ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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もう、短期留学編は一気に投稿しようかな。
溜まりすぎて、ネタ帳が訳わかんなくなってきたし。
それではよろしくお願いします。


短期留学編第3話

「ようこそ、遠路はるばる我が校においで下さいました。皆さん」

 

学院長室で俺達を出迎えたのは、学園長の【マリアンヌ】さんだ。

 

「皆様が我が校に、新しい風を吹かせて下さる事を期待しております」

 

「そんな期待されても困るんだが…。なんでリィエルにオファーなんて出したんだ?」

 

先生が、割とストレートに尋ねる。

俺もそこは気になっていた。

少し調べれば、こんな学校にリィエルがまるで合わないのは、すぐに分かるだろうに。

 

「え?それは、事前調査でリィエルさんが我が校に相応しい生徒だと、判断したからですが?」

 

(胡散臭ぇ〜…)

 

思わず口にしそうになった。

ここまで見え透いた事言われたら、逆に困るな。

グレン先生も同意見なのか、すごい顔してる。

というか…本当に顔に出やすい人だな。

 

「それよりも…申し訳ありません、レーン先生。今回皆さんを受け入れ、かつ先生に受け持っていただくクラスなんですが…」

 

「ん?何か問題でも?」

 

突然申し訳なさそうにするマリアンヌさんに、グレン先生も、困惑気味に聞き返す。

 

「はい、実は貴女が受け持つクラスは少々問題がありまして…」

 

「問題?」

 

 

「…こういう事かよ…」

 

「うわ〜…先が思いやられる…」

 

この学院は、嫁入り前の令嬢が、その地位に相応しい作法や教養を、身につけさせる事を基本としている。

その為の閉鎖的空間、厳格な規律、硬いカリキュラムなど、そして全ての生徒が上流階級の出身…などの様々な要因により、【派閥】が形成されてしまった。

元々は、お互いを励まし合う為のものだったはずが、気付けば学院の運営にまで、口を挟めるようになったのだとか。

その派閥の中でも特に有力なのが、最も古い歴史を持つ伝統派閥の【白百合会】、近年急成長してきた新興派閥の【黒百合会】である。

そしてそれぞれのトップが、金髪縦ロールの【フランシーヌ=エカティーナ】と、黒髪ヤンキーの【コレット=フリーダ】である。

そして

 

「アイツらとクラスメイトとか…問題しか起きない」

 

という事だ。

この2年次月組には、その2人と取り巻き、そしてエルザがいたのだ。

まあこのクラス、本当に最悪。

自己紹介は無反応、授業も聞かない、挙句には止めようとしたグレン先生にも、歯向かう。

 

「アイツらがいかに真面目で、教師にとってありがたい生徒か、身に染みてきたぜ…」

 

「生徒が真面目に聞かくて困る…その逆もまた然り、だったんですよ?…今更ですけど」

 

「…マジすみませんでした…」

 

グッたりする先生に、システィーナが呆れたように言う。

しかし、システィーナ本人も、かなり頭にきてるのか、さっきから拳がプルプルしている。

 

「…産業廃棄物を一括りにして、被害を減らそうとしてんですかね?」

 

「ア、アハハ…産業廃棄物って…」

 

俺の嫌味満載の毒に、ルミアが苦笑いするがフォローは無い。

ルミアもそれなりに、思うところはあるらしい。

 

「あ、あの…すみません。せっかく遠くから来てくださってるのに…」

 

「いーよいーよ。お前が謝ってもしゃーねーし。ていうか、お前はこんな呑気に受けてていいのか?俺が言うのなんだが、こういうのって付き合いがあるんじゃねぇの?」

 

申し訳なさそうに謝るエルザに、グレン先生が宥めつつ、気になった事を尋ねる。

 

「私は無所属なので…。それに魔術師としては落ちこぼれなので…」

 

それは意外だな。

いや…あのけんだこがあれば、そっちに比重がいってるのは明白か。

 

「へぇ?そうなのね。ところで、ジニー。貴女はいいの?白百合会でしょう?」

 

俺はエルザ以上に気になっていた、ジニーに尋ねる。

 

「だって勿体ないじゃないですか。うちのクラスの連中、私達以外誰も聞いちゃいないですけど…レーン先生の授業すごいレベル高いですし。ぶっちゃけ、アホお嬢達が囲んでる家庭教師連中なんて、比べ物になりませんし…聞かなきゃ損です」

 

「本当にそうですよね!私ビックリしちゃいました!」

 

ジニーの評価が思った以上に高評価なのと、エルザの反応の良さに、つい嬉しくなる。

 

