ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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ここで主人公が新技を身につけます。
あ、最初に言っておくと、この章ではあまりボロボロにはなりません。
だってメインの戦闘はグレン1人ですから。
それではよろしくお願いします。


天使の塵編2話

明け方の公園にハープの音色が響く。

そのハープは少し変わっており、赤い糸で編み上げられたような、デザインをしていた。

軽やかに、自由にそれを引くのは1人の少年。

その少年が旋律を奏でる度に、周囲に小さい光の玉が浮いたり電撃が走ったりと、まるでミニパレードの様な派手さと煌びやかさがあった。

演奏もラスサビ。

一気に激しく、周囲に電撃が走り、演奏が終わるのと同時に一気に弾けた。

 

 

 

「…ふぅ、こんなもんかな」

 

そう言って演奏していた俺、アルタイル=エステレラは汗を拭った。

 

「いや…こんなもんかなって…」

 

「貴方…本当に凄いことしたわよ…?」

 

それを呆然と見守るグレン先生ととシスティーナ。

 

「まあ、今日ではガチるつもりはないけど、できて損はないでしょ」

 

そんな2人の反応には気にもとめずに、俺は片付けを始める。

 

「…先生。本当に俺はあれでいいんです?」

 

「ああ、お前の実力は、あいつらの中ではずば抜けてる。そんなお前が無理に足並みを揃える必要は無い。…ま、要するに集団行動出来ないアウトローって事だな!」

 

「そう言われるとあんまり嬉しくない!」

 

「先生!アイル!速く帰りましょう!」

 

俺達はだべりながら重いものを片付ける間に、システィーナが軽いものを片付け終わったらしい。

 

「じゃあ、まあ噴水前で」

 

「おう」

 

俺はシスティーナ達と別れて、帰り道を歩きながら、この間の授業を思い出していた。

 

「【魔導兵団戦】…【三人一組・一戦術単位(スリーマンセル·ワンユニット)】ね…」

 

 

「私が皆さんに教えるのは、近代戦争において最も重要な、魔導兵の戦い方です」

 

そう言いながら、3色の円とそれぞれの説明を書きながら教えてくれるクライトス先生。

相変わらずの丁寧でわかりやすい説明。

前も思ったけど、講師の腕自体は、グレン先生と同じくらいのいい先生だよなこの人。

 

「攻撃前衛は攻撃、防御前衛は防御、そして支援後衛は状況に応じて前2人を補佐。この【三人一組・一戦術単位(スリーマンセル・ワンユニット)】が現代の魔導兵戦術の基礎中の基礎なのです」

 

「3つの役割にそれぞれ専念させた方が、同じ頭数でも圧倒的に強く立ち回れる…。という事ですね」

 

そういう事だギイブル。

ただし…それが実現出来るならな。

 

「その通りだ。1人の行動に3人の命が関わってる」

 

そう言って話の続きをしたのは、聞いていたグレン先生だった。

 

「つまり我が強くて、他者と足並みを揃えられない奴は皆の命を危険に晒すってことだ」

 

そう言って意地悪そうにギイブルを見ると、ギイブルは恥ずかしそうにそっぽ向く。

 

「『魔術師の戦場に英雄はいない』よく覚えておくんだな」

 

 

 

「【魔導兵団戦】とは、その名の通り魔導師による集団戦闘である」

 

朝になり、登校してから演習場へと移動した俺達は、ハー…ハーゲー先生の説明を聞いていた。

 

「生徒諸君は、指揮官である講師の指示に従い進軍。学生呪文を軍用呪文とみなし、戦死とみなされた生徒は、戦場から退場とする。…指揮官が何処へ、どのタイミングで、どれだけの戦力を投入するかが戦局の鍵となるだろう。演習時間は3時間、敵の本拠地の制圧、もしくは指揮官である担任講師を撃破すれば勝利だ」

 

「いやー懇切丁寧な説明、ありがとうございます!ハーベスト先輩」

 

礼を言うならもっとそれっぽくしようよ…。

 

「崇高な学院の授業を、女子生徒を賭けた決闘に使うなど…!恥を知れ!グレン=レーダス!レオス先生!期待してますぞ!この最低男に一泡吹かせてやってください!」

 

いや、この方法を指定したのはクライトス先生なんですけど?

 

「もちろんです」

 

そのままシスティーナに話しかけるクライトス先生。

本当にこの人は…空気読まねぇな。

システィーナの顔を見ろよ。

恥ずかしくて堪らないって顔だぞ?

