これは何でもない平和な日常。
彼らの思い出、
「すみません。少しいいですか?」
「はい、どうしましたか?」
フィジテのとある大通り。
通りすがりの貴婦人に話しかけたのは、アルザーノ帝国魔術学院の制服に身を包んだ、1人の黒髪の少年、アルタイルだ。
「突然で申し訳ないんですが、今って聖暦何年でしたっけ?」
「え?1873年ですよ?」
「73年ですね?53年じゃなくて」
「はい、そうですが…?」
「…ありがとう、ございます」
彼はそのまま道行く人何人かに、同じ質問をするが、答えは同じ。
つまりは…
「さて…状況の整理からだ」
ある路地裏で、アルタイル、ルミア、システィーナ、リィエルのいつもの4人は、神妙な顔で話し合う
「私達がいたのは、1853年」
「うん」
「なのにここは73年」
「うん、間違えない」
そう言ったリィエルが見せてきたのは、新聞だった。
それを見た俺達は確信した。
「お、俺達…」
「わ、私達…」
「「本当に20年後の世界に来てるぅぅぅぅぅ!!!!?」」
事の発端は、少し…いや、20年前。
「ククク…クハハハハハハハハハ!!私はついに成し遂げた!!ついに私は、時間旅行が可能な魔導装置を完成させた!!その名も【
「嫌ァァァァァァ!!!」
「逃げ…!?【リスト・リクション】!?」
逃げ出そうとした時には、拘束魔術で拘束されていた。
ちなみに拘束した本人、グレン先生は逃走済みだ。
「あの薄情者!」
「説明しよう!これ…」
「要らん!想像つくわ!」
「監修してくれたアルフォネア教授に感謝を!」
「面白そうだったからな」
「「混ぜるな危険んんんんんんんんん!!!」」
俺達2人でツッコミしまくっても追い付かない。
そのまま大砲に詰め込まれ
「
そのまま俺達は大砲で打ち出されて…
「気付いたら、本当に20年後の世界にいた…って事だね」
ルミアが最後を締めくくってくれて、俺達は頭を抱える。
「あの人…マジで変態だよ?本当に変態なんだよ。でもさ…ここまで突き抜けてるとは、思わないじゃん?」
「『近代魔術では不可能だ』って、アイリッシュが完璧に魔術証明したのに…!?」
「2人共、落ち着いて。ほら…アルフォネア教授と、オーウェル教授だし?」
「「あァァァァァァァァァァ!!!もううぅぅぅぅぅ!!!」」
俺達は妙に説得力のあるルミアの言葉に、悶え叫ぶしか出来ない。
「だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!こうなったらあれだ!学院行くぞ!20年後のオーウェル教授に、責任取ってもらう!」
俺の号令の元、4人で学院を目指し出した俺達。
幸い、大きな変化は無く、特に迷う事無く学院にたどり着いた。
「それほど大きく変化してなくて、良かったわ…」
「ううん、変わった。…あそこの屋台、無くなった」
「まあ、あそこの婆さん、歳だったしな…」
「むぅ…絶対に元のジダイに帰る」
やっと事態の重さを理解したか…。
そんな会話をしつつ、俺達は学院にたどり着く。
「…ビックリするくらい、変わんねぇな…」
「だね…。なんか拍子抜けかも?」
「歴史ある学院だから、大きな変化は無いんじゃないかしら?」
俺達はそのまま学院の門を潜ろうとして、ふと立ち止まる。
「あ、俺達の事登録されてるのか?」
「そういえば…!?」
そう、この学院には登録してない人を弾く結界が張られており、卒業と共に、登録が消されるのだ。
20年もたっていれば流石に…
「?皆、入らないの?」
「「「え!?入れるの!?」」」
リィエルが何気なく入っている。
登録が残ってるのか…?
そう思いつつ、俺達も後に続こうとした時
バチン!
「痛っ!?」
「アイル君!?」
何故か俺だけ弾かれた。
…どういう事だ…?
