ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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何故か同じ話が2回投稿される時があるんですが…。
誰か、ご存知だったりしません?
それではよろしくお願いします。


社交舞踏会編第3話

「ったく、どいつもこいつも…人の気も知らないで…」

 

「まあまあ、仕方ないでしょ?」

 

俺達は会場の窓で賓客を見下ろしていた。

この中に敵がいるかもって思うと、気疲れしそうになる。

 

「先生…アレ、持ってますか?」

「ああ、持ってるぞ。アルタイル…あの話、本気なんだな?」

 

「…確証も証拠もないから、信じるかは任せます」

 

「俺の生徒の話だ。信じるに決まってんだろ。イヴよりよっぽど信頼してるぜ。…だからアイツも乗ったんだろうよ」

 

「…だといいですけど」

 

そう言いながら、俺は落ち着かず、何度か女子更衣室の方へ、足が向かいかけた。

一応設営しながら結界は張ってあるし、反応だけならルミアに渡したお守りがある。

それに傍でリィエルが、遠隔でイヴさんが、見ている。

だから大丈夫…そう言い聞かせていると

 

「お、おまたせアイル君。ど…どうかな…?」

 

声を掛けられ振り返ると…ルミアがいた。

 

「ごめんね…着付けに手間取っちゃって…」

 

「…」

 

俺は言葉が紡げなかった。

淡い桃色のそれなりに華やかな…それだけの普通のドレスだ。

だが、丁寧に結われた髪、薄く施された化粧、控えめに飾られたアクセサリー。

その全てが完璧なチョイスとバランスで仕上がっていた。

普段幼く見えなくもない彼女が、今はどこの社交界に出してもおかしくない、立派な淑女になっていた。

 

「あ、アイル君?」

 

そんな不安そうなルミアの声にハッとする。

彼女を不安にさせるなんて、パートナーとしてダメだろ。

俺は直ぐに彼女を褒める。

 

「…すごく似合ってる。本当に綺麗だよルミア」

 

下手な評価は、却ってチープに聞こえてしまう。

ただ綺麗、この一言で十二分。

そう思わせるほど、綺麗だった。

 

「あ、ありがとう…!アイル君も…すごく似合ってるよ!」

 

「ああ、ありがとう」

 

今の俺はバイト中の時のように、右側の髪をかきあげて、それを止めている。

唯一違うのはメガネをかけてない事ぐらいかな。

 

「おーおー。お熱いなお前ら」

 

「「せ、先生!?///」」

 

しまった…忘れてた…!

一気に恥ずかしくなって、2人揃って顔を真っ赤にする。

 

「お前ら、先に行っとけ。俺はここにいるから」

 

そう言って、そのまま窓の縁に寄り添った体勢をとる。

俺達はその言葉に甘えて、先に会場入りする事にした。

 

 

「うわ〜…相変わらず、圧巻だな…」

 

俺は去年も見た光景に唖然として見ていた。

俺はあまり堅苦しいのは得意では無いので、ちょっと落ち着かない。

 

「ふふっ、アイル君は、あまりこういうの得意じゃないでしょ?」

 

「まあな…さて、とりあえず準備運動がてら、俺らも踊るか?」

 

「じゃあ、行こっか。何組か踊ってるし…アイル君もきっと驚くよ?」

 

ん?驚く?なんの事だ?

 

「よう!アイル!」

 

「ん?カッシュ?」

 

誰かと思ったら、何とカッシュだった。

 

「本当にルミアと踊るんだな!気を付けろよ?お前、【夜、背後から刺すべき男ランキング】1位だったぜ」

 

「本当に、ロクでもないランキングばっかあるなこの学院は」

 

何だその意味不明なランキングは。

 

「そりゃお前、学院で人気の天使ちゃんの隣を勝ち取ったんだから、恨み妬みなんて掃いて捨てるほどだぞ?ま、気をつける事だな!」

 

「ああ…本当に気を付けるよ…」

 

本気で気を付けてないと、洒落にならんからな…今日の場合。

 

「全く…格式高いパーティーだというのに、男どもの品がなってませんわ!レディの扱いを心得てから来て欲しいですの!」

 

そんな怒ったような口調で、現れたのはウィンディだ。

赤を基調としたそのドレスは、確かにウィンディならば、着こなせるだろう。

 

「ウィンディもいたのか。よく似合ってるぞ。まさに1輪のバラって感じだな」

 

「あら、お口がお上手のようですわね。ですが、その言葉謹んでお受けしますわ。アルタイルも何時もとは違って、しっかり整えてますわね。良くお似合いですわよ、お2人とも」

 

俺はウィンディのドレス姿を褒めつつ、宥めといた。

ルミアは少し不機嫌そうにしてたが、ウィンディの言葉で機嫌が戻ったらしい。

 

「他の男にもアルタイルぐらいの品が欲しいですわ…。それはともかく、私も【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】に挑戦致しますわ!オーホッホッホ!!」

 

すげぇ…ここまで高笑いが似合う奴、初めて見た…。

 

「あ、ウィンディのパートナー俺な。くじ引きで決まった」

 

「…終わりましたわ」

 

「ヒッデェな!?」

 

ウィンディも出るのか…

申し訳ないが、ウィンディへの警戒は要らないな。

だって…ウィンディだし。

 

「なんか珍しい組み合わせだな?」

 

「そりゃ()()()()()()()だしな」

 

「…何?」

 

今なんて言った?

