少し、オリジナル要素を加えました。
あとオリジナルの詠唱が出てきますが、そういう事だと思ってスルーして下さいね。
それではよろしくお願いします。
「グズッ…ヒグ…ウゥ…」
「ルミア…泣かないで…」
「そうだぜ…落ち着けって…」
何とか逃げ出して、近くの森に隠れている俺達だが、ルミアが中々泣き止まない。
「そりゃ、せっかくの舞台を台無しにされて、悔しいのは分かるが…」
「違うんです…私の…私のせいなんです…」
「はぁ?」
先生が励まそうしたが、どうやら思い違いらしい。
「本当は…分かってたんです…アイル君や先生が…【社交舞踏会】の裏で…何か為そうとしてたのは…。でも…アイル君に甘えていました…」
やっぱり気付かれてたか…。
コイツはその辺勘がいいからな。
「だって!」
そう言って、顔を上げて、俺を見上げる。
そんなルミアを、俺は黙って見下ろす。
「今日が…楽しみだったんだよ?最初は…アイル君の強引な誘いだったけど…楽しみにだったの!子供の頃からの夢が…諦めきれなかったの!きっとアイル君達が何とかしてくれる…そう思いたかった…!」
俺はただ、その告解を唇を噛み締めながら、受け止める。
「私は…捨てられた王女だから…いつ切り捨てられても、可笑しくない。いつ殺されても、可笑しくない。だから思い出が欲しかった…。先生と、システィと、リィエルと、クラスの皆と…そして、アイル君と。宝物のような思い出が欲しかったの…」
誰も、何も言えなかった。
16歳の少女が、抱える覚悟じゃないから。
「私には…そんな事すら、望んじゃいけなかった…!皆…ごめんなさい…。私のワガママのせいで皆を…!ぐずっ…ひぐっ…!」
「それは違う」
俺にこんな事言う資格は無いのだろう。
でも、我慢ならなかった。
「どんな生まれであれ、どんな奴であれ…夢や理想を求めるのは…自由だ。どんなものであれ、それ自体は自由なんだ。その求める夢や理想に善悪はあれど…それ自体は、誰にだって権利はあるんだ。だから…そんな事言うなよ。俺は…お前の夢を叶えようと本気だったんだぜ?」
そう言いながら、俺は優しく抱きしめた。
「ごめん…強引な手を使わなくて…。ルミアの命を守りたい。ルミアの夢も守りたい。そうやって2つを欲張った結果がこれだ。ほんと…ごめん」
「アイル君…アイル君…!!!」
ルミアは俺にしがみついて、泣き続ける。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
俺の腕の中で、泣きじゃくるその姿は、まさにただの少女だった。
天使だのなんだの言われても、根底は本当にその辺にいる、1人の女の子なんだ。
俺は…そんなルミア=ティンジェルが…好きだ。
「おいジジイ。あいつの背中、蹴り飛ばしていいか?」
「奇遇じゃのう…。わしもそう思っとったところじゃ」
「2人共…空気読みましょうよ…」
何やら物騒な話が聞こえてきたので、ゆっくりと離して、振り返る。
「さてと…ぶっちゃけノープランです。何か意見ある人」
「全部台無しだわバカ野郎」
グレン先生から軽い拳骨が落ちる。
そうは言っても、タネを明かすので精一杯だったし。
用意してても、想定以上に厄介だし。
そう思っていると、突然、人ならざる雄叫びが聞こえる。
俺とクリストフは直ぐに、探索陣を張る。
「せ、先生!?今のなんですか!?」
「この反応…魔獣の類じゃない!?」
「悪魔です!下級ではありますが、数は…10体!」
「悪魔じゃと!?おぬしが始末したはずじゃろ!?」
「俺達が逃げ出した時の保険…というところだろう」
マズイ…!
この状況にさらに悪魔なんて…俺の糸なら…やれるか?
いや…保証は…!?
「クソ!もう時間がねぇ!アルベルト!やれるな!?」
「誰に言っている。是非もない。…フィーベルを借りるぞ。いいな」
「わかった!おい、白猫!お前はアルベルトに着いて行け!それと…何があっても、俺を見ろ!!!」
「せ、先生!?一体何を言って」
「いいから行け!」
こうして俺達は二手に別れて、逃走を始めた。
「すまんな若人よ」
「ん、邪魔」
バーナードさんとリィエルを前衛に、俺がルミアを抱え、隣をグレン先生、後ろをクリストフが守っている。
「!先生!気付かれた!」
「ええ!こっちに向かってます!それに…先程の刺客もこっちに来てます!」
「おお、来よったか!スマンの嬢ちゃん!わしらさここまでじゃ!」
「2人共!グレン先輩は土壇場の土壇場には頼りになります!アルタイル!無理しないようにね!」
「グレン、アイル。ルミアをお願い」
そんな応援を背中に受けて、俺達はさらに走り出す。
「先生!俺達は何処に!?」
「いいから走れ!手筈が整えば、アルベルト達が何とかしてくれる!」
アルベルトさんが?どうやって?
俺はアルベルトさんの進む方に目を向ける。
眼科に広がる夜のフィジテ。
その先には一際デカい時計塔…。
「…まさか…?」
いやいや…ないだろ。
流石にそれは…ねぇ…?