 

「よーし!!お前ら!俺が逆玉に乗れるように力貸してくれるよな!!」

 

「よしわかった!あんたは本当に一回黙れ!!」

 

あまりにも恥ずかしい事を平然と宣うこのアホ講師に、思わずツッコミを入れてしまう。

負けた方がいい気がしなくもない…。

 

「で?システィーナ?本当に勝った方と結婚する気ですの?」

 

ウィンディがシスティーナを肘でつつきながら、からかうように聞いている。

よく見ると周りの女子も期待十分みたいな目で見てる。

 

「結婚!?する訳ないじゃない!?私まだやりたい事いっぱいあるし…」

 

おや?何やら黙り込んだぞ?

これは…さてはグレン先生が勝った時のこと想像してるな。

 

「わぁぁぁぁ!?何考えてるのよ!?何で私があんな奴とぉ!?」

 

突然喚き散らすシスティーナ。

それを見て驚くクラスメイトと、不思議そうにするリィエル。

そして呆れる俺とルミア。

 

「システィーナ、なんか変。顔が赤くなったり怒ったり叫んだり…病気?」

 

「ある意味そうかもな…」

 

「じゃあ医者にみせないと」

 

「この病気は、お医者さんじゃ治せないんじゃないかな?」

 

そんな色々と混沌とした中、【魔導兵団戦】が始まった。

 

相手は武闘派の4組。

頭数、各生徒の練度など、あらゆる要素で俺達を上回ってる。

それでも俺達は

 

「「『大気の壁よ』!」」

 

「クソ!どうなってるんだ!?戦力ではこっちが上回ってるはずなのに!?」

 

そう、拮抗していた。

数も、個々の力も勝っている4組にだ。

 

「ふん、当然だろ」

 

 

 

「『魔術師の戦場に英雄はいない』…つまり、我を捨て、三人一組を組めってことですね?」

 

ギイブルが意を得たりと言わんばかりに言うが

 

「はあ?お前らに三人一組なんて無理に決まってるだろ」

 

「「「え?」」」

 

グレン先生が全否定し、みんなが惚ける。

やっぱり気づいてなかったか。

 

「【三人一組·一戦術単位(スリーマンセル・ワンユニット)】なんて、プロの軍人が十分な訓練を積んで、初めて実用できる。そういう事でしょ?」

 

俺は後ろから先生の言葉をかっさらった。

 

「その通りだ。気づいてたか」

 

「じゃあ、どうしろってんだよ!?」

 

カッシュが食いつくが、先生はそれをニヤリと笑いながら返した。

 

「なぁに、簡単な事さ…」

 

 

 

「『雷精の紫電よ』!」

 

「『大気の壁よ』!」

 

そう俺達の作戦は【二人一組・一戦術単位(ツーマンセル·ワンユニット)】だ。

3人が難しいなら、2人でやればいい。

単純だか、効果的だ。

なんせ攻めるか守るか、ハッキリしているからな。

素人でも十分に戦力になる。

4組が丘にシフトしようとするが、そっちはリィエルが抑えてる。

攻撃は出来ないが、いるだけで狙撃は封じられる。

こうなると残りは…

 

「アルタイル、森に移動を始めたぞ」

 

グレン先生から通信が届く。

やっと俺の番か。

退屈すぎて待ちくたびれたぜ。

 

「了解。手筈通り、出来るだけ多く誘い込んで下さい」

 

「任せとけって!」

 

そうして、俺はそばに置いておいたハープを手に取り、演奏準備を整えた。

 

「さてと…やりますか」

 

 

先生が自ら囮となって、4組を誘い込む。

こんな露骨な手に引っかかるなんてまだまだ青いな。

 

「…アルタイル!今だ!」

 

その通信を受けて、俺は森に張っておいた結界を発動した。

 

「な!?これは!?」

 

俺が張った結界は一定の手順を踏めば、外に出られる簡単な迷路だ。

落ち着けばきっと分かるだろうが、突然の事にパニック状態の彼らには無理だろう。

ちなみにゴールには、システィーナらを初めとするうちの主力が控えてる為、そう簡単には落とせない。

そんな事を考えながら、俺は落ち着く隙を与えない。

ハープの弦を弾く。

弾かれた弦が森中に張り巡らされた糸と連動し

 

「!?がァァ!?」

 

【ショック・ボルト】を発動させ、4組の1人を倒す。

 

「な!?今のは!?」

 

「どこからぁ!?」

 

今度は【ゲイル・ブロウ】で吹き飛ばす。

さっきとは違う角度で。

 

「またやられた!?」

 

「クソォ!?一体何がどうなってるんだぁ!?」

 

そして恐慌状態になった4組を淡々と殲滅させていく俺。

 

『いいか?魔術ってのは超高度な自己暗示だ。呪文を唱える時に使うルーン語ってのは、それを行う時に最も効率良く行える言語で、人の深層意識を変革させ、世界の法則に介入する』

 

