ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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今回、これまでで1番、甘々です。
コーヒー飲みながら書きましたね、甘すぎて。
それではよろしくお願いします。


もしもいつかの結婚生活

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

「ハッ…ハッ…ハッ…!…ふぅ…はぁ…はぁ…」

 

日課のランニングを終えて、俺は玄関の扉を開ける。

自室に繋がる階段を登ろうとした時、ふわりといい匂いがした。

…キッチンからだ。

俺は匂いにつられるままに足を進めて、その先にある光景に見惚れる。

いつも通りの薄緑のエプロンをつけた婆さん…では無く、婆さんが使う薄緑のエプロンをつけたルミアにだ。

 

「〜♪…あ、おはようアイル君。お疲れ様」

 

「…おはよう、ルミア。ありがとうな」

 

「うん!風邪ひいちゃよ?早く汗流してきて!」

 

「あ、あぁ…」

 

俺は足早にキッチンを離れて、自室に行く。

着替えを持って、風呂場に向かう。

貯水槽から水を引いてきて、石炭…の代わりにうちでは炎の魔術で温度調整する。

【ギーザー】という給湯システムなのだが、うちでは少し改良してある。

俺は汗を流して、何時もの学院の制服に着替える。

キッチンに併設されている食卓の上には

 

「あ、ちょうど出来たんだよ?さ、座って?」

 

テーブルの上には、焼きたてパン、カリカリのベーコン、スクランブルエッグ、チーズサラダ、オニオンスープ…定番の朝食だ。

なのに…高級店さながらの雰囲気だ。

きっと、ルミア補正がかかってるからだろう。

 

「「いただきます」」

 

俺達は早速手を合わせて、食べ出す。

 

「…どう?」

 

「マジで美味い」

 

「本当!?よかった」

 

ルミアが甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれるのが、申し訳なく感じるので、俺もジュースを注いだり、サラダを取り分けたりと、お互いほのぼのとした朝を過ごす。

 

「…じゃあ、いつもの場所で。いってくるね」

 

「おう、出来るだけ早く行くから。いってらっしゃい」

 

流石に今の俺達の関係がバレだら、面倒だ。

だからいつもの約束の場所に、バラバラに着いてから、登校する。

ルミアを見送って、火の元の確認などをしながら、俺は熱くなる顔を抑えきれずにいた。

 

「…どうしてこうなった…!?///」

 

 

 

事の発端は、3日前。

 

「こんな事あるんだなぁ…」

 

「そ、そうだねぇ…」

 

こんな事っていうのは

・グレン先生とイヴ先生が急遽、帝都へ別々の学会に参加

・システィーナは、グレン先生の付き添い

・リィエルが急遽、帝都へ帰還命令

・アルフォネア教授が、急遽遺跡の調査

・爺さんと婆さんが、ベガを連れて結婚記念日旅行。店は臨時休業中だ。

 

「見事に俺達以外いないわけだ…」

 

「相変わらずシスティのご両親も忙しいし…ちょっと寂しいね」

 

「寂しいっていうか、なんて言うか…」

 

別に1人だからといって困る事は無い。

ただ、張り合いがない…いや、素直に言うか。

心細く感じるのは事実だ。

1人用に飯作るのもダルいし、どうしたものか…

 

「あ、アイル君!」

 

「ん?どうした?」

 

ルミアが声かけるも、そこから先が出てこない。

一方のルミアはというと

 

(だ、大胆すぎるかな…!?でも、こんなチャンス…そうそう無いんだから!)

 

ルミアが決意した瞬間

 

「ふふ、貴女が1歩踏み出せないのは、お見通しでしたよ、エルミアナ!」

 

1人の貴婦人が、フラリと現れる。

 

「…え?えぇぇぇぇぇぇぇ!?お、お母さん!!!?」

 

「じ、女王陛下ァァァァァァァ!!!?」

 

まさかの国家元首、アリシア7世女王陛下、その人だ。

「「な、なん…なんで!?」」

 

「あらあら♪仲のいい事!」

 

「本日はお忍びで、出向かれたのですよ。…久しぶり、アルタイル。ふふ、今頃エドワルド卿が、慌てふためいているだろうね」

 

現れたのは、特務分室の執行官NO.5【法王】のクリストフだ。

 

「おま、何で連れ出しちゃったの!?止めようよ!?」

 

「アハハ!僕に陛下のご命令に背けと!…腹切るよ?」

 

「重いわ!!!」

 

忠義厚い奴なのは知ってたが、ここまでとは…!?

