ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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さっき今までとストックを見てきて気付きた…。
アルタイルは、独力撃破はほぼないな…。
今回はみんな大好き、あの人が登場しますよ?
よろしくお願いします。


社交舞踏会編第2話

「…ここ?」

 

「ああ、こんな辺鄙な場所にしやがって…」

 

夜も更けた頃、俺達は南地区郊外の、倉庫街に来ていた。

先生が血でルーン鍵を描くと、倉庫の扉が開く。

 

「ようグレ坊!アル坊!ひっさしぶりじゃのう!元気にしとったか!?」

 

中には【隠者】のバーナードさんがいた。

 

「ジジイ…あんたは相変わらずそうだな…」

 

「お久しぶりです。バーナードさん」

 

奥には

 

「ご健勝のようで何よりですグレン先輩。アルタイルも、元気そうで良かったよ」

 

【法皇】のクリストフがいた。

 

「クリストフ!久しぶり。そっちこそ元気そうじゃん!」

 

「クリストフ…お前も来てたのか。ていうか…仲良いなお前」

 

グレン先生は俺達の仲の良さに驚いていた。

 

「そりゃあ俺達」

 

「友達ですから」

 

そう言って俺達は拳をぶつけ合う。

ジャティスの件以降、度々会い、仲良くなったのだ。

 

「2人とも遅い」

 

ちょこんと座る、【戦車】のリィエル。

その隣で黙って立っている、【星】のアルベルトさん。

そして、奥に腰かける【魔術師】のイヴさん。

先生含めて、特務分室のメンバーが6人が揃うと、圧巻だ。

 

「先輩、アルタイル。この度は本当にすみません」

 

「全くだ。上は何考えてるんじゃ…」

 

クリフトフとバーナードさんが申し訳なさそうに顔を歪ませる。

 

「既に軍属ではない先輩だけじゃなくて、アルタイルまで巻き込むなんて…ですが、今僕達は人手が足りないのも事実なんです」

 

「今回だけはお主らの力、貸してくれんか!?」

 

そう言って頼み込んでくるバーナードさん。

 

「お前達は…俺に…怒ってないのかよ…?」

 

グレン先生は呆然と呟いていた。

俺は口を挟むべきではないと黙り込む事にした。

 

「…聞けば、アル坊がケジメつけてくれたんじゃろ?まあ、強いて言うなら…一言でも愚痴って欲しかったかのう」

 

「正直、先輩には物申したいことはあります。でも…誰よりも身を粉にして、誰かの為に戦ってきた…そんな先輩を信じています」

 

2人の優しい言葉に先生は、罪悪感を覚えたのだろう。

 

「そう…か…。今更だが…本当に…すまなかった…」

 

俯きながら謝罪していた。

 

「さて…旧交を温めるのはそれくらいにして、本題に入るわよ」

 

そんな空気をぶった切って、イヴさんが話し始める。

 

「…何をするの?イヴ」

 

「ふふっ、貴女は何も考えなくていいのよリィエル。ただ私の言う事を聞いてればいいわ。分かった?」

 

「…ん。分かったイブの言う通りにする」

 

リィエルへの態度にムカつきはするが、ここは堪える。

 

「端的に確認するわ。今回、【社交舞踏会】に乗じて王女の暗殺を狙う、組織の企てを阻止及び、首謀者の生け捕り…以上よ。何か質問は?」

 

「大アリだ。連中がなりふり構わなくなったらどうする?やはり俺は、中止させる事を提案する」

 

早速グレン先生が、反論する。

 

「それは大丈夫よ。今回の一件は【急進派】の先走りよ。下手に手を打てば、逆に粛清対象に成りかねないわ」

 

なるほど…つまり

 

「…証拠を残さずにやる必要がある。故に暗殺しかない。ってことですか?」

 

「その通りよ。賢い子は嫌いじゃないわ」

 

そう言いながら、俺に妖しく笑いかけるイヴさん。

いや、何で?

 

「…で?戦力は?」

 

「【第二団・地位(アデプタス·オーダー)】が1人、【第一団・門(ポータルス·オーダー)】が3人の、計4人よ」

 

「確証は?」

 

「私の情報は正確よ?ね、グレン?」

 

「…ッ!」

 

グレン先生は何も言わない。

どうやら、マジらしい。

 

「【第二団・地位(アデプタス·オーダー)】の奴はみんな知ってる奴よ。下手人は…【魔の右手】の【ザイード】よ」

 

名前を言った途端、皆の顔が強ばった。

 

「…誰ですかそれ?」

 

何でもパレード等の大人数集まる場所での、暗殺を得意とする、魔術師らしい。

目撃証言なし、その殺害方法、バラバラ。

あらゆる護衛をつけても、尽く破られているらしい。

それ故に、名前以外の何もかもが不明らしい。

 

「厄介ですね…」

 

「そうね、確かに厄介よ。でも私にはこれがある」

 

イヴさんは不敵に笑いながら、不思議な炎を生み出した。

 

眷属秘術(シークレット)【イーラの炎】。一定領域ないの人間の負の感情を、炎の揺らめきで視覚化出来る魔術よ。人の感情も所詮、生体内化学反応の産物と見るならば…これがある限り、私の目は欺けない」

 

眷属秘術(シークレット)?」

 

初めて聞いた言葉に、俺は首を傾げる。

 

