それでは、よろしくお願いします。
俺達はテーブルに並ぶ数々の料理に、目移りしていた。
「んー、どれにする?」
「どれにしよう…。どれも美味しそう…!」
キラキラした目で料理を見てるルミアに、俺は微笑ましくなり、つい笑ってしまう。
「む〜!アイル君!何で笑ってるの!?」
「いや、ごめん。前から思ってたけど、ルミアって食べるの好きだよな」
そう言うと、顔を真っ赤にしながら、捲し立てる。
「わ、私は別に!食い意地張ってる訳じゃ!ないからね!!///」
「知ってるよ。ルミアは美味しいに食べてくれるし、作る側としたら作りがいのある奴だよ。それに…ルミアが嬉しそうにしてるのは、俺も嬉しい」
そう言いながら頭を撫でてやると、さっきとは違う理由で顔が赤くなる。
「う…うぅ〜!///ズルい!ほら早く!先生の分も選ばないと!」
「ハイハイ…ん?先生?」
今、何で先生の分を取ろうとした?
「先生、始まる前にかなり食ってたよな」
「え?…そういえば?何でそう思ったんだろう?」
俺は直ぐに、アレの反応を追う。
どうやら、視認できる範囲にいるらしく、そっちを確認する。
そこには、黒髪の女性と踊るグレン先生がいた。
その女性を見た時、無性に嫌な気配を感じた俺は
⦅グレン先生!⦆
アレを使って通信を送る。
その声に反応したのか、直ぐに突き飛ばして、距離をとる。
突き飛ばされた女性は、そのまま人混みに紛れて消えて行ってしまった。
「アルタイル!ルミア!無事か!?」
「え?私達ですか?何ともないですよ?」
「少し疲れたくらいですけど」
「そうか…」
俺はそう言いつつも、外で話すよう通信を送る。
「先生!これ!お腹すいてるかと思って、持ってきたわよ」
ちょうどいい所にシスティーナ達も来たので、さりげなく、護衛をリィエルに任せ、外に出た。
「…で?あれは誰?」
「【エレノア=シャーロット】。天の知恵研究会のスパイだ」
「は!?どうしてそんな奴が!?」
「…『目で見れば概ね五つの階段があり、目を瞑れば概ね八つの階段であります。沿って走れば、その幽玄なる威容に、人は大きく感情を揺さぶられることでしょう』…だとよ。これは…多分…」
「ビンゴですね。俺の予想は当たってたっていう事です」
これで確信した。
俺の勘は当たっていた事を。
「直ぐに皆に報告しましょう。…ああ、あの人以外」
そうして、アレを直ぐに連絡をとろうとするも、誰も返事がなかった。
「返事がない…?まさか…!?」
「来やがったか…!」
俺と先生はつい外を見てしまう。
この暗闇の中、皆が戦っている。
だから…俺も戦わないと。
「先生、気をしっかり持たないと…ですね」
「ああ、やるぞ」
そう言って俺達はお互いに拳をぶつけながら、会場に戻って行った。
そのまま本戦も進み、遂に決勝。
カードは俺達VS先生達だった。
共に優勝候補筆頭だったためか、その注目度はかつて無いものだった。
俺達は中央に立って、始まりの時を待っていた。
「…アイル君。本当にありがとう。アイル君のおかげで、今夜はすごく楽しい【社交舞踏会】だったよ」
「…ルミア?何言ってんだ?」
突然そんな、訳分からん事を言い出したルミアに、思わず動揺してしまう。
「勝っても負けても…私は後悔しない。今夜の事は…私の一生の宝物…」
「ルミア…」
まさか…お前、気づいてたのか…?
