ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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社交舞踏会編開始です。
今回、ルミアちゃんを照れさせまくります。
バレンタインデー?知らない子ですね…


社交舞踏会編第1話

それはまだ、私がほんの小さな女の子だった頃。

お母さん…アリシア七世女王陛下に連れられ、定期巡幸の視察先の1つ、アルザーノ帝国魔術学院に来た時の事です。

 

「ふわぁぁ…!!」

 

天井や壁を飾る、眩く輝くシャンデリア達。

白いテーブルに並ぶ、色とりどりの美味しそうな料理の数々。

燕尾服に身を包んだ楽奏団が、優雅で楽しげな曲を奏でていて。

思い思いの服に身を包んだ学生達が、カップルを組み、曲に合わせて踊っている。

壁際では、老若男女が楽しげに話をしていて、皆笑顔で、楽しそうで。

まるで夢のような光景が広がっていました。

 

「ふふっ驚いたエルミアナ?【社交舞踏会】っていの。学院で毎年行われている伝統行事なのよ。私も学生時代は立場を忘れてはしゃいだものだわ…ふふっ、懐かしい」

 

お母さんも参加したらしいこの行事を見学していた時、一際すごい歓声と拍手が上がり、舞台に1組のカップルが現れました。

私はその女の子が来ていたドレスに、見蕩れていました。

ふわりと広がるスカートは、まるで天使の羽衣。

くるりと翻る腕のフロートは、まるで妖精の羽。

きらりとドレスを飾る宝石の装飾は、まるで夜空に輝く満天の星。

あまりの幻想的な美しさに…私は一瞬で、魂を吸い込まれてしまいました。

 

「…ふふっあのドレスが気に入りましたか?エルミアナ。貴女が心を奪われるのも、無理はありません。あれは【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】。この【社交舞踏会】の伝統的衣装であり…同時に行われる【ダンス・コンペ】の優勝カップルの女性が着ることが出来る魔法のドレス…。つまりその年1番の淑女の証なのです」

 

お母さんの説明を聞きつつも、その目はドレスにしか向いてませんでした。

 

「実は…()()()()()()()()()()()?あのドレス」

 

「え!?お母さんも!?」

 

「ええ、貴女のお父さんと参加して優勝した時に…」

 

在りし日に思いを馳せるお母さんの顔は…とても穏やかでした。

 

「私も着たいです!」

 

完全に目的を履き違えたお子様の私。

 

「あら?だったら…もうちょっと大人になって、もっともっとダンスが上手になって、この学院に入学して…貴女の手を取るに相応しい殿方を見つけませんとね?」

 

私はお母さんの不思議な言葉に首を傾げました。

 

「殿方…?」

 

「ふふっ、実はねエルミアナ。あのドレスにはこんな謂れがあるんです…」

 

それはね…あのドレスをして一緒に踊った男女は…

 

 

「ルーミーア!!」

 

突然名前を呼ばれた私は、遠くに行っていた意識が戻ってきた。

 

「どうしたの?作業の手が止まってるわよ?疲れちゃった?」

 

「大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから」

 

心配そうに私を見るシスティに、私は笑顔で返した。

今私達は、敷地内南西部にある学院会館、その中の多目的ホールにいる。

【社交舞踏会】の準備に忙殺されている、生徒会長のリゼ先輩のお手伝いをしているのだ。

本来システィが、有志で手伝っていたのだが、その様子を見ていた私とリィエルも、手伝う事にしたのだ。

 

「失礼、ルミアさん。ちょっとお話いいかな?」

 

そんな時、1人の男子生徒が話しかけてきた。

 

「…はい?」

 

「ハァ…まただわ…」

 

システィのため息が聞こえる。

 

「ルミアさん。今度の【ダンス・コンペ】…パートナーとして、僕と一緒に」

 

「あ、ごめんなさい。せっかくですけどお断りしますね」

 

「…うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!ちくしょーーーー!!」

 

走り去っていく男子生徒。

 

「全くどいつもこいつも下心まる見えなんだから…本来このイベントは、軟派なイベントじゃないってのに…」

 

そう言いながら、ブツブツと怒るシスティ。

こうなるとしばらく止まらないので、そのままにしておこう。

 

