女性口調が迷子になってますね〜。
それではよろしくお願いします。
女体化事件から、やや経ち、移動を開始してから4日目の朝。
この数日色んなことがあった。
ベガがパニックを起こすし、爺さんがアルフォネア教授を呪い出すし、婆さんがノリノリで着せ替え人形にしようとするし。
そんな事もあったが、俺達は無事に、朝霧に包まれるアルザーノ帝国首都、【帝都オルランド】に着いた。
その威容は、とても雄々しく、美しい。
俺達は、早速【ライツェル・クロス鉄道駅】で、切符を人数分買い、ホームで電車が来るのを待っていた。
「ここが五番線ホーム。電車は11時発。今は…10:50。よし!問題なしね!」
細かい確認はシスティーナに任せ、俺は周りを見ていた。
鉄と油と石炭の匂いの中に、美しい花壇があった。
それは…俺達と同じく、聖リリィ魔術女学院の制服に身を包んだお嬢様達が、姦しくたむろしていたからだ。
「ふふ、驚いたかしら、アイル…じゃなかった。
「…だから、辞めてくれって…」
「でも今から読んでおかないと慣れないんだもん。ね?アイル君…じゃなかった。
「お前らワザとだろ!?だがらアイルでいいって!」
思わずため息をつく俺、アルタイル=エステレラ。
改め、アイベル=エスティア。
得意げに説明し出そうと、システィーナが口を開いた瞬間、ブオォォォォォォォォ!!
と、蒸気機関車がなる。
その威容に、俺達は揃って目を見開いていた。
「魔術も無しに…こんな鉄の塊が地を走るなんて…」
「これが、魔術を使えない人達の叡智の結晶か…。尊敬するぜ、本気で」
「うん…。人は魔術に頼らなくたってここまで出来るんだよね…」
いつか、魔術すら必要なくなるかもな…。
そんなありもしない未来に思いを馳せていると
「クソー…うるせぇ…誰だ、こんなうるせぇモン発明したアホは…近所迷惑だろうがチクショウ…」
「台無しだよバカ講師」
俺は思わず、真顔でツッコミを入れてしまう。
蹴らなかっただけマシだ。
「うるせぇ!いいから乗り込むぞ!忘れ物すんなよ!?」
先生の号令で乗り込もうとして、一応忘れ物がないか確認する為に、周りを見回したら…。
「…
「「「…え?」」」
「…Jesus」
思わず呟いてしまった。
蒸気機関車に感動してる暇なんて、無かった。
「おいおい!マジかよ!?あのバカ!離れるなって言ったのに!?」
「どど、どうしましょう!?もう出ちゃいますよ!?」
「とりあえず俺が探してくるから、お前らはここにいろ!!あのクソガギャ!!どこ行きやがったー!!」
そのまま、爆走していくグレン先生を俺達は見守るしか無かった。
「…アイルさん?糸は?」
「着けてない」
ルミアの縋るような言葉に俺は、即答する。
それから数分後、同じ制服を着て、眼鏡をかけた小柄な女の子と一緒にリィエルが来た。
「リィエル!貴女どこにいたの!?心配したんだからね!」
「よかった…」
システィーナとルミアがホッとしたように、リィエルに近づく。
俺は一緒にいた女子生徒に少し躊躇いながらも、お礼を言う。
「私の友達がご迷惑をおかけしたようで…申し訳ございません。ありがとうございました」
「い、いえいえ!?そんなご丁寧に!?気にしないでください!」
出来るだけ丁寧に対応したら、慌てて、手を振られる。
「ゆっくりお礼をしたいのですが…時間が…。先に乗ってしまいましょうか」
「そ、そうですね!早く乗りましょう!」
そう言って俺達は慌てて乗車する。
…しっかり、グレン先生の荷物は忘れずに。
「…女性口調、上手だね」
「…言うな。ほっとけ。適当だこんなの」
ボソッとからかってくるルミアに、ボソッと言い返す俺。
恥ずいんだから…言うな…!
