キノコの独特な食感が苦手です。
それではよろしくお願いします。
これは何でもない平和な日常。
彼らの思い出、
ここはとある山の登山口。
どこなのかは、目隠しされていたので分からない。
先生曰く、【ゴルデンピルツ】が自生している秘密の山らしい。
そんな不思議な山に来た理由はもちろん金目的。
「そうに決まってんだろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「清々しいまでに現金ですね!!!?」
懇意にしている素材屋に来た依頼の代行らしく、分け前を貰えるのだとか。
相変わらずのグレン先生とシスティーナの漫才が、繰り広げられている。
「『この・おばかァァァァァァ』!!」
ああ、お約束のオチである、【ゲイル・ブロウ】が炸裂。
今回もチャンチャンって事だな。
「はぁ…!はぁ…!アイツってきたら…!」
「まあまあ、先生もこの日のために、ちゃんと授業進めてくれた訳だし…」
「それでもやる事が本末転倒なのよ!」
「…ん。キノコ狩り…楽しみ」
「相変わらずリィエルは、マイペースだな…」
ルミアの援護も、システィーナを止めるには至らず。
相変わらず無表情のリィエルは、若干楽しげだ。
「ったく…俺が何したってんだ、白猫?」
「自分の胸に手を当てて、よく考えなさい!私達にまず言うべき事があるでしょう!?」
戻ってきたボロボロの先生に、システィーナが、ツッコミが炸裂。
しばらく真剣な顔で考えた先生の一言が
「ルミア、お前のトレッキングウェア、似合ってるぞ」
「あ、ありがとうございます…」
「ふーざーけーるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
当然ブチ切れたシスティーナが、とても鮮やかなコブラツイストを決める。
「ぎゃあああああああああ!!!」
さてと…そろそろ止めるか。
「システィーナ、そこまでだ。先生が金欠なのは、お前を含む幾人かの生徒が、無理言ったからだろ?」
「グッ…それは…」
そう、何も今回金欠なのは、先生のだらしなさ故…というだけでは無い。
実は俺達のクラスの生徒が、どうしてもやりたいと言った実験があり、それに必要な触媒を自腹で買ったので、先生が金欠状態なのだ。
今回俺が何も言わないのは、そういう事情込みだからだ。
結局痛いところを突かれたシスティーナは、今回だけは目を瞑る事にしたらしい。
「で?今回は同行者もいるんですよね?」
「ああ、話した素材屋に依頼した本人だ。お前ら…特にリィエル。粗相の無いように」
「ん。分かった。…そそうってなに?」
「とにかくリィエルは、大人しくしてろ」
そうこうしてると、噂をしたら何とやら。
人がやってくる。
俺達と同じくトレッキングスタイルのその人は、ある意味よく知る人だった。
「…は、ハー何とか先輩ぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
「…グ、グレン=レーダスゥゥゥゥゥゥゥ!!!?」
「…なぁんか、やばい事になる気が…」
「「…」」
「くっそ気まずいんだけど…」
「アハハ…どうしようね…」
さっきからシスティーナも何とかしようとしてるが、お互いに…というか、ハーレイ先生が目の敵にしてるせいで、取り付け島もないって感じなのだ。
さてと、どうしたものか…。
「金欠で生徒を巻き込むなど…貴様は魔術師の恥さらしだ!恥を知れ!」
「最近、研究室の資金のやり繰りに困ってるらしいじゃないっすかぁ!」
「「ぐぬぬぬぬぬ…!」」
何、いがみ合ってんだよ…。
早速雲行きが怪しいぞ…。
こうして、いがみ合いがエスカレート。
その結果、何故かキノコ狩り勝負が始まったのだった。
「よし!ミッション開始の前に、ゴルデンピルツの復習だ!アルタイル!説明してみろ!」
「俺かよ…」
ゴルデンピルツとは、その名の通り、黄金色のキノコである。
非常にレアな魔術素材であり、当然その希少価値も高い。
その価値は、同体積の黄金に匹敵するとか。
