ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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社交舞踏会編は、終了です。
少し、オリジナル要素を加えました。
あとオリジナルの詠唱が出てきますが、そういう事だと思ってスルーして下さいね。
それではよろしくお願いします。


社交舞踏会編第5話

「グズッ…ヒグ…ウゥ…」

 

「ルミア…泣かないで…」

 

「そうだぜ…落ち着けって…」

 

何とか逃げ出して、近くの森に隠れている俺達だが、ルミアが中々泣き止まない。

 

「そりゃ、せっかくの舞台を台無しにされて、悔しいのは分かるが…」

 

「違うんです…私の…私のせいなんです…」

 

「はぁ?」

 

先生が励まそうしたが、どうやら思い違いらしい。

 

「本当は…分かってたんです…アイル君や先生が…【社交舞踏会】の裏で…何か為そうとしてたのは…。でも…アイル君に甘えていました…」

 

やっぱり気付かれてたか…。

コイツはその辺勘がいいからな。

 

「だって!」

 

そう言って、顔を上げて、俺を見上げる。

そんなルミアを、俺は黙って見下ろす。

 

「今日が…楽しみだったんだよ?最初は…アイル君の強引な誘いだったけど…楽しみにだったの!子供の頃からの夢が…諦めきれなかったの!きっとアイル君達が何とかしてくれる…そう思いたかった…!」

 

俺はただ、その告解を唇を噛み締めながら、受け止める。

 

「私は…捨てられた王女だから…いつ切り捨てられても、可笑しくない。いつ殺されても、可笑しくない。だから思い出が欲しかった…。先生と、システィと、リィエルと、クラスの皆と…そして、アイル君と。宝物のような思い出が欲しかったの…」

 

誰も、何も言えなかった。

16歳の少女が、抱える覚悟じゃないから。

 

「私には…そんな事すら、望んじゃいけなかった…!皆…ごめんなさい…。私のワガママのせいで皆を…!ぐずっ…ひぐっ…!」

 

「それは違う」

 

俺にこんな事言う資格は無いのだろう。

でも、我慢ならなかった。

 

「どんな生まれであれ、どんな奴であれ…夢や理想を求めるのは…自由だ。どんなものであれ、それ自体は自由なんだ。その求める夢や理想に善悪はあれど…それ自体は、誰にだって権利はあるんだ。だから…そんな事言うなよ。俺は…お前の夢を叶えようと本気だったんだぜ?」

 

そう言いながら、俺は優しく抱きしめた。

 

「ごめん…強引な手を使わなくて…。ルミアの命を守りたい。ルミアの夢も守りたい。そうやって2つを欲張った結果がこれだ。ほんと…ごめん」

 

「アイル君…アイル君…!!!」

 

ルミアは俺にしがみついて、泣き続ける。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

俺の腕の中で、泣きじゃくるその姿は、まさにただの少女だった。

天使だのなんだの言われても、根底は本当にその辺にいる、1人の女の子なんだ。

俺は…そんなルミア=ティンジェルが…好きだ。

 

 

「おいジジイ。あいつの背中、蹴り飛ばしていいか?」

 

「奇遇じゃのう…。わしもそう思っとったところじゃ」

 

「2人共…空気読みましょうよ…」

 

何やら物騒な話が聞こえてきたので、ゆっくりと離して、振り返る。

 

「さてと…ぶっちゃけノープランです。何か意見ある人」

 

「全部台無しだわバカ野郎」

 

グレン先生から軽い拳骨が落ちる。

そうは言っても、タネを明かすので精一杯だったし。

用意してても、想定以上に厄介だし。

そう思っていると、突然、人ならざる雄叫びが聞こえる。

俺とクリストフは直ぐに、探索陣を張る。

 

「せ、先生!?今のなんですか!?」

 

「この反応…魔獣の類じゃない!?」

 

「悪魔です!下級ではありますが、数は…10体!」

 

「悪魔じゃと!?おぬしが始末したはずじゃろ!?」

 

「俺達が逃げ出した時の保険…というところだろう」

 

マズイ…!

この状況にさらに悪魔なんて…俺の糸なら…やれるか?