「しかし…どうするかねこれ…?」

 

このままでは、リィエルの落第退学は免れない。

 

「「先生…」」

 

ルミアとシスティーナが、今後を憂いて呟く。

そんな2人を見て、不敵に笑った先生。

 

「俺にいい考えがある!」

 

「あ、即効でダメなフラグ立ちましたね」

 

ドヤ顔決める先生、システィーナもジト目でツッこむ。

同じく同意見、これは…ヤバいぞ。

 

「フッ…安心しろ。セリカ直伝だぞ?」

 

「あ、アルフォネア教授の?」

 

「余計アウトね。ルミア、閉店のお知らせよ」

 

「何が閉店したの!?」

 

アルフォネア教授の直伝とか…。

あれしかないじゃん。

 

「それは…」

 

「それは…?」

 

「強制執行じゃーーー!!!」

 

ほらやっぱり、こうなった。

そうして、お茶をしていた白百合会のティーセットと、黒百合会の賭け道具を、全て窓から捨てた先生。

 

「授業中は静かにね☆」

 

そんな事を言って、教卓に戻ってくる。

 

「ま、これがセリカ=アルフォネアだよな…」

 

「分かってた…分かってたわよ…」

 

「ア、アハハ…」

 

俺とシスティーナは頭を抱え、ルミアは苦笑いしか出来なかった。

 

「あ、貴女!?これは一体どういうつもりですの!?」

 

「おう、先生よぉ。これはどうやって落とし前つける気だ…あぁ?」

 

「ええ…つまり、この構文を分解整理とな、呪文の各基礎属性値の変動は…」

 

「「人の話を聞きなさぁーい(聞けぇー)!!!」」

 

いや、さっきまでそっちが人の話聞いてなかったじゃん。

今更聞いて貰える訳ないだろ。

 

「全く…アルザーノ帝国魔術学院から来たか何か知りませんが、まず先に貴方には教育が必要なようですわね…!」

 

「おい先生よぉ…教えてやろうか?ここでは誰が支配者か。余所者がデカい顔してんじゃねぇぞ、あぁ?」

 

そうすごんで、コレットが先生胸ぐらを掴みあげ、フランシーヌが、レイピアを首筋に当てる。

 

「大体アルザーノ帝国魔術学院ってあれだろ?軟弱なガリ勉ヤロー共の集まりだろ?所詮お前らの魔術ってのは卓上のオママゴトなんだろ?」

 

「わたくし達は【高貴なる者の義務(ノブレス・オブリージュ)】として、力ある魔術を学んでるんですの。邪魔しないで頂きたいものですわね」

 

おうおう…好き勝手言ってくれちゃって…

笑える。

 

「フフ…」

 

「…おい、てめぇ。何が可笑しいんだ、あぁ?」

 

コレットが俺を睨み付けてくる。

どうやら、笑いが漏れていたらしい。

 

「あら、ごめんなさい。コンコンコンコンと、随分と可愛らしく鳴く狐さんだと思ったのよ」

 

「…どういう意味かしら?」

 

フランシーヌも俺を睨み付けてくる。

 

「お父様か、お母様か、お爺様か、お祖母様か…誰か知らないけど、自分じゃない誰かの力を偉そうにひけらかして、さも自分の力みたいに誇示しちゃって…。そういうのを東洋では、『虎の威を借る狐』って言うのよ。覚えておきなさい」

 

「「…!!?」」

 

俺の言葉に、皆一様に何か思うところがあったのか、目を見開く。

 

「…貴女達貴族のご令嬢に、どんなしがらみがあるかは知らない。けど、同じ決められたレールの上を歩くにしても、自分で決めたかどうかで、全く意味が違う。…自分で何も選んでこなかった連中が、偉そうな事、口にしてんじゃねぇぞ」

 

最後は思わず素の口調が出たが、気にしない事にした。

俺は冷たく彼女達を見る。

そりゃ、彼女達だって色々あるんだろうよ。

だからと言って、バカにされて黙っられるほど、大人しくない。

 

「て、てめぇ!このクソ女が!」

 

「何も知らないくせに…!」

 

コレットとフランシーヌが、俺に襲いかかろうとする。

 

「おいアイベル。そこまでだ」

 

しかしグレン先生に止められたため、それは叶わなかった。

 

「ったく…教師の前でおっ始めようとしやがって…まあいい。ちょうどこの後は【魔導戦教練】だ。そこでケリつければいい。今回はパーティ戦…白猫、ルミア、アイベルの3人で行く。いいな」

 

「ちょっと!先生、何言って…」

 