「何とか…ギリギリだったわね…」
「うん…これで
俺はルミアの言葉に思わず確認する。
俺、ルミア、システィーナ、リィエル、恩人…あ。
「…Jesus」
「どうしたの?」
「先生…リィエル捜索中」
「「…あ」」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!ちくしょーー!!!」
女らしさの欠片もない姿で、先生が爆走してくる。
俺は前に渡したたまんまのお守りを使う。
⦅先生!お守りに魔力通して!速く!⦆
⦅わかったから速くしろ!!!⦆
魔力の反応を検知、そのまま【アリアドネ】の次元跳躍を使って、グレン先生を車内に飛ばした。
「はぁ…はぁ…間に合った…」
「はぁ…はぁ…久しぶりが…こんな使い方なんて…」
俺達はそれぞれの理由で、息を荒くしている。
「二人とも大丈夫ですか!?」
ルミアが、すぐに駆け寄ってきてくれる。
俺はポケットから、予備魔力の石を取り出して砕く。
「ん、迷子になったグレンが悪い」
「「テメェの所為だろうが、ボケェェェェェェ!!!」」
つい素が出てしまったが、無理もない。
グレン先生ばグリグリ、俺はゲンコツを落とした。
「あ、あの…とりあえず、席に座りませんか…?」
「ん?誰だお前?」
そういえば、自己紹介すらしてないな。
「自己紹介してないわ!私はシスティーナ=フィーベル!」
「ルミア=ティンジェルです」
「アル…アイベル=エスティアです。よろしくお願いしますね。アイルで構いませんよ」
「レーン=グレダスだ。よろしくな」
先生の名前は数秒で思いついた、もじりだ。
「は、はい…私は【エルザ=ヴィーリフ】です。エルザで結構です」
こうして、やっと自己紹介をした俺達はそのまま席を探す。
「なるほど…リィエルさんの落第退学を取り消す為に…大変ですね」
「いや〜こいつの自業自得だから…」
「あれ?でもさっきグレンって…」
「あ、あはは…あだ名みたいなもんだ…コラ」
まだグリグリされてる…。
やっぱり分かってなかったか。
自由席の号車に来たら、そこは想像を絶する豪華さだった。
「おお…すげぇ…」
「何て空間と調度品の無駄使い…」
席が左側しかなく、右側にはカフェテーブルやその他の調度品等が並んでおり、如何にもお嬢様御用達電車って感じ。
「まあ、いいか。よしお前ら!とにかく座って休もうぜ!」
その一言でやっと休めると、俺達は息を吐く中、エルザだけは違った。
「あ、あのレーン先生…この号車は使えないんです…ごめんなさい…」
「?エルザ?それってどういう?」
「お待ちなさい!そこの方々!」
理由を聞こうとした時、女子生徒の集団が現れ、取り囲まれる。
先頭に立つ女子は如何にもお嬢様っ感じの金髪縦ロールに、豪華な装飾が施されたレイピアを腰に差していた。
「見かけない顔ですわね…貴女達、【黒百合会】…ではなさそうですわね。立ち振る舞いに田舎臭さが滲み出てますが…今は不問にして差し上げましょう」
いきなり随分な言い草だな。
まあ、そもそも男な訳だし、何でもいいが。
「それよりも…貴女達!ここはわたくし達【白百合会】のものだと知っているのかしら?」
「…はい?白百合会?」
いきなり何言ってんだこの女。
「いや…ここって自由席の車両だよな?間違ったか?」
「いえ、あってますよ」
「だよな…俺達間違ってないよな…」
俺達は切符を見て確認するが、間違えはない。
「…俺?…殿方みたいな話し方をするのですわね…下品な。ここは私達白百合会の場所です。即刻この車両から立ち去りなさい!全く…ルールは守るべきでしょう」
「いやいやいや!待て待て待て!!ルール破ってるのはどっちだ!?」
グレン先生がツッコミを入れる。
俺達は思わず唖然として、見てるだけだった。
こいつ…今、すげーブーメラン投げたな?
しかも気付いてない?
「ここは公共機関だろ!だったら切符さえ買ってあれば自由席は自由に座っていいだろうが!?」
「はぁ…いるんですわよね…
なんという事でしょう。
あまりの言い分に、俺もコメントのしようが、ありません。
「
「フランシーヌ様!お下がりください!」
「この者は私達がしっかり教育致しますゆえ!」
…何だこの茶番、というかおままごとか?
