リアルが忙しくて…。
それではよろしくお願いします。
これは何でもない平和な日常。
彼らの思い出、
「いた!アルフォネア教授!」
「うん?アルタイルに、ルミアか。どうした?」
「実は私達、教授に相談が…」
今日は、【瑠璃輝晶】という結晶を作る実験。
この実験必修なのだが、この西校舎に一晩泊まり込みで、経過を観察しなくてはいけないのだ。
しかし不幸な事に、この日フィジテは記録的嵐を観測。
しかし今の俺達には、それすらスパイス。
「…首なし騎士が立ってたんだってよ!!!」
「「「「「キャアァァァァァァァァ!!!」」」」」
「【首なし騎士】ねぇ…」
俺は経過をメモしながら、聞き流す。
首なし騎士の話は、帝国の人間なら、誰でも知ってるだろう。
簡単に言えば、子供に『悪い事をしてはいけません』、っていう事を教える為の話だ。
「下らねぇ…。そんなの作り話だろ?魔術的に幾らでも再現可能だ」
そうして始まる先生の真相解明。
なるほど…怖いんだな。
「そんな事言って〜!先生、実は怖いんじゃないですか〜?」
「はぁ!?何言ってやがる!?俺が現役軍人の時なんてなぁ!」
システィも煽ってるけど、お前だって…。
あれ?システィ、平気そうだな。
というか先生、滅茶苦茶早口だな…。
「あ!今、外に首なし騎士が!」
その瞬間、先生が動いた。
風のように速く、水のように滑らかに。
俺の後ろに隠れ、システィが指さした方に俺の体を向けやがった。
「…」
「「「「「「「「…」」」」」」」」
誰もが沈黙する中、ただ1人グレン先生は、得意げに笑いながら立ち上がり、優雅に椅子に座り直す。
「今のは、奇襲を受けた時の冷静かつ的確な行動を、お前らに教えてやったのさ」
「それが辞世の句でいいな?今から首なし教師にしてやるよ」
「「「「「「「「「落ち着けーーーーー!!!」」」」」」」」」
そんなこんなで夜も更けて
「「ねみぃ…」」
「2人共!しっかりしなさいよ!」
そうは言ってもだなぁ…。
「昼間に仮眠したお前達と違って、俺は先生の用意の手伝いで、寝てないんだよ」
俺は欠伸を、噛み殺せずにいた。
しかし、そろそろ寝てる暇はない。
これからの事を考えていると、バサりと何が落ちる音がした。
振り返ると、先生が窓にしがみついて、外を凝視している。
「…どうしたんですか?」
「いや…何も…」
そんな顔真っ青で言われても…
キャアァァァァァァァァ!!!
ウワアァァァァァァァァ!!!
「「「「「ッ!」」」」」
俺達は悲鳴が聞こえた方に走り出す。
これは…錬金実験室からだな!
「なんだよ…これ…!?」
俺達が実験室に飛び込むと、照明は消えており、窓は開けっ放しで外の雨が入ってきている。
俺は部屋を見渡して、隅にカッシュとウィンディを見つけた。
「2人共!何があった!?」
「お前達、大丈夫か!?」
2人は震えた声で、俺達に教えてくれた。
「先生…アイル…!」
「で、出たんですの…!」
「「く、首なし騎士が…!!!」」
恐怖の夜が幕を開けた。
「さて、状況確認からだな」
場所を変えて、ここは西校舎の談話室。
「嵐の夜に徘徊する首なし騎士、たしか…子供を誘拐するんだよな」
「うん、皆散り散りに逃げちゃったみたいだし…!皆を早く探さないと…!」
なんだけど…。
「先生、マジでどうした?」
「どうしたんだろうね?」
何時もなら、いくら怖くてもこういう時、率先して動くのだが、今はその影も形も無い。
「とにかく!各仮眠場所を回って、皆を集める!」
「よし!お前達は回収!俺はここに残る!いいな?」
「「はい!…はい?」」
今何か、おかしいような…!
「『あんたが動け』!」
「『先生が・動かないで・どうするんですか』!!」
「「ギャアァァァァァァァァ!!!」」
「1人は流石に心細いな…」
俺達は、先生·システィ·リィエルの3人と、俺1人の2班に分けて行動を開始した。
先生が駄々こねたから、こうなったのだ。
さて…皆大丈夫かな?
キャアァァァァァァァァ!!!
「ッ!クソ!」
俺は悲鳴の方へ走り出す。
中には、リンとテレサがいた。
「2人共!大丈夫か!?」
「アイル…!アイル!」
「怖かったよぉ…」
泣きじゃくっている2人が、俺にしがみつく。
「ここにはたしか…ベラとキャシーは?」
俺は2人の背中を擦りながら、あと2人いるはずの人物について尋ねる。
「…2人共…首なし騎士に…!」
マジかよ…!
俺は2人を立たせて、ゆっくりと話す。
「今、カッシュとウィンディとルミアが、談話室にいる。今から一緒にそこに行こう」
そう言って、ドアに手をかけた瞬間
「な!?【リスト・リクション】!?」
条件起動式か!?
ていうか、何で!?
そう油断した隙に、後ろから聞こえる音。
「これ…は…【スリープ…サウ…ンド】…」
最後に見たのは、泣きそうなリンと、申し訳無さそうなテレサだった。
アルタイルと連絡がとれなくなって、30分くらいたった。
白猫達がいなくなって、10分くらいたった。
フラフラと談話室に戻ってきても、誰もいなかった。
「だあぁぁぁぁぁ!!どうすんだよ!?マジで全員攫われたのかよ!」
昔からお化けとかが苦手だが、首なし騎士だけは本当にダメだった。
隠しようもない恐怖が俺を襲い、震えと過呼吸が止まらない。
そんな俺に追い討ちをかけるように
ガシャン!ガシャン!
