「たく…リィエルの奴…!」
「言ったはずだ。あの女は危険だと」
「お前もしかして、天の知恵研究会がなにか仕掛けてくると知っていたって事か」
「【白金魔導研究所】の資金に不透明な所があると報告を受けていた。その流れ徹底的に洗った結果…」
「バークス=ブラウモンも奴らの繋がりが発覚したっていう事ですね」
「だったら何で俺と接触した時に言わなかった!?初めからルミアを囮に使うつもりだったんだろ!?」
は?ちょっと待てよ。
何だよそれ。
「どういう事ですか?アルベルトさん」
「…こんな命令を下す上層部も、それに黙って従う俺もクズだ。否定はしない。だがグレン、お前なら分かるはずだ」
「何がですか!?」
「…もし反対すれば、リィエルの素性を明かす事になるって事か」
は?レイフォードの素性?
それが何の取引材料になるんだよ。
「…先生。レイフォードは何者なんですか?」
「…【Project:ReviveLife】通称【
「【
「そうだ。あの女は【Project:ReviveLife】の唯一の成功例だ」
…マジかよ。
あまりの衝撃に言葉が出ない。
本当に死者蘇生なんて成功してたのか?
「…天の知恵研究会なのか?成功させたのは」
「そうだ。組織にいた、とある錬金術師のオリジナルだったんだ。その錬金術師は裏切り者として殺されたがな」
確かにそんなヤバい爆弾、迂闊に外に出せない。
とはいえ、それとこれは別問題だ。
「最優先事項は王女の救出だ。もしリィエルが行く手を阻むのなら、俺は容赦しない」
アルベルトさんはレイフォードの排除もやむなしという。
「いや、まずはあいつの勘違いを正す。その上で連れ戻す。2年前あいつを拾ってきた俺の責任だ」
グレン先生は、意地でもレイフォードも助けようとする。
一体どっちが正しいのだろう?
多分どっちも正解なんだ。
任務か、それとも命か。
何を優先するかで、話が変わってくるんだ。
「兄が現れたと言ったな。お前の言うことを聞くのか?」
「聞かせる!拳骨入れて無理矢理でも聞かせるんだよ!」
「よくそんな事を言えるな。お前は逃げた。仲間から、あいつから。そんなお前がリィエルを救う資格があるのか?答えろ!グレン=レーダス」
「全くのド正論だよコンチクショウ!けどな…俺はあいつらの教師だ。リィエルも今は俺の生徒なんだ!!」
「…変わらんな。だから俺はお前に期待するのかもしれないな」
ため息を一つついた途端、思いっきり先生を殴るアルベルトさん。
痛そう…。
「ぐぁ…痛ってぇな…!何しやがる!?」
「黙って消えた事はこれでチャラにしてやる」
そう言いながら懐から銃を取り出し、投げ渡す。
「これは…俺の…」
「王女救出が最優先だ。もしリィエル排除を余儀なくされた場合…文句は受けつけん」
「けっ…相変わらず面倒くさい野郎だ…。アルタイル、【次元跳躍】はできないのか?」
俺は首を横に振った。
「…どうやら何処かに落としたみたいですね。試したんですが、無理でした」
「そうか…なら仕方ねぇ。アルタイル、お前は」
「行きますよ。ここには結界だけ貼っていきます」
当然のように置いてかれかけるのを拒否する。
「ダメだ。エステレラお前は残れ」
アルベルトさんにまで止められる。
でも俺だって譲れない。
「2人には悪いけど、俺も助けに行く。例え…何を犠牲にしてでも」
俺は絶対に引かない、と睨みつけて言った。
「…ならば、自分の命は自分で守れ。いいな」
「アルベルト!?何言って!?」
「最初からそのつもりです」
「お前もノリ気で行く気になるな!!」
アルベルトさんは折れたらしいけど、グレン先生は中々認めなかったが、最後には認めてくれた。
俺達はアルベルトさんが仕掛けた魔力信号を頼りに、地下下水道から研究所内に侵入した。
道中キメラが何体か出てきたが、それも難なく撃退していた。
その終着点が…
水槽にはそれぞれ、異能の種類が刻まれていた。
「クソったれ野郎が…!!何で…何でこんな事が!?」
「まさか、全部異能者か!?」
「異能者嫌いとは聞いていたがこれ程だとはな…」
俺たちはこのビーカーを片っ端からぶっ壊していた。
俺には分からなかった、何でこんな事が出来るのか。
その時
「貴様ら!?貴重な
バークス=ブラウモンが入ってくる。
今、なんて言った?