「それにしても…ルミアは本当にモテるわよね」

 

「そ、そうかな…?」

 

システィの少し羨ましそうな目線に、目を逸らしてしまう。

 

「…ねぇルミア。誰かと参加する気は無いの?」

 

「!」

 

システィの言葉に思わず手が止まる。

 

「ルミアったら去年、不参加だったでしょ?それに…【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】、昔は随分と着たがってたじゃない」

 

私は、なんて言おうか迷ってしまう。

本音を探るように黙り込んで…

 

「う〜ん…あのドレスは着てみたいんだけど、やっぱり言い伝えがね…」

 

言い伝えを思い出し、一瞬、ある人の顔が過ぎったけど。

でも結局、いつもの理由を言ってしまう。

だって…ただでさえ、彼を巻き込んでるのに…これ以上巻き込んでは…

 

「『【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】を勝ち取った男女は、将来幸せに結ばれる』…そっかぁ…ルミアは気にするタイプなんだぁ〜…乙女なんだから!だったら適任がいるじゃない!」

 

「適任?」

 

何だろう…この名案閃いたみたいな顔。

大体、爆弾落としてくる時の顔だよね、これ。

 

「アイルよ!アイルを誘えばいいじゃない!」

 

そう言われた瞬間、顔が熱くなった。

 

「し、システィ!!///何言ってるの!?///」

 

やっぱり爆弾落としてきた!

 

「だからアイルと出れば、全部片付くじゃない!アイツ、去年リゼ先輩と出て、最後まで残ったんだから、いい線行けるわよ!」

 

そう、アイル君は去年、リゼ先輩と参加していた。

2人ともすごく上手だったので、よく覚えてる。

今年はリゼ先輩が忙しいので出ないらしいが、そもそも今年は断る気だったと、アイル君本人が言っていた。

 

「だ、だからって…!?」

 

「いい!?今年のアイツは、【学院人気ランキング男子の部】1位なのよ!しかもフリーなんだから、みんな狙ってるのよ!積極的な人は既にアタックしてるんだから!テレサも仕掛けるって言ってたし!」

 

「で、でも…!?」

 

システィから言われて、強い危機感を感じてしまう。

【学院人気ランキング】とは、この時期の女子の間に流れるものだ。

確かに、彼は去年以上に人気者になった。

同学年から上級生、果ては下級生まで彼のファンは多い。

本人は知らない話だが、ファンクラブまで出来ているくらい。

そんな彼が、他の誰かと踊ってる姿を想像すると…胸がモヤってする。

逆に自分が彼と踊ってる姿を想像すると…幸せな気持ちで一杯になる。

そんな夢のような事があったら…とつい思ってしまう。

でも、そんな幸せな夢はダメ。

私には許されない。

だって私は…【廃棄王女】なんだから。

 

「だから今がチャンスなのよ!!今しかないのよ!」

 

「し、システィ!?少し…!」

 

この時、心の中の葛藤と、あまりのシスティの熱量に、気付かなかった。

 

「何がチャンスなんだ?」

 

「「あ、アイル(君)!!!?」」

 

真後ろにアイル君がいた事に。

 

 

 

「これでいいっすかリゼ先輩?」

 

「ええ、ありがとう。アルタイル」

 

俺は先日から、生徒会長であるリゼ=フィルマー先輩を手伝っている。

【社交舞踏会】の設営で忙殺されている先輩の助手として、駆り出されたのだ。

それはさておき、ひとつ疑問なのだが

 

「何故グレン先生までいるんですか?」

 

「フフ…自業自得という事よ」

 

さては…とうとう給料を学院に支払うぐらいまで減給されたか?

まあそれはともかく

 

「ところで先輩。今年は出ないんですよね?」

 

「そうね、こっちが忙しいから…もしかして、私と出たかったのかしら?」

 

去年俺は、先輩のパートナーとして【ダンス・コンペ】に参加したのだが、決勝で負けてしまったのだ。

 

「いや、出ないならそれでいいんです。今年は俺も誘いたい人がいるので」

 

「まあ!あの【学院人気ランキング男子の部】1位の貴方が!?一体誰なの!?」

 

「ちょっと待って。今なんて?初耳ですよ」

 

今何やら聞きなれない言葉が出なかった?