その時、結界に反応が来る。
「ザイード接近!悪魔も確認!」
「クソ!まだここじゃダメだ!どうする…!?」
…仕方ねぇな。
「先生、俺が食い止めます。ルミアをよろしく」
「な!?無理言うな!相手は悪魔だぞ!?」
「アール=カーンよりはマシでしょ?それに…このまま全滅するよりはマシ」
「だからって…!」
「ダメ!!!」
突然、俺に抱えられているルミアが、大声で俺の作戦を否定する。
「そんなのダメ!やるなら一緒にやるの!!」
「でも!こうしないと!」
「アイル君がいないと意味ないの!!!」
その言葉に俺は、思わず足を止めてしまう。
「…私の夢にはアイル君がいないとダメなの!私の夢を叶えてくれるんでしょ!?だったら…
目に涙を溜めながら、俺に怒るルミア。
初めてルミアに怒られたな…。
それに…なんか、同じ事グレン先生が、言われてた気がするな…。
「…グレン先生。プランBで行きます」
「…で?それは何だ?」
俺はマリオネットを作ってから、【セルフ・イリュージョン】で、ルミアに化けさせる。
「先生はマリオネットを連れて逃げて。俺は…本物と一緒に迎撃します。マジで確率の低い賭けですけど…」
「「わかった」」
「…即答かよ」
「今までのやつより余っ程マシだからな」
「アイル君と一緒に戦えるなら、何でもするよ」
はぁ…この人達は…全く。
そう呆れながらも、不思議と笑顔を浮かべていた。
「よし…やるぞ!」
「「おう!(うん!)」」
俺達はそれぞれの行動を開始した。
「…何のつもりかね?」
ザイードがやってくる。
傍には、見るも醜い悪魔が10体。
「何のつもりって…そりゃ勝つ為?」
「それで…彼女をここに?…どうやら、あちらにもいるようだが…そんな簡単な事に引っかかるとでも?」
「引っかかるさ…だって…どっちが本物か、分からないだろ?」
そう言うと、顔を顰める。
だが、直ぐに表情を戻し、指揮棒を振る。
「ふん、十中八九こちらが偽物だろうが、念の為だ。彼らに君達を始末させよう。それでは」
そう言って俺達をスルーして、行こうとするザイードに攻撃しようとするも、それより速く、悪魔からの攻撃が来たので、まず防御した。
⦅想定通り、そっちに行きました。ご武運を⦆
⦅了解。そっちこそ無理すんじゃねぇぞ⦆
そう通信してから、戦闘に備える。
俺の武装は糸のみ。
まず戦力不足ではあるが、不思議と負ける気はしない。
「やるぞ…ルミア」
「やるよ…アイル君」
こうして俺達は悪魔祓いを始めた。
複数の悪魔が、それぞれ火・雷・氷・風を吹き出す。
俺は難なく避けて、一体に糸を振り抜く。
その一撃で死ぬ事は無かったが、どうやら傷はつけられたらしい。
だが、それもすぐに再生する。
このペースだと…死ぬな、間違いなく。
「おっと!」
「アイル君!?」
作戦を考えてたら、ギリギリになってしまった。
「大丈夫!それよりルミア!用意は!?」
「ごめん!もう少し!」
これは…マズイか?
ルミアの周りには結界が二重に用意してある。
外側は守る為の結界だが、本命の内側の結界は、守る為のでは無い。
だから、外側が破られるとその瞬間、負けが確定する。
だけど…不思議だ。
焦りがない。
死ぬ予感はある、マズいという自覚もある。
なのに…思考がクリアだ。
「そらよ!」
俺は防御の結界で攻撃を防ぐ。
こいつら、動物みたいだな。
守りに徹してると、標的をルミアに変えようとするので
「よそ見…してんじゃねえよ!!」
思いっきり殴り飛ばす。
ダメージはなくても、物理的に距離は稼げる。
だが、1ヶ所には立ち止まってはいられない。
何故なら
「アイル君!」
「チッ!」
止まった瞬間、囲まれるから。
こいつら、動物みたいなくせに、地味に知恵が回る。
隙を見て囲ってきたり、時間差で攻撃したりしてくるのだ。
俺は上に飛んで、ギリギリ躱す。
ふと影が被さる。
上を見ると、飛んできた悪魔が急降下してきていた。
「…読んでんだよ」
俺は空中で身を翻して、逆に蹴り落とす。
これで10体全部が1ヶ所に集まった。
「ルミア!行けるか!」
「うん!『我らを守りし天の使いよ、願わくは御名を我に貸し与えたまえ』」
ルミアが高々と詠い始める。
その瞬間、方陣が赤く輝き出す。
「『我【戦天使イシェル】の名をここに借り受ける。昏らき世界の者よ、その身を在るべき場所へと帰さん』…
その瞬間、悪魔達が苦しみ出した。
悪魔祓いには、大きく2種類ある。
1つは、悪魔の名を聞き出し、それ以上の上位の悪魔の力を以て祓う。
そしてもう1つは、上位の天使の名を使って祓う方法だ。
ルミアが今やってるのは後者である。
だが、本来の司祭ではないルミアには、些か荷が重いので、俺も加勢する。
糸で、囲い込み、五芒星を描く。
「『東方の神、名は
東方のもので、【百鬼夜行】という異形の集団を祓う為のものらしい。
これも本物より余っ程弱いだろう。
だが、2つを合わされば、それなりに強くなったのだろう。
悪魔達が祓われ始め、少しずつ減り出てきた。
そして…最後の一体が雄叫び共に、消え失せた。
という訳で、アルタイルがやっと自分の気持ちに気づきました。
それと、アルタイルを止める為に、ルミアにはシスティーナと似たようなセリフを言ってもらいました。
ルミアの場合、盛大なブーメランなんですけどね。
まあ、書いた後に気付いたんですけどね…。
この陰陽術の言葉は実在するらしいですね。
遠慮なく使わせてもらいました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。