いや…保証は…!?

 

「クソ!もう時間がねぇ!アルベルト!やれるな!?」

 

「誰に言っている。是非もない。…フィーベルを借りるぞ。いいな」

 

「わかった!おい、白猫!お前はアルベルトに着いて行け!それと…何があっても、俺を見ろ!!!」

 

「せ、先生!?一体何を言って」

 

「いいから行け!」

 

こうして俺達は二手に別れて、逃走を始めた。

 

「すまんな若人よ」

 

「ん、邪魔」

 

バーナードさんとリィエルを前衛に、俺がルミアを抱え、隣をグレン先生、後ろをクリストフが守っている。

 

「!先生!気付かれた!」

 

「ええ!こっちに向かってます!それに…先程の刺客もこっちに来てます!」

 

「おお、来よったか!スマンの嬢ちゃん!わしらさここまでじゃ!」

 

「2人共!グレン先輩は土壇場の土壇場には頼りになります!アルタイル!無理しないようにね!」

 

「グレン、アイル。ルミアをお願い」

 

そんな応援を背中に受けて、俺達はさらに走り出す。

 

「先生!俺達は何処に!?」

 

「いいから走れ!手筈が整えば、アルベルト達が何とかしてくれる!」

 

アルベルトさんが?どうやって?

俺はアルベルトさんの進む方に目を向ける。

眼科に広がる夜のフィジテ。

その先には一際デカい時計塔…。

 

「…まさか…?」

 

いやいや…ないだろ。

流石にそれは…ねぇ…?

その時、結界に反応が来る。

 

「ザイード接近!悪魔も確認!」

 

「クソ!まだここじゃダメだ!どうする…!?」

 

…仕方ねぇな。

 

「先生、俺が食い止めます。ルミアをよろしく」

 

「な!?無理言うな!相手は悪魔だぞ!?」

 

「アール=カーンよりはマシでしょ?それに…このまま全滅するよりはマシ」

 

「だからって…!」

 

「ダメ!!!」

 

突然、俺に抱えられているルミアが、大声で俺の作戦を否定する。

 

「そんなのダメ!やるなら一緒にやるの!!」

 

「でも!こうしないと!」

 

「アイル君がいないと意味ないの!!!」

 

その言葉に俺は、思わず足を止めてしまう。

 

「…私の夢にはアイル君がいないとダメなの!私の夢を叶えてくれるんでしょ!?だったら…()()()()()()()()()()!()!()()()()()()()()()()()!()!()!()

 

目に涙を溜めながら、俺に怒るルミア。

初めてルミアに怒られたな…。

それに…なんか、同じ事グレン先生が、言われてた気がするな…。

 

「…グレン先生。プランBで行きます」

 

「…で?それは何だ?」

 

俺はマリオネットを作ってから、【セルフ・イリュージョン】で、ルミアに化けさせる。

 

「先生はマリオネットを連れて逃げて。俺は…本物と一緒に迎撃します。マジで確率の低い賭けですけど…」

 

「「わかった」」

 

「…即答かよ」

 

「今までのやつより余っ程マシだからな」

 

「アイル君と一緒に戦えるなら、何でもするよ」

 

はぁ…この人達は…全く。

そう呆れながらも、不思議と笑顔を浮かべていた。

 

「よし…やるぞ!」

 

「「おう!(うん!)」」

 

俺達はそれぞれの行動を開始した。

 

 

「…何のつもりかね?」

 

ザイードがやってくる。

傍には、見るも醜い悪魔が10体。

 

「何のつもりって…そりゃ勝つ為?」

 

「それで…彼女をここに?…どうやら、あちらにもいるようだが…そんな簡単な事に引っかかるとでも?」

 

「引っかかるさ…だって…どっちが本物か、分からないだろ?」

 

そう言うと、顔を顰める。

だが、直ぐに表情を戻し、指揮棒を振る。

 

「ふん、十中八九こちらが偽物だろうが、念の為だ。彼らに君達を始末させよう。それでは」

 

そう言って俺達をスルーして、行こうとするザイードに攻撃しようとするも、それより速く、悪魔からの攻撃が来たので、まず防御した。

 

