ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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アルタイルもいるので、リィエルだけじゃなくて、キメラ達にも参戦してもらいました。
よろしくお願いします。


遠征学習編5話

「「ルミア!」」

 

「アイル君!先生!」

 

鎖で吊るされ、痛々しいその姿に怒りを覚えるが、今はそれを抑える。

 

「ごめんルミア。すぐに助けるから」

 

「うん…待ってたよ。アイル君。先生も、無事で良かったです…」

 

俺は出来るだけルミアに安心させるように笑ってから、目線を下に下げて睨みつける。

 

「こんな時まで人の心配かよ…。おいリィエル!お前も黙って見てんじゃねえよ!ルミアがこんな目にあってんのに何とも思わねぇのか!?」

 

「おい、そこの変態野郎。よくも俺のダチに好き勝手してくれたな。腹は括ってあるんだろうな!?」

 

俺達のそんな圧力に息を漏らして後ずさる男と、それを庇うレイフォード。

 

「グレン、そこの貴方も。これ以上兄さんに近づかないで」

 

「流石僕の妹だ。リィエル、そいつらに僕の邪魔をさせるな。ついでに増援も用意しておいたよ」

 

「分かった。『万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を』」

 

そう言いながら指を鳴らすと、何処からとなくキメラがワラワラと出てきた。

 

「「チッ!!」」

 

俺達はすぐに背中合わせになって構える。

 

「先生、レイフォードをよろしく」

 

「キメラは任せたぞアルタイル」

 

こうして俺達の戦いが始まった。

 

「喰らえ!」

 

巻き付けっぱなしだった糸に魔力を流し、身体能力を向上させる。

俺は一番近くにいたやつを糸で真っ二つにする。

そのまま横に振って、2体まとめて切る。

もう片方の手で糸の弾を作り、打ち出して何匹か撃ち抜く。

 

「『雷帝の閃槍よ』!」

 

ライオン型のキメラに【ライトニング・ピアス】を放つも、魔術耐性が高いのか弾かれる。

前足を振り下ろしてくるのを、逆にその足を編んだ剣で、切り落とす。

倒れた所を心臓貫いて殺す。

その隙に亀型のキメラが炎を吐いてくるので、火除けの結界で防ぎつつ、突進してくるやつの頭を殴ってかち割る。

糸を首まきつけ、思いっきりぶん回しながら、先生の方を確認する。

元々、戦闘スタイル的にレイフォードは天敵なのだ。

俺は何体かに当てて吹き飛ばしながら、先生に方に投げ飛ばしつつ、首を跳ね飛ばす。

先生とリィエルの間に落としたその死体を利用し、体勢を整えさせる。

 

「先生!大丈夫ですか!?」

 

「すまん!助かった!けどグロい!!」

 

「無茶言わないで!後…」

 

俺は出来るだけ早く先生に作戦を伝える。

ぶっちゃけ俺の負担がかなり大きいが、そこは我慢する。

 

「…分かった!やるぞ!」

 

作戦を確認しあった俺達は、それぞれの敵に再度立ち向かう。

躱したりしながら少しずつ数を削りながら、フロア全体に糸を張り巡らせていく。

とはいえ、数が多すぎる。

全てを防ぎ、避けきるのは不可能だっだ。

攻撃を躱した場所にもう一体おり、そいつの尻尾に吹き飛ばされてしまった。

 

「ガ…!?いっつぅ…!」

 

「アルタイル!?無事うわっと!?」

 

「先生…は…じ…ぶん…にしゅ…中!」

 

結構衝撃が重く、防御を貫いてくる。

また、骨折れたかなこれ。

それでも何とか、糸を張り終えた俺は、先生に合図を送る。

その瞬間、先生は詠唱するふりをしながら、銃を上に投げる。

レイフォードはそれにつられて防御体勢をとるも、それはフェイク。

放り投げられた銃に気づかず、頭にあたる。

想定外の衝撃に怯んだ隙に、先生が【グラビティ・コントロール】でリィエルを止める。

その隙に俺も仕込んでおいたトラップを発動する。

 

「せーの!!オラァ!!!」

 

糸を一気に引く。

仕掛け続けたトラップがキメラ達の足に絡まり、宙に浮かせる。

 

「先生!退いて!」

 

俺はすぐさま先生に声をかける。

先生が退いた瞬間、キメラ達をレイフォードに叩きつける。

 

「この…邪魔!!」

 

「お前でも無理だぜレイフォード!それはキメラの重さだけじゃねえからな!」

 

俺はキメラの足を絡めるだけじゃなくて、この部屋の柱などに引っ掛け、この部屋自体が重りになる様に糸を通してるのだ。

その分俺の強化した腕力でも、結構ギリギリだった。

 

「先生!今!」

 

「任せろ!おぉぉぉぉ!!」

 

「や、やめろ!やめろォ!」

 

その隙に先生が銃で制御装置を壊しながら、変態野郎へ走り、その勢いも乗せて、思いっきり殴る。

 

「うるせぇ!!あいつの事をリィエルって呼んでる時点で手前は偽物なんだよ!!」

 

「思い出した…。【Project:ReviveLife】…通称【Re=L計画】」

 

いつの間にか這い出てきたレイフォードも、自身が何者か思い出したらしい。

 

「…2年前、裏切り者のシオンが密告した事で、帝国宮廷魔導師団に俺達の研究所を強制捜査された」

 

「ああ、知ってる。その時連絡を取っていたのは俺だからな。連絡が途絶え、研究所を襲撃したが、すでにシオンは死んでいた…重症だったイルシアも。そして彼女の【アストラル・コード】、つまり死ぬ瞬間までの記憶を受け継いだ少女を、俺は保護した」

