ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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タウムの天文神殿編のエピローグ兼、次の社交舞踏会編のプロローグです。
そして、皆大好きあの人の登場です。
それではよろしくお願いします。


小話5

「…ん…ん?ここは…?」

 

「あ!アイル君!目は覚めた!?大丈夫!?」

 

眩しくて目が覚めた。

どうやら、無事に外に出てきたらしい。

ここは…馬車の中か?

ていうか、、やけに顔が近いな…!?

頭の下柔らかいし…もしかして膝枕されてる!?

 

「…悪い、すぐにどく///」

 

「ダメだよ!?無理しちゃ!?」

 

「そうよ、今までずっと気を失ってなんだから」

 

隣にはシスティーナがいた。

システィーナの膝にはリィエルが眠っている。

周りを見渡せば、クラスの皆も疲れているのか、眠ってしまっている。

 

「…先生達は?」

 

周りを見渡しても、先生達の姿だけが見当たらない。

ルミアは静かに外を指さす。

指した先は、御者台だった。

 

「…ああ、なるほど…。システィーナ、今は我慢だぞ?」

 

「アイルまで何言ってるのよ!?私が何を我慢するって言うのよ!?///」

 

なるほど、既にルミアに弄られたばっかだったか。

そのままふて寝してたシスティーナも、本当に眠ってしまった。

 

「ルミアも寝ろよ。俺でよかった枕替わりにはなるぜ?」

 

「…じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

そう言いながら、俺の肩に頭を預けるルミア。

 

「…私、すごく怖かった。二度と会えないかもって思ったんだよ…」

 

「…すまん」

 

「もう…あんな…無茶はしないで…!」

 

「…すまん」

 

俺は肩にしがみついて泣きじゃくるルミアの頭を撫でながら、よく妹に歌っていた子守唄を歌う。

その歌を聞いたからか、泣き疲れたからか、眠くなってきたらしいルミアをそっと膝に乗せてやり、優しく肩をリズミカルに叩いていると、ゆっくりと寝落ちしていった。

 

「…随分と心配かけたみたいだな」

 

俺は今回の戦いを振り返ってみた。

見事に綱渡りばっかりで、自分の力不足を痛感させられ続けた。

まあ、敵が敵だったからとは思うが…。

ふと俺は、空を見上げた。

そこにはいつものあれが浮かんでいた。

 

「【メルガリウスの天空城】か…」

 

あれはなんだ?

地下迷宮はなんだ?

【メルガリウスと魔法使い】とはなんだ?

【アリアドネ】はなんなんだ?

そもそもロラン=エルトリアとは何者だ?

魔煌刃将アール=カーン…アイツは何者だ?

それに…恐らくあいつだけじゃない。

あいつがいるなら他の魔将星もいるはずだ。

 

「…システィーナから借りるか」

 

メルガリアンになる気はないが、『敵を知り己を知れば百戦危うからず』ってやつだ。

それに…

 

「あの時のあれは一体…?」

 

グレン先生を助ける時の、あの光景…あの技。

あんなの俺は知らない。

気付いたらやっていたし、初めて見えた光景だ。

…まあ、今はいいか。

 

「今は…平和を享受しよう」

 

こうして、俺達はそれぞれの帰路についたのだった。

 

 

家に帰り、ベガの相手もそこそこに、まだ体のダルさが残っていた俺は、早々にベッドに寝転がっていた。

ただぼんやりとしていた時、ふと何か気配がした。

 

「…誰だ?」

 

静かに、しかし、しっかりとした警戒心を持って窓に向かって構えた。

 

「へぇ…思ったより敏感じゃない。それに…隙も少ない。悪くないわ、貴方」

 

窓から現れたのは、赤髪の綺麗なお姉さんだった。

真紅の髪、アメジストの瞳、メリハリのある体、そして何より感じる、圧倒的魔術師としての格の違い。

この人…強い。

 

「人の質問に答えろよ。誰だって言ってんの」

 

俺は出来るだけ動揺を悟られないように、冷静を装う。

しかし、そんな見栄、見切られてるのだろうか、意地悪そうな笑みで見られる。

 

