アルタイルは、独力撃破はほぼないな…。
今回はみんな大好き、あの人が登場しますよ?
よろしくお願いします。
「…ここ?」
「ああ、こんな辺鄙な場所にしやがって…」
夜も更けた頃、俺達は南地区郊外の、倉庫街に来ていた。
先生が血でルーン鍵を描くと、倉庫の扉が開く。
「ようグレ坊!アル坊!ひっさしぶりじゃのう!元気にしとったか!?」
中には【隠者】のバーナードさんがいた。
「ジジイ…あんたは相変わらずそうだな…」
「お久しぶりです。バーナードさん」
奥には
「ご健勝のようで何よりですグレン先輩。アルタイルも、元気そうで良かったよ」
【法皇】のクリストフがいた。
「クリストフ!久しぶり。そっちこそ元気そうじゃん!」
「クリストフ…お前も来てたのか。ていうか…仲良いなお前」
グレン先生は俺達の仲の良さに驚いていた。
「そりゃあ俺達」
「友達ですから」
そう言って俺達は拳をぶつけ合う。
ジャティスの件以降、度々会い、仲良くなったのだ。
「2人とも遅い」
ちょこんと座る、【戦車】のリィエル。
その隣で黙って立っている、【星】のアルベルトさん。
そして、奥に腰かける【魔術師】のイヴさん。
先生含めて、特務分室のメンバーが6人が揃うと、圧巻だ。
「先輩、アルタイル。この度は本当にすみません」
「全くだ。上は何考えてるんじゃ…」
クリフトフとバーナードさんが申し訳なさそうに顔を歪ませる。
「既に軍属ではない先輩だけじゃなくて、アルタイルまで巻き込むなんて…ですが、今僕達は人手が足りないのも事実なんです」
「今回だけはお主らの力、貸してくれんか!?」
そう言って頼み込んでくるバーナードさん。
「お前達は…俺に…怒ってないのかよ…?」
グレン先生は呆然と呟いていた。
俺は口を挟むべきではないと黙り込む事にした。
「…聞けば、アル坊がケジメつけてくれたんじゃろ?まあ、強いて言うなら…一言でも愚痴って欲しかったかのう」
「正直、先輩には物申したいことはあります。でも…誰よりも身を粉にして、誰かの為に戦ってきた…そんな先輩を信じています」
2人の優しい言葉に先生は、罪悪感を覚えたのだろう。
「そう…か…。今更だが…本当に…すまなかった…」
俯きながら謝罪していた。
「さて…旧交を温めるのはそれくらいにして、本題に入るわよ」
そんな空気をぶった切って、イヴさんが話し始める。
「…何をするの?イヴ」
「ふふっ、貴女は何も考えなくていいのよリィエル。ただ私の言う事を聞いてればいいわ。分かった?」
「…ん。分かったイブの言う通りにする」
リィエルへの態度にムカつきはするが、ここは堪える。
「端的に確認するわ。今回、【社交舞踏会】に乗じて王女の暗殺を狙う、組織の企てを阻止及び、首謀者の生け捕り…以上よ。何か質問は?」
「大アリだ。連中がなりふり構わなくなったらどうする?やはり俺は、中止させる事を提案する」
早速グレン先生が、反論する。
「それは大丈夫よ。今回の一件は【急進派】の先走りよ。下手に手を打てば、逆に粛清対象に成りかねないわ」
なるほど…つまり
「…証拠を残さずにやる必要がある。故に暗殺しかない。ってことですか?」
「その通りよ。賢い子は嫌いじゃないわ」
そう言いながら、俺に妖しく笑いかけるイヴさん。
いや、何で?
