よろしくお願いします。
「「ルミア!」」
「アイル君!先生!」
鎖で吊るされ、痛々しいその姿に怒りを覚えるが、今はそれを抑える。
「ごめんルミア。すぐに助けるから」
「うん…待ってたよ。アイル君。先生も、無事で良かったです…」
俺は出来るだけルミアに安心させるように笑ってから、目線を下に下げて睨みつける。
「こんな時まで人の心配かよ…。おいリィエル!お前も黙って見てんじゃねえよ!ルミアがこんな目にあってんのに何とも思わねぇのか!?」
「おい、そこの変態野郎。よくも俺のダチに好き勝手してくれたな。腹は括ってあるんだろうな!?」
俺達のそんな圧力に息を漏らして後ずさる男と、それを庇うレイフォード。
「グレン、そこの貴方も。これ以上兄さんに近づかないで」
「流石僕の妹だ。リィエル、そいつらに僕の邪魔をさせるな。ついでに増援も用意しておいたよ」
「分かった。『万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を』」
そう言いながら指を鳴らすと、何処からとなくキメラがワラワラと出てきた。
「「チッ!!」」
俺達はすぐに背中合わせになって構える。
「先生、レイフォードをよろしく」
「キメラは任せたぞアルタイル」
こうして俺達の戦いが始まった。
「喰らえ!」
巻き付けっぱなしだった糸に魔力を流し、身体能力を向上させる。
俺は一番近くにいたやつを糸で真っ二つにする。
そのまま横に振って、2体まとめて切る。
もう片方の手で糸の弾を作り、打ち出して何匹か撃ち抜く。
「『雷帝の閃槍よ』!」
ライオン型のキメラに【ライトニング・ピアス】を放つも、魔術耐性が高いのか弾かれる。
前足を振り下ろしてくるのを、逆にその足を編んだ剣で、切り落とす。
倒れた所を心臓貫いて殺す。
その隙に亀型のキメラが炎を吐いてくるので、火除けの結界で防ぎつつ、突進してくるやつの頭を殴ってかち割る。
糸を首まきつけ、思いっきりぶん回しながら、先生の方を確認する。
元々、戦闘スタイル的にレイフォードは天敵なのだ。
俺は何体かに当てて吹き飛ばしながら、先生に方に投げ飛ばしつつ、首を跳ね飛ばす。
先生とリィエルの間に落としたその死体を利用し、体勢を整えさせる。
「先生!大丈夫ですか!?」
「すまん!助かった!けどグロい!!」
「無茶言わないで!後…」
俺は出来るだけ早く先生に作戦を伝える。
ぶっちゃけ俺の負担がかなり大きいが、そこは我慢する。
「…分かった!やるぞ!」
作戦を確認しあった俺達は、それぞれの敵に再度立ち向かう。
躱したりしながら少しずつ数を削りながら、フロア全体に糸を張り巡らせていく。
とはいえ、数が多すぎる。
全てを防ぎ、避けきるのは不可能だっだ。
攻撃を躱した場所にもう一体おり、そいつの尻尾に吹き飛ばされてしまった。
「ガ…!?いっつぅ…!」
「アルタイル!?無事うわっと!?」
「先生…は…じ…ぶん…にしゅ…中!」
結構衝撃が重く、防御を貫いてくる。
また、骨折れたかなこれ。
それでも何とか、糸を張り終えた俺は、先生に合図を送る。
その瞬間、先生は詠唱するふりをしながら、銃を上に投げる。
レイフォードはそれにつられて防御体勢をとるも、それはフェイク。
放り投げられた銃に気づかず、頭にあたる。
想定外の衝撃に怯んだ隙に、先生が【グラビティ・コントロール】でリィエルを止める。
その隙に俺も仕込んでおいたトラップを発動する。
「せーの!!オラァ!!!」
糸を一気に引く。
仕掛け続けたトラップがキメラ達の足に絡まり、宙に浮かせる。
「先生!退いて!」
俺はすぐさま先生に声をかける。
先生が退いた瞬間、キメラ達をレイフォードに叩きつける。
「この…邪魔!!」
「お前でも無理だぜレイフォード!それはキメラの重さだけじゃねえからな!」
俺はキメラの足を絡めるだけじゃなくて、この部屋の柱などに引っ掛け、この部屋自体が重りになる様に糸を通してるのだ。
その分俺の強化した腕力でも、結構ギリギリだった。
「先生!今!」
「任せろ!おぉぉぉぉ!!」
「や、やめろ!やめろォ!」
その隙に先生が銃で制御装置を壊しながら、変態野郎へ走り、その勢いも乗せて、思いっきり殴る。
「うるせぇ!!あいつの事をリィエルって呼んでる時点で手前は偽物なんだよ!!」
「思い出した…。【Project:ReviveLife】…通称【Re=L計画】」
いつの間にか這い出てきたレイフォードも、自身が何者か思い出したらしい。
「…2年前、裏切り者のシオンが密告した事で、帝国宮廷魔導師団に俺達の研究所を強制捜査された」
「ああ、知ってる。その時連絡を取っていたのは俺だからな。連絡が途絶え、研究所を襲撃したが、すでにシオンは死んでいた…重症だったイルシアも。そして彼女の【アストラル・コード】、つまり死ぬ瞬間までの記憶を受け継いだ少女を、俺は保護した」
「それが…私」
そう、それがリィエル=レイフォードという少女の正体だった。
「ちっ…逃げ出す時、お前の記憶をこちらの都合のいい方に改竄したつもりなんだが。結局ガラクタはガラクタだ」
「…ガラクタだぁ?」
よくわかった。
こいつはバークス以上…いや以下か、のクソだ。
あいつはあいつなりの理想があった。
こいつはそれすらない。
本当にクソ以下のクソ中のクソだ。
「ガラクタ?てめぇ、いい加減にしろよ」
「ガラクタはガラクタだ。もう要らない」
「てめぇ!『猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て』!!」
「その首、跳ね飛ばす!!」
俺達はこの男…ライネルを殺そうとした。
したのだが、なにかに阻まれる。
「!?何だ!?」
「…嘘だろ。あれは…!?」
煙の奥から現れたのは、レイフォードによく似た3人の女の子だった。
「…そう。この子達がいるからね」
「まさか、成功したのか!?」
クソ、厄介なことに!!