陛下が、真面目な顔で咳払いを1つして、ルミアと向き合う。

 

「さてと、エルミアナ。何をしているのです?」

 

「え?」

 

「このチャンスを前に…コホン!アルタイルが1人で心細く感じているのに、何を手をこまねいているのです?」

 

「あれ?お母さん、何で知ってるの?」

 

「というか、何故俺の心境を知ってるんです?」

 

「ふふ、私からしたら、貴方の心の内を読むのは、容易いですよ?それはさておき、裏で手を回したのは…コホン!」

 

流石は女王陛下、俺の心中なんて…って待て。

今なんて言った?

 

「ともかく、今やアルタイルは、グレンと共に帝国の英雄的存在。そんな御方に不自由があっては、帝国王家の恥です。と、言う訳で…エルミアナ。貴女は住み込みで彼の世話をしなさい」

 

「「…え?」」

 

…今、なんて言った?

 

「いいですか?住み込み!住み込みですよ!これは勅命です!!」

 

「「…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?///」」

 

俺達は、顔を真っ赤にして戸惑うしかない。

アタフタしてる俺達を無視して、陛下がルミアに耳打ちする。

 

「…チャンスですよ?エルミアナ

 

ふぇ!?///」

 

手紙を読んで分かっていましたが…貴女、最近少しずつ距離は縮んでいるようですが、少し遅すぎます

 

お、お母さん!?///」

 

ちなみにいつの世も、殿方とは既成事実に弱いものです。…頑張って

 

ななな、何言って…!?///」

 

「それでは、後は任せました!後、アルタイル!何時でもお義母さんと呼んでもいいですよ!」

 

「それでは2人共、よい一時を」

 

2人共、嵐のように荒らすだけ荒らして、あっという間にいなくなった。

 

「「…」」

 

俺達は何も言えずに、ただ固まるだけ。

そんな中

 

「あ、アイル君…」

 

ルミアがこっちに振り向きながら、声を出す。

 

「ち、勅命!勅命だもんね!頑張るよ!!///」

 

「ルミア!?頭から煙吹いてる!?煙吹いてるから〜!!」

 

俺達の不思議な共同生活は、ルミアの介抱から始まったのだった。

 

 

 

 

「…何か悪いな、ルミア」

 

「うん?どうしたの?」

 

何やかんやで数日たち、初めての2人の休日。

アルタイルは、洗濯物を干すルミアを見ながら、罪悪感を感じていた。

 

「俺の分までやってもらって…。手間かけさせてるなって」

 

「もう。気にしなくていいのに。それに私だって、1人でやらなくちゃいけなかったんだから」

 

フィーベル邸にいる手伝い妖精(ブラウニー)は、フィーベル家の血を継ぐ人間がいないと、召喚出来ない。

つまりルミアでは、召喚できないのだ。

 

「でも確実に負担はかけてる訳だし」

 

「アイル君だって、色々してくれてるでしょ?料理だって当番制。お風呂掃除とか買い出しとかは、やってくれてるし。そういうのは、女1人だと大変だし、助かってるんだよ?」

 

「ならいいけど…ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

どこか納得いってない顔のアルタイルに、苦笑いするルミア。

ふと何か思ったのか、悪戯気な笑顔をアルタイルに向ける。

 

「でも、こうして一緒に暮らしてると…新婚さんみたいだね!」

 

「ッ!?///おま、お前なぁ…!?///」

 

その一言に、アルタイルは驚いたように目を見開き、顔を赤くする。

 

「み、水周りの掃除してくる!///」

 

アルタイルは逃げるように、その場を離れるのだった。

 

 

 

 

「…ッ!///」

 

私はアイル君がいなくなって少しの間、無言で作業をしていたのだが、耐えきれずにシーツを頭から被って蹲る。

 