「アイル君!?大丈夫!?」
「どうしてアイルだけ…?」
「…ちょっと待ってろ」
俺は【アリアドネ】を全身に纏い、そのまま一気に通り抜ける。
「…ふぅ。これのおかげだぜ」
「どうやったの?」
「【アリアドネ】はあらゆる結界をすり抜けるからな。俺自身をそれで隠したんだよ」
そんなイレギュラーはあったものの、オーウェル教授の研究室を探す。
その辺な奴に聞くか。
「あ、すみません。ちょっと…」
「あぁん?」
「…え?」
俺達はその見た目に、思考が止まった。
そのいかにも不良です、という格好よりも、あまりにも似ていたからだ。
…システィーナに。
「あの…貴女の…お母さんの名前って…?」
恐る恐る尋ねるシスティーナに、不愉快そうに、顔を歪めながら
「お袋ぉ?システィーナっつうんだが…?」
「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」
あぁ…システィーナは、教育を間違えたんだな…。
となると父親は…
「ルミア…父親って…」
「うん…きっと…」
そうコソコソ話していると、いつの間にか、いなくなっていた。
「…教育頑張れよ、お母さん」
「言わないでぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
次にあったのは、ただでさえ攻めている学院の制服を、更に着崩した金髪の美少女だった。
こっちはこっちで、唖然とさせられる。
なぜなら…ルミアによく似ていたからだ。
「あの…貴女のお母さんの名前は…?」
「え?ルミアですけど?」
「はうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!?」
そのままお説教モードに入るルミアだが、右から左。
そのまま立ち去っていく、ルミアの娘。
orz状態のルミアの肩を、システィーナがそっと叩くのだった。
次にあったのは
「母上ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「「「なんか襲いかかってきたァァァァ!!!?」」」
「ん?いきなり何?…私の敵?」
リィエルの娘だ。
どうにもすぐにリィエル本人だと気付いたらしいが、俺達は魔導人間だからかと推測。
恐らく20年前と姿が変わってないんだろう。
「『遊んでる暇は無い!』」
俺は即興改変した【グラビティ・タクト】で、吹き飛ばす。
「なぁ!?横槍とは卑怯な〜!!!?」
「今のうちに!」
やっとの思いでたどり着いた研究室。
ちゃんと帰れるらしく、ホッとした。
しかし、細かい調整に、約3時間ほど時間がいるらしく、その間、学院をうろつく事にしたのだが
「ああ、君。すまないが話がある。残ってくれ」
「?分かりました…」
俺だけ残された。
話って一体…?
「単刀直入に聞こう。…
「…は?」
あまりの斜め上すぎる質問に、俺は固まってしまう。
誰だって…
「アルタイル=エステレラですけど…?ボケたんですか?」
「いや、私は真剣だ。20年前の私の手記には、
急に、頭がクラクラしてきた。
「な…何言って…!?現に俺は、ここに!?」
「だが、君の名前は無い」
「そんなの、何かの間違えじゃ!?そもそも、色んな実験の手伝いだってしてきたし…!」
「…では、いくつか質問させて貰おう」
そうして、オーウェル教授からの質疑応答が始まった。
どれもこれも、俺が経験してきた事ばかりだ。
なのに…何で?
「…ありがとう。どうやら君は、本当に彼女達と共にいたらしい」
「だからそう言って…?」
オーウェル教授が何かを差し出してきた。
これは…卒アル?
「20年前…つまり、君達の代の卒業アルバムだよ。見てみたまえ」
俺は急に嫌な予感がした。
震え出す手でページをめくっていく。
「…無い。
どこを探しても、俺の名前が無い。
皆の名前があるのに、俺だけ無い。
どこを探しても俺の写真が無い。
皆の写真があるのに、俺だけ無い。
俺が生きた証が…無い。
「何で…!?どうして…!?」
「落ち着いて聞いてくれ。…ここは、君が…
あまりの無情な言葉に、俺は足元が崩れ落ちた気がした。
あの後、フラフラと研究室を出た俺は、気づけば屋上にいた。
呆然と下を覗けば、未来のルミア達とその娘達が仁義なき戦いを繰り広げていた。
「…」
何も言わずに、ボンヤリと見つめる。
そんな中、近づく2人の人影。
「おーい帰ったぞー」
「「「
「…あ」
そりゃそうだ。
あの3人の父親なんて…1人しかいない。
結局…俺がいる意味なんて無かった。
俺の努力も、痛みも、悲しみも、怒りも、楽しさも、嬉しさも、愛しさも。
…全部、意味なんて無かったんだ。
「…アハ」
なんか、何もかもがどうでも良くなって…
「アハハハ」
全てがくだらなくなってきて…
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
全部がおかしくなってきて、笑った。
笑って、わらって、ワラッテ、嗤って…嗤い続けた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
嗤い続けて、嗤いすぎて涙出てきた。
ずっと嗤い続けて…自分の中の何かが、ボロボロになってきて、もう全てが崩れ落ちそうになった時
「…いいんだよ」
誰かが、抱きしめてきた。
暖かくて、いい香りで、すごく落ち着いて、知っている感覚…。
「…笑わなくていいんだよ。泣きたかったら、泣いていいんだよ」
「アハハハハハハハ…ハハ…ハ…ア…アァァァ…アァァァァァァァァァァァァァ!!!」
笑い声が、泣き声に変わっていて、泣き続けて…気づいたら、眠っていた。
「…どういう事…?」
私はあまりの光景に、愕然としていた。
私の娘、ルミリア。
その父親は
なのに彼女が父親だと言ったのは…
「どういう…どういう事なの!?」
「ルミア!?落ち着いて!」
「答えて!私!どうして先生なの!?アイル君じゃなかったの!?」
私は思わず、未来の私に詰め寄る。
しかし詰め寄られた未来の私は、不思議そうな顔で
「アイル君?