「ッ!?まさか…!?」
金属音が近付いてくる。
ドアの前まで来て、ゆっくり現れたのは。
「〜〜〜〜〜っ!!!」
首なし騎士だった。
みっともなく叫ぶと思った。
しかし、俺の口から出てきたのは意外な言葉だった。
「おい。俺の生徒達はどこへやった?」
不思議と呼吸が落ち着き、震えが止まる。
代わりに俺の胸に灯る、使命感と闘志。
俺は自然と拳闘の構えを取りながら、睨みつける。
「アイツらは、俺が守る。刺し違えてでも…取り返すぞ!!」
この熱に任せて、俺は決死の突撃を試みた。
その瞬間
「わ〜!!ストップストップ!!!」
突然部屋の照明がつき、白猫が割り込んでくる。
「…は?」
ぞろぞろと入ってくる生徒達…いや、アルタイルだけは、眠そうだな。
そんな光景に唖然としている俺に向けて、カッシュが見せてきたのは
『ドッキリ大成功!!!』
と書かれたフリップだった。
「お前らふざけんなーーーー!!!」
そう今回のこの騒ぎ、平和ボケしてる先生に仕掛けた、
ただ俺とルミアは知らされておらず
「もう!みんな酷いよ!」
「まったくだ。こんな面白い事、コソコソやるなんてな」
「ごめんあそばせ、ルミア。面白くなってしまって」
「アイルを巻き込むと、ドッキリじゃ済まないからなぁ…」
ルミアは嘘がつけないから、俺は度を越すから外されたらしい。
まったく…酷い奴らだ。
「それはそうと、先生どうしてそんなに苦手なんですか?」
「あぁ…それは…
「「「「「…え?」」」」」
…ほう?何やら雲行きが…?
「あの外にいた首なし騎士もお前らだったんだろ?ったく…凝ったマネしやがって…」
ドッキリ仕掛けた組が、ざわつき出した。
先生はずっとそこにいる首なし騎士を小突く。
「ていうか、まだいんのかよ。どうせ中身はリィエルだろ?ほら、とっとと脱げよ」
…反応無し。
「ん。みんなごめん。鎧着れなくて、遅くなった」
…リィエル?
どこから現れた?
「「「「「「「…」」」」」」」
「…えーと…どちら様?」
先生が俺達を見るが、俺達は首を振る。
そんな奴…皆知らない。
先生が中身を覗き込んで…
「げ」
その中身には断面があった。
それを認識した途端、照明が消える。
そして首なし騎士が青い炎を灯し、周囲の温度が、下がり出す。
そして…俺達に向かって動き出す。
「「「「「「「「「ギャアァァァァァァァァァ!!!」」」」」」」」」
皆逃げ出した…俺とルミアを除いて。
「…テッテレー」
俺の手には
『ドッキリ大成功!!!』
そう書いたフリップがある。
つまり…
「やったね!アイル君!」
「バッチリだったな!ルミア!…あ、もう大丈夫ですよ?…アルフォネア教授」
〖そうだな〗
首なし騎士の姿が揺れだして…アルフォネア教授に変わる。
「お前達も大胆だな。まさか、アイツらのドッキリを利用して、やり返すなんてな」
このドッキリ企画を知らなかったと言ったな。
あれは…
少し前に遡る。
俺はたまたまカッシュ達が、ドッキリを企画してる事を聞いた。
その時、俺とルミアが仲間外れされており、なんか癪だったので、俺達でやり返す方法を考えたのだ。
それが、今日の当直担当のアルフォネア教授に手伝ってもらい、要所要所で、首なし騎士に化けてもらう事だった。
ここで必要になるのが、俺達以外の第三者の目撃者の存在。
そこは都合よく、グレン先生がターゲットだった為、利用させてもらう。
後は、大詰めの際、あちらが用意した首なし騎士より先に、来てしまえばいい。
ちなみに先生が目撃した首なし騎士は、アルフォネア教授だ。
「くぁ…。さて、私はもう寝るが、お前達…ハメは外すなよ?」
「「外しません!///」」
そうからかって出ていくアルフォネア教授を見送り、俺達は談話室にあるソファーに、座り込む。
そんな時、ルミアがポツっと聞いてくる。
「…ねぇ、アイル君。もし私が連れ去られたらどうする?」
「取り返す」
なに分かりきった事を言うんだよ。
「何処にいるか分からないんだよ?」
「見つけるまで探す。それにな…」
俺はルミアの手の小指に、【アリアドネ】を巻き付ける。
「俺達の赤い糸は、絶対に切れない」
「ッ!…ありがとう!」
後に、俺の糸が本当に、俺達の絆を繋ぎ止める事を、まだ俺は知らなかった。
ルミアの不安そうな顔が、明るくなる。
安心感と共に、眠気がやってくる。
「…眠い。リンのやつ、加減しろよな…」
「寝ちゃおっか」
「だな…」
「「おやすみ」」
俺達は寄り添いあって、毛布をかけて眠りにつく。
いつの間にか握りあっているその手は、所謂恋人繋ぎで握られていた。
おまけ
「クソ…途中で気づいて戻ってきたら…」
「なんて…入りにくいのよ…!?」
「これで付き合ってないとか…」
「「「「「「「「「「「「「「「ありえない!」」」」」」」」」」」」」」」