ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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お久しぶりです。
やっと仕事が一区切りです。
よろしくお願いします。


遠征学習編2話

「あ〜あ、どうせならカンターレの軍事魔導研究所が良かったぜ」

 

「僕も他のところが良かったよ」

 

俺達は馬車に揺られながら港まで目指していた。

カッシュとセシルは不満そうにしている。

俺はというと、特に何も言わずただ外を見ていた。

 

「フッ…お前らは間違えなく幸運だ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

突然何言い出すんだこの人。

カンターレには行きたくないし別にいいんだが。

 

「白金魔導研究所はどこにある?」

 

「…は!?ビーチリゾートとして有名なサイネリア島!」

 

「そう!1年を通して温暖な気候なあそこは、多少早いが充分に海水浴が可能だ!」

 

「「「「「か、海水浴!!」」」」」

 

「そして!うちの女子は総じてレベルが高い!!…後は分かるな?黙って俺についてこーい!」

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

 

「うるさ…」

 

本当にテンション高いなこいつら。

こんな所でそんな話したら…ほら見ろ。

女子が絶対零度の視線を送ってるぞ。

 

「…アルタイル」

 

「見るなギイブル。見たら巻き込まれるぞ」

 

俺とギイブルは静かにそれぞれの事に没頭した。

お互い冷や汗ダラダラなのは、見ぬ振りをした。

 

 

アイル君…」

 

この間から様子が変。

いつの間にか居なくなったり、ボンヤリしたり、まるでいつの間にか消えてしまいそうな。

そんな不安に駆られる。

 

「ルミア?…アイルが心配?」

 

「システィ…うん。この間から様子が変だし…」

 

「そうね。確かに心配ね」

 

システィも気づいてたみたい。

 

「遠征学習で元気出してくれるといいんだけど…」

 

「そうね…。案外ルミアの水着姿見たら元気になるかもね!」

 

「し、システィ!!///」

 

何言い出すの!

 

「あれだけ真剣に選んだんだし大丈夫よ!!」

 

「〜〜〜ッ!!///システィ!!!///」

 

 

 

「お嬢ちゃんたち!可愛いからこの特別品とかどうだい!?」

 

…何やってんだあいつ。

 

「そういう怪しいもんを、うちの生徒に売りつけないでくれますかね?ほれ行った行った」

 

俺は女生徒たちをさっさと別の場所に追いやると

 

「…アルベルトがいるってことは、やっぱリィエルは当て馬か」

 

「…ああ。本命は俺の遠距離からの護衛だ」

 

やっぱりな。

こいつ程の奴が補佐な訳が無い。

 

「で?そんなお前が俺に、わざわざ接触してきた理由はなんだ?」

 

「…リィエルに気をつけろ。あの女は危険だ」

 

はぁ?何言ってんだこいつ。

 

「笑えねぇ冗談だな」

 

「知ってるはずだ。俺とお前だけは」

 

それは…そうだが…。

 

「…あれはもう昔の事だ」

 

「相変わらず甘いな。警告はしたぞ。…それとエステレラの様子は?」

 

…こいつもかなり気にしてたんだな…。

 

「だいぶヤバい。今は何とか普段通りを保ってはいるが、かなりメンタルはやられてる。これ以上何かあったら…壊れる」

 

「…そうか。グレン。本当に済まない。エステレラを頼む」

 

そう言ってアルベルトは去っていく。

その背中はいつもの凛々しさと少しの後悔があるように見えた。

 

「…んな事はわあってるよ」

 

俺もそうしたいのだが、気づくといなくなっているのだ。

そして集合時間には、またふらっと現れる。

まるで亡霊だ。

そこにいる筈なのに、いないように思えてくる。

このままいなくなるのでは…

 

「馬鹿野郎!しっかりしろグレン=レーダス!」

 

俺がしっかりしないと。

あいつの行き着く先は、地獄だぞ。

 

「絶対に救ってみせる」

 

そう決意を新たに俺は集合地点へと足を進めた。

 

 

「ここがサイネリア島…」

 

船に乗り、無事島へたどり着いた俺達は、船の上で街を見ていた。

フィジテとは違った趣のある街に俺は少しワクワクしていた。

そんな気持ちを

 

「うおえぇぇぇぇ…」

 

「台無しだよ。ロクデナシ講師」

 

グレン先生の船酔いが全てを攫って行った。

 

「もう、苦手なら他の場所にすれば良かったのに」

 

システィーナも同意見らしい。

少し眉間に皺を寄せながら言う。

 

「フッ…美少女達の水着はあらゆるものに優先する。決まっているだろ?たとえここが戦場のど真ん中だったとしても俺はここを選んださ」

 

うわ、キメ顔でめっちゃ下らんこと言ってる。

 

「「「「「先生!一生ついて行きます!」」」」」

 

アホか、この人。

…アホだったわこの人。

 

「…私達を軍用魔術から遠ざけたいから。だからここなんですよね?」

 

ルミアよ、この人そんな殊勝なこと考えてるかな〜?