⦅想定通り、そっちに行きました。ご武運を⦆

 

⦅了解。そっちこそ無理すんじゃねぇぞ⦆

 

そう通信してから、戦闘に備える。

俺の武装は糸のみ。

まず戦力不足ではあるが、不思議と負ける気はしない。

 

「やるぞ…ルミア」

 

「やるよ…アイル君」

 

こうして俺達は悪魔祓いを始めた。

 

 

複数の悪魔が、それぞれ火・雷・氷・風を吹き出す。

俺は難なく避けて、一体に糸を振り抜く。

その一撃で死ぬ事は無かったが、どうやら傷はつけられたらしい。

だが、それもすぐに再生する。

このペースだと…死ぬな、間違いなく。

 

「おっと!」

 

「アイル君!?」

 

作戦を考えてたら、ギリギリになってしまった。

 

「大丈夫!それよりルミア!用意は!?」

 

「ごめん!もう少し!」

 

これは…マズイか?

ルミアの周りには結界が二重に用意してある。

外側は守る為の結界だが、本命の内側の結界は、守る為のでは無い。

だから、外側が破られるとその瞬間、負けが確定する。

だけど…不思議だ。

焦りがない。

死ぬ予感はある、マズいという自覚もある。

なのに…思考がクリアだ。

 

「そらよ!」

 

俺は防御の結界で攻撃を防ぐ。

こいつら、動物みたいだな。

守りに徹してると、標的をルミアに変えようとするので

 

「よそ見…してんじゃねえよ!!」

 

思いっきり殴り飛ばす。

ダメージはなくても、物理的に距離は稼げる。

だが、1ヶ所には立ち止まってはいられない。

何故なら

 

「アイル君!」

 

「チッ!」

 

止まった瞬間、囲まれるから。

こいつら、動物みたいなくせに、地味に知恵が回る。

隙を見て囲ってきたり、時間差で攻撃したりしてくるのだ。

俺は上に飛んで、ギリギリ躱す。

ふと影が被さる。

上を見ると、飛んできた悪魔が急降下してきていた。

 

「…読んでんだよ」

 

俺は空中で身を翻して、逆に蹴り落とす。

これで10体全部が1ヶ所に集まった。

 

「ルミア!行けるか!」

 

「うん!『我らを守りし天の使いよ、願わくは御名を我に貸し与えたまえ』」

 

ルミアが高々と詠い始める。

その瞬間、方陣が赤く輝き出す。

 

「『我【戦天使イシェル】の名をここに借り受ける。昏らき世界の者よ、その身を在るべき場所へと帰さん』…真にかくあれかし(ファー·ラン)

 

その瞬間、悪魔達が苦しみ出した。

悪魔祓いには、大きく2種類ある。

1つは、悪魔の名を聞き出し、それ以上の上位の悪魔の力を以て祓う。

そしてもう1つは、上位の天使の名を使って祓う方法だ。

ルミアが今やってるのは後者である。

だが、本来の司祭ではないルミアには、些か荷が重いので、俺も加勢する。

糸で、囲い込み、五芒星を描く。

 

「『東方の神、名は阿明(あめい)。西海の神、名は祝良(しゅくら)。南海の神、名は巨乗(きょじょう)。北海の神、名は寓強(ぐきょう)。四海の海神、百鬼を退け凶災を祓わん』急急如律令!」

 

東方のもので、【百鬼夜行】という異形の集団を祓う為のものらしい。

これも本物より余っ程弱いだろう。

だが、2つを合わされば、それなりに強くなったのだろう。

悪魔達が祓われ始め、少しずつ減り出てきた。

そして…最後の一体が雄叫び共に、消え失せた。




という訳で、アルタイルがやっと自分の気持ちに気づきました。
それと、アルタイルを止める為に、ルミアにはシスティーナと似たようなセリフを言ってもらいました。
ルミアの場合、盛大なブーメランなんですけどね。
まあ、書いた後に気付いたんですけどね…。
この陰陽術の言葉は実在するらしいですね。
遠慮なく使わせてもらいました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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