ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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ロクアカのストックが、かなりあるので投稿していきます。
それでは、よろしくお願いします。


社交舞踏会編第4話

俺達はテーブルに並ぶ数々の料理に、目移りしていた。

 

「んー、どれにする?」

 

「どれにしよう…。どれも美味しそう…!」

 

キラキラした目で料理を見てるルミアに、俺は微笑ましくなり、つい笑ってしまう。

 

「む〜!アイル君!何で笑ってるの!?」

 

「いや、ごめん。前から思ってたけど、ルミアって食べるの好きだよな」

 

そう言うと、顔を真っ赤にしながら、捲し立てる。

 

「わ、私は別に!食い意地張ってる訳じゃ!ないからね!!///」

 

「知ってるよ。ルミアは美味しいに食べてくれるし、作る側としたら作りがいのある奴だよ。それに…ルミアが嬉しそうにしてるのは、俺も嬉しい」

 

そう言いながら頭を撫でてやると、さっきとは違う理由で顔が赤くなる。

 

「う…うぅ〜!///ズルい!ほら早く!先生の分も選ばないと!」

 

「ハイハイ…ん?先生?」

 

今、何で先生の分を取ろうとした?

 

「先生、始まる前にかなり食ってたよな」

 

「え?…そういえば?何でそう思ったんだろう?」

 

俺は直ぐに、アレの反応を追う。

どうやら、視認できる範囲にいるらしく、そっちを確認する。

そこには、黒髪の女性と踊るグレン先生がいた。

その女性を見た時、無性に嫌な気配を感じた俺は

 

⦅グレン先生!⦆

 

アレを使って通信を送る。

その声に反応したのか、直ぐに突き飛ばして、距離をとる。

突き飛ばされた女性は、そのまま人混みに紛れて消えて行ってしまった。

 

「アルタイル!ルミア!無事か!?」

 

「え?私達ですか?何ともないですよ?」

 

「少し疲れたくらいですけど」

 

「そうか…」

 

俺はそう言いつつも、外で話すよう通信を送る。

 

「先生!これ!お腹すいてるかと思って、持ってきたわよ」

 

ちょうどいい所にシスティーナ達も来たので、さりげなく、護衛をリィエルに任せ、外に出た。

 

「…で?あれは誰?」

 

「【エレノア=シャーロット】。天の知恵研究会のスパイだ」

 

「は!?どうしてそんな奴が!?」

 

「…『目で見れば概ね五つの階段があり、目を瞑れば概ね八つの階段であります。沿って走れば、その幽玄なる威容に、人は大きく感情を揺さぶられることでしょう』…だとよ。これは…多分…」

 

「ビンゴですね。俺の予想は当たってたっていう事です」

 

これで確信した。

俺の勘は当たっていた事を。

 

「直ぐに皆に報告しましょう。…ああ、あの人以外」

 

そうして、アレを直ぐに連絡をとろうとするも、誰も返事がなかった。

 

「返事がない…?まさか…!?」

 

「来やがったか…!」

 

俺と先生はつい外を見てしまう。

この暗闇の中、皆が戦っている。

だから…俺も戦わないと。

 

「先生、気をしっかり持たないと…ですね」

 

「ああ、やるぞ」

 

そう言って俺達はお互いに拳をぶつけながら、会場に戻って行った。

 

 

そのまま本戦も進み、遂に決勝。

カードは俺達VS先生達だった。

共に優勝候補筆頭だったためか、その注目度はかつて無いものだった。

俺達は中央に立って、始まりの時を待っていた。

 

「…アイル君。本当にありがとう。アイル君のおかげで、今夜はすごく楽しい【社交舞踏会】だったよ」

 

「…ルミア?何言ってんだ?」

 

突然そんな、訳分からん事を言い出したルミアに、思わず動揺してしまう。

 

「勝っても負けても…私は後悔しない。今夜の事は…私の一生の宝物…」

 

「ルミア…」

 

まさか…お前、気づいてたのか…?

 

「私…今夜だけは…精一杯、本気で、頑張るよ。だからお願い…観客の皆さんに…審査員の皆さんに…私達の全てを、余す事無く見てもらおう?」

 

その顔は…最初の聖女みたいな笑みで、俺は、その笑顔が…嫌いだ。

 

「…言っただろ?『約束は違わない』って。それに…『見てもらおう?』何て、受け身じゃダメだぜ?『見せつける!』ぐらい言わないとな」

 

だから俺は、ちょっと茶目っ気を出しつつ、本気だやると答える。

 

「…!うん!やるよ!!」

 

こうして決勝戦は始まった。

 

 

 

(ごめんね…システィ。もう少しだけ…もう少しだけ、ワガママを許して。後何度、こうして思い出を作れるかなんて、分からないから。これだけは…【妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】だけは、譲れない。だから、本気で来て、システィ!本気の貴女から勝ち取る…その事に意味があると思うから!!)

