やっと仕事が一区切りです。
よろしくお願いします。
「あ〜あ、どうせならカンターレの軍事魔導研究所が良かったぜ」
「僕も他のところが良かったよ」
俺達は馬車に揺られながら港まで目指していた。
カッシュとセシルは不満そうにしている。
俺はというと、特に何も言わずただ外を見ていた。
「フッ…お前らは間違えなく幸運だ」
「「「「「え?」」」」」
突然何言い出すんだこの人。
カンターレには行きたくないし別にいいんだが。
「白金魔導研究所はどこにある?」
「…は!?ビーチリゾートとして有名なサイネリア島!」
「そう!1年を通して温暖な気候なあそこは、多少早いが充分に海水浴が可能だ!」
「「「「「か、海水浴!!」」」」」
「そして!うちの女子は総じてレベルが高い!!…後は分かるな?黙って俺についてこーい!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」
「うるさ…」
本当にテンション高いなこいつら。
こんな所でそんな話したら…ほら見ろ。
女子が絶対零度の視線を送ってるぞ。
「…アルタイル」
「見るなギイブル。見たら巻き込まれるぞ」
俺とギイブルは静かにそれぞれの事に没頭した。
お互い冷や汗ダラダラなのは、見ぬ振りをした。
「アイル君…」
この間から様子が変。
いつの間にか居なくなったり、ボンヤリしたり、まるでいつの間にか消えてしまいそうな。
そんな不安に駆られる。
「ルミア?…アイルが心配?」
「システィ…うん。この間から様子が変だし…」
「そうね。確かに心配ね」
システィも気づいてたみたい。
「遠征学習で元気出してくれるといいんだけど…」
「そうね…。案外ルミアの水着姿見たら元気になるかもね!」
「し、システィ!!///」
何言い出すの!
「あれだけ真剣に選んだんだし大丈夫よ!!」
「〜〜〜ッ!!///システィ!!!///」
「お嬢ちゃんたち!可愛いからこの特別品とかどうだい!?」
…何やってんだあいつ。
「そういう怪しいもんを、うちの生徒に売りつけないでくれますかね?ほれ行った行った」
俺は女生徒たちをさっさと別の場所に追いやると
「…アルベルトがいるってことは、やっぱリィエルは当て馬か」
「…ああ。本命は俺の遠距離からの護衛だ」
やっぱりな。
こいつ程の奴が補佐な訳が無い。
「で?そんなお前が俺に、わざわざ接触してきた理由はなんだ?」
「…リィエルに気をつけろ。あの女は危険だ」
はぁ?何言ってんだこいつ。
「笑えねぇ冗談だな」
「知ってるはずだ。俺とお前だけは」
それは…そうだが…。
「…あれはもう昔の事だ」
「相変わらず甘いな。警告はしたぞ。…それとエステレラの様子は?」
…こいつもかなり気にしてたんだな…。
「だいぶヤバい。今は何とか普段通りを保ってはいるが、かなりメンタルはやられてる。これ以上何かあったら…壊れる」
「…そうか。グレン。本当に済まない。エステレラを頼む」
そう言ってアルベルトは去っていく。
その背中はいつもの凛々しさと少しの後悔があるように見えた。
「…んな事はわあってるよ」
俺もそうしたいのだが、気づくといなくなっているのだ。
そして集合時間には、またふらっと現れる。
まるで亡霊だ。
そこにいる筈なのに、いないように思えてくる。
このままいなくなるのでは…
「馬鹿野郎!しっかりしろグレン=レーダス!」
俺がしっかりしないと。
あいつの行き着く先は、地獄だぞ。
「絶対に救ってみせる」
そう決意を新たに俺は集合地点へと足を進めた。
「ここがサイネリア島…」
船に乗り、無事島へたどり着いた俺達は、船の上で街を見ていた。
フィジテとは違った趣のある街に俺は少しワクワクしていた。
そんな気持ちを
「うおえぇぇぇぇ…」
「台無しだよ。ロクデナシ講師」
グレン先生の船酔いが全てを攫って行った。
「もう、苦手なら他の場所にすれば良かったのに」
システィーナも同意見らしい。
少し眉間に皺を寄せながら言う。
「フッ…美少女達の水着はあらゆるものに優先する。決まっているだろ?たとえここが戦場のど真ん中だったとしても俺はここを選んださ」
うわ、キメ顔でめっちゃ下らんこと言ってる。
「「「「「先生!一生ついて行きます!」」」」」
アホか、この人。
…アホだったわこの人。
「…私達を軍用魔術から遠ざけたいから。だからここなんですよね?」
ルミアよ、この人そんな殊勝なこと考えてるかな〜?
