ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


遠征学習編3話

「リン?大丈夫か?顔真っ青だぞ」

 

「だ、大丈夫…」

 

「じゃないな絶対に。ほら。背負ってやるから荷物貸せ」

 

俺達は【白金魔導研究所】をめざして山道を登っていた。

道自体は舗装されているものの、その坂のキツさにみんな音を上げている。

かくゆう俺も結構堪えている。

その途中、今にもぶっ倒れそうなリンを見つけ、声をかけたのだ。

 

「…ご、ごめんね…ルミア」

 

「は?何でルミアが?」

 

「何でもない…」

 

そう言いながら、俺はリンの荷物を預かり、リンを背負い、坂を登る。

 

「アイル君って結構体力あるよね…」

 

「まあ、鍛えてるしな」

 

昔から鍛錬してたから、結構鍛えていた。

特にこの所は余計に鍛えている。

 

「確かに昨日も凄い筋肉してた…触っていい?」

 

…リンって実は筋肉フェチ?

 

「そんな元気があるなら降ろしていい?」

 

「ごめんなさい」

 

最近、リンがたまにキャラ崩壊する時あるけど、大丈夫か?

そんな事を考えていると

 

「うるさい!!みんな大嫌い!!!」

 

突然リィエルが騒ぎ出して、走り抜けてった。

 

「…何があったんだ?」

 

「わ、分かんない…」

 

俺達はそのまま先を進むことにした。

事情説明は後でしてもらおう。

 

「さ、流石に堪えた…」

 

「ご、ごめんね…!ほら…お水貰おう?」

 

そう言ってリンは流れる水を水筒にいれてくれる。

 

「…プハァ。助かる」

 

美味いなこの水。

すごく綺麗で冷たい。

 

「じゃあ、ゆっくり休んでね」

 

そう言ってテレサ達の所に向かうリン。

俺は先生の元へ先程の事を聞きに行った。

 

「先生、リィエルの事だけど」

 

「ああ、実は…」

 

何やら昨晩、先生がリィエルの機嫌を損ねたらしい。

曰くリィエルは特殊な環境で育ってきた故に、精神的に幼く、今は癇癪を起こしてるとか何とか。

 

「…バカかあいつは。それを理由に護衛対象から離れてどうすんだよ」

 

リィエルの事はどうでもいいが、ルミアに万が一があっては大変だ。

仮にも軍人ならしっかりして欲しいところだ。

 

「アルタイル…すまねぇがあいつに愛想を尽くさないでやってくれないか?」

 

先生がこんなにしおらしい姿見せるの初めてかも。

でも…ごめん。

 

「愛想尽くすも何も、俺は端から気にもかけてないですよ。…ていうか、すんません。俺もちょっと人の事を気にしてる余裕が…」

 

「っ!?そうだよな…すまん。顔色悪いがちゃんと寝てるのか?」

 

「…寝てません。寝ると悪夢を見るから寝れない」

 

グレン先生は俺の話を聞いて、歯を食いしばっていた。

先生が責任感じる必要なんてないのに。

 

「俺は大丈夫ですよ、先生。自分で踏ん切りつけるから。それさえ、出来れば大丈夫です」

 

出来るだけ明るく言う。

そんな湿っぽい空気になった時

 

「ようこそ、アルザーノ帝国魔術学院の皆さん」

 

誰かが出てきた。

その人を見た先生は早足でその人の元へ向かっていく。

 

「私がここの所長バークス=ブラウモンです。」

 

「どうも、2年次2組担任のグレン=レーダスです。うちの遠征学習への協力感謝します」

 

そう言いながら、2人は握手を交わす。

こうして俺達の遠征学習は始まった。

 

所長が白金術について説明しながら、施設を案内してくれている。

途中でルミアを見た時、()()()()()()()()は気のせいか?

でも、とてつもなく嫌な予感がした俺は、無意識にルミアを庇っていた。

 

「…大丈夫か?ルミア」

 

「うん…。ありがとうアイル君」

 

ルミアも感じていたのか顔色は悪い。

リィエルは論外、先生も多分気づいてない。

俺がしっかりしないとマズイな。

 

「ここでは複数の動植物を掛け合わせて、キメラの研究を行っています」

 

キメラね…。

今の俺には耳が痛いな。

命を弄んで、その行き着く先には?

命に手を伸ばしたその末路は?

そんな事をぐるぐる頭が回り出す。

 

「将来、魔導考古学を専攻するつもりだったけどちょっと心が揺れ動いちゃうわね!ルミアはどう?」

 

システィーナの声が聞こえたのはそんな時だった。

 

「私は魔導官僚志望だから。それに…ここを見ていると何かちょっと…」

 

どうやらルミアはここにあまりいい印象は受けていないらしい。

 

「え?」

 

「なんて言うか、人が命をこんな風に好き勝手していいのかなって…」

 

「まあ、いい訳がないわな」

 

「「アイル(君)」」

 

俺は2人の話に参加する。

 

「こういう研究の全てが悪い訳じゃない。でもこういう事にのめり込んでいくと、命の価値観があやふやになっていく気がする。そうなっちまうと…あとは堕ちるだけだ」

 

人1人殺しただけで、色々と雁字搦めになっている自覚がある俺だ。

もしこんな研究していたら発狂してるかもな。

 

「でもやっぱり、あの研究はここでもしてなさそうね」

 

「「あの研究?」」

 

システィーナが話題を強引に変えようと話を振ってきた。

あの研究とは一体なんだろうか?