呆れてものも言えん。
なのに、無駄に気迫だけは本物だ。
「はっ!相変わらずダセェことしてんな!白百合会の連中はよォ!」
今度はなんだ…?
声の方を向くと、着崩したヤンキー崩れの女子生徒がいた。
「コレット!黒百合会の貴女が何故ここに!?ここは白百合会の!?」
「は!そんなテメェらが勝手に作ったルールなんて知るかよ!あたしは何処だろうと座るね!
「いや!それはそれで、ダメだからな!?」
…本当に何なの?
俺達は幼稚園に向かってるの?
そのまま喧々諤々と、続いていく言い争いに、疲れてきたその時
「あの…2人とも…今日はここまでに…してくれないかな…?」
「なんですって!?」
「今なんか言ったかコラァ!?」
エルザがまさかの止めに入ってしまった。
「お、おい!?」
「エルザ!待って!?」
慌てて俺達が止めようとするも
「フランシーヌさん…この方達はアルザーノ帝国魔術学院から来た…留学生と臨時講師の方で…長旅で疲れてるだろうから…何とか使わさて…貰えないかな…?もちろん、私はいいから…。コレットさん…今日は喧嘩は…辞めてくれないかな…?留学生さん達が…迷惑するから…」
意外にも、しっかり目を見て話す。
話し方自体はオドオドしてるが、芯はしっかり持ってる。
思ったより心が強いのかもしれない。
「うっせぇ!どっちつかずが指図すんな!」
「これはわたくし達の問題ですの!部外者は引っ込んでいて下さいまし!」
しかし、そんな言葉もこのバカ共には響かず、逆上する始末。
挙句の果てに突き飛ばしやがった。
そのまま体勢を崩し、後ろにコケかけるエルザ。
しかも後ろには…ちょうど後頭部にあたるだろう場所に手すりがある。
皆が息を飲む中、俺とリィエルがギリギリ間に合った。
リィエルが後ろから支え、俺が前から手を掴む。
この手…けんだこか?意外にもしっかりしてる手だな。
「大丈夫?…エルザ…だっけ?」
「う、うん…ありがとう。リィエル。アイルさんも…ありがとう」
「ん。ならいい」
「ええ、無事でよかったわ」
そう言ってゆっくり起こす。
2人もやりすぎた自覚はあったのだろう、少しホッとしてる。
…お前らにホッとする資格はない。
そのまま気まずさを隠すように、喧嘩を続けようとするが、そうはさせない。
「待ちなさい、貴女達」
「おい!」
悪いけど、止める気は無い。
「おい…お前こそマジで部外者だろうが。今からこいつブチのめすんだ、どけよ」
「癪ですが、コレットと同意見ですわ。お引き取り下さらないかしら?」
「そんなくだらない喧嘩好きにしなさい。ただその前に通すべき筋は通してもらうわよ。…
「「…は?」」
は?じゃねぇよ糞ガキ共。
「貴女達の身勝手で怪我しそうになった人がいるのよ。それに謝罪の1つもないなんて、有り得ないわ」
俺はまず、金髪の方を見る。
「そちらの金髪の方、それが貴方の言う伝統とやらかしら?随分と品の無い伝統なのね」
「ぐ!?」
次に黒髪の方を見る。
「そちらの黒髪の方、自分のやりたい事だけをやるのは自由とは言わないわ。履き違えないで」
「な!?」
唸るだけで、謝る気もなし…。
いや、プライドが邪魔してるだけか…。
俺はため息をつく。
「もういいわ。皆行きましょう。ええ、好きだけ喧嘩でも何でもしてなさい。でも…もし、私達を巻き込んだら…全員潰すぞ」
俺は最後に、全力の殺気をぶつける。
お嬢様方は全員顔を真っ青にしていたが、知った事では無い。
視界の端で一瞬、エルザが身構えた?