まあ、この人なら考えそうではあるか。
「そんなんじゃねーし。俺はただ水着姿を拝みたかっただけだし」
「うわ、嘘ヘッタクソ」
「嘘じゃねえよ!」
つい本音が出てしまったら、聞かれた。
「やっほ〜!システィもリィエルも速くおいでよ〜!」
「今行く〜!リィエル!一緒に遊びましょ!」
「うん」
なるほど、これは確かに絶景だ。
分かったから男子諸君。
泣くほど喜ぶな、キモイぞ。
「だから最初に言ったろ?『黙って俺に着いてこい』って!夜までは自由時間だ!好きなだけ遊んでこい!」
「「「「「はい!!イヤッフーーー!!」」」」」
「お前達は行かなくていいのか?」
先生は木陰にいる俺とギイブルに聞く。
「僕達は遊びに来てる訳ではないんですよ?」
「とはいえ、制服姿はさすがに暑くね?せめて水着にぐらいは着替えたら?どうせ持ってんだろ?」
「そういう君こそこういう時は、率先して楽しむ方じゃないか。水着にまで着替えて、ここにいるのかい?」
おっと、そこをつかれると痛い。
確かに念の為って事で着替えてはいるが、そういう気分では無いのだ。
「今はそういう気分じゃねぇの」
「お前達は…」
先生、そこでこいつと一括りにするなよ。
あんたならわかってんだろ。
「先生!アイル君!どうです?似合ってる?」
ルミア達3人組が俺達に感想を求めてくる。
「おおー!ちょー似合ってる!すげー可愛い!」
珍しい、先生が素直に褒めるなんて。
「ありがとうございます!アイル君的にはどう?」
「よく似合ってる。ルミアの活発さと可愛さにベストマッチって感じ。可愛いよ」
「ッ!あ、ありがとう…!///あ、アイル君も似合ってるよ!髪結ってるんだね!」
「ありがとう。まあ、暑いから鬱陶しいし。それより何で赤くなってる?熱中症か?ちゃんと水分と休憩は取れよ?」
「う、うん!大丈夫だよ!ありがとうね!」
なんか納得いかないが、本人が大丈夫って言うなら、それ以上は追求しない。
「アイル…あんたって本当にそういう所、天然ね」
「どういう意味だよシスティーナ。後システィーナも似合ってる。高貴な感じっていうか、エレガントさがする」
「確かにな!白猫、お前も中々センスいいじゃねぇか!眼福眼福」
だから先生にしては本当に素直に褒めるのな。
さては浮かれてる?
「あ、ありがとう…///ていうかジロジロ見ないでよ!///」
ウンウン、と1人頷く先生。
ん?リィエルが先生の前に立って…。
ああ、そういう事。
「ルミア…あれって…」
「うん。そういう事だと思う…」
「先生はどう返すか…?」
俺達3人は動向を見守る。
「どうしたリィエル?」
「…何にもない…」
「「「あちゃ〜…それはダメ」」」
思わず、俺達は同じ感想を抱いてしまう。
いくらなんでもそれはダメだろ。
流れで察しろよ。
「何やってんだお前らは?ていうか、お前ら向こうで遊んでたんじゃなかったのか?」
「ビーチバレーしようって話になって…それで先生達を誘いに来たんです」
「先生もどうです?アイル君とギイブル君も!」
「僕は控えさせてもらうよ」
ビーチバレーか。
正直気分は乗らないが、これ以上先生に心配かけるのもな。
「なら俺は付き合うかね。先生は?」
「ビーチバレーか〜?でもお肌焼けちゃうし〜…」
「しゃあ!こいオラァ!!どうした!」
「いや!1番ノリノリ!?てか暑苦しいわ!!」
「そして何故僕は巻き込まれてるんだ!?」
数分前のノリはどうした!?この人?