「バカバカバカバカバカ!!///私ったら調子に乗って、何言ってるの…!?///新婚さんみたいとか!?///」

 

さっきの自分に一言が、頭から離れない。

 

「ダメ!ダメだよ!浮かれちゃダメだよ、ルミア!これは陛下の勅命!勅命なんだから!///」

 

私は何とか深呼吸して、落ち着かせようとしているのだが…落ち着かない。

理由はきっと…さっきのアイル君の顔。

真っ赤にして、慌てて逃げ出したその顔は、決して不快感とかでは無く、照れとかの感じだったと思う。

 

「…期待…していいの…かな?」

 

アイル君も私と、同じ気持ちなのかな?

 

 

 

 

俺は頭を冷ます為、水周りの掃除に没頭していたのだが

 

「没頭しすぎた…もう夕方じゃん」

 

俺は何か飲もうと、キッチンに向かう。

今日は、ルミアの当番だったっけな。

…ん?この匂いは。

 

「シチュー…か?」

 

「あ、アイル君。すごく集中してたね。声掛けてたの、気付いてた?」

 

「え?マジで?全くだった…。ごめん、何か用だった?」

 

「ううん、休憩しないかなって思っただけだから。それよりもう少しかかりそうなの。ごめんね?」

 

「いや、幾らでも待つけどさ…」

 

何だろうな、ただエプロンつけて料理してるだけ。

それだけなのに…妙な色っぽさというか、大人っぽさを感じた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、改めて手馴れてるなぁって…女子って皆そうなのか?」

 

「あ、アハハ…それ、アイル君が言う?」

 

「よく女子力がどうとか言われるけど、俺は仕事だからね。自然とそうなるだけ」

 

まあ、その辺の男よりは、上手い自負はある。

 

「そっかぁ…。プロだもんね。まあ、それはともかく、私は結構、練習してるから。いつかこういう技術が必要な時が来るかも…だしね?」

 

『必要な時が来るかも』…か。

そりゃそうだ、女の子だもん。

いつか好きな奴が出来て、結婚して…。

あぁ、またこの間の光景を思い出す。

先生とルミアとの娘。

きっと、先生と結婚して、色んな料理とか振舞ったりして…。

あぁ、ダメだ。

妙にイライラする、胸がズキズキする。

きっとこれは…

 

「アイル君?どうしたの?顔が怖いよ?」

 

嫉妬、なのだろうな。

見ず知らずの、未来の誰かへの嫉妬。

有り得るかもしれない、グレン先生への嫉妬。

醜いったらありゃしない。

でも俺は…

 

「…手伝う」

 

「へ?でも…」

 

「うるさい。手伝うったら手伝う。何からすればいい?」

 

「え、えっとね…」

 

それだけルミアの事が、大好きなんだよなぁ。

 

 

 

 

 

アイル君、どうしたんだろう?

急に黙り込んだと思ったら、無理やり手伝うって言い出した。

その顔は少し怖い…というより、拗ねてる?

もしかして…

 

嫉妬してくれたのかなぁ…?」

 

「ん?なんか言った?」

 

「う、ううん!何でも!?」

 

もしそうだとしたら、嬉しいな。

そんな浮かれながらやってたせいか。

 

「ルミア!」

 

「キャ!?」

 

突然、アイル君に腕を掴まれた。

ど、どうしたんだろう…?

 

「お前、それ砂糖だぞ!?入れるなら塩だろ!?」

 

「…あ。あぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

あ、危なかった…!?

や、やらかすところだった!?

 

「まったく…また間違えるところだったな」

 

「う、うぅ…///」

 

は、恥ずかしい…!

穴があったら入りたい…!