本来なら今は、時期じゃないので手に入らないはずだが、ここは特別らしい。
そして、同時に高級食材でもあり、世界七大珍味の1つでもある。
ルコの樹の根元に低確率で、日光を嫌い隠れるように1本だけ生えている。
ちなみに似たキノコで、【ブラスルーム】という毒キノコが生えたいる。
見分け方は、笠の形状、ひだの数、柄の太さ、ツボの匂いetc…。
俺はすぐそばにあったルコの樹の根元をあさり、早速1本見つける。
「…ですかね?」
「パーフェクトだ。ここまで詳しいとはな」
「食材として知ってただけです。ちなみにこれは本物ッスよね?」
「正解」
俺は腰についてる籠に放り込む。
リィエルは判別出来ない為、適当に集めてから俺達で仕分ける事に。
こうして仁義なきキノコ狩りが、幕を開けた。
そんなこんなで
「あった!5本目!」
「私も5本目!」
「俺7本目」
「「ええ!?」」
ブツブツ文句言ってたシスティーナだったが、何やかんやで、始めたら結構楽しいらしい。
いつの間にか俺達も勝負をしていた。
ちなみに俺達は1番少ない奴が、飯を奢る事。
場所は当店、【サザンクロス】。
そんな平和的で楽しい勝負だ。
「クックック…この戦いは根気の戦い。如何に多くのルコの樹を探せるかが鍵。頭数で勝る俺達が有利!」
「それはどうかな!グレン=レーダス!」
悪い顔をするグレン先生を、不敵な笑みで迎え撃つハーレイ先生。
そんなハーレイ先生の足元には、四足歩行の生き物…ていうか、豚。
「それって…まさか、ピルツ豚?」
「その通りだ!エステレラ!私には腕利きの豚匠の友人がいてな!ソイツが訓練した豚の真の名を掌握させて貰っており、ここに召喚したのだ!」
「うわぁ!ズリィ!!反則だろ!!」
「これが私とお前の魔術師としての格の差だ!」
「それただのコネだろ」
思わずツッコミを入れてしまう俺。
しかしこうなると、頭数の差などを無いに等しい。
ん?奥からリィエルが…って!?
「ちょっと待て!なんだあの量!?」
「ん?…リィエル!?おま!?何だこれ!?」
俺と先生が大騒ぎしてるのを見て、ルミア達も駆け寄ってくる。
「すごい!どうやってこんなに見つけたの!?」
「ん?…勘」
流石野生児…というか、野生の化身リィエル。
こういうのはお手の物。
「でも先生、リィエルは判別がつかないから」
「おおっと、忘れてたぜ」
俺達はすぐに仕分け作業に入る。
しかし…
「これは違う」
「これもです」
「また違う」
「これも」
「…まただ」
「…またですね」
そして、全部の仕分け作業が終了した結果…
「なんで!
「「「…」」」
最早、何も言えない俺達。
驚きの確率である。
「…そっかぁ。リィエルの勘って、危機感知の方での勘だからなぁ…。安全なのには、使えないのかぁ…」
思わず、冗談のような理屈しか思いつかない俺は、呆然と呟くしか出来なかった。
足元で何か割れる。
「ん?これは…【シィルの実】?」
「…おい、お前達、それも集めとけ」
「「え?」」
「…まさか」
「そのまさかだ」
このシィルの実は、豚の大好物。
つまり
「貴様ァァァ!!一服もったなァァァァァァァ!!」
「いやだなぁ〜!
「そんな悪意100%な
「「弁明の余地なし」」
「アハハ…」
俺とシスティーナが、バッサリと切り捨てる。
その後も泥沼の戦いが続く。
ハーレイ先生が、群生地体に断絶結界を張ったり。
グレン先生が【
怒ったハーレイ先生が、籠ごとグレン先生の集めたゴルデンピルツを焼いたり。
そんな泥沼の中、ついに夜に突入。
しかも運が悪いことに
「迷った」
先生が一言言い切った。
そう、地図が無くなった俺達はすっかり迷ってしまったのだ。
ハーレイ先生が燃やしたグレン先生の籠の中に、地図が入ってたのだが、それは焼失。
俺も地図があるからと、糸を括りつけておらず、大分困った状況なのだ。
しかしこの後に及んで、言い争う2人。
「あぁぁぁ!!もう!!いい加減にしろ!!!」
俺はついに我慢の限界に来た。
こんな時に…本当に魔術師って奴らは…!