先生が初めてまともに授業してくれた時に教えてくれた事。

ルーン語とはあくまで()()()()()()()()()()()()

つまり、そこを無視すれば()()()()()()()()()()()()という事。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

だから俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだった。

名付けるなら【フェイルノート】。

こうして森に入ってきた十数人の内、殆ど仕留めた時、突然銅鑼の音が聞こえた。

 

「双方そこまで!時間内に決着がつかなかった為、この勝負引き分けとする。以上!」

 

どうやら終わったらしい。

先生の目的から見たら、やりすぎた感はあったが、まあ大丈夫だったらしい。

俺は結界を解いて皆の元に向かう。

どうやら俺が最後だったらしい。

 

「おつかれ〜」

 

「アイルこそお疲れ様。カッコよかったわよ!」

 

1番近くにいたテレサから、労いとお褒めの言葉が来る。

 

「…おう、ありがとう」

 

ストレートな好意に照れくさくなり、顔を背けると

 

「いぃ!?」

 

背けた先には無表情なルミアがいた。

 

「お疲れ様アイル君。良かったね、カッコイイって言って貰えて」

 

「お、おう…ルミアもお疲れ様」

 

「ルミア、顔が怖いわよ。労うなら笑顔じゃないと!」

 

そう言いながらテレサが左腕を組んで来る。

俺の腕にテレサの規格外の柔らかいものが当たり、流石に嬉しさより恥ずかしさで慌ててしまう。

 

「お、おいテレサ!?何してんの!?」

 

「何って腕組んでるだけよ?それがどうしたの?」

 

「どうしたのって…!?」

 

「テレサ!?何して!?」

 

「何ですか!?あの無様な戦い方は!?」

 

突然クライトス先生の怒りに満ちた声が聞こえてくる。

俺達は何事かとそっちを見る。

 

「貴方達が私の指示をちゃんと聞いていれば、勝てたのですよ」

 

4組の連中は意気消沈と言った具合に、顔を下げている。

 

「感じ悪いわね…」

 

「うん…」

 

皆がクライトス先生の事を冷たい目で見る。

 

「今のあんたの方が無様だろ」

 

俺は思わず反論する。

 

「何ですか?貴方には関係ないでしょう」

 

「今まで一緒だったんだから無関係ではないだろ。それに、そんな姿を愛しい婚約者(自称)に見せていいのかよ?ダッセェ」

 

ていうか、何か顔色悪くねぇか?

 

「おいおい、筋が違うんじゃねぇか?兵士の失態は指揮官の責任だろ?」

 

グレン先生も参戦してくる。

 

「貴方ごときが、私に指示しないで頂きたい」

 

「?随分と顔色が悪いな?だい」

 

先生の言葉が止まる。

クライトス先生が手袋を投げつけたのだ。

 

「グレン=レーダス。勝負はまだついていたせん。再戦です。今度は私が貴方に決闘を申し込む」

 

おいおいマジかよ。

 

「いくら何でもしつこすぎ。そういう奴は好かれないぞ」

 

「全くだ。まだ諦めないのか白猫の事」

 

俺とグレン先生は呆れた様に、クライトス先生を止める。

 

「当然です。システィーナに魔導考古学を諦めさせ、私の妻とするまでは」

 

「おい待てよ。何勝手に盛り上がってんだよ。システィーナの意思はどうなるんだ?」

 

「君や彼女は関係ありません。これは私と彼の問題です」

 

その瞬間、何かが切れた音がした。

いや、まあ俺がブチ切れたんだけど。

気づいたら、全力でその面を殴り飛ばしてた。

 

「アイル君!?」

 

ルミアの驚いた声が聞こえてきたが、それは無視。

そのまま胸ぐらを掴み上げ、至近距離で睨みつける。

 

「てめぇ、ふざけんなよ。システィーナはてめぇのモノじゃねんだぞ!?人の人生勝手に賭けといて何が関係ねぇだ!?…それ以上ふざけた事言うなら、決闘もクソもねぇ。このままてめえの鼻っ柱潰すぞ」

 

「アルタイル、離せ!やめろ!!」

 

「アイル落ち着いて!?」

 

そのまま決闘も有耶無耶になり、俺達は解散した。

その後俺は、3日間の停学になった。

本来、1週間くらいだったらしいが、一連の流れを見ていたハー…ハーレイ先生の口利きがあり、3日になったらしい。

そして3日後、久しぶりに登校した俺が聞いたのは

 

「は?システィーナがクライトス先生と結婚?」

 

寝耳に水っていうか…何でそうなった?




という訳で、新技【フェイルノート】です。
ぶっちゃけ、これは絶対にやらせたかった技です。
なぜって…カッコイイから。
それではありがとうございました。
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