慌ててシスティーナが止めようとするも、間に合わず

 

「いいでしょう!ここまで言われては貴族の恥ですわ!」

 

「後悔すんじゃねぇぞ!」

 

こうして、このケジメは魔導戦教練でつけることになった。

 

「どうしてこうなるのよ…」

 

すまんなシスティーナ。

反省はしてない、後悔もしてない。

 

 

「それでは、ルールを確認しますわ」

 

・3対3のパーティ戦

・非殺傷系魔術によるサブスト方式

・模造刀や徒手空拳はあり

・敗北条件は降参、気絶、場外退場、致死判定

 

「それと…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()ですの」

 

「炎熱系?」

 

髪や肌が焼けて欲しくないのか?

それにしては…妙に真剣な…。

 

「まあいいぜ。それとこっちもルールの追加だ。まず…アイベル。お前は魔術禁止な。カウンター以外の徒手空拳も禁止だ。当然、アレもだぞ?ルミアはサポート魔術に専念、以上だ」

 

「ち、ちょっと待ってください!先生!」

 

システィーナが、先生が提示した条件に、待ったをかける。

 

「いくら何でも厳しすぎます!もし私が負けたら…」

 

「何言ってんだよ?お前が負けるはずねぇだろ」

 

俺はシスティーナの懸念をあっさりと否定する。

 

「ま、あの修羅場を潜ってきたお前らがあんな連中に負けるはずねぇだろ。…さてと、そっちのメンバーだが、フランシーヌ、コレット、ジニーで頼むわ」

 

指名されたリーダー2人は、不満タラタラだった。

 

「けっ…なんで白百合会の奴らと組まなきゃいけねぇんだよ…」

 

「こちらのセリフですわ」

 

「…はん!おい先生よぉ。偉そうに仕切ってるが、まさか不和を狙ってるとか小さいこと考えてねぇだろうな!?」

 

「んな訳ねぇだろ。()()()()()()()1()()()()からだよ」

 

先生はコレットの疑念を、あっさりと否定する。

 

「へ、へぇ…何だよ、あんた見る目が…」

 

「だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

上げて落とした。

しかもかなりの落差で。

ほら、両派閥が手をとりあっちゃったよ。

 

「…おいフランシーヌ。一旦派閥云々は無しだ。まずはあのお登り共と、先公を黙らせるぞ」

 

「今回ばかりは同意しますわ、コレット」

 

俺達は三角形、フランシーヌ達は逆三角形の陣形をとる。

 

「さあジニー!まずは先陣を切りなさい!」

 

「はっ!援護よろしくお願いします!お嬢様!」

 

そう言って切り込んでくるジニーを俺も迎え撃つ。

 

「なんかすみませんね。アイベルさん」

 

「いえ、先にけしかけたのはこちらですから」

 

「実は私達、東方の【シノビ】の技を伝える里の出身でして…。若輩ではありますが、技量に関してはかなりの使い手と…。あ、無理」

 

何やら察したのか、突然無理と言い出した。

 

「貴女…一体何者ですか…?」

 

「何者と言われましても…アイベル=エスティアですが?」

 

「そうじゃないです。…先生が色々と制限かけた意味が、分かりました…。それでは、本気を出せない内に、胸を借ります!」

 

こんな偽物でよければ…ねっと。

一瞬で消えたと思えば、上から下から…右から左から…まさに縦横無尽。

これが…シノビの技か。

速いけど…遅い。

 

「…今の間に、何回殺られましたか?私」

 

「…最低1回は」

 

「…やれやれ。少しでも貴女をその気にさせられればいいのです…が!」

 

再び斬りかかってくるジニーを俺は、最小限の動きで躱しつつ、システィーナ達を見る。

向こうでは、システィーナ達とフランシーヌ達が撃ち合っているが、まるで話にならず、システィーナに、全て見切られている。

なんだアレ、わざとかってくらい分かりやすい。

挙句の果てには、お情けまでかけられてるし。

あ、コレットが痺れを切らして接近戦に出た。

狙いは…俺か。

あ〜あ〜…本当にバカだなコイツ。

 

「…やっちゃって?」

 

システィーナの声が聞こえた瞬間、

 

「うおぉぉぉぉ!!?」

 

コレットは【スタン・フロア】で吹き飛ばされてる。

ルミアが俺の後ろに仕掛けてたのを知ってたのでそこに来るように誘導したのだが、まんまと引っかかった。

【スタン・フロア】はサブスト的に【バーン・フロア】。

問答無用の致死判定だ。

 

「コレット!?」

 

