今回は糸を使った色んな新技が出てきますよ。
ちょっと…無理矢理感はありましたが、これくらいしないと、彼ではアール=カーンには勝てません。
それではよろしくお願いします。
「シッ!」
俺は糸を振るいながら、糸の弾を撃ち出した。
〖ぬるいわ!〗
簡単に撃ち落とされるも、俺も負けじと、弾幕を張る。
基本的にコイツに近づかれたら負けだ。
だがら、徹底的にアウトレンジで決めたい。
〖下らん。大口を叩いた割には…逃げてばかりか!〗
「ああ!?捕まえてみてから言いやがれ!」
俺は挑発には乗らず、あくまで時間稼ぎ、アウトレンジを徹底する。
しかし、相手も怪物。
一瞬消えたと思えば、直ぐに背後に立たれていた。
咄嗟に距離をとるが
〖遅い〗
その一言と共に、【
その瞬間、膝から力が抜けてしまう。
「ガバァ…!これは…マズイ…!」
〖終わりだ、逝ね〗
そのまま俺は…首を跳ね飛ばされた…。
その瞬間、体が糸に変わり、コイツの体に巻き付く。
〖これは!?〗
「悪いけど、最初から本物は別のところさ」
首だけになった俺は、そのまましゃべり続ける。
〖貴様…どうやって!?〗
「それを教える必要はないな。ほら術式が完成したぜ?『真紅の炎帝よ・劫火の軍旗掲げ・朱に蹂躙せよ』!!」
黒魔【インフェルノ・フレア】。
超高熱の灼熱業火の津波を以て、全てを飲み込み、焼き尽くすB級軍用魔術だ。
俺は体の糸を使い、拘束しつつ、方陣を組む事で発動を可能にしたのだ。
〖無駄だ〗
しかし、その拘束も力技で抜けられ、【
〖なるほど…どうやら小細工は得意なようだな。コソコソと…まるでネズミのようではないか〗
そう言って、頭だけになった俺を貫く。
「…【マリオネット】が殺られたか」
【マリオネット】とは、俺が糸で編んだ人形で、他人なら言動だけ、自分なら魔術の行使すら可能な、操り人形だ。
そのうちの一体が殺られた。
既に次のトラップは用意済みだ。
「ネズミ上等。勝ちゃいいんだよ、勝ちゃ。ネズミ舐めんなよ?」
それに…窮鼠猫を噛むってね。
次は、あいつの通る道にトラップだらけにした。
あいつが最初の糸を踏んだ途端、両脇からデカい壁が推し潰そうと迫る。
〖下らん〗
バターみたいにアッサリと切りやがって。
次のトラップを切ったか。
でも次はそうじゃないぜ?
プツンって音がした途端、【ライトニング・ピアス】が、後ろから迫るも、それにも対応する。
〖無駄だと分からぬか!〗
ここの結界は、魔導兵団戦の時に使った【フェイルノート】の、広域版だ。
手に持つハープを鳴らして意図的に発動させたり、即興でトラップを増やしたり、上から編んでおいた剣や槍を無数に降らせたり、兎に角、色んなトラップを仕掛けておいた。
しかし、その全てを制覇され、遂に接近を許してしまった。
〖よくここまで粘ったものだ。…覚悟は良いな愚者の子よ〗
そう言って、斬りかかってくるそいつに俺も、剣で対応せざるを得なくなる。
必死に食らいつくも、やはり2度目も一緒。
あっという間に弾かれる。
そのまま、心臓を貫かれるも、それも【マリオネット】。
あっという間に、糸に変わり拘束しようとする。
〖この…愚か者!!この我に、同じ手が2度通ずると思ったか!!〗
そう言いながら、糸を切り払い距離をとる。
そして…足を止めた瞬間、思いっきり足を絡めて引っ張り上げる。
〖何!?〗
ずっこけるそいつに対して、俺は糸で縛り上げ、身動きを取れなくする。
「…捕縛成功。しっかり2度目も通じてるじゃん」
こうして、本体の俺が現れる。
俺はコイツが踏破したトラップ地帯の1つに、隠れていたのだ。
〖おのれ…!!ぬ、これは…!?〗
「無駄だぜ。そいつはこのフロア全体の重さだ。いくらお前でも、力づくでの脱出は無理だ」
俺はリィエルの時のように、このフロアそのものを重りに変えるように、糸を組み、縛りつけているのだ。
俺はトドメを刺すために、少し近づく。
その瞬間
「これで…!?」
何か呟いた途端、さっきの魔術を使ってきたのだ。
慌てて避けるが、その狙いは
「…何!?