「私…今夜だけは…精一杯、本気で、頑張るよ。だからお願い…観客の皆さんに…審査員の皆さんに…私達の全てを、余す事無く見てもらおう?」
その顔は…最初の聖女みたいな笑みで、俺は、その笑顔が…嫌いだ。
「…言っただろ?『約束は違わない』って。それに…『見てもらおう?』何て、受け身じゃダメだぜ?『見せつける!』ぐらい言わないとな」
だから俺は、ちょっと茶目っ気を出しつつ、本気だやると答える。
「…!うん!やるよ!!」
こうして決勝戦は始まった。
(ごめんね…システィ。もう少しだけ…もう少しだけ、ワガママを許して。後何度、こうして思い出を作れるかなんて、分からないから。これだけは…【
(本気で…私に勝つ為に…真剣に踊ってるのね、ルミア。貴女はいつも…私にさりげなく、譲ってくれてたよね。知ってるよ?家族だもの。ごめんねルミア。貴女の本気を邪魔しちゃって…本当にごめん。だから…私も全力を尽くすわ!でも私、貴女の事…心の底から、応援してるから!)
そんな2人の思いが当てられたか、パートナー達も徐々に熱が増してくる。
激しく、荒々しく、優雅に、穏やかに…。
そんな似て非なる踊りが舞っている。
そして…二組のカップルは最後のフィニッシュを、同時に決めるのだった。
「はぁ…はぁ…」
「ふぅ…ふぅ…」
俺達2人は、お互い肩で息をしながら、スコアボードを見ていた。
周りでは未だに拍手喝采が起きているが、正直それどころじゃない。
そして遂に、結果が出る。
それは…ごく僅かな僅差、1人でも変えてたらひっくり返った差で…
勝敗がついた瞬間、一瞬静寂が包んだが、それも直ぐにそれまで以上の、拍手喝采が響く。
「…勝ったの?」
呆然とつぶやくルミアの肩を、俺は優しく抱き寄せる。
「…言ったろ?着せてみせるって。ルミア、俺達の…勝ちだ!!」
「…や…やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
勢い余って抱きついてくるルミアを、俺はしっかり抱き締める。
「やっと…夢が叶うな」
「うん…うん…!!」
ルミアの涙を見ながら、俺は嬉しさと同時に、やるせなさが込み上げる。
(…こっからだ。こっからが、正念場なんだ。ルミアの夢を叶えるって決めたんだろ。絶対にしくじれないぞ俺)
そう、真の戦いはここからだという事を、俺は理解していた。
クラスメイトが、誰のドレス姿を見たいかで、盛り上がってるのを、ドリンク片手にぼんやりと聞いていると、不意にどよめきが聞こえる。
その方をむくと
「おまたせ…アイル君…」
【
「…綺麗だ」
そのあまりにも幻想的な光景に、呼吸すら忘れた俺が、絞り出したかのように呟いたのがそれだった。
そうして…最後の踊りが始まる。
今迄の葛藤やらなんやらが全て…どうでも良くなってきて…。
このまま…ルミアと…一緒に…永遠に…。
(ザッけんなよ!!!しくじれないって決めたばかりだろうが!!!)
俺は自分自身に叱責する。
もうほとんど飲まれかけてる。
体も言う事を聞かない。
それでも、どうにかしないと…!
そう思っていると、ふと何か違和感を覚える。
1組だけ違う踊りをしていたのだ。
あれは…先生達!?
「アルタイル!!聞こえるか!?」
「何とか…!」
「だったら今すぐに動きを真似ろ!ルミアも強引に動かせ!」
強引にって…無茶苦茶な…!