 

「名付けて【先生を金銭的に干そうぜ&アイルに赤っ恥かかせようぜ作戦inダンスパーティ】だ!」

 

「バッ!?」

 

思わず声に出そうになるのを、辛うじて防ぐ。

余計な真似をしてくれたとしか思えない。

帝国式社交舞踏会には、独特なルールがあるのだ。

それは、『誰かにダンスの誘いを受けたら、最低1回は受けなくてはならない』、というのルールだ。

もちろん強引に断る事は出来るが、その代わり追い出されてしまうのだ。

だが【ダンス・コンペ】中であるなら、断り続けても許されるのだ。

つまり、コイツらのやってる事は余計なお世話っていうやつだ。

思わず頭を抱えると、突然黄色い歓声が響く。

何事かと振り向くと、そこには銀色の少女と、()()()()()()がいた。

 

「アイツらは…システィーナ?それと…誰だ?」

 

「ふふっ、分からない?」

 

ルミアが面白そうに話しかけてくる。

曲が終わり、2人がこっちに来る。

 

「ふふん!どうだったかしらアイル?」

 

「あ、ああ…よく似合ってるぞ。まさに銀細工って感じだな。ていうか…ただの考古オタクとしか思ってなかったが…こう見ると、やっぱご令嬢なんだよな…お前…」

 

「ドレス姿の評価はありがとう。でも貴方が私をどう思ってるか、一度話し合う必要があるみたいね…。ていうかそうじゃなくて、こっちよ」

 

こっちって…そっちの男の事?

…いや?男か?コイツ…何処かで…

 

「ま…まさか!?()()()()()()か!?」

 

「ん」

 

「大正解〜♪」

 

ルミアがイタズラ成功と言わんばかりの声で言うが、それどころじゃない。

 

「私ピンと来たのよね!この子、磨けば間違えなく男装の麗人になるって!私の目に狂いはなかったわ!!」

 

「あ、ああ…今、リィエルが出なくって、ちょっと…ホッとしてる…」

 

こんな奴出られたら、逆にヤバい。

自信が無くなる…。

 

「白猫、もう居たのか。誰と踊って…って!?リィエルか!?」

 

後ろから先生もやって来る。

そしてリィエルを見て、驚愕している。

 

「どうよ!私の渾身のプロデュースは!?」

 

「…じゃあ、あれはどうするんだ?」

 

「え?」

 

俺が指さした方へ、システィーナが目を向ける。

そこには

 

「グレン…私もダンス?一生懸命…覚えた。だから…後で私と踊って?」

 

「踊ってって…お前が覚えたの男パートだろ?」

 

「え?」

 

初めて知ったと言わんばかりに目を見開くリィエル。

 

「…で?あれはどうするんだ?」

 

わざと同じ言葉を使って尋ねる俺。

 

「…ごめんなさい」

 

思いっきり目を逸らして、汗を流すシスティーナ。

というか、リィエルは何してんだよ。

護衛だろうが…まあ、今更かアイツの場合。

 

「ふふっ…ドキドキするね?」

 

ルミアがそんな事を呟いた。

 

「私…今日がずっと楽しみだったの。【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】を着て、素敵な殿方の踊るのが、私の子供の頃からの夢だったの…。でも、私は普通じゃないから…。普通じゃない私と親しくなったら、その人まで巻き込んじゃうから…。どうしても、あのジンクスが怖くて…」

 

そう言いながら、俺を見る。

その透き通った笑みは、まるで聖女みたいで…少し怖かった。

 

「バーカ。言ったろ?『最高の夜にしてみせる。【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】は俺が着させてみせる。』って。もう一度言うぞ。俺は…最高に綺麗なルミアに、最高に綺麗なドレスを、着させてみせる」

 

そう言いながら俺は膝をついて、彼女の甲にキスをした。

周りから見たその姿は、まるで女王に忠誠を誓う騎士のようだったとか。

 

「…!///ふふっ!よろしくね。My gentleman」

 

「もちろん、お任せを。My lady」

 

こうして【社交舞踏会】恒例行事【ダンス・コンペ】が始まった。

 

 

「と、格好つけたはいいが…なんと言うか…」

 

