後の追試を突破する事。

 

「とにかく、今回ばかりはどうにもならん!覚悟決めて突破するしかないぞ!リィエル!」

 

「うん。覚悟決めた」

 

そう言ったリィエルが、大剣を錬成。

それを首筋に当てて

 

「私、もう死ぬ。さようなら」

 

「「「「リィエル!!!ストップゥゥゥゥゥゥ!!!」」」」

 

慌てて俺達は、リィエルの動きを止めた。

…前途多難すぎる。

そうして始まった特別講座なのだが

 

「う…うぅ…苺タルト…苺タルトォォォォォ!!!」

 

「またかよ!ルミア!」

 

「う、うん!」

 

ルミアが苺タルトの入った袋をリィエルの口に当てて、匂いを嗅がせる。

 

「まさか…苺タルトを欲するあまり、禁断症状が出るとは…」

 

「苺タルトって違法薬物かなんか?」

 

「言っておくけど、アイルもこの原因に一役買ってるんだからね」

 

「うるせぇ、分かってるから手伝ってんだろ」

 

俺が何かある度に、リィエルに苺タルトをあげてたからなぁ…。

しかしこのままだと、マジで勉強が捗らん。

そう深刻に俺達が相談を始めた時

 

「話は聞かせた貰った〜!!」

 

「『大いなる風よ』!」

 

「『雷精の紫電よ』!」

 

「『赤色の猫よ・憤怒のままに・吼え狂え』!」

 

「ぎゃああああ!?」

 

突然現れた変態、オーウェル教授をすぐに吹き飛ばして、何事も無かったようにしたのだか

 

「酷いではないか!」

 

ズカズカと近付く教授に、先生が舌打ちをして対応する。

 

「ええい!人が穏便に暴力的に済ませてやったのに!お前か絡むと面倒なんだよ!」

 

「聞きたまえ!こんな事もあろうかと、新薬を開発したのだよ!その名も【I.K.K】!」

 

「…一応聞くけど、なんの略?」

 

「【苺タルトが嫌いになる薬】」

 

「だから何を想定してるんだあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

曰く、あらゆる依存症に効く術式を思いついたらしく、それを魔術薬として開発したらしい。

簡単に言うと、好きな物を嫌いにしてしまえばいい、そういう発想だ。

白魔術には、認識操作の術は数あれど、根本的な趣向を変えるのはかなり困難だ。

そんな歴史的すごい薬なのだが…

 

「それを苺タルトに変換した」

 

「なんでお前はいつもそうなんだよぉぉぉ!!!?」

 

もう、何も驚かない。

俺達は苦渋の決断を迫られていた…。

 

 

あっという間に追試当日。

俺はこの日、リィエルのストッパーとして、ハーレイ先生から、バイトとして雇われている。

先生達は、離れたところで不安そうに見ている。

 

「ふん。リィエル=レイフォード。心の準備と覚悟はいいか?…と言いたいが…貴様、本当に大丈夫か?」

 

ハーレイ先生がガチで心配するその先には

 

「ん、大丈夫」

 

その目はつり上がり血走り、瞳孔に爛々と憎悪の火が灯っている。

くまも酷く、もはや別人。

頭には『悪菓滅殺』のハチマキ、腕には…『苺タルト撲滅委員会』等書かれた腕章。

極めつけは、そこらの木に、何故か苺タルトを五寸釘で打ち付けていた。

 

「マジで何があった?貴様」

 

「何も無い。私は気づいた。本当の敵の存在に」

 

「う、うん?そうなのか?」

 

そうらしいです。

 

「それは…苺タルト。人を惑わし、堕落させるこの食べ物だけは、必ず殲滅させなければならない」

 

「ん?あれ?貴様…苺タルト大好物ではなかったのか?」

 

「苺タルト?ふん。反吐が出る、そんな邪悪」

 

「邪悪!?」

 

そうだったのかぁ…。

 

「憎い…!苺タルトが憎い!必ず駆逐してやる!残酷に噛み砕き、無惨に胃液で消化して、私の一部にしてやる!」

 

「…それ、普通に食べてるよね?」

 

その通りですね。

 

「さあ、早く始めて!この世から苺タルトを殲滅させる為に!」

 

「…おい、お前達、何をした?」

 

「…バカにつける薬が作られたって事で…」

 

現実逃避は終わりらしい。

第1の試験は、魔術狙撃。

なのはいいのだが…

 

「…マジかよ…」

 

「貴様に撃ち抜けるか!?リィエル=レイフォード!」

 

的が苺タルトだよ…。

大人気ないにも程がある…。

しかしハーレイ先生の目論見はハズレ。

 

「ぜ、全弾命中だと…!?」

 

「憎しみは人を強くする」

 

何言ってるか、訳分からんが…。

これだけは譲れない。

 

「ハーレイ先生…次、食べ物を粗末に扱ったら、あんたの金●、【ライトニング・ピアス】で撃ち抜くからな?」

 

「…はい…」

 

 

第2の試験は、魔術薬調合。

内容は2等級の治癒の軟膏。

2年次生が習うのは、3等級なのだが、ルミアなような優秀な生徒は、2等級でも十分可能だ。

 

「ついでだ。貴様もやれ、アルタイル=エステレラ」

 

「はぁ!?何で!?」

 

「貴様も苦手だろう、この授業は」

 

「グッ…」

 

痛いところを…!?