「…え?」
ナニヲ…イッテイルノ?
訳が分からず、呆然とする。
システィも、驚きながら詰め寄る。
「ち、ちょっと…ちょっと待ってよ!未来のルミア!アイルよ!アルタイル=エステレラ!忘れたの!?」
「待って、過去の私。それ、
「…え?未来の私も?」
未来のシスティも知らないらしい。
向こうで、リィエルも聞いてるけど、首を振っている。
「何が…どうなって…?」
「少し待ってて」
未来の私達が、何やら話し合っている。
アルフォネア教授が一瞬消えて、また戻ってきた。
多分転移魔術を使ったんだと思うけど…。
グレン先生が近付いてくる。
「お前達にいくつか質問がある」
先生からの質疑応答に、真剣に答える。
嫌な予感を振り払う為に。
「…そうか。すまねぇな。最後にこれを見てくれ」
そう言って先生が見せてきたのは、卒業アルバムだった。
1ページずつめくっていき、そして…最後の1ページもめくる。
「嘘…」
「これって…」
「どういう事?」
「ここは、お前達の未来じゃない。ここは、
アイル君が…存在しない…世界。
他の誰もがいて、アイル君だけがいない世界。
そんなの…!?
「アルタイルって奴がいなくても、お前達が今まで潜り抜けてきた修羅場は、そしてこれから立ち向かう事になる修羅場は、ソイツがいなくてもどうにかなる。それが証明されちまってるのが、この世界だ」
「『自分が居なくても、世界は回る』。皆何となくで使う言葉だが、それを知る事と、理解する事は、まったく意味が変わってくる。特に多くの経験を経てきたソイツの場合、今まで築き上げてきたもの全てが、無意味なものとして、貶められた。…正直、私なら、まず耐えきれられないだろう」
アイル君の今までの葛藤は?痛みは?恐怖は?
その全てが…無意味だったっていうの?
そんなの…そんなの…!
「ルミア!?」
突然驚いたような声に顔を上げると、大人の私が走って校舎に入っていく。
私達も慌てて追いかけて、追いついた時には、泣きじゃくっていたのだろう、目元を真っ赤に腫らしたアイル君が、大人の私の腕の中で、眠っている。
「声が聞こえて…上を見たら、泣きながら笑ってて…」
きっとアイル君は、知ってしまったのだろう。
大人の私は、優しく髪を撫でながらこっちを見る。
「ねぇ、3人共。3人は、彼の事どう思ってるの?」
「「「…」」」
アイル君の事…それはもちろん…
「…ん。私は、あまりアイルとは話さない」
まず口火を切ったのは、リィエルだった。
「…でもアイルは初めて、私を…ただのリィエルとして…見てくれた。大切な事を、教えてくれた。いつも、苺タルトをくれた。私の…初めて出来た、3人の友達の1人」
次に話したのは、システィだった。
「そうね。アイルは…親友で、ライバル。同じ理由で、同じタイミングで、同じ人に稽古をつけてもらって、その差に愕然とした。私には無い覚悟を持ってた。だからこそ。絶対に負けたくない、絶対に勝ちたい。そういう存在」
「…私は?ルミア」
未来の私が、私を見る。
私はアイル君を見て…想いを口にする
「大好きな人。誰よりも愛してる人。私を救ってくれた恩人。私が…全てを捧げて、ずっとそばにいてたい、愛しい人」
私達の言葉を受けて、大人の私は、優しく私達に笑いかける。
「…皆、その気持ち。ちゃんと伝えてあげて?彼のボロボロの心を救えるのは…貴女達しかいないから。貴女達の想いが…きっと彼を繋ぎ止めてくれるはずだから」