 

(本気で…私に勝つ為に…真剣に踊ってるのね、ルミア。貴女はいつも…私にさりげなく、譲ってくれてたよね。知ってるよ?家族だもの。ごめんねルミア。貴女の本気を邪魔しちゃって…本当にごめん。だから…私も全力を尽くすわ!でも私、貴女の事…心の底から、応援してるから!)

 

そんな2人の思いが当てられたか、パートナー達も徐々に熱が増してくる。

激しく、荒々しく、優雅に、穏やかに…。

そんな似て非なる踊りが舞っている。

そして…二組のカップルは最後のフィニッシュを、同時に決めるのだった。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

俺達2人は、お互い肩で息をしながら、スコアボードを見ていた。

周りでは未だに拍手喝采が起きているが、正直それどころじゃない。

そして遂に、結果が出る。

それは…ごく僅かな僅差、1人でも変えてたらひっくり返った差で…()()()()()()

勝敗がついた瞬間、一瞬静寂が包んだが、それも直ぐにそれまで以上の、拍手喝采が響く。

 

「…勝ったの?」

 

呆然とつぶやくルミアの肩を、俺は優しく抱き寄せる。

 

「…言ったろ?着せてみせるって。ルミア、俺達の…勝ちだ!!」

 

「…や…やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

勢い余って抱きついてくるルミアを、俺はしっかり抱き締める。

 

「やっと…夢が叶うな」

 

「うん…うん…!!」

 

ルミアの涙を見ながら、俺は嬉しさと同時に、やるせなさが込み上げる。

 

(…こっからだ。こっからが、正念場なんだ。ルミアの夢を叶えるって決めたんだろ。絶対にしくじれないぞ俺)

 

そう、真の戦いはここからだという事を、俺は理解していた。

 

 

クラスメイトが、誰のドレス姿を見たいかで、盛り上がってるのを、ドリンク片手にぼんやりと聞いていると、不意にどよめきが聞こえる。

その方をむくと

 

「おまたせ…アイル君…」

 

妖精の羽衣(ローベ·デ·ラ·フェ)】を見に纏ったルミアが、リィエルにエスコートされてやってきた。

 

「…綺麗だ」

 

そのあまりにも幻想的な光景に、呼吸すら忘れた俺が、絞り出したかのように呟いたのがそれだった。

そうして…最後の踊りが始まる。

今迄の葛藤やらなんやらが全て…どうでも良くなってきて…。

このまま…ルミアと…一緒に…永遠に…。

 

(ザッけんなよ!!!しくじれないって決めたばかりだろうが!!!)

 

俺は自分自身に叱責する。

もうほとんど飲まれかけてる。

体も言う事を聞かない。

それでも、どうにかしないと…!

そう思っていると、ふと何か違和感を覚える。

1組だけ違う踊りをしていたのだ。

あれは…先生達!?

 

「アルタイル!!聞こえるか!?」

 

「何とか…!」

 

「だったら今すぐに動きを真似ろ!ルミアも強引に動かせ!」

 

強引にって…無茶苦茶な…!

 

「こ、こんのぉぉぉぉ!!」

 

俺は全体重をかけて、ルミアの動きに反発した。

その甲斐あってか、ルミアも正気を取り戻した。

 

「!?あ、アイル君!?何が!?」

 

「ルミア!何でもいい!適当に俺に合わせて!」

 

こうして俺達は強引に全く違う動きして、フィニッシュに漕ぎ着けた。

疲れた俺は、つい膝をついてしまう。

 

「…はぁ…はぁ…ヤバかった…!」

 

「アルタイル!大丈夫か!?」

 

「ルミア!大丈夫!?正気!?」

 

「皆…何が…!?」

 

すっかり動揺して、パニック状態のルミアの頭を撫でながら、立ち上がる。

 

「…正直、あまりにも突拍子もないって思ったよ。我ながら、無理やりすぎるって…でも、それが正解だった。そりゃそうだ。誰にもばらずに殺る…だったら、皆催眠させちまえばいい…!そうだよな?【魔の右手】のザイードさんよぉ!!」