本当に面倒な人だなこの人!!
後ギイブル、諦めろ。
俺達に目をつけられたからだ。
「覚悟!アルタイル=エステレラ!!」
ロッドからいきなりボールで襲われる俺。
「なんのだよ!?」
意味がわからないまま、とりあえず先生の打点めがけてレシーブする。
「お前、去年から先輩達に人気だったくせに!今年からは後輩からも人気出てやがるし!更にいつもルミアちゃん達と一緒じゃねぇか!」
「「「「「「この妬み、ここで晴らさでおくべきか!」」」」」」
知るか!そんなもん!
それとは別にその話初耳なんだが!?
「知らねぇよ!そんなもん!勝手にどこぞで晴らしてろ!後、ロッド!その話、後で詳しく!!」
「アイル君?」
…何故だろう?
このビーチで寒いぞ?
俺達はそんなこんなで順調に勝ち進み、決勝戦に突入した。
「さて、最後の難敵だな」
「そうですね、運動神経バツグンのカッシュに、脳筋リィエル、そして遠隔系の白魔術が得意のテレサですからね」
「何よりあいつがスパイク打つ時、全員の動きが止まるような気がするんだが?アレは精神攻撃なのか?もしくは時間操作系なのか?」
「それはみんな、テレサのある一部分を見るのに集中してたからだろ…」
全く…俺も男だし、気持ちは分かる。
分かるけどガン見しすぎだろう。
もっと配慮しなよ全く。
俺はそう思いながら、上着を脱ぐとそのままテレサの肩にかけた。
「テレサ、やるなら貸すからこれ着たら?思春期男子には、少し刺激が強すぎるからな」
出来るだけ、下心を与えないように接客モードで対応する。
「ッ!///え、えぇ…借りるわ…ありがとう、アルタイル///それに…凄い筋肉ね…カッコイイ///」
「ありがとう。テレサもよく似合ってる。綺麗だ」
素直に借りてくれて、とりあえずほっとする。
何故かテレサは真っ赤だか。
そんな事をしてると複数の視線を感じる。
何事かと振り返ると、グレン先生を含めた男子諸君に睨まれていた。
カッシュが何やら呟く。
「なるほど…こうやって女子をオトすのか」
いや、何の話だよ。
何で頷いてるんだよ。
当たり前の配慮だろが。
「る、ルミア?落ち着いて?顔が怖いわよ?」
「大丈夫だよ?システィ。私はオチツイテルヨ」
「「「「ルミア!?お願いだから落ち着いて!?」」」」
何やら女性陣は女性陣で大モメしてる。
ところで何時になったら始めるんだよ、決勝戦。
「さあ!キリキリ吐いてもいますわよルミア!ズバリ!アルタイルとはどういう関係ですの!?」
夜なり、ご飯お風呂も済ませてもう寝るだけ。
なのにウィンディがすごく、熱くなってる。
後ろから炎が見えるくらい、熱くなってる。
「確かに私も気になるわ?教えてルミア」
テレサまで何言ってるの?
それより私が気になるのは…
「その前にテレサはその上着、いつまで持ってるの?私から返しておこうか?」
テレサがいつまでも、アイル君の上着を抱えてる事。
速く返さないとアイル君が困るもの。
「いいえ、私が借りたんですもの。私が責任持って返しますわ」
「…」
「…」
「な、何やら火花が散ってる気が…」
「気にしてはダメですわよ。システィーナ」
まあ、今はいいか。
私は無意識にネックレスを撫でながら呟く。
「私とアイル君の関係だけど…別にウィンディが勘ぐる様な関係では…」
私は何とか沈静化させようと誤魔化すも、それが返って悪い方に進ませちゃったらしい。
「そんなありきたりの答えを、聞きたいのではありませんの!?昼にロッドも言ってましたが、1年の時から先輩に人気あったんですのよ!彼は!」
そう、それは聞きたかった。
そんな話、初めて聞いたから気になってた。
「それって本当なの?あまり先輩といる所って見た事ないけど」
「多分リゼ先輩の影響ね。先輩アイルの事、結構かってるから。なんやかんや言って言う事聞くし、ルックスもいいから可愛がられてるみたいよ」
意外にもシスティからの意外な情報。
そんな事をシスティが知ってるとは思わなかった。
「後輩っていうのは?」
「彼、年下には優しいらしくて、人気みたいよ。今日もあんな風に上着を貸してくれたり…///」
「確かに…優しい所もあるよね…。私も一緒にいると落ち着くし…。何か、お兄ちゃんみたいな?」
「アイルは実際に妹いるしね」
今度はテレサが教えてくれる。
確かに妹がいる彼は、そのせいか年下や、そういう印象を与える子には甘い。
リンへの態度がその典型的だよね。
それにしても…アイル君、少し節操がないと思うよ?