眷属秘術(シークレット)っていうのは、固有魔術(オリジナル)の一種だ。簡単に説明すると、固有魔術(オリジナル)が魔術師一人一人なのに対して、眷属秘術(シークレット)はその家に代々伝わる固有魔術(オリジナル)だ。つまり、その家の者にしか扱えない魔術って事だ」

 

なるほど、イグナイト家専用魔術って事だ。

 

「これともう1つの眷属秘術(シークレット)【第七園】なら、会場ぐらい余裕でカバー出来るわ」

 

「けっ…本当にそんなこと出来るのかよ」

 

「それに、その感情が本物の、ザイードの根拠は?それって無差別に識別してるんですよね?囮とか使われたら、本人はノーマークですよね?」

 

「関係ないわ。単独でも複数でも…それこそ囮でも、王女を殺そうとすれば、必ず心境の変化が生じる。私の【イーラの炎】からは逃れられない」

 

俺達の反論も即答で否定される。

 

「故に、領域内にいる限り、ルミアの安全は保証されてると?」

 

「ええ、そうよ。とはいえ、敵も馬鹿ではないわ。私がいる以上、外から攻める手を用意してるはず。だから…」

 

こうして、どんどん作戦が練られていく。

この魔術に加え、傍では俺と先生とリィエル、外にはアルベルトさん、バーナードさん、イヴさん、クリストフ。

この頑丈な布陣を抜ける人間のは、ちょっと思いつかない。

 

「どうかしら?暗殺しかないって分かっていれば、案外簡単なのよ?私達の状況は最早、多少のリスクは背負ってでも、動かなくてはいけないのよ。東洋では確か…なんて言ったかしら?」

 

「『虎穴に入らずんば虎子を得ず』…ですか?」

 

「そう、それよ」

 

俺達の葛藤を察してか、挑発するように言うイヴさん。

 

「…お前達の不安はよく分かる」

 

そして、アルベルトさんもまた、俺達の心境を悟ってくれたのか、突然話し出した。

 

「しかし、既に賽は投げられた。お前達からしたら、この作戦は不本意極まりないだろう。だか後戻りは出来ん。後は手持ちのカードで如何に戦うか、だ。だから…ここに誓おう。この作戦に安易な妥協はせず、最善を尽くすと。お前達の守りたいものを俺も守ってみせると。…この命を懸けてでも」

 

この人が、こんなに饒舌だった事なんて、今まであっただろうか。

それだけ…本気でそう思ってくれてるんだ。

そう思うと、嬉しくて、力が溢れてきた気がした。

 

「アルベルトさん…ありがとうございます!」

 

「ケッ…今更お前が言える立場かよ?ああ?」

 

「ないな」

 

「分かってんなら御託はいらねぇ。精々気張りな。覚えとけよ?もしアイツらに何かあったら、イヴの次はテメェだかんな!」

 

「いいだろう、好きにしろ」

 

そんなアルベルトさんに、食ってかかるグレン先生。

 

「ち、ちょっと…!?先生!?」

 

「大丈夫だよ。2人はいつもああだから」

 

俺が慌てて止めようとすると、逆にクリストフに止められた。

 

「いつもって…大丈夫なの?」

 

「まあ、『喧嘩するほど仲がいい』ってやつじゃよ。それと…ワシらも、お主らに誓おう。絶対に守ってみせると」

 

「うん、僕も誓うよ。決して、危険な目には合わせない」

 

「2人とも…ありがとうございます」

 

2人にも力は貰った。

そうだ、もう逃げられない。

だったら…出来る事を、出来る以上にやるしかない。

とりあえず、当面は

 

「ダンスの練習…しないとな…」

 

 

 

そして、水面下で既に戦いは、始まっていた。

 

「…【魔術師】のイヴを出し抜く手段はある。なにせ、僕らの後ろには…」

 

「…この私を出し抜くのは不可能だわ。【魔の右手】のザイード…貴方の裏にはもう一人いる。ええ、見抜いてるわ」

 

「…とはいえ、相手はあの【魔術師】。裏に潜む真の黒幕に気付いているでしょう…」

 

「…すでに気付いている以上、彼らが私を出し抜く事は出来ない」

 

「…気付いているからこそ、彼女は僕達には届かない」

 

「…アイツらの力なんて要らない。私は絶対に裏で糸を引く真の黒幕の尻尾を掴んでみせる。…全てはイグナイト家の為に」

 

「…いくらイグナイト家でも…【魔術師】のイヴでも…僕の裏で糸を引く存在には届かない…」

 

奇しくも、敵対する者同士、場所だけを異なって、全く同じ事を確信し…呟いていた。

 

「勝つのは我々…帝国宮廷魔導師団よ」

 

「勝つのは我々…天の知恵研究会だ」

 

怪物同士の駆け引き、という戦いが、だ。

 

 

 

「…見つけた。コイツが犯人だ」

 

そして、また違う場所。

1人の少年が、ダーツの矢である場所を投げ刺した。

 

「確証はない。証拠もない。でも、これしかない。そんな気がする。だったら…やるしかない。敵も味方も…全て出し抜いてやる」

 

月明かりに照らされるその瞳には

 

「…ルミアは俺が守る」

 

決して消えない、仄昏い業火が浮かんでいた。




という訳で少し短めですが、ここまでです。
アルタイルが何かに気付きました。
一体何に気づいたのか…
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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