 

「この時期になると、女子の間で密かに出回るランキングよ。去年は貴方は4位。で今年はダントツの1位よ」

 

なんだそのミーハーなランキング。

男からしたら怖いわそれ。

 

「通りで、やたらお誘いが多い訳です。知らない人ばっかりですけど」

 

「まあ、積極的な子もいるのね…で?誰なの?」

 

まるで親戚のお姉さんみたいな食い付きだな。

 

「それは成立したらわかりますよ。他にやる事あります?」

 

「それは残念ね…ええと、今日は無いわ。明日もよろしく」

 

「了解。じゃあ、お疲れ様です」

 

俺は挨拶だけして、そのまま正門に向かう。

その時、ルミアとシスティーナの声が聞こえたので

 

「お前ら何やってんだ?システィーナは知ってたけど、ルミアも手伝ってたのか?」

 

近寄ってみたが…何してんだ?

システィーナは有志の生徒の代表として、俺は生徒会側のメッセンジャーとして、よく話していたので知っていたが、ルミアまでいたとは。

まあ、そんな事より…何をそんなに驚いてんの?

 

「う、うん…成り行きで…ってそんな事より!?」

 

「ど、何処から聞いてたのよ!?」

 

「?『チャンスなのよ!』からだな。だから何がチャンスなんだ?」

 

「「な、何でもない!?気にしないで!」」

 

2人揃って何してんだが…。

まあ、確かに…チャンスだな。

…覚悟を決めろ。

 

「ルミア」

 

「な、何かな?アイル…君!?」

 

俺はズンズンとルミアに近づき、距離を詰める。

 

「…あ」

 

俺の圧に押し負けて、後ずさるルミアの背中に壁が当たった瞬間、俺は壁に手をつきルミアの動きを止める。

お互いに息遣いすら感じとれるくらい顔を近づけて、出来るだけ優しく笑いかけ、出来るだけ優しい声で囁いた。

 

「ルミア、今回の【ダンス・コンペ】…()()()()()()()

 

「…え!?///」

 

ルミアは顔を真っ赤にさせながら、驚く。

周りの生徒もかなり驚いている。

俺はそんな皆の動揺を見ぬ振りをしながら、優しく手を握る。

 

「ルミアが色んな奴らに声をかけられてるのは知ってる…でも関係ない。ルミアの隣は俺だ。俺だけの場所だ」

 

「ふぇ!?///あ、アイル君!?///」

 

「だから…逃がさない」

 

俺はそっと逃げようとするルミアの手を引き、胸元に抱き寄せる。

そのまま腰に手を当て、逃がさないようにする。

そして、至近距離で、愛を囁くような甘い声で

 

「最高の夜にしてみせる…【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】は俺が着させてみせる。だから…な?」

 

「…うん///」

 

ここまでやって、遂にルミアを、頷かせることに成功した。

 

「「「「キャーーーー!!!///」」」」

 

女子の黄色い歓声と

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!壁ドンか〜!!!」

 

「ルミアちゃん、そういうのに弱かったのか〜!!!」

 

男子の怨嗟の声が響く。

その様はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。

半分狙っていただけに、その気分は爽快だった。

 

「…いい子だ。My fair lady」

 

「!!!?///」

 

取っていた手の甲に優しくキスを落とす。

更に燃料を投下して、炎上させてやった…ルミアがだけど。

 

「ルミア!?大丈夫!?煙吹いてるぞ!?」

 

「ってやりすぎよ!あんたのせいでしょうが!!」

 

システィーナに鋭いツッコミを入れられながら、俺達は彼女を医務室に運び込んだ。

 

 

「鬱陶しい…」

 

次の日、俺は学年問わず、男子生徒から決闘を受けさせられた。

最初は拒否ってたが、どんどんエスカレートしてくので、最終的にただの喧嘩になってしまっていた。

全く…いつの間にこの学院はこんなにバイオレンスになったのやら…。

中でも特にしつこかったのは、意外にもグレン先生だった。

大方の想像が着くが…悪いが、尚更譲る気は無い。

 

「アルタイル、少しいいか」

 

その顔は今までの巫山戯たものではなく、至って真剣なグレン先生だった。

だから、俺も真剣に向き合う事にした。

 