「そんな気を張らなくてもいいわよ、アルタイル=エステレラ君。私はイヴ、【イヴ=イグナイト】。帝国宮廷魔導師団特務分室室長にして、執行官NO.1【魔術師】よ。要するに…アルベルト達の上司よ」

 

「特務分室…室長…!?」

 

あのアルベルトさん達のリーダー…。

この風格も納得だが、違和感もある。

 

「でも、室長さんが知りたがる情報は持ってないですよ。秘密は守ってるし、これは全くわかんないですし」

 

俺は心当たりはなかった。

ルミアの事は話してないし、【アリアドネ】はよく分かってない。

 

「ええ、わかってるわ。私はそういう為に来た訳じゃないし。ただお話に来ただけよ。例えば…ルミア=ティンジェル暗殺事件とか」

 

どうやら、俺の日常はまだまだ、バイオレンスらしい。

 

「…で?状況は?」

 

「あら?思ったよりあっさりしてるわね。実は戦闘狂(バトル·ジャンキー)?」

 

「そんな訳ないでしょう。余計な火種はさっさと消したいんですよ」

 

そう、それだけだ。

当たり前の日常を取り戻したい、それだけだ。

 

「…そう、なら教えてあげる。まず下手人は【天の知恵研究会】よ」

 

久しぶりに聞いたなその名前。

 

「今回手を出してきたのは、その中の【急進派】と呼ばれる連中よ」

 

「【急進派】?アイツらに派閥があったんですか?」

 

一枚岩では無いだろうとは思っていたが、それでも似た者同士の集まりとは思ってたから意外だ。

 

「【白金魔導研究所】の一件から、アイツらは2つの派閥に分かれたのよ。1つが大多数を占める【肯定派】、そしてもう1つが【急進派】って訳。ここまではいいかしら?」

 

あの時から…つまりアイツらは

 

「ただ、ダシに使われたってだけって事か…」

 

「あら、いい所に気づくわね。今回襲ってくるのは【第二団・地位(アデプタス·オーダー)】という、要するに幹部クラスの奴よ。そいつらから内部情報を手に入れないと行けないのよ。何時までも、後手に回る訳には行かないわ」

 

「…で?その為にルミアを餌にする、という事ですか?」

 

「女王陛下の承認も頂いてるわよ。それと…これはトップシークレット、国家最高機密よ。決して外部に漏らさない事。肝に銘じなさい」

 

…なるほど、そう来るか。

つまり、ここからが本題って訳ね。

 

「それで、態々それを教えて、何がしたいんですか?」

 

「そうね…前置きが長くなったけど、貴方、私の部下になりなさい」

 

やっぱりか。

何で俺なのか意味わからんが。

 

「『なりなさい』って『ならない?』じゃないんですね。それになぜ俺なんです?」

 

「貴方の事を調べたわ。アルベルトの隠蔽は完璧だったけど、少し派手に動きすぎたわね。違和感が浮き彫りになってたわよ?それで調べた結果…純粋に貴方は駒として、それなりに有用だと判断したのよ。経験は浅いけど、それはいくらでも積めるわ」

 

「駒って…勧誘してる本人の対して、随分ですね…。それで?断ったらどうするんです?」

 

「あら?断るの?困ったわね…国家最高機密を教えてしまった訳だし、どうしましょう?」

 

「そっちが勝手に言っただけでしょ?」

 

そう言いながら、俺はある結晶を取り出す。

それは録音用の結晶で、勝手にペラペラ話してる様子が録音されている。

 

「コレ1個ではありませんが…どうしますか?ま、先送りがベストだと思いますが?」

 

嘘だ、これ1個しかない。

まあ、他の手段で記録には残してあるが、そこは黙っておく。

 

「あら、まさかその程度で、私がどうかなるとでも?」

 

「思ってませんよ?ただ、多少なりとも気にはなるでしょ?エリートコースを歩み続けるイグナイト公爵家の1人が、ただの学生にペラペラ国家最高機密を話したって事実は残りますよ?」

 

「その程度の秘密握り潰せないとでも?」

 