あ〜あ〜、こっちを見たら

 

「『大いなる風よ』!」

 

「きゃああああああ!!?」

 

フランシーヌが場外に吹き飛ばされる。

 

「…で?貴女はどうする?」

 

俺はジニーに、無言の勝利宣言を突きつける。

 

「…降参です」

 

魔導戦教練は俺達の勝ちとなった。

 

「さてと…どうしようかしら?」

 

俺は静かに、打ちひしがれる2人を見下ろす。

 

「ひっ!」

 

「あ、あたし達が悪かった!悪かったから!」

 

「だから何?そんな事聞いてないわ。敗者は黙って勝者に服従しなさい」

 

顔を真っ青にして助けを求める2人を俺は切り捨てる。

 

「あわわわ…!」

 

「あ、あたし達に何かすれば、パ、パパが黙ってないぞ!」

 

はぁ、ぶってても結局それかよ。

 

「…呆れた。だから『虎の威を借る狐』だって言ったのよ。貴女達のお父様の事なんて知らないわ。本当に関係ないし。…という訳で、これからレーン先生の言う事を聞くように。…返事は?」

 

「「はぃぃぃぃ!!!」」

 

「よろしい。それではレーン先生。よろしくお願いします」

 

俺はニコリと笑ってから、先生にバトンタッチする。

 

「お、おう…。お前、最近違和感無さすぎて怖いな…」

 

「やかましい」

 

ボソッと言い返して、俺は下がる。

それからしてグレン先生よる、ダメ出し講座が始まった。

 

「…で、ジニーだが。アイベル…どうだった?」

 

俺か…俺は先生ほど、上手く言えないからな…。

 

「戦況判断が悪すぎ。今回のルールなら、私は無視しても大丈夫だったはず。無理だと思ったならすぐに退きなさい」

 

想定外の言葉に、言葉を詰まらせるジニー。

 

「…貴女には分からないかと思いますが、私にもシノビの技を継ぐ者としての誇りが…」

 

「下らない。そんなものそこいらの犬にでも、食わなさい。ここにいる以上、貴女も魔術師の端くれでしょう。実力が上の者に叶わないのはいい。ただ、それなのに何もしない事。それこそが恥と知りなさい」

 

「…忠告…痛み入ります」

 

バッサリと切り捨てられた事に唖然としながらも、一理あると思ったのか、素直に言うことを聞くジニー。

 

「…私からは以上です」

 

俺再び、グレン先生にバトンタッチする。

 

「さて…お前達は俺に教わる事なんてない、そう言ったな。断言してやる。俺ならお前達を魔術師にしてやれる。ま、興味無いなら参加しなくてもいい。ただし、他所でやれ。だが、もし…少しでも興味あるなら参加してもいいぜ?本当の魔術ってやつを教えてやる」

 

「…な、なんというお方…あんな不遜だったわたくし達を許して…?」

 

「今までの先公は皆、媚びへつらうか、無視するか高圧的になるか…そんなんばっかだったのに…」

 

「「「「「「せ、先生…」」」」」」

 

うわ〜…チョロいな〜…

 

「チョロいな〜…流石世間知らずのお嬢様共…」

 

ジニーは相変わらずらしくて、ホッとする。

 

「せ、先生…アイベルさん…どうかお願いがありますわ。わたくし達にどうか教えを…」

 

「ああ…どうかまだ未熟なあたし達を指導してくれ…」

 

「わたくしの派閥、白百合会で!」

 

「あたしの派閥、黒百合会で!」

 

「「…ん?」」

 

はて、このままハッピーエンドに向かう予定のはずが…?

俺とグレン先生は思わず首を傾げる。

 

「…あら、コレット。…今…何て仰いましたか?」

 

「…今、妙な事を言わなかったか?…フランシーヌ…」

 

さっきまで仲良くブルってたのに、今度は睨み合ってるよ。

そうじゃん…コイツら犬猿の仲だったじゃん…。

静かに、先生を犠牲にする。

そのまま両腕をそれぞれに引っ張られ、引き裂かれそうになるグレン先生。

 

「あ、『貴女達・いい加減に・しなさーい』!!!」

 

そんな集団を、先生ごと【ゲイル・ブロウ】で吹き飛ばすシスティーナ。

…アイツ、即興改変を、自在に使いすぎじゃない?

こうして俺達の最初の授業は終わった。

 

「まだ終わってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」




さてさて…単純すぎるお嬢様方を手懐けた彼らは、一体どうなるのか!?
それはともかく、ジニーへの一言は、ある弓兵の言葉を借りました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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