ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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遂にアニメ最終章天使の塵編スタートです。
いや、天使の塵編なのかは分からないですけど、大事な要素なので、勝手に章タイトルにしちゃいました。
よろしくお願いします。


天使の塵編1話

「あ、いた。あれ?グレン先生も一緒じゃん」

 

本を返しに行くと言ったっきり、戻ってこないシスティーナを探していた俺達は、先生と何やら話しているシスティーナを発見する。

しかし、システィーナの顔は耳まで真っ赤で、顔を手で覆っていた。

 

「システィ?どうかしたの?」

 

ルミアが心配そうに近づくが、俺は何となくその理由を察していた。

 

(さては【リヴァイバー】の時の事を思い出したな。いや、お礼を言われて思い出したのか)

 

ただその姿勢はまるで泣いてるように見えてしまい

 

「グレンが泣かしたの?システィーナとルミアは…私が守る。『万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を』」

 

あちゃー、新しい依存先を見つけちゃったから、少し敏感だったかな?

何がともあれ、これは少しマズイ。

慌てて俺も糸を展開して捉えようとするも間に合わず。

先生の制止も聞かずに暴れ出すリィエル。

 

「待て!?人の!?話を!?どわぁーー!?」

 

吹き飛ばされる先生。

ここでさらにマズイ展開に。

 

「いぃぃ!?」

 

なんと馬車の目の前に飛ばされたのだ。

 

「先生!?」

 

「危ない!!」

 

「間に合え!!」

 

ルミアとシスティーナが悲鳴をあげる隣で俺は糸を放つ。

だが遠すぎて間に言わないって思った瞬間、

 

『豪壮なる・風の流れよ』

 

突然先生が風で浮かされる。

恐らく中にいた人が魔術を使ったのだろうが、凄い制御だ。

その魔術制御に感心していると中から本人が出てくる。

 

「あはは!まさかこの学院に着いて真っ先に君に会えるなんてね。システィーナ」

 

「あ、貴方は!?」

 

ん?システィーナの知り合いか?

フィーベル家は名門だし知り合いがここに来てもおかしくはないが…?

 

「ん?何だ?この空気」

 

グレン先生もその2人の反応に疑問を抱いたらしく、疑いの目を向ける。

 

「私はレオス、【レオス=クライトス】。この度この学院に招かれた特別講師で…そこにいる()()()()()()()()()()()()

 

「「「「…え?ええええええええええええ!!!!????」」」」

 

婚約者って…マジ!?

 

「ちょ!?ちょっとレオス!?貴方何言ってるの!?」

 

おや、システィーナもこれには大慌てか。

 

「あはは!私達はかつて将来を誓い合った仲じゃないですか」

 

「それは子供の頃の冗談というか…」

 

なるほど…それかなり痛々しくね?

 

「お前それマジで言ってんの?止めとけって、こいつくっつくなんて人生の墓場入りってレベルじゃねぇぞ?」

 

「どう意味よそれ!?」

 

いやあんたがマジで何言ってんの?

そこで茶々入れるか!?普通。

 

「私の将来の伴侶を侮辱する様な言葉は、慎んで頂けますか」

 

おお〜、男らしい〜!

これには流石のグレン先生も黙らざるを得ない。

 

「待ってレオス。グレン先生はその…冗談というか…」

 

「グレン先生…?なるほど貴方がグレン=レーダスさんですか」

 

「ん?なんで俺の事知ってるんだよ?」

 

「私が講師を務める【クライトス魔術学院】でも、貴方の事は噂になってますので。【アルザーノ帝国魔術学院】に突如現れた、期待の新人講師。呪文の数を競う、昨今の詰め込み魔術教育に反し、呪文を根本から理解し、実践に活かす事を旨とする中々珍しいタイプの講師だとか…。貴方の講義、是非一度拝聴してみたいと思っていました」

 

すげぇじゃんグレン先生!

こりゃ人間国宝も夢じゃないな!!

 

「そんな大層なものじゃないんだかな」

 

「そうですか。…システィーナ、私は今でも本気です。貴方を心から愛しています」

 

「やったじゃねぇか白猫!お前みたいな生意気な奴にお熱とか、普通有り得ねぇからな〜!いや〜【蓼食う虫も好き好き】とはよく言ったものだ!」

 

あちゃー、恥ずかしさからか、怒りからかプルプルしてるぞシスティーナ。

そろそろ限界か?