「…なんですか?」

 

「頼む、今からでもいい。ルミアのパートナーを交代してくれ!」

 

そう言って頭を下げるグレン先生。

ああ、そんな事されるとやりにくいな。

 

「お前の気持ちは分かってる!後でどんな事でも聞く!だから頼む!今だけは何も言わずに、交代してくれ!」

 

「…なんの説明も無しなんて、納得いくと思います?筋が通らんでしょう」

 

嫌らしい言い方だな、俺も。

でもごめん、俺にも意地がある。

他の奴らに誘われてるのを見て、思ったんだ。

たとえ、あれがただの口説き文句でも…ルミアの隣は譲れない、譲りたくない。

そう思ってしまったんだ。

 

「…すまない。話せないんだ。俺をどれだけ恨んでくれてもいい、だから…頼む…!」

 

何時までも頭を上げないグレン先生。

きっと俺が了承するまで、上げる気は無いんだうな。

 

「…はぁ。そこまでして、俺を危険から遠ざけたいの?例えば…()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺は遂に物事の本質に踏み込んだ。

 

「な!?ど、どうしてお前がそれを!?」

 

「【魔術師】から聞きました」

 

「魔術師…?まさかイヴか!?どうしてアイツが!?」

 

誰か理解したのだろう。

この間話した事を説明した。

それにしても、すごい慌てようだな。

 

「さあ?本人は勧誘って言ってましたが…とりあえず、やり過ごしました」

 

「やり過ごすって…アイツ相手にか!?」

 

そんなに驚く?

 

「2割の真実と8割のブラフで乗り切りました…まあ、あっちも手加減したと思いますけど」

 

「アイツは最低最悪の冷血女だが、権謀術数だけはとんでもねぇんだ!今回の件もきっと陛下を頷かせざるを得ない状況にしたに決まってる!」

 

あの人、そんなに凄いんだ。

 

「…まあ、あの人の事はどうでもいいです。それより…俺は引きませんよ。絶対にルミアを守る為に…俺の意地の為に」

 

俺はグレン先生を睨んだ。

絶対に引かない…そういう意志を込めて。

その様子に、やっとグレン先生も折れてくれた。

 

「…ハァ…。仕方ねぇ。2人でやるぞ。俺はどうやって参加しようかねぇ…」

 

「システィーナにお願いしたら?」

 

俺達は歩きながら、打ち合わせをした。

 

 

「ルミア、こっちこっち」

 

「ま、待って…!アイル君!///」

 

俺は放課後、先生達と合同練習する為に、ルミアを連れて中庭まで来た。

 

「ん?どうした?早く練習しようぜ?」

 

「で、でも…!」

 

「…ごめんな、わがまま勝手で。でも…俺はルミアの【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】姿が見たいんだ。俺が…着させてあげたいんだ。…ダメ?」

 

「だ、ダメじゃ…ない…けど…///」

 

顔を真っ赤にしながらも、しっかりと俺の手を握っているルミアを、俺は優しく連れ出す。

 

「おい…あれみろよ…」

 

「あ、ああ…あの噂…本当だったのか…!」

 

「うわぁぁぁ!羨ましい!!」

 

「またアイツかよ…!!」

 

その途端、一気に注目が俺達に向く。

パートナーのいない、憐れな男どもの視線が刺さるが、俺にとっては逆に好都合。

こうやってアピールしまくれば、声をかける男も減るだろうし、護衛も格段やりやすくなるだろうという、目論見だった。

 

「うぅ…!///」

 

ただ、ルミアは純粋に恥ずかしいだろうな。

そこはすまない、我慢してくれ。

 

「って先生?聞いてるの!?」

 

システィーナの声がした方へ向くと、何やら揉めてる。

というより噛み付いてる?