 

「やれやれ…」

 

そう言いながら、アイル君が私の頭を撫でる。

 

「やっぱりドジだな、お前は」

 

「ッ!!!?///」

 

そう言いながら、笑うアイル君の顔に、今までで1番ドキってする。

鼓動が聞こえる…!アイル君にも聞こえるんじゃ…!?///

 

「それにしても、こうして2人で料理するのも…新婚さんみたいだな」

 

「ッ!!!?///」

 

やめて!今、追い打ちかけないで!///

そう思っていると、アイル君が耳打ちしてくる。

 

「…昼の仕返し♪」

 

あ、もう…。

 

「へ!?ルミア!?ルミア!」

 

アイル君の呼ぶ声が遠く聞こえる。

 

 

 

 

「…ふぅ。もうすぐ終わりか」

 

ぶっ倒れたルミアはすぐに目を覚まし、2人でシチューを美味しく食べた後、こうして沸かした風呂に入っている。

明日くらいには、爺さん達が帰ってくる。

爺さん達はともかく、問題はイヴ先生も明日には帰ってくるところだ。

あの人と会っちゃうのが、1番面倒だ。

それにしても、この生活も終わりか。

名残惜しさを感じていると

 

「…ん?」

 

脱衣所に人の気配…?

疑問に思っていると

 

「お邪魔するね、アイル君」

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!?」

 

ルミアが入ってきた。

水着とかは来てないんだろう、タオルで体を巻いただけの姿。

胸元は隠しきれておらず、谷間が見えており、うなじも、鎖骨も、手足も、全てが色っぽく見えて仕方ない。

 

「な、なんで…!?」

 

「その…背中…流してあげようかなって…」

 

消え入るような声で、とんでもない事を言う。

 

「待て待て待て!!流石にこれはマズイ!!」

 

「でも陛下からの勅命だから…」

 

「だからって言っても…!?」

 

「あの人だよ?」

 

そう言われると、言い返しにくい。

あの人…案外子供っぽいというか、小悪魔っていうか…。

結局押し切られた俺は、そのまま洗ってもらう事になったのだった。

 

 

 

 

 

(私ったら何してるのぉぉぉぉぉぉぉ!!!?///)

 

ふと我に返ったルミアは、自分がやってる事に、動揺を通り超えて、パニック状態だった。

顔は沸騰しそうなくらい熱いし、心臓も壊れたポンプみたいにバクバク言ってる。

 

(いくらなんでもこれは攻めすぎ…!?///)

 

何となく心当たりはあった。

こんな状況でも、中々進まず、悶々としていた。

そんな中よぎったのが、陛下の言葉。

 

(だからってこんなやり方…!?///こんなの襲ってくださいって言ってるのと…アワワワ!!!?///)

 

ルミアとて子供じゃない。

こうなっては、どうされようとも文句は言えない。

それはダメだという理性と、その展開を期待する本能。

そんなせめぎ合いをしていると

 

「…ルミア、悪いけど、痛い」

 

アルタイルの声にハッと反応する。

 

「あ!?ご、ごめんね!?…ッ!?これって…」

 

「ん?…あぁ、悪いな、汚いの見せて」

 

アルタイルの背中には、大小様々な傷があった。

今の法医呪文なら、大抵跡を残す事無く治せる。

現に傷跡の中には、ルミアが治したものもある。

それでも、追いついていないのだ。

 

「まあ、結構無茶してるしな。名誉の負傷…っていうにはカッコつけすぎか。ただ、俺が弱いだけだし」

 

「…そんな事ない」

 

ルミアにはその傷跡の全てが、尊く見えた。

この傷跡は、ほとんどがルミアの為に傷付いたものだ。

それ以外に、こういう風になる理由が、ほとんど無い。

その一つ一つを撫でていく。

 

「…ルミア?」

 

擽ったいのか、アルタイルが身をよじる。

 

「汚くない。だってこれは…アイル君が、私の為に戦って、傷ついたものだよね?そんな背中を…汚いなんて思わないよ。…すごく、カッコイイよ。この背中を弱いなんて思わない。すごく、強い背中だよ」

 

今のルミアに浮ついた感情や邪な感情は無い。

ただあるのは、申し訳なさと…それ以上の嬉しさと愛おしさ。

 

「そ、そうか…」

 

「「…」」

 

急に気恥しさが来た2人は、慌てて空気を払拭しようとする。

 

「そ、そろそろ冷めるな!?」

 

「そ、そうだね!?お湯に浸かろうか!?大丈夫!私はタオル巻いて…あ!?」

 

