さてと、今回緊急事態が発生します!
それではよろしくお願いします。
魔導戦教練から数日後のお昼時。
「オホホホ!最初からこうして、皆さんで一緒に食べれば良かったんですのよ!」
「あっはっは!しゃーねーな!今日はそれで勘弁してやるよ!」
「そうよね!やっぱり皆で食べた方が、美味しいもんね!」
「一緒に食べると、距離が縮まった気がするね」
ゴゴゴゴゴ…。
何故か昼食時には聞こえない音が聞こえた気がした。
だって皆目が笑ってないもん。
「…何でこうなった…」
「胃が痛くなってきた…」
昼前に起きた何回目かになる鬼ごっこ兼、魔術戦では結局ケリがつかず、こうして折衷案として、皆でお昼って事になったのだが…
「大変ですね、人気者は(棒)」
「「他人事か、おい」」
「他人事、ですもん」
ジニーの一言にツッコミを入れるが、逆に返させてしまう。
俺はため息つきながら、黙々と飯を食べる。
そんな時、ふとあることに気付いた。
「あれ?リィエルは?気付いたらいないけど」
「そういえば…どこ行っちゃったんだろう?せっかく皆で食べてるのに…」
どうやらルミアも気付きたらしく、周りをキョロキョロしている。
「リィエルってあのチビっこい青髪か?だったら…ほらあそこ」
コレットが指さしたところには、リィエルとエルザが一緒にいた。
アイツら…いつの間にあんなに仲良くなったんだ?
そう思っていると
「おいフランシーヌ…見ろよ…」
「エルザ…貴女…そんな風に笑えたのですね…」
どこか安堵したように呟くフランシーヌ。
「そういえば…あの子っていつも独りよね。…何?ハブ?引くわ〜」
「そういうの…よくないと思うよ」
ジト目で2人を睨むシスティーナとルミア。
「ち、違いますわ!そんな事してません!」
「誰もハブってねぇよ!アイツから避けてんだよ」
「…どういう事?」
話を聞くと、1年の途中から編入してきたらしい。
彼女達も戦力強化の名目で、派閥に誘ったのだが断われたらしい。
それに何やら問題があるらしく、それも彼女が引け目を感じてる理由だと思われるとか。
…心優しい一匹狼ってところか?
「…はっ!単純にお前らがしつこいだけじゃねぇか?」
先生が重くなった空気を変えようと、冗談を言う。
その言葉に、2人は言葉を詰まらせるも
「…ま、お前らもとんだ不良娘だと思ったが…根はそうでもないんだな。案外嫌いじゃねえぜ、そういうの」
先生の一言に、フランシーヌとコレットの雰囲気が変わる。
「そ、そんな…!?わたくしの事を好きだなんて!!?」
「ま、待ってくれ…!?まだ…心の準備か…!!?」
「だからお前らは重いんじゃーーーーー!!」
「…お花畑か。こいつらの頭は」
そんな姦しい雰囲気の中、昼食の時間が終わる。
だが、事件はこの日の夜に起きた。
「「はぁ〜…極楽極楽…」」
俺とグレン先生は、この大浴場に来ていた。
この時間は講師用の時間で、俺は表向きには、体に傷があるとして、学院側に許可を貰って、グレン先生と入ってるのだ。
そんな憩いの時間に
「先生!アイル!わたくし達もご一緒させてくださいな!」
「あたし達が背中を流してやるぜ!」
「ぶっ!?何して!?」
慌てて背を向ける。
なんで来たんだよ!?
なんで先生は余裕…いや楽しんでるのか!?