「そういう事で、いつまでも有耶無耶にしてると横から掠め取られますわよ!だから速く教えなさいな!」
「貴女が明らかに気があるのは分かってますわ」
「ウィンディ!テレサ!///」
何言ってるのこの2人!?
「ほらほら!いい加減観念しなさいルミア!早く自分の心に素直になりなさいよ!」
「「「「…」」」」
「「…?」」
((((いや、貴女が言うの?))))
今私達の思いが1つになった気がした。
あんなに分かりやすい、システィにだけは言われたくない。
「まあ、ツッコミ所もありますが、システィーナの言う通りですわ!いつから彼の事を慕っているのか教えなさいな!」
ウィンディ!?まだ言ってるの!?
「だから!///そういうのじゃ!?///」
「時期的に半年くらいまえじゃないかしら?ほらほら早くしなさいよ!」
システィ〜!!///
確かにシスティの言う通り、気になりだしたのは半年くらい前のあの時だ。
実際に会っていたのは誘拐された時だけど、その時はまだ気づいてなかった。
いつあの時の彼だと気づいたんだっけ?
まあ、それは置いといて、当時の歴史の講師は異能者排斥派だった。
ちょうど異能者関係の話だったので先生もヒートアップしていたのを覚えてる。
私はその先生の意見を聞きながら、辛くなってきていた。
でも違うとも言えず、ただ何とか耐えるしかなかった。
「エステレラ、聞いてるのか!?」
いつの間にか隣で寝ていたアイル君に先生は怒っていた。
当時はアルタイル君って呼んでたっけ。
当の本人は眠そうに欠伸をしていた。
「聞いてますよ。異能者がどうのこうのでしょ?」
ビックリした事にちゃんと聞いてたらしい。
「ならエステレラ!お前の意見は何だ!?」
クラスメイトにまで否定されたら…やだなぁ…。
その時はそんな事を思っていた。
「そんな大きな問題ですか?それ」
「…は?」
そんな彼のやる気のない声を聞くまでは。
「足が速い、喧嘩が強い、絵が上手い、料理が上手い、楽器の演奏が上手い…。それらと何が違うの?人の才能を妬んでグダグダと…ダサい人。というか、あんたは産まれ方を選べたのかよ?出来る訳ねぇだろ。誰だって自分が望んだ形で産まれるわけねぇだろ。結局、自分がどうやって生きていくのか、それが1番大事なんじゃねぇの?はぁ…本当にダサい人」
あまりの発言に誰もが固まった。
私は嬉しかった。
彼の言うとおりだった。
私だって異能者として産まれたい訳じゃなかった。
それを誰も分かってくれなかった…。
でも、アルタイル君は違った、彼は分かってくれた。
先生は怒ってアイル君を指導室まで来るように命じたが、彼は行かなかった。
理由を聞いたら
「
思わず笑っちゃった。
昔から彼は確固たる自分を持っていた。
その先生は何処からか聞いたらしい、お父様によって学院をやめさせられたらしい。
それはともかくそんな彼が気になって、気づいたらずっと一緒にいた。
それが事の経緯なのだか、それを話すにはまず、自分が異能者である事を話さなくてはならない。
私はここにいるみんなにどう誤魔化そうかと必死に考えていた。
また明日から仕事でしばらく投稿出来ません。
年明けまで無理かな〜…
それでは良いお年を