「
「このわしの偉大なる魔術研究の礎になれたのだ!感謝して欲しいくらいだわい!」
「…お前は何故そこまで出来る?人の命にまで手を伸ばして、何がしたい?」
「アルタイル?何を言ってる?」
俺には分からなかった。
何故人を殺して何も思わないのか。
こいつのその原動力が知りたかった。
「ふん…何を聞き出すかと思えば…。いいか!わしはな、偉大なる魔術師になのだよ!将来わしの研究は、必ずや大きなものになる!その為の異能者!その為のあの娘!それを邪魔する貴様らを排除するのだ!!」
偉大なる魔術師…?
そんなもんの為に、こいつらは…!!
怒りで頭が茹で上がりそうになる。
今すぐにこいつを…!そう思った瞬間
『どんな事にも必ず表と裏があります。それを忘れないでください』
ベガの言葉が頭をよぎった。
表と…裏…等価交換…。
それを思い出した俺は、思いっきり息を吐き出して、最後の質問をぶつけた。
「最後に一つ聞きたい。命を奪ったお前は、一体誰かの命を救ったのか?」
「何?何言うかと思えば…。わしが何故人助けなどしなくてはならないのだ!?」
ああ…そういう事か。
こいつはただのクズ以下の畜生だ。
「…どんな物事にも表と裏がある。無くちゃ行けないんだ。なのにお前は命を奪うばかりで、救う事をしなかった。」
「なんじゃと?」
「等価交換と一緒だよ。
「アルタイル…」
その目には確かな光があり、その声は絶望に染まってはいなかった。
(この僅かの間で何があったのか…?)
何故かは分からないが、今アルタイルは成長した。
「ふん!小僧が!やれるものなやってみるがよい!」
そう言いながらバークスは首筋に何か打ち込む。
その瞬間、姿が異形に変わる。
まさか、ドラッグか!?
「チ…ヤク中め。切り刻んでやる」
アルタイルが糸を作り出しながら、1歩踏み込む。
その前にアルベルトが、立って止める。
「グレン、エステレラ。お前達は先に行け」
「でも、こいつは!?」
「くどいぞ」
食い下がるアルタイルをアルベルトが一言で切って捨てる。
その不器用な優しさに俺は、思わず苦笑いしてしまう。
「アルタイル行くぞ。アルベルト頼む」
「…分かりました」
アルタイルは俺と自分に糸を巻き付け、強化する。
「行くぞ!」
俺とアルタイルは一気に走り出す。
「行かせんぞぉ!!」
「『雷槍よ』」
アルベルトがバークスを足止めする間に、俺は足下を滑り抜け、アルタイルは三角飛びのよう要領で上から飛び越える。
俺達はそのままその場を走り去った。
「アルタイル、何があった?」
俺はアルタイルの決意が気になって、走りながら尋ねた。
「…遠征学習の前にベガに言われたんです。『どんな事にも必ず表と裏があります。それを忘れないでください』って。どうやら俺の悩みは筒抜けだったみたいです。…その言葉がよぎって、冷静になれました」
なるほどな、妹の言葉がこいつを守ったのか。
…家族ってのはいいものだな。
「もちろん、殺しは悪です。それを認める事はしません。あくまで手の打ちようが無い時にしか、殺りません。ただ俺は、相手に命に手を伸ばすだけの理由を、見つけただけです。だから…安心して下さい。俺はあいつらみたいに堕ちません」
「…ああ、分かってんだよ、んな事は」
分かってるよ、お前がそんな奴じゃない事は。
大切な人達を守ろうと必死になってるお前を、悪に堕ちるとは思ってねぇよ。
ただな…
「ただな、たまには周りを頼れよ。俺はお前らの教師なんだからな」
「…!ありがとうございます。先生、俺さ、今はこんな状況だけど、ここに来て良かったかも」
「…!そうかよ」
こいつの中で何があったかは分からない。
だが、一つだけ分かったのは、生徒に感謝される事の嬉しさだ。
自分の決断が、生徒にとって大切な何かになる。
これが、教師の喜びってやつかもしれないな。
「あとアルベルトの事だがな、あいつはこれ以上お前の手を血で汚したくねぇんだ。そこは分かってやってくれ」
その言葉に何も返さなかったが、しっかりその言葉を受け止めてくれているのは分かった。
「ここですね」
「ここだな。一気に行くぞ!3,2,1!!」
俺達は最奥の部屋のドアを蹴りあけた。
妹の言葉と等価交換。
この2つがアルタイルに闇と向き合う覚悟を与えてくれました。
今までただ闇雲に戦うだけの彼が本当の意味で戦う、魔術師の端くれになりました。
そんな彼を見ていってください。
ありがとうございました。