ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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久しぶりにこっちもあげようかなと思いまして…。
それではよろしくお願いします。


メルガリウスの文化祭 前編

これは何でもない平和な日常。

彼らの思い出、追想日誌(メモリーレコード)

 

 

「じゃあ!お前ら!盛り上げていくぞ!!!」

 

教室にグレン先生の声が響く。

黒板にチョークで、大々的に書かれている文字は

 

『文化祭の出し物について(最重要)!!!』

 

「「「「「「「「…」」」」」」」」」

 

「なんだその冷めた顔は!さてはあれか!?思春期特有の『文化祭?あー、俺そういうの興味無いわ〜』とかいうスカしたスタイルか!?止めとけ!学生時代の1つ1つが宝物なんだぞ!それを一時のプライドで捨てるのは…」

 

違う、その謎の熱量についていけないだけだ。

 

「まったくもう…」

 

「うぅ…先生、スカしたんだろうな…」

 

「あ、あはは…」

 

「…?アイル、泣いてるの?」

 

頬杖をついて呆れるシスティと、その右隣で嘘泣きの俺。

そんな俺の隣で苦笑いのルミアと、キョトンとして俺の嘘泣きを心配する、システィの左隣のリィエル。

 

「いや、嘘泣きだから大丈夫だぞ、リィエル。それよりも、先生は何故にあんなにやる気なの?」

 

「あれよ。この学院の文化祭って、投票システムあるじゃない?」

 

「うん。どのクラスの出し物が1番だったかを、投票して決めるんだよね?」

 

「そうよ、ルミア。そして1番のクラスには、結構な賞金が出るのよ。…まったく」

 

なるほど、相変わらずの現金な人だな。

とはいえ、こういうのは楽しんだ者勝ちだ。

 

「まあまあ、今回は乗せられようぜ。楽しんだ者勝ちだぜ?」

 

「そうだよ、皆で1つの事で盛り上がれるの、私好きだよ?」

 

「ん。…よく分からないけど…皆楽しそう…。私も楽しみ」

 

「…はぁ。そうね、今回は乗せられようかしら。私も楽しみだし」

 

今回は無事、説得に成功した俺達。

こうして、俺達の出し物決めが始まった。

 

「俺、お化け屋敷とかいいと思う!」

 

「模擬店はいかがでしょう?アルタイルもいますし、うちは繁盛すると思いますわよ」

 

「景品付きのゲームとかどうですか!」

 

「ライブに1票!」

 

皆がそれぞれ意見を出す。

粗方出尽くしたところで、先生が不気味な笑みを浮かべる。

 

「うんうん!どれも青春だな!いい事だ!だが、ここで俺がたった今ふっと思いついた意見を、聞いて欲しい」

 

((((((((((たった今ふっと思いついた…?))))))))))

 

全員の考えが一致した瞬間だろうな、今。

そんな俺達を無視して、手製のポスターを貼り付ける先生。

事細やかな詳細が書き込まれているそれは、恐らく徹夜したのだろうか、と思うほど細かい。

 

「ズバリ!猫耳水着メイド喫茶だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」

 

「「「「「「「…」」」」」」」

 

この温度差よ。

 

「ご存知の通り、うちのクラスは作為的かってくらい、美少女が多い!そして!アルタイルという、プロ級の腕を持つシェフもいる!この2つのメリットを活かさない手はない!」

 

やめろ、俺を矢面に上げるな。

 

「だが、この学校の制服は、攻めすぎている!生半可な衣装ではインパクトが足りない!そこで猫耳水着メイドだ!」

 

「なんて的確で、合理的な分析能力…!」

 

「これが学院を何度も救ってきた、名物講師の実力…!」

 

名物講師の変態力だよ。

畏怖と尊敬の目を向ける男子生徒。

侮蔑と呆れの目を向ける女子生徒。

ねぇ知ってる?

俺達の席の後ろって、ウィンディとテレサがいるんだよ?

周りに男がいないんだよ?

この席、氷点下いきそうなほど寒いんだけど?

 

「そして!デザインはこの俺が、徹夜して考えてきた!」

 

本当に徹夜したんだ…。

本当に猫耳水着メイドとしか、表現出来ないな…。

 

「バカな!?本来混ざり合わない3つの属性を、見事に混ぜ合わせている…!?」

 

もう好きにしてくれ…。

俺が絶対零度の中、ビバークの覚悟決めた時

 

「ねぇ、アイル君…」

 

「ねぇ、アイル…」

 

「うん?」

 

隣のルミアと、上のテレサから声をかけられる。

2人共、顔が赤いが…?