「アイル!いらっしゃいな!」
「ちょっ!?貴女達!?引っ張らな!?」
強引に引っ張りだされた俺の体を見て、驚く皆。
そりゃそうだ、これまでの戦いで、少しずつだが、傷が残っているのだ。
男に見せるなら全く気にしないが、流石に年頃の女の子…しかも生粋のお嬢様方には少しばかり、見苦しいってもんだ。
「アハハ…ごめんなさいね。見苦しい姿で」
そう言って静かに体を隠そうとすると、突然フランシーヌが、腕を掴んで、こっちを向かせる。
「…貴女の強さはこれですのね。これだけの事をしてきたこその強さですのね…さあ!早く座ってくださいまし!」
「…見苦しく思わないの?」
「…今までならそう思ったでしょう。でも、貴女達と共にいて、そういう事が魔術だと学びました。ならば、それは例え名誉ではなくても、貴女の歴史。…だったらそれを否定は出来ませんわ」
…なんとまあ、単純というか…なんと言うか。
やっぱりタフだな、こいつらは。
そう思った時、ピキリッと、体に違和感が走った。
その感覚は…体が変わった時の!?
(まさか…!?
一気に脂汗が出始める俺。
よく見ると、グレン先生も同様だ。
この類の変身には、定期的に維持薬を投与しなくてはならないが、まだその期間じゃないはず。
とはいえ、流石にマズイ…!
「すみません、逆上せてしまったので…」
「2人共!まだ終わりじゃないぜ!」
「もっとゆっくりしていってくださいな!」
そう言って俺と先生は出ようとするが、阻まれる。
どんどん強まっていく違和感にもうダメだ、と諦めた俺と先生。
そうして…ついに戻ってしまった。
「せ、先生…?」
「その…お体は…一体…?」
そりゃそうだよね、手どころか思考も止まるよね。
俺達は一周まわって、堂々と立っていると、
「貴女達やっぱり!背中でも流そうって魂胆でしょ!そんなの羨ま…規則的、倫理的…に…」
「そうだよ!2人の背中を流すのは、寧ろ…」
システィーナとルミアまで来ちゃったか…。
痛いくらいの静寂が包み込み
「「『きゃあァァァァァァァァァ』!!!」」
過去一の強風が俺達を壁まで吹き飛ばした。
意識が飛ぶ直前、俺が思ったのは
(今…ルミアも撃たなかった?)
だった。
「ったく…酷い目にあったぜ…」
「一時はどうなるかと…」
俺達は『
偽装とはいえ、公的書類はキチンと名乗った名前と女性だった事、お嬢様方が単純にだった事により、何とかなった。
…ジニー以外は、だが。
ちなみに俺の口調は、男ばかりの環境にいた為、こっちが素である、という事にした。
所々漏れたいた男口調が、その理由の後押しになっていた。
今後の制服は、適当なスラックスとシャツで通うことになった。
「しかし…2人ともどうしたんだ?最近」
俺は後ろにいるルミアとシスティーナに尋ねる。
「うっ…それは…」
「アハハ…ごめんね?2人が私達以外と仲良くしてたから…つい妬けちゃって…」
「る、ルミア!?何言って!?」
「白猫、夜も遅いんだぞ。静かにしろ」
ルミアの可愛い言い訳に、システィーナが慌てるが、先生のお小言に、むぅ、と黙り込む。
確かに…最近あまり構ってなかったな。
少し申し訳なくなり、頭を撫でてやる。
「悪いな…構ってやれなくて」
「あ、アイル君!?///何して!?///」
久しぶりに顔を真っ赤にさせたルミアを見た。
そんなルミアに笑いかけながら、今度はシスティーナの顎を撫でてやる。
「ほうら、システィーナ〜。ゴロゴロ〜」
「ゴロゴロ〜…って!何してんのよ!?何やらせてんのよ!!」
「おいシスティーナ、静かにしろって」
「誰のせいよ!?」
ていうか…まじで猫みたいなことしたなこいつ。
思わず笑うと、それにつられてルミアも笑う。
「ルミアまで〜!」
「お前ら、いい加減にしろ。…それにしても放っておきすぎたな」
先生に怒られた。
おふざけはここまでにして
「ですね…。目的忘れてました」
「この学校の空気に流されてたわ…」
「でも、起きてるかな?」
「そこは叩き起すしか…?」
俺達がリィエルについて話していると、ふと部屋からあかりが漏れていた。
「先生、あれって…」
「まだ起きてるのか?」