まあ、この人なら考えそうではあるか。

 

「そんなんじゃねーし。俺はただ水着姿を拝みたかっただけだし」

 

「うわ、嘘ヘッタクソ」

 

「嘘じゃねえよ!」

 

つい本音が出てしまったら、聞かれた。

 

 

「やっほ〜!システィもリィエルも速くおいでよ〜!」

 

「今行く〜!リィエル!一緒に遊びましょ!」

 

「うん」

 

なるほど、これは確かに絶景だ。

分かったから男子諸君。

泣くほど喜ぶな、キモイぞ。

 

「だから最初に言ったろ?『黙って俺に着いてこい』って!夜までは自由時間だ!好きなだけ遊んでこい!」

 

「「「「「はい!!イヤッフーーー!!」」」」」

 

「お前達は行かなくていいのか?」

 

先生は木陰にいる俺とギイブルに聞く。

 

「僕達は遊びに来てる訳ではないんですよ?」

 

「とはいえ、制服姿はさすがに暑くね?せめて水着にぐらいは着替えたら?どうせ持ってんだろ?」

 

「そういう君こそこういう時は、率先して楽しむ方じゃないか。水着にまで着替えて、ここにいるのかい?」

 

おっと、そこをつかれると痛い。

確かに念の為って事で着替えてはいるが、そういう気分では無いのだ。

 

「今はそういう気分じゃねぇの」

 

「お前達は…」

 

先生、そこでこいつと一括りにするなよ。

あんたならわかってんだろ。

 

「先生!アイル君!どうです?似合ってる?」

 

ルミア達3人組が俺達に感想を求めてくる。

 

「おおー!ちょー似合ってる!すげー可愛い!」

 

珍しい、先生が素直に褒めるなんて。

 

「ありがとうございます!アイル君的にはどう?」

 

「よく似合ってる。ルミアの活発さと可愛さにベストマッチって感じ。可愛いよ」

 

「ッ!あ、ありがとう…!///あ、アイル君も似合ってるよ!髪結ってるんだね!」

 

「ありがとう。まあ、暑いから鬱陶しいし。それより何で赤くなってる?熱中症か?ちゃんと水分と休憩は取れよ?」

 

「う、うん!大丈夫だよ!ありがとうね!」

 

なんか納得いかないが、本人が大丈夫って言うなら、それ以上は追求しない。

 

「アイル…あんたって本当にそういう所、天然ね」

 

「どういう意味だよシスティーナ。後システィーナも似合ってる。高貴な感じっていうか、エレガントさがする」

 

「確かにな!白猫、お前も中々センスいいじゃねぇか!眼福眼福」

 

だから先生にしては本当に素直に褒めるのな。

さては浮かれてる?

 

「あ、ありがとう…///ていうかジロジロ見ないでよ!///」

 

ウンウン、と1人頷く先生。

ん?リィエルが先生の前に立って…。

ああ、そういう事。

 

ルミア…あれって…

 

うん。そういう事だと思う…

 

先生はどう返すか…?

 

俺達3人は動向を見守る。

 

「どうしたリィエル?」

 

「…何にもない…」

 

「「「あちゃ〜…それはダメ」」」

 

思わず、俺達は同じ感想を抱いてしまう。

いくらなんでもそれはダメだろ。

流れで察しろよ。

 

「何やってんだお前らは?ていうか、お前ら向こうで遊んでたんじゃなかったのか?」

 

「ビーチバレーしようって話になって…それで先生達を誘いに来たんです」

 

「先生もどうです?アイル君とギイブル君も!」

 

「僕は控えさせてもらうよ」

 

ビーチバレーか。

正直気分は乗らないが、これ以上先生に心配かけるのもな。

 

「なら俺は付き合うかね。先生は?」

 

「ビーチバレーか〜?でもお肌焼けちゃうし〜…」

 

 

「しゃあ!こいオラァ!!どうした!」

 

「いや!1番ノリノリ!?てか暑苦しいわ!!」

 

「そして何故僕は巻き込まれてるんだ!?」

 

数分前のノリはどうした!?この人?