 

「「私が着たら、どう思う?///」」

 

…時が止まった気がした。

俺も、システィも、リィエルも、ウィンディも。

誰も動けなかった。

これは…どう答える…!?

2人共、とても可愛いし綺麗だ。

スタイルも抜群でいいし、100…いや、120%似合う。

問題はそれを素直に伝えたら、俺の今後の学園生活に支障をきたす可能性がデカい…!

俺は出来るだけ冷静に、そして最小限の被害で済むように、言葉を選ぶ。

 

「2人共、すごく可愛いし綺麗だから、きっと似合うとは思う。けど…」

 

俺は2人の頭に手を置き、優しく撫でながら、諭すように言う。

 

「いつもの2人が1番魅力的だよ?」

 

「「…ッ!!///そ、そういう事なら…///」」

 

顔を赤くしたまま、引っ込んでいく2人。

 

「…流石。手馴れてますわね、アルタイル」

 

「その軽い口、尊敬するわ。アイル」

 

「じゃあ、どうしろと!?素直に見たいって言ったらどうすんだよ!?」

 

「「ドン引き」」

 

「だろうな!」

 

「…?」

 

お前らなぁ…!

俺は頭を抱える。

 

「さぁ!後はお前らの覚悟次第だ!黙って俺に…」

 

「『誰が・着るか・バカー』!!!」

 

「「「「「「「「ギャアァァァァァァ!!!」」」」」」」」

 

システィの【ゲイル・ブロウ】が、担任諸共、男子諸君を吹き飛ばす。

案の定どころか、お約束の女子生徒からの反発に、先生がシスティに反論する。

 

「じゃあ、お前が何がいいんだよ?」

 

「ふふん!それはもちろん、魔導考古学の自由研究発表会!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「却下!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「…くすん」

 

「はい。次ある人ー」

 

「アイル君…システィをスルーした…」

 

だって、余りにも予想通りすぎて俺も却下したし。

何より果てしなくつまらない。

そのまま議論は、熱く紛糾していき…。

 

 

 

『一体、なんだ?何がお前にそこまでさせるんだ?私には、お前がまったく理解できない』

 

⦅すると、魔法使いはいいました⦆

 

『簡単だよ、魔王。僕には守りたいもの、守るべきものがあるんだ。それを思えば、自然と身体の底から、無限の力が湧くんだ。何度だって立ち上がれるんだ。さあ、覚悟しろ魔王。僕はお前を倒す!皆を守る!』

 

⦅魔法使いの聖なる稲妻を受けて、断末魔をあげる魔王。長かった戦いは、ようやく終わったのです⦆

 

 

 

「カーット!!!」

 

先生の声が、練習場に響く。

 

「カッシュ!お前の言い方じゃ、ただの珍獣扱いだぞ!もっとこう、得体の知れないものに出会った感じを出せ!アルタイル!緊張感を持たせすぎだ!これから始まるんじゃなくて、これで終わりなんだぞ!白猫!前に出過ぎた!お前は引き立て役だぞ!ギイブル!悪くないが、もうちょい淡々とやってみろ!」

 

「あ、うぃーす!」

 

「はーい!…ムズいな」

 

「す、すみません!」

 

「了解です」

 

結局俺達がやるのは、【メルガリウスの魔法使い】の劇。

ただ、ありふれたものなので、弟子の視点で再構成したもので、1から脚本して行ったのだ。

手前味噌かもしれないが、結構いいと思う。

 

「なあ、アイル。先生って芝居も出来るんだな」

 

「それ俺も思った。軍属の時、潜入任務とかあったんじゃね?」

 

周りを見ながら、立ち位置やカッシュと打ち合わせを行う。

内容はよし、各自やる気も十分。

 

「アイル!カッシュ!やるわよ!」

 

「…よし。やるか」

 

「よし!」

 

俺達は水を1口飲んで、さっきのシーンをやり直す。

今度は問題無く進み、次に進む。

次は…

 

「ルミアー!出番よ!」

 

「あ、はーい!」

 

お姫様役のルミアと再開する、感動シーンなのだが…。

 

「よ、よろしくね!アイル君!///」

 

「…おう、よろしく、ルミア///」

 

「2人共…お願いだがら、本番はしっかりね?」

 

2人揃って、照れまくりなのだ。

無理もない、役とはいえ好きな人とというのは…、否が応でも意識するもんだ。

 

『ずっと…ずっと…お会いしたかったです、魔法使い様』

 

『ああ、僕もだよ、姫…』

 

『私は信じていました…。きっと、魔法使い様が、私を助けにきてくださると…』

 