「「「…うん!」」」
私達は、アイル君を引き取り、研究室に向かう。
「…さあ、準備は整えてある。アルフォネア教授と共に、誤差もきちんと修正した」
「向こうの私によろしくな」
「俺は知らねぇが、あっちの俺の教え子なんだろ?だったら…頼むぞ、お前ら」
そう先生達に送り出されて、私達は私達の現在へと帰還したのだった。
「…ここは…研究室?」
「おう、おかえり。どうだったよ、未来は」
目の前には、グレン先生達がいる。
横を見ると、ルミア達はまだ眠ってる。
…もう、それすらどうでもいいや。
「…少し、空気吸ってきます。気分が…」
「ん?おぉ…。アルタイル、大丈夫か?」
俺は先生の言葉には返事をせずに、屋上に向かう。
誰もいない夕焼けの屋上。
俺は柵にもたれて1人、空を見上げた。
「もう…どうでもいいか…」
俺がいてもいなくても、変わらないなら…もう、いいや。
「『我が手に星の天秤を』」
俺は周囲の重力を制御して…そして…
「…ハッ!」
私は一気に起き上がる。
周りを見渡して…アイル君がいない。
「システィ…!リィエル…!起きて!!」
「…ッ!アイル!」
「ん!」
「お前達…どうした?」
先生が驚いたように私達を見る。
「先生!アイル君は!?」
「は?アルタイルなら空気吸ってくるって…っておい!どこに行く!?」
私達はすぐに研究室を飛び出し、走り出す。
でもどこにいるか分からない…!?どうしよう!?
「ん!
リィエルが階段の方に走り出す。
「リィエル!分かるの!?」
「勘!」
この際勘でも何でもいい。
とにかく走り出す。
リィエルはどんどんと駆け登っていき、屋上に繋がる廊下に出る。
「いた…!」
アイル君だ!
でも様子が…?
リィエルが私達の手を掴んだ。
「「リィエル?」」
「捕まってて…アイル!」
リィエルが一気に駆け抜ける。
アイル君がビックリした顔で、何かした瞬間
「「「え?」」」
「…速すぎんだろ」
いつの間にか、アイル君が目の前にいて
「「「わァァァァァァァァァァァ!!!?」」」」
ドンガラガッシャーン!!!
思いっきり、アイル君とぶつかった私達だった。
「…痛い…」
リィエルの声が聞こえて、慌てて重力を止めたはいいが、それよりも速く能力圏内に侵入される。
切れても慣性が残っており、勢いそのまま、思いっきりぶつかられる俺。
「いてて…お前ら、何しやがる…!?」
「ん。アイルが悪い」
突然リィエルがそんな事言い出した。
「はぁ!?」
「アイル、今。
「「「!?」」」
…本当に勘がいいな、コイツは。
「…だったら何だよ。別に俺がいなくたって、何とでもなるんだ。だったら…」
「私にはよく分からないけど。アイル、言ってた。『自分の大切なものの為に、命を懸けろ』って。私はグレンが大事。ルミアもシスティーナも…アイルも。皆、皆大事。だから守る。それだけ。アイルは?私の事、どう思ってる?」
「…ッ!?」
あのリィエルが、こんな事言うとはな…。
コイツの事は、まだよく分からない。
けど…
「俺は…リィエルがいると、安心するよ。普段は癒されるし、戦いの時は、いつも先陣切ってくれるから、頼れる奴だと思ってる」
思ってる事を告げると、どことなく嬉しそうにするリィエル。
「アイル」
次はシスティーナか…ッ!?