実は俺もこの調合は苦手で、テストではギリギリ合格点だったのだ。

料理は出来るのに、これは出来ないのが、自分でも不思議だ。

 

「…はぁ…分かりましたよ…」

 

幸い、グレン先生の読みが当たり、リィエルに合わせて俺も勉強していたので、問題は無い。

 

「調合式開始」

 

「『第五の日は命天。刻限は17。それらを主催するはエクレールとティリエル』」

 

「『弟切草を4煎じ、エーテルもって二度、抽出。リコの油を1取り加え。三年置きしトネリコ、根の灰2、都度二に分け、三度混ぜ。今日の主催がティリエルなので、樟脳抜いて、朝摘みセージを一摘まみ』…」

 

よし、俺もリィエルも順調だ。

 

「『そして、取りいだしたるクッキーを、叩いて砕きて粉にして、牛乳一さじ合わし混ぜ』」

 

「「…ん?」」

 

ハーレイ先生と俺の動きが止まる。

慌てて俺も作業を再開させる。

 

「『これを型に敷きつめか器とし、クリームを中に、注ぐべし』」

 

「『苺…ないから、毒苺でいい』」

 

いや、良くねぇだろ。

ていうかそこじゃねぇ!

 

「ん、ハーレイ出来た。治癒の軟膏」

 

「「誰が苺タルト作れと言ったァァァァァァ!!」」

 

もうどこをどう見ても、苺タルトだよな!?

【I.K.K】切れてるよな!?

 

「貴様、苺タルト憎んでるとか嘘だよな!?食べたくて、仕方ないんだよな!?」

 

「そんな事ない!私は苺タルトが憎い!この世から消してしまいたい!こんな風に!」

 

「「「「「あ」」」」」

 

食べちゃったよ、苺タルト。

…毒苺の苺タルト。

毒苺ってたしか、即効性の猛毒だよな…!?

 

「…コフッ!」

 

「馬鹿者ーーーーーー!!!」

 

俺達は、外で見ていた先生を含めて、リィエルの介抱にドタバタする羽目になった。

ちなみに、見た目が苺タルトでも、しっかり治癒の軟膏として問題なかったらしい。

俺のもリィエルのも、合格ラインだった。

 

 

最後の試験は、座学。

特に何事もなく、問題を解いていくリィエル。

…そんな風に見えたのだが…

 

「ッ!?リィエル!お前何書いてる!?」

 

「貴様!ふざけてるのか!?」

 

「…あ」

 

答えが全部、苺タルトだったのだ。

そしてついに

 

「あ…アァァァァァァァ!!!」

 

「何事!?」

 

ヤバい!薬が切れた!

先生達が慌てて呼び薬を投与させようとしたが、

 

「動くなお前達!第三者の干渉は一切禁止だ!エステレラ!貴様もだぞ!」

 

「「「「うっ…!」」」」

 

至極真っ当正論に、動けない俺達。

 

「うァァァァァ…!?アァァァァァァ!!」

 

「苦しいか?苦しいだろう!?私の毛髪と研究室の恨み!もっと味わえぇぇぇぇ!!ハッハッハッハ!!」

 

「シュールすぎんだろ」

 

「フフフ…これを見ろ!アバンチュールの限定品だ!」

 

そんなものを取り出して…!?

目の前で食った!?

 

「ハハハ!美味い!美味すぎる!」

 

「ア…アァァア…!ソレヲ…私ニ…!!!」

 

リィエルが涙を流しながら、苺タルトを求めるも、制約のせいで、届かない。

 

「なんて…外道…!!」

 

「人を人とも思わない所業…!!」

 

「ハーレイ先生…!!貴方の血の色は何色ですか!!」

 

「うるさい!黙れ!小童共!このハーレイ=アストレイ!悪魔に魂を売ったのだ!!」

 

なんてしょうもない事に魂売ってんだよ!?

俺達は応援するしか出来ない。

やはり限界なのか…!?

諦めかけたその時、突然

 

プツン!

 

何が切れる音がして

 

ドンッ!

 

マナが燃焼されだした。

現れたのは、異様な雰囲気を纏うリィエル。

あまりの威圧感に

 

「まさか…魔将星?」

 

「あんな生ぬるいもんじゃねぇぞ!?」

 

魔将星が生温く感じるほどだった。

高速錬成された大剣は、通常時の3倍くらいデカくて…

 

「ま、待て!?落ち着け!リィエル!」

 

「私が悪かった!悪かったから!」

 

「…無理だな。ルミア、システィーナ。隅に寄れ」

 

俺は2人を隅にやり、結界を張った。

その瞬間…校舎が割れた。

文字通り、割れた。

後に俺達はこう答えた。

 

『人の感情の力って…すごいんですねぇ…』

 

『あの2人が、相手になりませんでした。まさに一方的な戦いでした…』

 

『人間と魔王の戦いって、あんな感じなんだろうな…って思いました』

 

結論を言えば、リィエルは及第点を取れており、何とかクリア。

ハーレイ先生は、しばらくの間、リィエルと苺タルトが発狂レベルのトラウマとなり。

俺はストッパーとしての役目を果たせず、バイト代は無し。

グレン先生には、減俸という名の【制約(ギアス)】がつけられることになったのだった。




おまけ

「苺タルトは1日2個まで!」

「ッ!…むぅ…」

「…そんな目で見られたら…!…やっぱり、3個?」

「「アイル(君)!!甘やかさないで!!」」
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