 

「それが…私」

 

そう、それがリィエル=レイフォードという少女の正体だった。

 

「ちっ…逃げ出す時、お前の記憶をこちらの都合のいい方に改竄したつもりなんだが。結局ガラクタはガラクタだ」

 

「…ガラクタだぁ?」

 

よくわかった。

こいつはバークス以上…いや以下か、のクソだ。

あいつはあいつなりの理想があった。

こいつはそれすらない。

本当にクソ以下のクソ中のクソだ。

 

「ガラクタ?てめぇ、いい加減にしろよ」

 

「ガラクタはガラクタだ。もう要らない」

 

「てめぇ!『猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て』!!」

 

「その首、跳ね飛ばす!!」

 

俺達はこの男…ライネルを殺そうとした。

したのだが、なにかに阻まれる。

 

「!?何だ!?」

 

「…嘘だろ。あれは…!?」

 

煙の奥から現れたのは、レイフォードによく似た3人の女の子だった。

 

「…そう。この子達がいるからね」

 

「まさか、成功したのか!?」

 

クソ、厄介なことに!!

マズイ、腕の感覚がほとんど…!

 

「この子達は完璧だよ。なんせ面倒くさい感情は最初から消したあるからね。やれ!そいつらを始末しろ!」

 

こうして俺達に襲いかかってくる彼女達。

一人一人が足止めされる間に、残った1人に抜かれ、レイフォードに襲いかかる。

先生は手早く1人を蹴り飛ばし、レイフォードの方に行く奴を追いかける。

 

「先生の方には行かせるかよ!」

 

俺は自分の相手の剣を糸で縛り、先生の後ろを追いかけるやつにぶつける。

そのまま、飛び蹴りで2人纏めて蹴り飛ばす。

負傷してる腹が痛むが、それは無視し俺はすぐに先生に合流する。

 

「アルタイル!無事か!?」

 

「ッ!?こっちは!先生こそ大丈夫?」

 

「は!誰に言ってんだ!?」

 

「どうして…私には、なにも無いのに…」

 

レイフォードは泣きながらこっちを見上げる。

 

「うっせぇバーカ。何も無い奴をこの俺が守るかよ!」

 

「お前に何かあれば、ルミア達が悲しむ。俺はそれを見たくないだけ!」

 

俺が糸を使った遠距離攻撃で牽制し、先生が格闘術で接近戦。

気づけばこういう形で戦闘を続行していた。

 

「私は…人形なのに…」

 

「ああ!?人形はな、そんな顔して泣かないんだよ!というか、アルタイル!重力で止められないのか!?」

 

「無理!先生巻き込むし、それに速い!それ以上に詠唱してる暇ない!…後レイフォード、ルミアも、システィーナも、クラスの連中も、誰もお前を人形とは思ってねぇよ!…一応、俺もな」

 

「でも、グレンに酷いことした。システィーナやルミア、皆にも…!」

 

「だったら、謝りゃいいだけだろうよ。土下座でも何でもして、どんな罵詈雑言受けても、ひたすら頭下げ続けろ!」

 

「ちなみに俺は許さんからな!覚えとけよ!ってしまった!アルタイル!!」

 

一体が俺達のの攻撃をすり抜け、俺に迫ってくる。

 

「ちっ!」

 

俺はレイフォードに結界を張り、距離を取りながら迫ってきたやつに糸を巻き付ける。

 

「しゃがんで!」

 

そのまま、残りの2人にぶつける。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「お前、マナ欠乏症か!?無理すんな!」

 

それもあるが、それ以上に身体強化による、肉体の限界が近い。

腕もほとんど上がらない。

…なのに俺は無意識にレイフォードの頭を撫でていた。

 

「…レイフォード…自分の…大切なものの為に…命を懸けろ。義務だとか使命だとか何だとか…お前みたいなバカが…無い知恵振り絞っても、たかが知れてるだろうが…」

 

「私の大切なもの…」

 

そう、大切なもの。

俺もそうやって探して…見つけた。

煌めく一等星、それも沢山。

 

「もう…分かってるだろ?」

 

するとレイフォードは剣を強く握り、立ち上がる。

 

「ごめん、私の妹たち。勝手だけど貴女達の分まで生きるから…さようなら!!」

 

その剣技はあまりに美しく、歴然とした差があった。

 

「さてと…」

 

「終わらせましょうか…」

 

俺達はゆっくりとライネルに近づく。

 

「ふ、ふざけるな!『猛き雷帝よ』ぎゃああああ!!!!?」

 

「遅い、うるさい」

 

俺はすぐに向けられた左腕を、糸で切り落とす。

糸が赫く染まるが、もう俺は気にとめない。

 

「ごめん、ルミア。少し目を瞑ってて。…すぐに終わる」

 

「アイル君…?ダメ!アイル君!?」

 

俺はルミアの制止の声を無視して、手刀を横に振る。

その先の糸が切ったのはライネルの首…ではなくルミアを縛る鎖だった。

俺は自然落下するルミアを糸で巻き付け、こっちに手繰り寄せて、抱きとめる。

 

「…ふぇ?」

 

「殺らねぇよこんな奴。そのまま無様に壊れやがれ、三下が」

 

ライネルは痛みと恐怖のあまり、失禁しながら気を失っていた。

 

「アイル君…アイル君!!」

 

「待たせてごめん、ルミア。もう大丈夫だからな」

 

俺は抱きついてくるルミアを、優しく抱き締め返しながら、頭を撫でた。

こうして俺達の、ルミア奪還作戦は成功に終わった。




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