俺の怒鳴り声を聞いて、2人が初めて俺達を見る。
俺の後ろでは、頭抱えて、蹲るシスティーナ。
そんなシスティーナを励まそうとするルミアと、リィエル。
そんな2人にも、明らかに不安の表情。
かく言う俺も、少し不安だ。
「…まあ、その、なんすか。一時休戦しませんか?先輩。…教師として」
「ふん。仕方あるまい。…不本意ではあるがな」
そう言って森の奥に向かう2人を、俺は慌てて止める。
「ちょっと。どこ行くんですか?」
「決まってんだろ?この森の結界を突破する為に、ちょっと解析してくるんだよ」
解析って…!?
「ここの森の結界は、一種の【
「出来るか出来ないかじゃねぇよ。やるんだよ」
「ふん、足手まとい共はそこで待ってろ」
そのまま森の奥へと消えていく2人。
「…大丈夫かよ…?」
俺達は不安げに2人の背中を、見つめていた。
結論から言えば、この2人、何時ものいがみ合いが嘘のような、快進撃だ。
喧嘩してないか様子を見にした俺達は、その背中を呆然と見つめていた。
「…と、言う訳だ。ほら行くぞ。今俺達が話してた通り、元々の目的地に着けば、登山口に繋がる出口も直ぐに見つかる。分かったか?」
「「「いや、全く」」」
そんなツッコミを入れつつも、着いて行くしかない俺達がたどり着いたのは
「何これぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
一面ルコの樹が、群生した地帯だった。
チラリと見えるゴルデンピルツに月明かりが反射して、まるで地上に煌めく星のように、キラキラ輝いている。
俺達は早速採取を始める。
黙々と採取していると
「アイル、行くわよ」
突然システィーナに声をかけられる。
「は?行くって…何してんのあの2人」
俺は思わずシスティーナの後ろに広がる光景に、ジト目を向ける。
「また始まったのよ。しかも今回は派手よ」
「仕方ねぇ…」
俺は多少雑に、ゴルデンピルツを回収する。
そして俺達は、馬鹿な大人2人を見捨てて、撤退するのだった。
「結局、あの後どうなったの?」
「あの辺一帯がダメになったらしいぞ。半分位はおじゃんだって」
俺は相変わらずいがみ合ってる、グレン先生とハーレイ先生を流し見ながら答える。
「え?半分くらい?残り半分は?」
「俺が集めてたじゃん」
「「…えぇ!?」」
あの時俺は着いてすぐに、マリオネットを大量に放ち、物量戦で大量に集めていたのだ。
その内の3分の1程は、売って金にした。
おかげで、かなり潤いました。
「2人には秘密な?」
「…漁夫の利ってやつね」
「そういう事。それと、勝負も俺の勝ちな」
「「…あ」」
どっちが多かったのかな〜?
「…私7本。ルミアは?」
「…8本!」
「負けたァァァァァァ!!」
「システィーナさん!ゴチになります!」
「システィ、ごちそうさま!」
3分の2は、店と俺達家族で食べるようにキープ。
その内数本は、オーウェル先生にお願いして、栽培出来るような魔導道具を作って貰った。
こうして俺の懐は、潤ってきているのだった。
ちなみにシスティーナには、うちで1番高い飯を奢らせたのだった。
おまけ
「ゴ、ゴルデンピルツのフルコースと、ノーブルリストネアですって…!?」
「ほら、これでも破格の安さだぞ」
「きゃあああああああ!!!?」
「システィのお小遣い、何ヶ月分かなぁ…」