何とあろう事か、アイツは自爆しやがったのだ。
何を考えて…!?しまった!!!
〖侮っていた…よもや愚者の子如きに、1つとられるとはな〗
「何て…無茶苦茶な…!?」
コイツは地面を爆発させる事で、拘束に隙を作り、そこから抜け出してきたのだ。
「この…!『三界の理・星の楔・律と理は我が手にあり』!!」
〖児戯!無駄と知れい!!〗
俺は直ぐに【グラビティ・タクト】を発動し、動きを止めようとするも、それより速く動き出し、【
辛うじて躱して、蹴り飛ばそうとするがそれを防がれる。
コイツの動きは止められない…だったら!!
【
〖またか…ならば!〗
俺に剣を向けたまま、【
「こんのぉぉぉ!!これで…どうだ!!」
俺は引力で地面を持ち上げて、強引に体勢を崩させる。
〖ぬっ…!〗
剣閃がズレて、その隙に体をねじ込んで躱す。
右腕を掴みあげ、全力で背負い投げをする。
〖ガッ…!!〗
そのまま、俺は全力で右拳を振り下ろした。
「喰らえぇぇぇぇ!!!」
〖ガバァ!!!〗
地面がひび割れる程の一撃を打ち込んで、沈める。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
やっと…倒した…。
その気の緩みが行けなかったのだろう。
突然足が切られ、【グラビティ・タクト】が解かれた。
「…は?」
〖見事…実に見事なり。よもや2つも取られるとは思わなんだ〗
ソイツはゆっくりと立ち上がる。
巫山戯んなよ…何で…立ち上がれる…!?
しかも…アキレス腱を切られて、動けない。
「…クソが」
〖よくここまで足掻いた。最後に名を聞こう、愚者の子よ。…いや、若き戦士よ〗
「…アルタイル=エステレラ」
〖若き戦士、アルタイルよ…。我は永遠に、汝を記憶の片隅に、留めておこう。さらば!!〗
ああ…これはダメだ、逃げられない。
クラスのみんな、先生、システィーナ、リィエル…そしてルミア。
ごめん、先に逝くわ。
〖ぬぅ…!?〗
その時突然、極太の極光がアイツに迫った。
それをアイツは、【
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
更に青い弾丸が、真っ直ぐにソイツに突撃していく。
それは…
「り、リィエル!?」
「ん。おまたせアイル」
撤退したはずのリィエルだった。
「アルタイル!待たせたな!!」
「アイル!しっかりして!直ぐにルミアの所まで連れてくわ!!」
「アイル君!!大丈夫!!直ぐに治療するね!!」
リィエルだけじゃなくて、先生に、システィーナに、ルミアまでいた。
「みんな…何で…ここに…?」
「何でもなにも…生徒見捨てて逃げる教師がいるかよ。それに…みんなで帰るって約束したしな」
「バカ野郎…!!そんな事言ってる場合じゃ!?」
「大丈夫よ。アイツの正体も不死性も分かったわ」
「…何?」
何でも童話の【メリガリウスの魔法使い】に出てくる、【アール=カーン】という魔人と、特徴が一緒だとか。
そして、奴は13の命を持っているらしい。
かつてに7回、さっきグレン先生とリィエルが2回計9回殺してるので、残り…4つ。
「なら朗報…俺が2回殺った。まあ、1回は自殺だけど。だから残り2回」
「自殺って…まあいい。数が少ないのはラッキーだ!お前はそのままルミアに治療して貰えよ!」
「ここは私達に任せて!」
ルミアのサポートを受けた2人が、アイツ…アール=カーンに、挑んでいく。
「アイル君。この傷は…」
「赤い方だ。問題ない…ありがとう」
如何にルミアの
目の前でシスティーナが、必死に戦ってるのを見てるだけってのは、焦りを覚えるな。
「…落ち着いて、アイル君」
いつの間にか握りこまれていた拳を、ルミアは優しく包みこんでくれた。
「アイル君はここまで1人で戦ってきたんだから、今くらいは休んで?…私達を信じて」
その目に怯えは無く、ただ優しさと慈愛が込められていた。
「はい、これで終わり。立てる?」
俺はその場で立ち上がって、ジャンプしたり、ハイキックしたりと、足の調子を確かめた。
「…OK。問題無し。サンキュー!ルミア!」
俺は直ぐに、上から戦況を確認する。
グレン先生がが、右の【
「役割分担してるのか?確かに効果的だが…持ち替えられたら…」
「大丈夫、アール=カーンが【夜天の乙女】から授かった2本の魔刀は、決まった手で持たないと能力を発揮できないのよ。だから、途中で持ち変える事はしないわ!」
俺の疑問に答えたのはシスティーナだった。
根拠は分からんが、考えがあるなら…!