景色がシスティーナの顔から、屋上の柵に変わる。
口元が熱く、血の味がする。
…ああ、殴られたのか。
「…いってぇな」
「ええ、痛いわ。親友を殴るのって、すごく痛いのね。でも躊躇わないわ。『
それも、俺が言った言葉だな。
「勝ち逃げなんて許さない!私は貴方の事、ライバルだって思ってるの!絶対に勝つ!だから…どこにも行かせない!私が勝つまで…私が勝ち越しても!ずっと…私達の側にいなさい!!」
なんて滅茶苦茶な…。
でもそうか…システィーナもライバルって思ってくれてたのか。
「俺は…お前の才能が羨ましいよ。お前の才能があれば、もっと上手く立ち回れる…そう思う事が何度もあったよ。だからこそ…俺も、お前をライバルと思ってる。お前にだけは、絶対に負けたくない。絶対に勝ちたい。そう思ってる」
そう言うと、システィーナは、満足そうに頷いた。
「アイル君」
ルミアが俺の両頬を挟んで、強制的に振り向かせる。
「…『捨てる神あれば拾う神あり。世界の誰もが君を捨てるなら、私が君を拾う。そして私以外にも、君を拾おうとしてる人は、沢山いる』…だよ?」
それは…あの時の…。
「
俺も…俺も…!
「俺も…皆の側にいたい…いたいよ…!皆の為だから、戦えたんだ…!皆が、ルミアがいないとダメなんだ…!」
「だったら、どこにも行っちゃダメ。行っても、絶対に戻ってきて」
「俺…ここにいても、いいのか…?」
「『いていい』んじゃなくて、『いてもらわないと』ダメなの。…さあ、帰ろう?」
ルミア…システィーナ…リィエル…。
ルミアが立ち上がって、俺に手を差し伸べる。
大抵逆なんだが、こういうのも新鮮で、悪くない。
「…ありがとう、3人共」
そう言いながら、その手を取り、立ち上がると突然、リィエルが腰に抱きついてくる。
「…リィエル?どうした?」
「…アイル、どこにも行かないように」
「…行かねぇよ」
俺は優しくリィエルの頭を撫でる。
その時だった。
今度はシスティーナが、俺の腕を掴んで離さない。
「そうね…。アイル、今日うちに泊まってきなさい!」
「はぁ?何でだよ!?」
そう言うと今度は、逆の腕を掴んでくるルミア。
「そうだね!私達がどれだけアイル君を想ってるか…今夜は寝かさないよ!」
「いや、寝かせてくれよ!?ていうか、聞いたよ今!やめろ!恥ずかしいわ!」
そのまま連行されそうになっていると
「青春してるなぁ、お前達」
出口にグレン先生がいた。
「白猫、何がどうなっているのか、今度説明してもらうからな。それと、アルタイル」
先生はそう言うと、俺の頭に手を置き、グシャグシャに掻き回す。
「お前が何をどう思おうが、俺はお前を守る。俺はお前の教師だからな」
いつも通りの態度に、いつも通りの言葉。
それが、本当に嬉しかった。
「…ありがとうございます」
「ほれ、お前ら!下校時間だぞ!そのまま連行してやれ!」
「「はーい!」」
「ん!」
「だからやめろって!!」
後日、あの魔導具は封印されらしい。
結局あの後、マジで連行された俺は、本当に一晩中コンコンとお話させることに。
当然次の日、寝不足で起きられなかった俺達は、仲良く全員で遅刻しかける羽目になったのだった。
おまけ
「クソォ…ギリギリだぞ。ったく…システィーナがいつまでも髪をいじってるから…」
「私!?リィエルがずっと食べてるからじゃない!?」
「むぅ…ルミアが起きないのが悪い」
「えぇ!?…そもそもアイル君が、自殺未遂するからだよ!」
「「「「「「「「「「「「自殺未遂!?」」」」」」」」」」」」
「「「…あ」」」
「…バカ」
という訳で、オリ主が壊れかけましたね。
アルタイルの支えを、根本的に破壊する話です。
オリ主の存在は、実はかなり曖昧だと思います。
だって、原作があってのオリ主。
元からいなくても成立している話に、強引に割り込んでいるのだから。
原作では夢オチでしたが、ここではマジにしました。
実は僕にしては珍しく、バッドエンドも考えたんですよ。
分岐は戻ってきたルミア達が、アルタイルを探すのに3人まとめて動くか、手分けするかですね。
今回はリィエルの直感で別れる前に、まとまって動きました。
でも、手分けして探すと、ルミアだけが居合わせて、タッチの差でアルタイルの自殺を止められませんでした。
死因は重力で自分の頭を潰します。
結局やっぱり嫌いだったので、書きませんでしたが。
いや〜、本編も後書きも長い!
それでは失礼します。
ありがとうございました。