慌てて立ち上がったルミアが、足を滑らせた。

 

「ルミア!?」

 

慌ててアルタイルが、ルミアの手を掴み抱き寄せた。

 

「あっぶねぇ…!ルミア、大丈夫か?」

 

「う、うん…。でも…」

 

「でも?…あ」

 

慌てて抱き寄せたせいか、巻いていたタオルがはだけており、色んなものが、見え隠れしている。

 

「〜〜〜〜〜ッ!?///」

 

赤くなってルミアが固まる。

アルタイルも下手に動けない。

 

「「…」」

 

お互い、固まったまま動かない。

お互い、風呂以外の熱さで顔が赤くなる。

2人の目が、明らかに胡乱になっていく。

 

「…ルミア…」

 

「アイル君…」

 

ルミアがアルタイルの首に、腕を絡ませ。

アルタイルがルミアの体を、抱き寄せる。

2人の距離が縮まっていき…ついにゼロになる、その直前

 

「兄様!ただいま戻りました!」

 

「「ッ!!!!!?」」

 

 

 

 

 

熱に浮かされるままだった思考が、一気に覚める。

まずい…ベガが帰ってきた!?

早すぎんだろ!!!

 

「ルミア!?着替えは!?」

 

「か、隠してあるよ!」

 

「だったら…!」

 

「う、うん!」

 

ルミアが潜水用の呪文を唱えて、湯船に沈む。

その直後に、俺は顔だけ出す。

 

「兄様!お風呂ですか?」

 

「ああ、悪いな。シャワーの音で気付かなかった。おかえり」

 

「はい!お土産、楽しみにして下さいね!」

 

「おう!ありがとうな。ほら手洗って、着替えておいで」

 

「はい!」

 

元気に返事をして、出ていったベガと入れ替わるように入ってきたのは、爺さん達だった。

 

「おかえり、2人共」

 

「ただいま、アルタイル。…まぁ」

 

ん?何に驚いてるんだ?

…何か…嫌な予感が…。

 

「こっちで誤魔化しておくわ。…若いわね、2人共」

 

「…お前達は子供である事を忘れるな。それだけだ」

 

そう言って2人も出ていく。

もしかして…!?

 

「気付かれてた…!!!?///」

 

俺は床で悶え苦しむ以外、出来なかったのだった。

 

「…何してるのよ、アルタイル」

 

 

 

「…あれ?私…」

 

「お、気付いたか」

 

ルミアをおぶって、フィーベル邸に向かう道中、潜っている間にのぼせて気を失っていたルミアが、目を覚ました。

 

「あ〜…先に言っとく。爺さん達には気づかれた。というか、ルミアがうちにいる事、知ってたらしい。着替えも、婆さんがやってくれた」

 

「そ、そうだったんだ…///」

 

「何でもアルフォネア教授が、マッハで仕事を終わらせて神鳳を召喚、その帰りに先生達とうちの連中を、拾ってきたらしいよ」

 

「だから速かったんだ…」

 

イヴ先生の事は、あえて言う必要はあるまい。

 

「システィーナ達への言い訳も、婆さんが考えてあるから、よろしく」

 

「うん…」

 

「「…」」

 

俺達は無言で歩く。

お互い、風呂の事が頭から離れないのだろう。

 

「アイル君…今日は、疲れちゃった」

 

「…そうか」

 

「もう少し…もう少し…このままでいい?」

 

「…いいぞ」

 

「ねぇ、アイル君。…私ね…アイ…ル…」

 

「…寝ちゃったか…」

 

最後の方は、何言ってるか分からなかった。

でも、今はこれでいい。

きっといいんだろう。

お互いゆっくり、しっかり、育んでいこう。

ただ、今は…今だけは、蓋をしないでおこう。

 

「…大好きだよ、ルミア」

 

俺の呟きが、フィジテの夜風に流れる。

冷たいはずのそれは、とても心地よい暖かさだった。




おまけ

「お、おはよう!アイル君!」

「おはよう、ルミア」

「「…ッ!///」」

(この2人…間違いない)

(俺達がいない間に…)

((何かあった!!!))

「ん?皆…どうしたの?」
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