「こ、こんのぉぉぉぉ!!」
俺は全体重をかけて、ルミアの動きに反発した。
その甲斐あってか、ルミアも正気を取り戻した。
「!?あ、アイル君!?何が!?」
「ルミア!何でもいい!適当に俺に合わせて!」
こうして俺達は強引に全く違う動きして、フィニッシュに漕ぎ着けた。
疲れた俺は、つい膝をついてしまう。
「…はぁ…はぁ…ヤバかった…!」
「アルタイル!大丈夫か!?」
「ルミア!大丈夫!?正気!?」
「皆…何が…!?」
すっかり動揺して、パニック状態のルミアの頭を撫でながら、立ち上がる。
「…正直、あまりにも突拍子もないって思ったよ。我ながら、無理やりすぎるって…でも、それが正解だった。そりゃそうだ。誰にもばらずに殺る…だったら、皆催眠させちまえばいい…!そうだよな?【魔の右手】のザイードさんよぉ!!」
そう言いながら、俺が睨んだ先にいたのは、右手で指揮棒を持った指揮者だった。
「…よくぞ、我が【右手】から逃れた。その舞は【
「とある遊牧民族の魔を祓い、己が心を守る精霊舞踊だ。特に有効だろと思ってな…」
それを聞いて、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「これを懸念して、わざと外したのだがね…しかし、いつから気付いていた?君達2人は特に、かかりが悪かったが…?」
「最初からだよ。始まる前から気付いてたさ。だから…こんなものも用意しておいた」
そう言いながら、俺はあるものを取り出した。
それは、精神防御が施されたお守りだ。
俺が、グレン先生達に渡した、アレの正体だ。
「【フェイルノート】。楽器の旋律だけで魔術を発動させる、俺が編み出したテクニックだ。俺はそれを真っ先に思い出した。でも、楽器1つじゃ、到底無理だ。なら、どうしよう…?」
「答えは簡単。
俺とグレン先生で種明かしをする。
これが、この男の暗殺術の全てだ。
本来なら…これがわかった段階で止めるべきだった。
だが、元々イヴさんが話をしたのが、止めてどうにかなるギリギリのタイミングだったのだ。
あのタイミングを逃した俺達に出来たのは、本番で少しでも、ルミアを守りきる可能性を、あげるようにする事だけだったんだ。
「ただ1つ、これだけ大規模な魔術行使がどうして気付かれなかったのか?これだけが分からなかった。でも、白猫のおかげで分かったぜ」
「【魔曲】…よね?音楽に変換した魔術式を読み取る事で、他人の心を支配する…。実態は無いけど、立派な【
【
「…私の家にはね、代々密かに【魔曲】の秘儀が、受け継がれていてね。その運用方法だけは研究され尽くしていた。わたしは7つの【魔曲】を奏で聞かせる事で、その場に居合わせる全ての人間を掌握できる!これ程暗殺に長けたものは無い!そうだろう!」
遂に全て白状したザイード。
もうこの場で、聞くべき事は無い。
「だがタネは割れた。覚悟はいいな?」
俺すぐに、魔術を起動できるように身構えた。
「…バカめ」
その瞬間、右手を振り上げ、固まっていた楽団に音楽を奏でさせる。
「『雷帝の閃そ…』!?」
俺は【ライトニング・ピアス】を唱えようとして、直ぐに取り消す。
…やられた。
「アルタイル!?なんで止めた!?」
「…魔術の支配権を取られました。今魔術を使ったら…何が起こるか分からない」
「な!?」
「ほう…少年、勘がいいな。君達が何か策を弄していても、ある程度は捉えている。つまり…無駄なのだよ!この我がオリジナル、【
そして、周りの人間を操って、俺達を捕まえにかかるザイード。
「あ…あぁ…」
その光景を見て、顔を真っ青にしながら膝から崩れ落ちるルミア。
「気をしっかり!ルミア!…先生」
「ああ、取り敢えず逃げるぞ!」
そう言って先生が、柄に笛が付いた投げナイフを、上に投げる。
「あの辺じゃのう…そら行くぞ!」
バーナードさんの声がする。
その瞬間、突然俺達の体が重くなる。
「ハッハー!どうじゃ!わしの【重力結界弾】は!?」
「いや作ったの僕なんですが…」
「全員撤退するぞ。こっちだ」
上からバーナードさん、クリストフ、アルベルトさん、リィエルが落ちてくる。
俺はそれを見て、直ぐにルミアを抱えて、強引に突破する。
そして俺達は、何とか包囲網を突破したのだった。
最近、仕事へのメンタルが…持たない…。
何にもやりたくなりですね…。
そんな無気力な社会人ですが…これは頑張っていきますよ!
それでは失礼します。
ありがとうございました。