…こいつ、やっぱ出来るな。
「どうも」
車両を出た俺達に後ろから声がかかる。
そこには長い灰色の髪をお下げにした、無表情な少女がいた。
「私、金髪縦ロールのフランシーヌお嬢様の侍女をしている【ジニー=キサラギ】と申します。以後お見知りおきを」
「ど、どうも…?」
ついさっき豪快に脅した相手に、気にも止めてない様に挨拶され、つい変な反応になる。
「皆さん短期留学生と、臨時講師ですよね。すみません。初めての方にはさぞ面食らったでしょう」
「…いつも…ああなのか…?」
グレン先生が疲れたように言う。
「うちの世間知らずのお嬢と、なんちゃって不良娘がご迷惑をお掛けしまして…。実はああいう女子グループ同士の派閥争い(笑)を、ず〜〜と続けてるのが、我が校の伝統でして…」
「は、はぁ…?」
ポカーンとした顔で言うグレン先生。
この子…すげー毒吐かなかった…?
「笑えますよね…所詮大人達に守られたあんな狭っ苦しい環境で支配者気取りしちゃって…思春期乙」
ここまで言っていて、ずっと無表情のままだ。
「それはさておき、後方は派閥フリーなので、そっちに行くのをオススメしますよ」
「お、おう…ありがとうな…」
グレン先生がお礼を言った直後、
「ジニー何してますの!?早くわたくしのフォローに、入りなさい!」
「はっ!この不肖ジニー!お嬢様には指一本触れさせません!」
金髪がジニーを呼び、すぐにそのそばに向かう。
なんという…変わり身だろうか。
人格が別人じゃん。
それはともかく
「先生…どうする?」
「…一時撤退じゃあ〜!!」
こうして、グレン先生がリィエルとシスティーナを、俺がルミアとエルザを抱えて、大慌てで撤退する。
金属音と爆発音を背後にしながら…。
それからしばらく電車に揺られ続け…遂に、聖リリィ魔術女学院に、到着した。
駅前の寄宿舎で一晩しっかり休んでから、俺達は朝早めに出て、学院敷地内に入った。
「これが…学院の一部なのか?」
「わぁ…すごいね。こんな街があるんだ」
俺達は驚きを隠せなかった。
書店や飲食店、花屋、オープンカフェ、ヘアサロンなど、学生に必要なお店が並んでいた。
もちろん、店員は全員女性だ。
どれもこれもが、華やかで綺麗に整えられている。
まるで
昔、ベガも欲しがったっけ…。
…ああ、そういう事。
俺はこの光景の意図を理解した瞬間、綺麗だった景色が、一気に薄汚れたような景色に変わった気がした。
「小さいけど、綺麗な街並みね〜!雰囲気もすごくいい…。私もこんな学校通ってみたいな〜…」
お嬢様のシスティーナはお気に召したらしいが、
「けっ…息が詰まりそうだぜ…帰りてぇ…」
グレン先生は不機嫌そうに言い放った。
多分先生も、気付いてるよな。
「すぐこれなんだから…。まあ、確かに先生には合わない雰囲気ですけど…」
「バカ。そんなんじゃねーよ。お前ら気付かなかったか?」
珍しく真面目なグレン先生に、システィーナも不思議そうにする。
「周囲は深い森、湖、川…。あの鉄道無しじゃここから出られないぐらい辺鄙な場所…。まるで
その言葉に、システィーナとルミアはハッとする。
「その通りだ。辺境の地に作られたお嬢様学校。病的なまでに世俗の穢れを排除した、無菌培養の温室世界…まるで鳥籠だ。どれだけお洒落に飾っても、俺には籠の中の小鳥さん達への、配慮にしか見えねぇな」
そう、俺が思ったのもそれだ。
まるで大人の欲にまみれた、汚らしいものに見えて仕方なかったのだ。
「それに、これだけの閉鎖空間…リィエルに何か仕掛けるなら、絶好の場所ですね」
「ああ、用心するに超したことねぇな…」
ふと、エルザが脳裏を過ぎった。
あの殺気に当てられて、身構えれたあいつ。
少し、警戒しとくべきか?
これは…厄介な事になりそうだな…。
俺は今後の事を憂い、ため息をついた。
僕のイメージでは、学園都市の学び舎の園ですが、アイル君のイメージは、シルバニアファミリー的なおもちゃを考えています。
それでは失礼します。
ありがとうございました。