『ああ…遅くなってごめんよ…。もう、僕は君を離さない…』

 

「カーーーーーット!!!お願いだからカット!!!」

 

「何ですか?かなりいいと思ったんですか…」

 

「リアルすぎるんだよ!!ゲロ甘いわ!!」

 

周りを見ると、女子は顔を真っ赤にして黄色い声をあげ、男子は血の涙を流している。

そして1番の問題は

 

「アワワワワワ…!」

 

「ルミア、煙吹いてるから!」

 

ルミアが毎度終わる度に、煙吹くのだ。

こんな感じで練習は進み、ついに当日なったのだった。

 

 

 

 

リゼの宣言の元、ついに開催された文化祭。

模擬店組の活気に満ちた、威勢のいい声。

中庭のステージでは、次々にライブが始まる。

その他色んな出店で、どこも楽しそうだ。

学生はもちろん、地域住民も来ており、学院は類を見ない賑わいを見せていた。

 

「ったく…どいつもこいつも浮かれやがって…」

 

そう呟くグレンは、手当り次第に買った模擬店の食べ物を、両手いっぱいに持っていた。

 

「浮かれすぎなのはどっちですか!?もう!分かってるんですか!?」

 

当然のツッコミを入れるシスティーナ。

この2人は相変わらずの通常運転だ。

 

「仕方ねぇだろ…こういう所の飯は宮廷料理より美味いんだから…。分かった分かった。ほれ、美味いぞ、チョコバナナ」

 

「いりません!私達はビラ配りに来たんですよ!ちょっとは3人を見習って下さい!」

 

そう言いながら、システィーナが振り返る先では

 

「二等賞おめでとう!この巨大ぬいぐるみ持ってけぇ!」

 

「やったあ!!」

 

手芸クラブの景品に、手を叩いて大喜びするルミアに、

 

「もふもふもふもふもふもふもふ…」

 

苺タルトをバベルの塔みたく積み上げて、一心不乱に食べるリィエルに、

 

「エステレラ!勘弁してくれ!」

 

「…仕方ねぇな、これくらいで勘弁してやるよ」

 

射的の出店で、景品を半分くらい掻っ攫っていくアルタイルがいた。

要するに、各自ものすごく浮かれている。

 

「さ、3人共〜!!」

 

 

 

「あ、あはは…ごめんね…」

 

「?」

 

「なんだよ、祭りなんだぜ?楽しまないと。ていうか先生、どれだけ持ってんですか?どうやって持ってるんですか?あ、ケバブちょうだい」

 

俺はシスティの非難げな視線をスルーして、先生にツッコミを入れる。

ついでにケバブを掻っ攫う。

 

「あ、おい!ったく…それにしてもあれだな。酒が欲しくなる」

 

「ある訳ないでしょ!」

 

「だよな〜…あれ?アイツ…」

 

視線の先を見ると、イヴ先生がいる。

何か…挙動が…?

 

「それ2つ。ったく…たら…人使いが…いんだ…ら…」

 

アイスを2つ貰って、そそくさと消えていく。

…マジかぁ…、泣けてくる。

 

「?アイル…泣いてるの?」

 

「目から汗がな…。あのアイスは俺かベガが貰います」

 

「後で誘ってやるか…。そうしてやれ」

 

三人娘は聞こえなかったらしいが、俺には辛うじて聞こえてしまった。

先生は恐らく読唇術。

その後も、ロザリーさんが現れて、ビラ配りを引き受けてくれたり、オーウェル教授に怪しげな飲み物を、押し付けられそうになったり。

 

「楽しいね!」

 

「…そうだな!」

 

ルミアが楽しいに笑うから、俺も嬉しくて。

チラリと見ると、システィも楽しそうに、セシリア先生の占いの結果に一喜一憂してる。

…アイツもしっかり楽しんでるじゃん。

 

「…さて、そろそろだな。システィ!時間だぞ!」

 

俺達は舞台に走って移動を開始したのだった。

 

 

俺達の講演は午前と午後の1回ずつ、計2回。

その午前の部、開始10分前の舞台袖。

そこで俺達は、客席を覗いたのだが…

 

「嘘…?本当に…?」

 

「予想外だぜ…」

 

予想外に、客席が満席だったのだ。

半分くらい埋まれば御の字だろと、全員揃って高を括っていたのが、裏切られてしまった。

俺達が知る由も無かったのだが、元々粒揃いの2組、しかも主人公が俺、ヒロインがルミアという、学院ツートップの人気者がメインだから、元々注目度が高かったらしい。

そこにフィジテではそれなりの人気者、ロザリーさんがビラ配りしたせいで、大盛況なのだとか。

 