先生が蹴られ、リィエルが柄で殴られた!
俺は直ぐに【グラビティ・タクト】を起動して、
飛び降りる。
「『猛き雷帝よ・極光の閃槍を以て・刺し穿て』!『
〖小賢しい!〗
システィーナの【ライトニング・ピアス】をあっさりと弾く隙に俺は、糸で巨大なハンマーを作り出し、思いっきり叩きつける。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
〖ぬん!!〗
真っ向からの力比べでは、俺の方が不利だ。
だから、たとえ解除されても、糸で身体強化してあるので、そのパワーも上乗せして攻撃した。
しかしそれでも弾かれるとか、どんな膂力してやがる。
「『慈悲の天使よ・遠き彼の地に・汝の威光を』!」
その隙にルミアが【ライフ・ウェイブ】という、遠距離治癒魔術で2人を回復させる。
「悪ぃ、助かった!」
「ん、行ける」
「よし…行くぞ!」
先生とリィエルが、それぞれの方へ攻撃を仕掛け、俺は何時でも狙えるようにしつつも、両方のバックアップに行う。
グレン先生に攻撃が当たりそうなら、重力で制御して、リィエルに当たりそうなら、糸で牽制する。
そんな中、突然立ち位置が交代した。
「は!?」
想定にない行動に、思わず声を出してしまう。
だが、とりあえず邪魔しないように、距離を取っている間に左の刀で先生の銃を弾くアール=カーン。
それを見た時、何となく悟った。
先生の様子をまともに確認せずに、リィエルに向かったアール=カーンの右手に、先生の超絶技巧【トリプルファニング】が炸裂。
【
そうだ、アール=カーンは、銃を知らない。
魔術的なものと勘違いしていたが、あれは科学的な物だ。
つまり【
直ぐに拾いに行こうとする、刀自体を俺は糸で弾き飛ばし、更に重力で思いっきり吹き飛ばした。
〖おのれ…!!〗
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「おらぁ!!!」
そんな隙だらけの姿にリィエルが、突っ込んで行く。
辛うじて防御か間に合ったが、更に俺がダメ押しのハイキックを叩き込む。
そんな状況にピンチだと感じたのか、魔術を発動させる。
「させるかぁぁぁぁぁ!!!」
その様子を見た先生が、【愚者の世界】を発動。
〖…な!?〗
自分の魔術が発動しない事に驚愕している隙に
「『猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て』!!」
システィーナの【ライトニング・ピアス】が、心臓を貫いた。
これで残り1つ、これなら…!
〖…良かろう。汝等を我が障害と、そしてアルタイル、汝を我が好敵手と認めよう〗
一気に体が冷めた気がした。
ヤバイ…これはヤバイ!!!
こうして、戦いは更に激化していった。
〖よくぞ、我に此処まで喰らいついた。誇るといい〗
ストックをラスイチにしてから、どれだけ経った?