本当に面倒な人だなこの人!!

後ギイブル、諦めろ。

俺達に目をつけられたからだ。

 

「覚悟!アルタイル=エステレラ!!」

 

ロッドからいきなりボールで襲われる俺。

 

「なんのだよ!?」

 

意味がわからないまま、とりあえず先生の打点めがけてレシーブする。

 

「お前、去年から先輩達に人気だったくせに!今年からは後輩からも人気出てやがるし!更にいつもルミアちゃん達と一緒じゃねぇか!」

 

「「「「「「この妬み、ここで晴らさでおくべきか!」」」」」」

 

知るか!そんなもん!

それとは別にその話初耳なんだが!?

 

「知らねぇよ!そんなもん!勝手にどこぞで晴らしてろ!後、ロッド!その話、後で詳しく!!」

 

「アイル君?」

 

…何故だろう?

このビーチで寒いぞ?

俺達はそんなこんなで順調に勝ち進み、決勝戦に突入した。

 

「さて、最後の難敵だな」

 

「そうですね、運動神経バツグンのカッシュに、脳筋リィエル、そして遠隔系の白魔術が得意のテレサですからね」

 

「何よりあいつがスパイク打つ時、全員の動きが止まるような気がするんだが?アレは精神攻撃なのか?もしくは時間操作系なのか?」

 

「それはみんな、テレサのある一部分を見るのに集中してたからだろ…」

 

全く…俺も男だし、気持ちは分かる。

分かるけどガン見しすぎだろう。

もっと配慮しなよ全く。

俺はそう思いながら、上着を脱ぐとそのままテレサの肩にかけた。

 

「テレサ、やるなら貸すからこれ着たら?思春期男子には、少し刺激が強すぎるからな」

 

出来るだけ、下心を与えないように接客モードで対応する。

 

「ッ!///え、えぇ…借りるわ…ありがとう、アルタイル///それに…凄い筋肉ね…カッコイイ///」

 

「ありがとう。テレサもよく似合ってる。綺麗だ」

 

素直に借りてくれて、とりあえずほっとする。

何故かテレサは真っ赤だか。

そんな事をしてると複数の視線を感じる。

何事かと振り返ると、グレン先生を含めた男子諸君に睨まれていた。

カッシュが何やら呟く。

 

「なるほど…こうやって女子をオトすのか」

 

いや、何の話だよ。

何で頷いてるんだよ。

当たり前の配慮だろが。

 

「る、ルミア?落ち着いて?顔が怖いわよ?」

 

「大丈夫だよ?システィ。私はオチツイテルヨ」

 

「「「「ルミア!?お願いだから落ち着いて!?」」」」

 

何やら女性陣は女性陣で大モメしてる。

ところで何時になったら始めるんだよ、決勝戦。

 

 

「さあ!キリキリ吐いてもいますわよルミア!ズバリ!アルタイルとはどういう関係ですの!?」

 

夜なり、ご飯お風呂も済ませてもう寝るだけ。

なのにウィンディがすごく、熱くなってる。

後ろから炎が見えるくらい、熱くなってる。

 

「確かに私も気になるわ?教えてルミア」

 

テレサまで何言ってるの?

それより私が気になるのは…

 

「その前にテレサはその上着、いつまで持ってるの?私から返しておこうか?」

 

テレサがいつまでも、アイル君の上着を抱えてる事。

速く返さないとアイル君が困るもの。

 

「いいえ、私が借りたんですもの。私が責任持って返しますわ」

 

「…」

 

「…」

 

「な、何やら火花が散ってる気が…」

 

「気にしてはダメですわよ。システィーナ」

 

まあ、今はいいか。

私は無意識にネックレスを撫でながら呟く。

 

「私とアイル君の関係だけど…別にウィンディが勘ぐる様な関係では…」

 

私は何とか沈静化させようと誤魔化すも、それが返って悪い方に進ませちゃったらしい。

 

「そんなありきたりの答えを、聞きたいのではありませんの!?昼にロッドも言ってましたが、1年の時から先輩に人気あったんですのよ!彼は!」

 

そう、それは聞きたかった。

そんな話、初めて聞いたから気になってた。

 