「こんなに人が来るなんて…!?も、もし大失敗したら…!?」

 

はぁ、このバカ猫は。

俺はシスティの背中を叩く。

 

「バカ。端から失敗する気でやるんじゃねぇよ。『失敗したら』じゃねぇよ。『成功させる』んだよ。そんなへっぴり腰じゃ、出来るもんも出来ねぇぞ。そうだろ?」

 

「…そうよね!初めから悪い事考えたらダメよね!皆、こうなったら当たって砕けよう!全力で楽しむわよ!!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「いや、砕けるなよ」

 

(こういう時、本当にアルタイルは発破のかけ方が上手いな)

 

グレンは生徒達の様子を眩しそうに見つめる。

システィーナは皆の前に立つタイプのリーダーだが、アルタイルは皆の後ろに立って背中を押してやるタイプのリーダーだ。

2人共、リーダーとしての素質は十分だ。

そんなグレンの関係ない考えを他所に、ついに舞台の幕が開けたのだった。

 

 

「それでは!午前の部成功を祝して…かんぱ〜い!!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「かんぱ〜い!!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

いや〜、何とかなった…。

あんな風に言ったはいいが、少し不安はあった。

でもそんな不安、あっという間に無くなった。

あれだけ必死に用意したんだ…、上手くいって、本当に良かった。

皆成功に浮かれてるのか、かなりワイワイしている。

そんなプチ祝勝会は、進んでいき…

 

「な、何じゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

「み、皆!?どうしたの!?起きて!」

 

「おい!カッシュ!起きろ!」

 

気づけば、半数以上が床に寝っ転がってしまっている。

 

「これ…まるで酔っぱらってるみたい…」

 

「…まさか…?」

 

俺は飲んでいた白ぶどうジュースを、もう1回飲み直し、匂いを嗅ぐ。

改めて飲んでみて、ある事に気付く。

本当に…なんで俺、気付かなかったんだ?

 

「先生…これ…」

 

「…これ、だれが買ってきた?」

 

「ん。私」

 

「…リィエル。どこで買ってきた?」

 

「オーウェルのところ」

 

「「…」」

 

 

「フゥーハッハッハッハッハッハ!!!いらっしゃいませ、君達!!!やはりこの私の…」

 

「『紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吼え狂え』!!!」

 

「『吠えよ炎獅子』!!!」

 

「ギャアァァァァァァ!!!」

 

ドッカーン!!!

 

俺達の【ブレイズ・バースト】が、オーウェル教授を爆破させる。

炭になったオーウェル教授の胸ぐらを、先生が掴みあげる。

 

「てめぇ、ふざけんじゃねぇ!!何がジュースだ!!!?思いっきり酒じゃねぇか!!!」

 

「酒だと!?バカな!女王陛下に誓って、そんなもの売っていない!私は趣味で栽培している、【ジーン・コード】を操作する白魔術で、品種改良した白ぶどうの果汁を、樽に詰めて、常温で寝かせて発酵熟成させたものを売っただけだ!!」

 

「それが!もろ!酒なんだよ!!ただのワインじゃねぇか!!!」

 

クソがぁぁぁぁぁ!!!

この密造酒マジで美味い!

 

「この芳醇な味わい!瑞々しくも軽やかな喉越し!美味すぎてアルコールを感じねぇ!こんなのアルタイルでも、分からん訳だ!ついガバガバ飲んじまうぞ!というか、趣味でこんなもの作んじゃねぇ!!老舗のワイナリーが閉めちまうだろ!!」

 

「ゴクゴク。とりあえず、この人をゴクゴク。密造酒販売の罪でゴクゴク。警備官に突き出すとしてゴクゴク」

 

「2人共!まずはそのコップを置きなさい!!!」

 

システィに取り上げられる。

ちくしょう…悔しいけど、マジでうまい。

 

「でもどうしよう…ほとんどが前後不覚だよ?…アイル君は大丈夫?結構飲んでたけど…?」

 

「ん?ああ、俺はさっきのに+2杯くらいだから、問題無い。それなりに強いみたいだな」

 

「アイルやルミアといった主役が無事だけど、魔王役のカッシュが痛いわね…どうしよう?」

 

どうするもこうするも…。

 

「…中止…するしかない…だろうな…」

 

「「そんな…」」

 

ルミアとシスティが哀しげな顔をする。

俺もかなり険しい顔をしていたのだろう。

そんな俺達3人の顔を見たリィエルが、シュンとしてしまう。

 