まるで分からないが、分かってるのは1つ。
依然、追い詰められているのは、俺達の方だと言う事だ。
「はぁ…はぁ…」
俺は糸で作った槍を片手に、限界が近い。
「…チィ…!」
先生は片膝ついてボロボロ。
「…ぅ…」
リィエルは先程キツい一撃を貰って気を失った。
更に俺達は、治癒限界にさしかかってきた。
「「ゴホッ…ゴホッ…!」」
システィーナとルミアはマナ欠乏症寸前だ。
比較的まともに動けるのは俺だけだ。
〖そして流石は我が好敵手。未だ立ち、構えるとは…そうでなくてはな!〗
「ウルッせぇ!」
俺は一気に踏み込み、槍を突く。
当然躱され、首を狙われる。
咄嗟に引き、ガードしつつ、勢いに任せて後ろに飛ぶ。
「これで!」
空中で糸を叩きてけるも、難なく躱される。
俺はそのまま瓦礫に巻き付けぶつけるも、バターみたいに、半分に切り裂かれる。
〖ぬん!〗
「なんの!」
その半分を投げつけてくるので、糸を括りつけてから、槍を投擲してぶち抜く。
その隙に一気に接近され、切られそうになる。
「この!」
〖これは…槍に付いている糸か!?〗
槍に括りつけた糸で、腕を絡め取り、思いっきり蹴り落とす。
〖ふん!〗
「何!?ッ!ガバァ!!!」
しかし蹴り飛ばされる直前、俺の足を掴んで、投げ飛ばしてくる。
まともに受け身も取れずに、モロに地面に叩きつけられてしまい、身動きが取れなくなる。
そして、アール=カーンは何事も無かったように立ち上がり、突然上を見る。
〖…成程、そういう事か…。まんまと騙されたぞ…〗
そのまま、テラスに駆け上がり…【愚者の世界】の有効範囲外に出てしまう。
「!?」
グレン先生の顔に焦りの色が浮かぶ。
そんな露骨な反応したら…!
〖顔色が変わったぞ愚者よ…。やはりそうであったか〗
そりゃ…俺達は1回も魔術使ってないもんな、気付かれるか。
〖小細工と虚言でよくぞ我とここまで抗えた…。褒めてやろう、汝等は愚者ではあるが、間違えなく強者だった!その褒美に…そして!我が好敵手には、尊敬を以て、苦痛なき死を!いざ神妙に…逝ねい!!〗
三度現れる太陽が如き炎の魔術。
あれは今度こそ、俺達を焼き払うだろうな。
「させるかぁぁぁぁぁ!!!」
グレン先生がヤケクソ気味に突撃するも、明らかに間に合わない。
〖いと往生際悪し!晩節を汚すな愚者よ!〗
左の魔刀を、超高速で投げるアール=カーン。
「な!?」
「「先生!?」」
グレン先生は当然、俺も、ルミアも、システィーナも間に合わない。
「あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
それでも、強引に体を、意識を、全てを動かした。
動け…!動け…!!動け…!!!
その時、全てが真っ白に…でも、何か赤い線が見えた。
俺はそれに沿って…全力で槍を突いた。
「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』!!!」
気付いたら…剣を叩き落としただけではなく、アール=カーンの心臓を貫いていた。
〖ガハ…!フフ…流石は我が好敵手。まさか、あそこから我が最後の命、貫くとは思わなんだ…!本体の影に過ぎぬとはいえ…見事だ、愚者の民草の子らよ!よくぞ我を殺しきった!汝等に最大限の賛辞を送ろう!!いずれまた、剣を交えようぞ、強き愚者の子らよ!!尊き門の向こう側にて、我は汝等を待つ…さらばだ!!!〗
こうして俺達は魔煌刃将アール=カーンを撃破した。
「…終わったのか…?」
俺は貫いた姿勢のまま、最後の言葉を聞き、それでも動けなかった。
やがて、力が抜け、槍が手から落ち、糸が解けていくのを、ぼんやりと見つめる。
そして、俺は倒れ込んだ。
「…イル!」
「…っかりして!」
「…君!…きて!…ル君!」
ルミア達が俺を呼ぶ声が聞こえるが、俺はそのまま、気を失ってしまったのだった。
無事倒しましたが…あの技は!?
ちゃんと糸の力に基づいた力で使っています。
実は、1番最初に考えていたものなんですが、忘れてまして…。
今回お披露目になりました。
彼がちゃんと使いこなせるようになった時、原理を説明しようと思います。
それでは失礼します。
ありがとうございました。