「それって本当なの?あまり先輩といる所って見た事ないけど」

 

「多分リゼ先輩の影響ね。先輩アイルの事、結構かってるから。なんやかんや言って言う事聞くし、ルックスもいいから可愛がられてるみたいよ」

 

意外にもシスティからの意外な情報。

そんな事をシスティが知ってるとは思わなかった。

 

「後輩っていうのは?」

 

「彼、年下には優しいらしくて、人気みたいよ。今日もあんな風に上着を貸してくれたり…///」

 

「確かに…優しい所もあるよね…。私も一緒にいると落ち着くし…。何か、お兄ちゃんみたいな?」

 

「アイルは実際に妹いるしね」

 

今度はテレサが教えてくれる。

確かに妹がいる彼は、そのせいか年下や、そういう印象を与える子には甘い。

リンへの態度がその典型的だよね。

それにしても…アイル君、少し節操がないと思うよ?

 

「そういう事で、いつまでも有耶無耶にしてると横から掠め取られますわよ!だから速く教えなさいな!」

 

「貴女が明らかに気があるのは分かってますわ」

 

「ウィンディ!テレサ!///」

 

何言ってるのこの2人!?

 

「ほらほら!いい加減観念しなさいルミア!早く自分の心に素直になりなさいよ!」

 

「「「「…」」」」

 

「「…?」」

 

((((いや、貴女が言うの?))))

 

今私達の思いが1つになった気がした。

あんなに分かりやすい、システィにだけは言われたくない。

 

「まあ、ツッコミ所もありますが、システィーナの言う通りですわ!いつから彼の事を慕っているのか教えなさいな!」

 

ウィンディ!?まだ言ってるの!?

 

「だから!///そういうのじゃ!?///」

 

「時期的に半年くらいまえじゃないかしら?ほらほら早くしなさいよ!」

 

システィ〜!!///

確かにシスティの言う通り、気になりだしたのは半年くらい前のあの時だ。

実際に会っていたのは誘拐された時だけど、その時はまだ気づいてなかった。

いつあの時の彼だと気づいたんだっけ?

まあ、それは置いといて、当時の歴史の講師は異能者排斥派だった。

ちょうど異能者関係の話だったので先生もヒートアップしていたのを覚えてる。

私はその先生の意見を聞きながら、辛くなってきていた。

でも違うとも言えず、ただ何とか耐えるしかなかった。

 

「エステレラ、聞いてるのか!?」

 

いつの間にか隣で寝ていたアイル君に先生は怒っていた。

当時はアルタイル君って呼んでたっけ。

当の本人は眠そうに欠伸をしていた。

 

「聞いてますよ。異能者がどうのこうのでしょ?」

 

ビックリした事にちゃんと聞いてたらしい。

 

「ならエステレラ!お前の意見は何だ!?」

 

クラスメイトにまで否定されたら…やだなぁ…。

その時はそんな事を思っていた。

 

「そんな大きな問題ですか?それ」

 

「…は?」

 

そんな彼のやる気のない声を聞くまでは。

 

「足が速い、喧嘩が強い、絵が上手い、料理が上手い、楽器の演奏が上手い…。それらと何が違うの?人の才能を妬んでグダグダと…ダサい人。というか、あんたは産まれ方を選べたのかよ?出来る訳ねぇだろ。誰だって自分が望んだ形で産まれるわけねぇだろ。結局、自分がどうやって生きていくのか、それが1番大事なんじゃねぇの?はぁ…本当にダサい人」

 

あまりの発言に誰もが固まった。

私は嬉しかった。

彼の言うとおりだった。

私だって異能者として産まれたい訳じゃなかった。

それを誰も分かってくれなかった…。

でも、アルタイル君は違った、彼は分かってくれた。

先生は怒ってアイル君を指導室まで来るように命じたが、彼は行かなかった。

理由を聞いたら

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを怒られる筋合いは無い」

 

思わず笑っちゃった。

昔から彼は確固たる自分を持っていた。

その先生は何処からか聞いたらしい、お父様によって学院をやめさせられたらしい。

それはともかくそんな彼が気になって、気づいたらずっと一緒にいた。

 

それが事の経緯なのだか、それを話すにはまず、自分が異能者である事を話さなくてはならない。

私はここにいるみんなにどう誤魔化そうかと必死に考えていた。




また明日から仕事でしばらく投稿出来ません。
年明けまで無理かな〜…
それでは良いお年を
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