「ごめん…システィーナ…ルミア…アイル…。私が…変なジュース?買ってきたせいで…」

 

「…!違うぞリィエル。悪いのは犯罪やらかしたオーウェル教授だ」

 

「そうよ!リィエルは私達のことを考えて、買ってきてくれたんだもの!ただの事故よ!」

 

「不完全燃焼気味だけど…皆で一致団結して頑張れたし、楽しかったよ。だから…いいの」

 

俺達は何とかリィエルを励ます。

 

「…」

 

そんな様子をグレンは、黙って見つめていた。

3人が必死に励ますも、その顔や口調からは、やっばり悔しさと寂しさが滲み出ている。

思い出すのは、2組の生徒達が一生懸命に頑張ってきた1週間。

リィエルだって、皆の為に頑張っていた。

 

(正直なところ、もう表彰も賞金もどうでも良くなってたんだよなぁ。俺はただ…コイツらが満足してくれれば、それでいい。これで納得出来るのか…?)

 

「納得出来る…訳ねぇよなぁ…」

 

「…?先生?」

 

突然どうしたんだ…?

 

「お前達!先に戻ってろ!俺が絶対に何とかしてやる!!!」

 

そのまま走り出す先生。

 

「え?ちょっと!?先生!」

 

先生…。

やれやれ…諦めの悪い人だ。

でもそうだよな…正義の魔法使いも、諦めなかったわけだしな!

 

「ルミア、システィ、リィエル。先に戻って。アルコール抜いてくる」

 

そう言って俺も駆け出す。

とりあえずはまず…水のガブ飲みだな。

 

 

「という訳で、助けて下さい!」

 

先生が捕まえて来たのは、セシリア先生、ロザリーさん、イヴ先生の3人。

 

「えぇっと…倒れた生徒さん、沢山いらっしゃるんですよね?これだけで対応出来るでしょうか…?」

 

「裏方は俺のマリオネットと、オーウェル教授の発明で補います」

 

「フハハハハ!こういう事もあろうかと…」

 

「長いから黙って、犯罪者。手の空いた裏方も脇役として出します。俺達メインキャスト陣も、いざって時の為に、最低2役は出来るように、練習済みです。でもそこまでしても、手が足りないんです」

 

「あの子、容赦なくぶった切りましたね…」

 

「なるほど、そこを補って欲しいと…」

 

俺は頷く。

グレン先生が、その後を引き継ぐ。

 

「セシリア先生、たしか学生時代、演劇クラブでしたよね。イヴは軍時代潜入とかしてるし、出来ると思う。ロザリーは…溺れる者は藁をも掴むって知ってるか?」

 

「あはは…そういえばそんな話しましたね…」

 

「…」

 

「先輩!?酷いです!」

 

きっと今のイヴ先生は、外面を保つのにいっぱいなんだろうな。

その内心は舞い上がってるはず。

でも天邪鬼が発動するだろうから…。

 

「…仕方ありません。せっかくの文化祭ですし、楽しみたいですしね!」

 

「私も手伝います!先輩にはお世話になってますし!」

 

セシリア先生とロザリーさんの了承は得た。

問題はこの人。

さてと…タイミングは…

 

「ふん。くだらないわね。そんな事に私を巻き込まないで…」

 

今!

 

「お願いします!イヴ先生!」

 

「なっ!?」

 

この人が天邪鬼発動して、何か言う前に押し切る!

この人はこう見えて、情に弱い。

後、俺達兄妹に弱い…特にベガにだが。

後は、打ち合わせた通りに…

 

「俺達、もう先生しか頼れる人いないんです!」

 

「なんとしても成功させたいんです!」

 

「イヴさん!何とかなりませんか!?」

 

「…ん。イヴ、お願い」

 

「「「「「「「「「「お願いします!」」」」」」」」」」

 

俺達生徒組で押し切る。

この作戦のメリットは2つ。

イヴ先生の情に漬け込む、そしてメンツ。

ここまでされた断れば、この人のメンツに関わる。

つまり…

 

「…ッ!し、仕方ないわね!いいグレン!?あくまでこの子達の為よ!生徒達の為だから!勘違いしないで!分かった!?」

 

「お、おう…」

 

よし!

これで引き込んだ。

…計画通りだぜ。

 

「アイル…未だかつて無いくらい、悪い顔してるわよ」

 

「お前、イヴ検定1級やるよ」

 

「いりません、その検定」

 

とりあえずこれで何とかなった。

既に賽は投げられた。

俺達の午後はどうなるのかは…神のみぞ知る。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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