マズイ、腕の感覚がほとんど…!
「この子達は完璧だよ。なんせ面倒くさい感情は最初から消したあるからね。やれ!そいつらを始末しろ!」
こうして俺達に襲いかかってくる彼女達。
一人一人が足止めされる間に、残った1人に抜かれ、レイフォードに襲いかかる。
先生は手早く1人を蹴り飛ばし、レイフォードの方に行く奴を追いかける。
「先生の方には行かせるかよ!」
俺は自分の相手の剣を糸で縛り、先生の後ろを追いかけるやつにぶつける。
そのまま、飛び蹴りで2人纏めて蹴り飛ばす。
負傷してる腹が痛むが、それは無視し俺はすぐに先生に合流する。
「アルタイル!無事か!?」
「ッ!?こっちは!先生こそ大丈夫?」
「は!誰に言ってんだ!?」
「どうして…私には、なにも無いのに…」
レイフォードは泣きながらこっちを見上げる。
「うっせぇバーカ。何も無い奴をこの俺が守るかよ!」
「お前に何かあれば、ルミア達が悲しむ。俺はそれを見たくないだけ!」
俺が糸を使った遠距離攻撃で牽制し、先生が格闘術で接近戦。
気づけばこういう形で戦闘を続行していた。
「私は…人形なのに…」
「ああ!?人形はな、そんな顔して泣かないんだよ!というか、アルタイル!重力で止められないのか!?」
「無理!先生巻き込むし、それに速い!それ以上に詠唱してる暇ない!…後レイフォード、ルミアも、システィーナも、クラスの連中も、誰もお前を人形とは思ってねぇよ!…一応、俺もな」
「でも、グレンに酷いことした。システィーナやルミア、皆にも…!」
「だったら、謝りゃいいだけだろうよ。土下座でも何でもして、どんな罵詈雑言受けても、ひたすら頭下げ続けろ!」
「ちなみに俺は許さんからな!覚えとけよ!ってしまった!アルタイル!!」
一体が俺達のの攻撃をすり抜け、俺に迫ってくる。
「ちっ!」
俺はレイフォードに結界を張り、距離を取りながら迫ってきたやつに糸を巻き付ける。
「しゃがんで!」
そのまま、残りの2人にぶつける。
「はぁ…はぁ…」
「お前、マナ欠乏症か!?無理すんな!」
それもあるが、それ以上に身体強化による、肉体の限界が近い。
腕もほとんど上がらない。
…なのに俺は無意識にレイフォードの頭を撫でていた。
「…レイフォード…自分の…大切なものの為に…命を懸けろ。義務だとか使命だとか何だとか…お前みたいなバカが…無い知恵振り絞っても、たかが知れてるだろうが…」
「私の大切なもの…」
そう、大切なもの。
俺もそうやって探して…見つけた。
煌めく一等星、それも沢山。
「もう…分かってるだろ?」
するとレイフォードは剣を強く握り、立ち上がる。
「ごめん、私の妹たち。勝手だけど貴女達の分まで生きるから…さようなら!!」
その剣技はあまりに美しく、歴然とした差があった。
「さてと…」
「終わらせましょうか…」
俺達はゆっくりとライネルに近づく。
「ふ、ふざけるな!『猛き雷帝よ』ぎゃああああ!!!!?」
「遅い、うるさい」
俺はすぐに向けられた左腕を、糸で切り落とす。
糸が赫く染まるが、もう俺は気にとめない。
「ごめん、ルミア。少し目を瞑ってて。…すぐに終わる」
「アイル君…?ダメ!アイル君!?」
俺はルミアの制止の声を無視して、手刀を横に振る。
その先の糸が切ったのはライネルの首…ではなくルミアを縛る鎖だった。
俺は自然落下するルミアを糸で巻き付け、こっちに手繰り寄せて、抱きとめる。
「…ふぇ?」
「殺らねぇよこんな奴。そのまま無様に壊れやがれ、三下が」
ライネルは痛みと恐怖のあまり、失禁しながら気を失っていた。
「アイル君…アイル君!!」
「待たせてごめん、ルミア。もう大丈夫だからな」
俺は抱きついてくるルミアを、優しく抱き締め返しながら、頭を撫でた。
こうして俺達の、ルミア奪還作戦は成功に終わった。
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