 

「あ、そうだ。この話上手くまとまったら俺が祝辞を述べてやっても」

 

「『このバカー』!!」

 

あ、遂に我慢の限界が来たか。

高々とぶっ飛んでったな。

 

「システィーナ…かなり怒ってる。なんで?」

 

「アハハ…何か大変な事になって来ちゃったな…」

 

「胃と頭が痛い…」

 

リィエルは訳が分からず、首を傾げている。

そして俺とルミアは、思わず頭を抱える。

そんな話をしているとふと、視線を感じた。

正確には俺じゃなくて()()()()()()()()()だ。

その先には馬車の御者がいて…。

急に寒気というか嫌な感じがした。

まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような…。

俺はすぐに目を逸らして、この事態の収拾を図る事にした。

 

 

 

「これまでこの【ツァイザーの魔力効率変換式】を解説してきましたが…」

 

レオスの講義が続く。

その内容はとても分かりやすく、上手だった。

 

(…完璧だ)

 

思わずそう評価した俺は、同時に焦りも覚える。

 

(軍の一般魔導兵の半分以上がいまいち理解していないマテリアルフォースを、ペーペーの学生達に完璧に理解させやがった。しかしいくら何でも、この内容は早すぎるだろ。)

 

そう思いながらすぐ下にいるアルタイルを見る。

恐らくこいつは気づいたのだろう。

途中から落ち着きがなくなって、顔色も悪い。

 

(出来のいい生徒なら、【ショック・ボルト】ですら、やり方次第で人を殺せる事に気づいちまったはずだ。だがこいつらの殆どは大きな力の意味も、それがもたらす結果も、知識として知ってるだけで、何一つ実感が伴ってない)

 

「やっぱりこういう授業はあまり認めたくあれませんか?」

 

突然、ルミアがこっちを振り向きながら話しかけてくる。

隣に座るアルタイルもこっちを見ている。

 

「…まあな」

 

「先生は常日頃、『力の意味と使い方を考えろ。力に使われるな』って仰いますけど、今ならその意味がわかる気がします」

 

「…」

 

「大丈夫っすよ。少なくとも先生の教えを受けた奴で、間違うやつはいませんよ。俺を筆頭に」

 

思わず2人を凝視してしまう。

そんな笑う2人を見ていると無性にむず痒くなり

 

「…別に?何かあのイケメンが思った以上にやるから嫉妬してるだけだし。良かったな白猫。マジでいい買い物したな!」

 

適当に白猫を弄って標的をそらすことにした。

 

「…しつこい」

 

少し怒ったように席を立つ白猫に

 

「システィーナ!どうでしたか?忌憚のない意見が聞きたいですね」

 

レオスが話しかける。

白猫は困った顔をしながら

 

「そ、その…とても素晴らしかったわ!」

 

「それは良かった!何せ貴女は講師泣かせとして有名らしいですから」

 

「いや、それは…」

 

その噂、あいつまで聞いてるのかよ…。

 

「貴女の将来の夫として、まずは第1関門突破、と言ったところでしょうか」

 

「だからそういう事を人前で言うのは…!」

 

そんな中、カッシュとセシルが冷やかす。

 

「システィーナ、少し外を一緒に歩きませんか?貴女と話したい事があります」

 

「…それは今でなくちゃダメなの?」

 

「今でなくても構いませんが、何れ話さなくてはならない重要な事です」

 

「…ルミアごめん!ちょっと行ってくるね」

 

「う、うん…」

 

そのままレオスと一緒に出ていく白猫。

それを心配そうに見るルミアと、気に入らなそうに見るアルタイル。

 

「先生、アイル君。お願いがあるんですが…」

 

 

 

「な〜んで俺が他人の恋路を覗き見せにゃならんのだ?俺こういうの興味ねぇんだよな〜…」

 

「ごめんなさい先生」

 

「ダウト。絶対先生こういうの好きでしょ?あと顔がニヤけてる」

 

「嘘じゃねえよ!」

 

「シー!声でかい!結界の意味が無くなる!」

 

グレン先生の言葉に俺とルミアは苦笑いするしかない。

俺達は今、システィーナとクライトス先生を追いかけている。

 

「システィーナ、私と結婚してください」

 

お!いきなり告ったぞ!

 

「おお!あの男いきなり結婚申し込みやがった!さぁ〜て!面白くなってきました〜!」

 

やっぱり嘘じゃん!あとうるさい!