 

そう言いながら、俺が睨んだ先にいたのは、右手で指揮棒を持った指揮者だった。

 

「…よくぞ、我が【右手】から逃れた。その舞は【大いなる風霊の舞(バイレ·デル·ヴィエント)】の【第八演舞(エル·オクターヴァ)】。まさか踊り手がいたとはな…」

 

「とある遊牧民族の魔を祓い、己が心を守る精霊舞踊だ。特に有効だろと思ってな…」

 

それを聞いて、苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「これを懸念して、わざと外したのだがね…しかし、いつから気付いていた?君達2人は特に、かかりが悪かったが…?」

 

「最初からだよ。始まる前から気付いてたさ。だから…こんなものも用意しておいた」

 

そう言いながら、俺はあるものを取り出した。

それは、精神防御が施されたお守りだ。

俺が、グレン先生達に渡した、アレの正体だ。

 

「【フェイルノート】。楽器の旋律だけで魔術を発動させる、俺が編み出したテクニックだ。俺はそれを真っ先に思い出した。でも、楽器1つじゃ、到底無理だ。なら、どうしよう…?」

 

「答えは簡単。()()()()()()()()()()()。でもこれだけの数、どうやってすればいいか。だったら、自分が編集した楽曲を、自分で指揮すればいい」

 

俺とグレン先生で種明かしをする。

これが、この男の暗殺術の全てだ。

本来なら…これがわかった段階で止めるべきだった。

だが、元々イヴさんが話をしたのが、止めてどうにかなるギリギリのタイミングだったのだ。

あのタイミングを逃した俺達に出来たのは、本番で少しでも、ルミアを守りきる可能性を、あげるようにする事だけだったんだ。

 

「ただ1つ、これだけ大規模な魔術行使がどうして気付かれなかったのか?これだけが分からなかった。でも、白猫のおかげで分かったぜ」

 

「【魔曲】…よね?音楽に変換した魔術式を読み取る事で、他人の心を支配する…。実態は無いけど、立派な【魔法遺産(アーティファクト)】の1つだわ!」

 

魔法遺産(アーティファクト)】…なるほど、それなら筋は通る。

 

「…私の家にはね、代々密かに【魔曲】の秘儀が、受け継がれていてね。その運用方法だけは研究され尽くしていた。わたしは7つの【魔曲】を奏で聞かせる事で、その場に居合わせる全ての人間を掌握できる!これ程暗殺に長けたものは無い!そうだろう!」

 

遂に全て白状したザイード。

もうこの場で、聞くべき事は無い。

 

「だがタネは割れた。覚悟はいいな?」

 

俺すぐに、魔術を起動できるように身構えた。

 

「…バカめ」

 

その瞬間、右手を振り上げ、固まっていた楽団に音楽を奏でさせる。

 

「『雷帝の閃そ…』!?」

 

俺は【ライトニング・ピアス】を唱えようとして、直ぐに取り消す。

…やられた。

 

「アルタイル!?なんで止めた!?」

 

「…魔術の支配権を取られました。今魔術を使ったら…何が起こるか分からない」

 

「な!?」

 

「ほう…少年、勘がいいな。君達が何か策を弄していても、ある程度は捉えている。つまり…無駄なのだよ!この我がオリジナル、【呪われし夜の楽奏団(ペリオーデン·オーケストラ)】からは、逃れられん!!」

 

そして、周りの人間を操って、俺達を捕まえにかかるザイード。

 

「あ…あぁ…」

 

その光景を見て、顔を真っ青にしながら膝から崩れ落ちるルミア。

 

「気をしっかり!ルミア!…先生」

 

「ああ、取り敢えず逃げるぞ!」

 

そう言って先生が、柄に笛が付いた投げナイフを、上に投げる。

 

「あの辺じゃのう…そら行くぞ!」

 

バーナードさんの声がする。

その瞬間、突然俺達の体が重くなる。

 

「ハッハー!どうじゃ!わしの【重力結界弾】は!?」

 

「いや作ったの僕なんですが…」

 

「全員撤退するぞ。こっちだ」

 

上からバーナードさん、クリストフ、アルベルトさん、リィエルが落ちてくる。

俺はそれを見て、直ぐにルミアを抱えて、強引に突破する。

そして俺達は、何とか包囲網を突破したのだった。




最近、仕事へのメンタルが…持たない…。
何にもやりたくなりですね…。
そんな無気力な社会人ですが…これは頑張っていきますよ!
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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