余裕の予選突破だ。

仮にも昨年準優勝カップルの片割れと、ガチの王家のお嬢様だ。

この程度なら問題ない。

ちなみに同じブロックで当たったウィンディ達は、最後の最後にウィンディが、ドレスの裾を踏んでズッコケるという、いつものオチが待っていた。

 

「やっぱりお前はすげぇな。余裕で優勝候補筆頭だぞ」

 

「まあな…あっちもそうだろ?何せ今大会、最高得点だ」

 

あっちとは先生・システィーナカップルだ。

思わぬダークホースとして、注目度も高いコンビだ。

 

「ふふ…燃えてきたねアイル君!」

 

「お、おう…そうだな…」

 

そして何故か熱くなってるルミアよ。

お前はそんな熱血キャラだったか?

 

「失礼、先程の予選、拝見させて頂きました。

とても素晴らしいダンスでした。ぼくの名前は【カイト=エイリース】。クライトス魔術学院から招かれました」

 

レオス=クライトスのいた所からか…。

内心ため息をこぼす。

さっきから、この手の輩が多いのだ。

こっちとしては気が気じゃないのでやめて欲しい。

その時、アレにグレン先生からの連絡が入る。

 

⦅気を付けろ。そいつが【魔の右手】のザイードらしい。まあ十中八九、偽物だろうけどな⦆

 

その言葉に、思わず反応しかけるのをギリギリで、止める。

 

⦅どうします?捕まえますか?⦆

 

⦅それは言ったが却下された。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

⦅…そんな話ありました?⦆

 

協力者なんて聞いてない。

そんな話、1度もしてないよな。

 

⦅自分の手柄欲しさに、隠してやがったんだよ。…絶対にしばく⦆

 

俺はため息をつきそうになった。

俺にならともかく、先生はアルベルトさん達にすら、そういう事すんのかよ。

まあ…他人の事は言えんか。

 

「なるほど、彼は昨年準優勝カップルの1人なのですね。それは納得です。それにしても…貴女のようなお美しい方と、踊れるなんては羨ましい限りですね。コンペ終了後、1曲お相手してただけないでしょうか」

 

「普通に踊るだけでしたら」

 

「ありがとうございます。それではご健闘を祈っています。…キミも、頑張ってね」

 

恭しく一礼した後、俺に握手を求める。

その手は、右手だった。

俺は一瞬躊躇ったが…そのまま握り返す事にした。

 

「応援ありがとう。…()()()()()()()()殿()

 

最後だけルミアには聞こえないように、小さく言った。

 

「…へぇ。分かっていながら、僕の右手を握りますか」

 

「伝えておいてくれ。()()()()()()()()()()()()

 

その瞬間、奴の顔色が変わった。

…ビンゴ。

だが、止められない。

何故なら、止めれば暗殺失敗だから。

そして失敗すれば…粛清されるから。

 

「…ええ、しっかりと」

 

そう言って、離れていくエイリース。

さて、ここから…どうなるかな。

 

 

それからしばらくして、本戦出場枠が決まった。

俺達と先生達は、余裕の出場確定だった。

 

「やったよ!アイル君!」

 

「まだこっからだぞ、ルミア」

 

喜ぶルミアを、俺は軽く窘める。

実際ここからは、強敵も多い。

 

「おやおや〜!?誰かと思えば、キザったらしいアルタイル君じゃねぇか?お前も本戦出場決定したらしいな〜?だが…残念!金一封を手に入れるのは、この俺様じゃあ!」

 

ほんと…こういうの似合う人だよ、アンタは。

 

「これはこれは、遂に学院に金払なくちゃいけなるほど、減給されたグレン=レーダス大先生じゃないですか!金一封…なるほど。それがあれば、うちのツケ、耳揃えて払ってくれるんですよね?ああ、安心してください…負けても払って貰いますから」

 

俺は最大限笑顔で、言い返した。

ツケというのは、アルベルトさんとかと話し合う時の料金の事である。

アルベルトさんが払ってるのに対し、グレン先生はツケという形になっているのだ。

それを持ち出された先生の顔は、真っ青だった。

 

「本当に、何で私はこんなのと…。まあいいわ。ルミア、貴女の思いは知ってるわ。でも、私は譲らないからね!」

 

「もちろん、私だって譲らないよ。それに…アイル君も約束してくれたしね。ね?アイル君?」

 

「…当然、約束は違わないさ。ルミア」

 

そう言って、俺達はお互いにいい意味で、火花を散らした。

 

「それにしても…腹減ったな」

 

「ずっと動いてるからね…何か食べようか」

 

「そうだな。腹に残らないものを探そう」

 

そう言って俺達は自然と手を繋ぎながら、食べ物を探し出したのだった。




始まりました。
ダンスコンペ。
アルタイルのカッコつけはかなり頑張ったやってます。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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