 

「だから静かに!…で?ルミアは何が不安なんだ」

 

俺は先生に釘を刺しつつ、ルミアに質問した。

 

「アハハ…バレちゃってたか。よく分からないんだけど、何か嫌な予感が…アイル君もでしょ?」

 

どうやら、俺の方もバレてたらしい。

 

「ルミアもか…。俺も嫌な予感がする…。まるで蜘蛛の巣に引っかかったような…ベタつく感じ」

 

俺も言いようのない違和感を感じていた。

まるで()()()()()()()()みたいな感じがする。

そんな話をしていても話は進んでおり、システィーナの顔色がどんどん悪くなっていく。

断片的に聞こえる話を繋いでいくと、どうやらシスティーナの夢を全否定しているらしい。

婚約者を名乗るなら、応援しろよ。

クソ野郎が。

 

「詭弁抜かしてんじゃねぇぞ!!」

 

「先生!?」

 

とうとう我慢できなかったかこの人。

まあ、気持ちは分かる。

あの鼻っ柱へし折ってやりたい。

 

「お前はお前の信じる道をいけ!お前の人生の主人公は、お前だってことを忘れるな!」

 

何格好つけてんだよこの人は。

 

「また貴方ですか。しかも覗き見とは。悪いが貴方には関係ない事だ。口出しは無用に願いたい」

 

丁寧に言ってるけど、すごい拒絶だな。

 

「いいえ、関係あるわ」

 

「…白猫?」

 

システィーナ?何覚悟決めた顔してるの?

 

「システィーナ?どういう事です?」

 

「それは…だって…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()

 

「「…え?」」

 

「「「えぇぇぇぇ!!!?」」」

 

唖然とする講師陣と、驚愕する俺達。

マジか〜!?そう来るか〜!?

 

「だから!貴方とは結婚できない!!」

 

そう言いながらチラチラと先生を見るシスティーナ。

そのアイコンタクトを理解したのか

 

「そういう事だぜ!レオスさん!」

 

クソ腹立つ笑顔を浮かべながら、高笑いするグレン先生。

 

「嘘だ!?私のシスティーナが貴方のような下品な男と!?」

 

『私の』はともかく『下品な』には同意しかない。

 

「嘘じゃねぇぜ!なんて言ったってこの可愛い白猫ちゃんは、昨日も俺のベッドの上で」

 

「『このバカ〜!』」

 

ナイス即興改変。

やっぱセンス半端ねぇなあいつ。

 

「幾ら何でもやりすぎよ!大体私達まだキスしか」

 

「キス!?キスとはどういう事です!?」

 

「いや!?それは…!?その〜!?」

 

いや、あれを1カウントしちゃダメだろ!?

一応隣のルミアに聞いてみた。

 

「…人工呼吸をキスの1カウントはアリ?ナシ?」

 

「…アリで///」

 

女性的にはアリらしい。

男にはよくわからんな。

顔が赤いのも含めて。

 

「という訳で!白猫は俺の嫁だ!諦めてくれ」

 

華麗な着地を決めながら、ドヤ顔も決めるグレン先生。

ナチュラルに肩に手を回してるし。

 

「ダメですね!システィーナを思うからこそ、早く現実を教えるべきでしょう!貴方はシスティーナに相応しくない!」

 

「つっても〜!この白猫ちゃんが選んだのは〜!この俺な訳だし〜!」

 

一体いつまであのクソ腹立つドヤ顔するんだ?

 

「覚悟しろグレン=レーダス!私を敵に回した事を後悔させてやる!」

 

…ふーん、あれが素か。

こいつの底はしれてるな。

 

「ふーん、それがお前の本性か。俺もよーく分かった…やっぱ白猫は渡せんわ」

 

グレン先生も何かを感じ取ったらしい。

顔つきがさっきまでとは一転、真剣な顔になる。

 

「白黒はっきり付けなきゃいけねぇようだな!」

 

そう言いながら、左手袋を外して投げつけた。

 

「決闘だ!お前に受けられるか?」

 

何とグレン先生が決闘を申し出たのだ。

 

「…むしろ臨むところだ」

 

それをクライトス先生が受諾、システィーナの進退をかけて、2人が決闘をすることになったのだ。

 

「決闘の日時と方法は、後ほど話し合おう。失礼する」

 

そう言って去っていくクライトス先生の背中を見ながら、俺はグレン先生に話しかけた。

 

「思い切りがいいですね」

 

「…やっちゃったぜ☆」

 

「『やっちゃったぜ☆』じゃないでしょう!!?何してるんですか!!?」

 

 

 

「だが考えてみればこれはチャンス!という訳でお前ら、俺の逆玉作戦のために、お前達に【魔導兵団戦】の特別授業を行ってやる!」

 

「「「「「「はぁ?」」」」」」

 

話し合いの結果、決闘の方法と結果は【魔導兵団戦】に委ねられたのだった。

 

「ホント…なんでこうなるかな?」




幼なじみいいですね〜!
自分にはいないので、同性でも欲しかったです。
この勘の良さが果たして吉と出るか、凶と出るか。
それではありがとうございました。

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