 

「【死者蘇生】復活に関する研究よ。かつて帝国が大々的に立ち上げた計画。その名も」

 

「【Project:ReviveLife】。よく勉強していらっしゃる。学生さんからその言葉を聞けるとは」

 

俺達の話に入ってきたのは所長さんだった。

 

「いえ!?そんな!?ですが、授業では死者蘇生は理論的に不可能だったと…」

 

「その通り。よく勉強してらっしゃる。ルーン語の機能限界ですね。今のところこの理論を覆す魔術は見つかっておりません。従ってこの【Project:ReviveLife】通称」

 

「要するに【Project:ReviveLife】ってのは、復活させたい人間の遺伝子情報【ジーン・コード】を基に錬成させた肉体と、記憶情報を変換した【アストラル・コード】、そして他者の霊魂に初期化処置を施した【アルター・エーテル】その3つを合成させる。そんな術式だ」

 

次はグレン先生が突然割り込んできた。

とても分かりやすい説明ありがたいんだが…

 

「って先生!説明はありがたんですけど、横から割り込みなんて!?」

 

所長さんの出番を取っちゃったね〜!

 

「おっと失礼!興味深い話をしていたのでつい」

 

「いえ、流石教職者です。私よりよっぽど分かりやすい。要するにコピーとコピーをかけあわせて、コピー人間を作るということです」

 

「でもそれって復活って言えるんでしょうか?」

 

「確かに厳密に復活とは言えないでしょう。寸分違わないものを作るに過ぎない」

 

ものね…、この人もだいぶイッてるな。

 

「さっきルーン語の機能限界って言ってましたけど、それ以上に【等価交換の原則】に引っかかるんじゃないですか?」

 

「…そうだ。それがこの計画が頓挫した最大の理由だ」

 

やっぱりな。

そんな事だろうと思ったよ。

 

「どういう…?等価交換って?」

 

どうやらシスティーナ達は気づいてないらしい。

 

「何事にもリスクとリターンがあるだろ?例えばリンゴを買う時に、俺達は金を払う。その金と引き換えにリンゴを貰う。これが等価交換だ。魔術も同じ。魔術を発動するのに魔力を使う。そこで問題です。()()()()()()()()()()()()1()()()()でしょうか?」

 

「…それって…」

 

「まさか…!?」

 

やっとルミアとシスティーナも気づいたか。

 

「そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になるんだよ」

 

「しかも複数な。こんな実験許されるはずがねぇ」

 

先生が吐き捨てるように呟く。

 

「しかし、あの天の知恵研究会がこの実験を盗み出し、成功に漕ぎ着けたのか…」

 

「…あくまで都市伝説だ」

 

そのまま時間が来てしまい、この話はここまでになってしまった。

もしあんな連中が成功させてたら…一大事だな。

 

 

夜になり部屋のベランダに出て夜風を浴びてると、何が夜の森に走り去ってった。

 

「あっちは…ルミア達の部屋?…まさか!?」

 

俺は部屋を出て走ってルミア達の部屋に向かう。

部屋はボロボロになっており、システィーナが蹲っていた。

 

「システィーナ!?何があった!?」

 

「アイル…ルミアが…ルミアがリィエルに攫われて!?」

 

はあ?レイフォードがルミアを攫った?

どういう事だ?

いや、今はそれより追いかけないと。

そう思い走り出そうとした瞬間、後ろから足跡が聞こえた。

振り返るとそこにはグレン先生を担いだアルベルトさんがいた。

 

「邪魔するぞ」

 

「アルベルトさん!?グレン先生!?どうしたんだよ!?」

 

よく見たら血だらけじゃん!

何があったんだよ!?

 

「すぐに治癒魔術を!?」

 

「無駄だ。既に死神の鎌に捕まった状態だ」

 

「クソッタレがぁ!!」

 

治癒魔術は一定の限界がある。

それを超えると逆に体を壊してしまうのだ。

それを死神の鎌に捕まった状態と表現するのだ。

 

「今から白魔儀【リヴァイバー】を行う。フィーベル、仮サーヴァント契約でお前のマナを貸せ。エステレラ、お前は【リヴァイバー】の方陣の手伝いだ。形は」

 

「知ってます!それよりシスティーナの説得を!」

 

うだうだしてるシスティーナをアルベルトさんに任せて俺は、方陣の構築に全力を注ぐ。

その結果、先生は首の皮一枚の所で踏みとどまったらしい。

システィーナはマナ欠乏症で気を失い、俺もかなりマナを持ってかれた。

持って来ていた虚量石(ホローツ)で、マナを回復させる。

これはベガが余剰魔力を処理しきれなかった時、作っているものだ。

学院テロの時は持っていなかったがそれ以降は、何があっても対応できるように、複数持ち歩いている。

 

「ん…ここは…」

 

どうやらグレン先生が目を覚ましたらしい。

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

「アルタイル…俺は…?」

 

「ふん、相も変わらず悪運だけは強い男だ」

 

「アルベルト…これはお前が?」

 

「礼ならフィーベルとエステレラに言え。すざましい魔力量だ。フィーベルがいなくては、不可能だっだろう。エステレラの方陣構築の腕前も、かなりのものだ。ただでさえ複雑な、従来の方陣にマナ効率を上がるように改変するその腕前、賞賛に値する」

 

そんなに褒められると何か変な気分だな…。

 

「ど、どうも…」

 

「そうかよ…。アルベルト、状況を説明してくれ」




前に兄の様だと言われているアルタイルが、リィエルの事を気にかけないはずがない。
でも、どんどん他人への関心が薄れている彼がリィエルの事をどうでもいいように扱うという事自体が、かなり重症である事の証拠です。
前の話の印象と今のアルタイルの印象が全く噛み合ってませんね。
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