「『壁に耳あり障子に目あり』ですよ?ここがどこだか、忘れました?」

 

先代【隠者】が営む店だ。

偶に特務分室の方や、なんならこの間はゼーロスも来た。

それに、爺さん自身も聞いている。

 

「…思ってたより入念なのね、坊や。いいわ、ここは引いてあげる。…後、今度作戦会議するから。場所教えるあげるから、来なさい」

 

「了解。それには行きますよ」

 

とりあえず引くらしいイヴさんに、ほっとしながら、提案を飲む俺。

こういう腹の探り合いは面倒だから嫌いなんだ。

…そういや、いつ、どのタイミングなのか、聞き忘れたな…。

そのまま、気を失う様に眠ってしまったのだった。

 

 

目を覚ますと、いつも起きる時間だった。

 

「習慣って怖いな…」

 

まあ、いつも通り朝練に行くか。

俺はいつもの公園に向かって、いつも通りランニングした。

そう、いつも通りランニングしたのだ。

なのに…いつもより、15分も早く着いた。

 

「あれ?」

 

疑問に思いつつも、いつも通りのメニューでトレーニングをする。

外周、筋トレ、シャドー、魔力の鍛錬…。

いつもなら、かなりのスタミナを消耗し、汗も凄いのだが、今はあまり汗をかいてない。

スタミナもまだ多少余裕がある。

 

「…どうなってるんだ?」

 

「おーす…何してるんだ…お前?」

 

現れたグレン先生に、自分の事を説明する。

 

「…ちょっと手合わせしてみるか。本気でこい」

 

 

「フッ!」

 

左ジャブを躱す。

 

「シッ!」

 

右ミドルを防ぎつつ、左ジャブで牽制する。

 

「くっ!」

 

「フッ!」

 

蹴った体勢に攻撃したので、体勢を崩している。

そこに右ストレートを打ち込む。

 

「このっ…!」

 

組もうとしてくるので、右を縮めて肘で迎撃する。

 

「…逃がさない」

 

体を回転させながら、肘で追撃する。

それと同時に、膝裏を狙って、ローキックする。

 

「なっ!?」

 

予定通り落ちてきたので、左アッパーを放つ。

上がる顎をハイキックで追撃する。

 

「ガッ!?」

 

そのまま倒れ込む相手に右ストレートを寸止めする。

 

「…参った。俺の負けだ」

 

「ハァ…ハァ…!」

 

「…すごい」

 

こうして俺は、初めてグレン先生に勝った。

気付いたらシスティーナもいるし。

 

「アイル…いつの間にかそんなに強くなったの?」

 

「いや…俺も分からない…?」

 

「アイツと殺りあったからだろ」

 

システィーナの質問に呆然と答える俺に、グレン先生が立ち上がりながら、疑問に答えを出す。

 

「よく言うだろ?『強敵との戦いこそ、成長に近道』って。つまりそういう事だ」

 

アール=カーンとの戦いが…俺の糧になったって事か?

確かに今までみたいに、振り回される感じは無かった。

 

「ま、だからって調子乗るなよ?こういう時こそ、気を引き締めて、しっかり律しないといけないんだからな?」

 

「…はい!」

 

そうだ、前より強くなっただけなのだから、調子乗るなよ。

しっかり気をつけないと…!

俺はそう思いながら、槍を作り出し、少しでも昨日の感覚を取り戻そうと、素振りを始めた。

 

「おはよう、アルタイル」

 

「ん?リゼ先輩?おはようございます。何でここに?」

 

朝、登校すると3年生のリゼ先輩が来た。

 

「実は放課後、手伝って欲しい事があって…大丈夫かしら?」

 

「別にいいっすけど…何の手伝いです?」

 

「【社交舞踏会】の設営準備よ」

 

「…【社交舞踏会】?」

 

「ええ、【社交舞踏会】」

 

あ、このタイミングだ。

ほんと…空気読めよクソッタレ共。




という訳で、イヴ=イグナイト登場です。
そして…アルタイル君、強化しました。
とは言っても、あくまで基礎身体能力の向上。
戦闘技術は上がってません。
なので、俺TUEEEEにはなりません。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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