「…で?戦力は?」
「【
「確証は?」
「私の情報は正確よ?ね、グレン?」
「…ッ!」
グレン先生は何も言わない。
どうやら、マジらしい。
「【
名前を言った途端、皆の顔が強ばった。
「…誰ですかそれ?」
何でもパレード等の大人数集まる場所での、暗殺を得意とする、魔術師らしい。
目撃証言なし、その殺害方法、バラバラ。
あらゆる護衛をつけても、尽く破られているらしい。
それ故に、名前以外の何もかもが不明らしい。
「厄介ですね…」
「そうね、確かに厄介よ。でも私にはこれがある」
イヴさんは不敵に笑いながら、不思議な炎を生み出した。
「
「
初めて聞いた言葉に、俺は首を傾げる。
「
なるほど、イグナイト家専用魔術って事だ。
「これともう1つの
「けっ…本当にそんなこと出来るのかよ」
「それに、その感情が本物の、ザイードの根拠は?それって無差別に識別してるんですよね?囮とか使われたら、本人はノーマークですよね?」
「関係ないわ。単独でも複数でも…それこそ囮でも、王女を殺そうとすれば、必ず心境の変化が生じる。私の【イーラの炎】からは逃れられない」
俺達の反論も即答で否定される。
「故に、領域内にいる限り、ルミアの安全は保証されてると?」
「ええ、そうよ。とはいえ、敵も馬鹿ではないわ。私がいる以上、外から攻める手を用意してるはず。だから…」
こうして、どんどん作戦が練られていく。
この魔術に加え、傍では俺と先生とリィエル、外にはアルベルトさん、バーナードさん、イヴさん、クリストフ。
この頑丈な布陣を抜ける人間のは、ちょっと思いつかない。
「どうかしら?暗殺しかないって分かっていれば、案外簡単なのよ?私達の状況は最早、多少のリスクは背負ってでも、動かなくてはいけないのよ。東洋では確か…なんて言ったかしら?」
「『虎穴に入らずんば虎子を得ず』…ですか?」
「そう、それよ」
俺達の葛藤を察してか、挑発するように言うイヴさん。
「…お前達の不安はよく分かる」
そして、アルベルトさんもまた、俺達の心境を悟ってくれたのか、突然話し出した。
「しかし、既に賽は投げられた。お前達からしたら、この作戦は不本意極まりないだろう。だか後戻りは出来ん。後は手持ちのカードで如何に戦うか、だ。だから…ここに誓おう。この作戦に安易な妥協はせず、最善を尽くすと。お前達の守りたいものを俺も守ってみせると。…この命を懸けてでも」
この人が、こんなに饒舌だった事なんて、今まであっただろうか。
それだけ…本気でそう思ってくれてるんだ。
そう思うと、嬉しくて、力が溢れてきた気がした。
「アルベルトさん…ありがとうございます!」
「ケッ…今更お前が言える立場かよ?ああ?」
「ないな」
「分かってんなら御託はいらねぇ。精々気張りな。覚えとけよ?もしアイツらに何かあったら、イヴの次はテメェだかんな!」
「いいだろう、好きにしろ」
そんなアルベルトさんに、食ってかかるグレン先生。
「ち、ちょっと…!?先生!?」
「大丈夫だよ。2人はいつもああだから」
俺が慌てて止めようとすると、逆にクリストフに止められた。
「いつもって…大丈夫なの?」
「まあ、『喧嘩するほど仲がいい』ってやつじゃよ。それと…ワシらも、お主らに誓おう。絶対に守ってみせると」
「うん、僕も誓うよ。決して、危険な目には合わせない」
「2人とも…ありがとうございます」
2人にも力は貰った。
そうだ、もう逃げられない。
だったら…出来る事を、出来る以上にやるしかない。
とりあえず、当面は
「ダンスの練習…しないとな…」
そして、水面下で既に戦いは、始まっていた。
「…【魔術師】のイヴを出し抜く手段はある。なにせ、僕らの後ろには…」
「…この私を出し抜くのは不可能だわ。【魔の右手】のザイード…貴方の裏にはもう一人いる。ええ、見抜いてるわ」
「…とはいえ、相手はあの【魔術師】。裏に潜む真の黒幕に気付いているでしょう…」
「…すでに気付いている以上、彼らが私を出し抜く事は出来ない」
「…気付いているからこそ、彼女は僕達には届かない」
「…アイツらの力なんて要らない。私は絶対に裏で糸を引く真の黒幕の尻尾を掴んでみせる。…全てはイグナイト家の為に」
「…いくらイグナイト家でも…【魔術師】のイヴでも…僕の裏で糸を引く存在には届かない…」
奇しくも、敵対する者同士、場所だけを異なって、全く同じ事を確信し…呟いていた。
「勝つのは我々…帝国宮廷魔導師団よ」
「勝つのは我々…天の知恵研究会だ」
怪物同士の駆け引き、という戦いが、だ。
「…見つけた。コイツが犯人だ」
そして、また違う場所。
1人の少年が、ダーツの矢である場所を投げ刺した。
「確証はない。証拠もない。でも、これしかない。そんな気がする。だったら…やるしかない。敵も味方も…全て出し抜いてやる」
月明かりに照らされるその瞳には
「…ルミアは俺が守る」
決して消えない、仄昏い業火が浮かんでいた。
という訳で少し短めですが、ここまでです。
アルタイルが何かに気付きました。
一体何に気づいたのか…
それでは失礼します。
ありがとうございました。