 

「何してんの?」

 

「あ、ルミアにアイル!聞いてよ!先生ったら、私が説明してあげてるのに、ぼんやりしてて聞かないのよ!」

 

先生の態度に、システィーナがむくれてるらしい。

 

「…もう分かってるの?【シルフ・ワルツ】なのよ?【ノーブル・ワルツ】や【ファスト・ステップ】より、格段に難しいのよ?」

 

「へいへーい。知ってますよ」

 

「ド素人の先生のために、手取り足取り教えてあげてるんだから、もっと真面目に…な、何がおかしいのよ?」

 

突然、先生が含みのある笑いを浮かべる。

 

「いや、今回ばかりは、お前の小生意気な鼻を明かせそうだなって。【シルフ・ワルツ】だろ?本格的な舞踏大会ならともかく、学生レベルのお遊びコンペなら負けねぇよ」

 

その顔はすごいドヤ顔だか、意外なのは結構自信が、漲っているところだ。

 

「一応、去年決勝まで行った身として言いますけど、この【ダンス・コンペ】は学生のお遊びレベルじゃないですよ?割とガチでやらないと、本気でヤバいです」

 

「言ってくれるじゃない!そんなに言うなら、実力のほど、見せてもらうじゃない。試しに私をエスコートしてもらおうかしら」

 

俺が忠告する横で、システィーナがムキになって実力を見せろという。

先生も引っ込みがつかなくなったのだろう、面倒くさそうに手を取り、お互いに踊る体勢を整えた。

 

「それじゃあ、始めますよ〜」

 

ルミアが、レコードをセットして針を落とす。

流れ出す1番に合わせて踊り出した途端、周りがこっちを見だした。

無理もない、その動きは決して貴族用の優雅なものでない。

しかし、独特のエスニックさ、生命力に溢れたような動きは、上辺だけでなく、魂にまで響くような気がした。

そして、呆気に取られる俺達の前で堂々とフィニッシュを決めるグレン先生と、終始なされるがままだったシスティーナ。

そんなシスティーナを見て

 

「俺も中々やるだろ」

 

「〜!!!?///」

 

耳元で得意げに囁く先生。

慌てて距離をとるシスティーナだが、その耳は運動以外の理由で赤くなっていた。

 

「昔の同僚に相当仕込まれてな。ダンスは自信あるんだぜ?」

 

最も、グレン先生は自信たっぷりの様子で、システィーナの事には気付いていなかったが。

 

「その方って南原出身の方ですか?」

 

ルミアがそう尋ねる。

 

「お、よく気付いたな」

 

「はい、貴族用というより、その原型…民族舞踊に近い感じだったので」

 

「正解だルミア。【大いなる風霊の舞(バイレ·デル·ヴィエント)】をガチでやってた俺からしたら、余裕だな。…で、アルタイル?どうだ?」

 

俺はさっきの動きを頭の中でトレースして…

 

「…とりあえず、それは覚えた」

 

「…は?」

 

「先生、音楽よろしく。ルミア、お手をどうぞ」

 

「う、うん…///」

 

ルミアをエスコートする。

先生が音楽を流し出した途端、俺達は動き出した。

型破りなカウントにシャッセ、緩急激しいクイックステップ。

有り得ない角度のスウェイに、激しいライズアンドフォール、リバースロール。

俺では先生みたいな力強さは出せない。

だから、メリハリをはっきりつけてそれを補う。

先生にはなかった、貴族的な細やかなテクニックも加え、エレガントさも出していく。

最初はルミアもビックリしていたが、すぐにそれに着いてきてくれる。

先生達のとはまた違ったそれに、周りも見とれている。

そして、2人でしっかりとフィニッシュを決める。

 

「フゥ…フゥ…!」

 

「ハァ…ハァ…!」

 

そんな俺達に拍手喝采が巻き起こる。

とはいえ、1曲踊っただけなのに、息が上がっていた。

やっぱり見様見真似じゃ、まだまだか…。

 

「お、お前…踊れたのか?しかもいい感じで、アレンジ加えてるし…」

 

「いや?【シルフ・ワルツ】もだけど、これも初めて。先生の踊ってくれたとおりにやっただけですよ?まあ、多少アレンジしましたけど、まだ荒削りです」

 

「ルミアも…よくついていけたわね…」

 

「そうかな…。何となくこうするだろうなって分かったから」

 

こうして俺達の練習は続いた。

この日以来、俺達は優勝候補の仲間入りを果たすのだった。




という訳で新章開始です。
いきなり素人がチャレンジというより、齧ったことはある奴が、レベルアップして再登場、という形にしてくて、こんな感じにしました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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