そう言って俺達は部屋を覗き込むと…
「ん……つまり……この呪文……この魔術関数で戻り値を出せばいいの?」
「うん、そうそう……リィエル、だいぶわかるようになってきたね」
「そう? ……じゃあ、こっちの問題は……?」
部屋の中では、リィエルが机に向かって問題用紙を、眉を潜めながら解いていき、その傍でエルザが時折解説しながら、リィエルをサポートしてくれていた。
「嘘…!?」
「マジかよ…!?」
俺とシスティーナは思わず、声を漏らす。
何時もなら、俺達がどうにかこうにか説得して、初めて勉強させるのだか、今は自分から率先してる。
しかも…エルザにお願いしてまで。
「…先生?どうします?」
ルミアの穏やかな問いに
「…今はそってしてやろう。兄貴分としては寂しいが…俺らの出る幕じゃないらしい」
そう言って俺達はそっと部屋から離れた。
「…頑張れよ、リィエル」
先生の小さな応援を残して。
それから時間は流れ、あっという間に14日目。
授業は残り2日、明後日には帰る。
各生徒が己の成績に喜ぶ中、リィエルがトコトコと、先生に近づく。
「…グレン。ほめて」
点数は65点。
決して褒められた数字ではないが、今までのリィエルと比べたら、かなりの高得点だ。
「ああ、よくやった」
先生が乱暴に頭を撫でるのを、気持ちよさそうに受けるリィエル。
「…勉強頑張った」
「知ってる」
「エルザのおかげ」
「だな…あんがとな、エルザ。お前がいなきゃこうはならなかったさ。はぁ…教師の自信なくすぜ」
先生がエルザと話しだすと、今度は俺達のところに来る。
「ルミア、システィーナ、アイル…ほめて」
「リィエル…!本当によく頑張ったわ!」
「うん!すごいよリィエル!」
「…ああ、大したもんだ」
ルミアとシスティーナがリィエルに抱きつき、俺はリィエルの頭を撫でてやる。
「させと…今日は終わりにするか。少しクサイ言い方だが、思い出の1つでも作るか。という訳で、残りの時間はマグス・バレーでもやるか!」
要は魔術有りのバレーボールで、割とポピュラーな遊びだ。
「さっすが先生っ! 話がわかるぜ!」
「それは結構な事ですわ! 黒百合の皆さんをボコボコにして差し上げましょう!」
「しゃあ、お前ら! 白百合の連中なんかに絶対負けんじゃねえぞ!」
「いや、何でお前らはその二派で競う事前提なんだよ…」
何で派閥対抗が前提何だよ…こいつらときたら。
「おっと、何処行くんだ?」
呆れてると、コレットがこっそり集団から離れようとしたエルザを捕まえていた。
「そうですわ。まさか、この期に及んで抜けるなど……無粋な事は仰いませんよね?」
「あ…」
「今日くらいはいいじゃないですかエルザさん」
「ええ、偶にはみんなで遊びましょう?」
みんながエルザに呼びかけるが、彼女はまだ遠慮がちに、ボソボソと呟く。
「でも…私は…貴女達の輪に入れる資格なんて…」
「あのですね、エルザさん。今まで何度も言い続けてきましたが…誰も気にしてませんよ。貴女の問題なんて」
ちゃっかりフランシーヌの隣まで移動していたジニーがエルザに言い聞かせる。
「気にして遠慮してるのは、お前自身だけだぜ?まあ、事情を知らない俺達には、何か言えた義理じゃねえけど…。それに何より…アイツが一緒に遊びたがってるぞ?」
ある方向を指差しながら言ってやると、リィエルがトコトコとエルザへと駆け寄ってくる。
「エルザ…行かないの?」
「え、その…私は…」
「わたし、エルザと一緒に遊びたい…ダメ?」
「リィエル…」
エルザが困惑して助けを求めるように周りを見やるが、俺を含めて全員笑って事を見守るだけだった。
「…そうですね…わかりました。今日くらいは…」
こうして、エルザを巻き込みつつ、残りの時間を、マグス・バレーで遊び倒したのだった。
「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」
次の日、最終日を迎えた俺達は、街のオープンカフェを貸し切って、お別れ会をしていた。
「リィエルの件、どうなりました?」
俺は隣にいるグレン先生に尋ねる。
「ああ、速達で結果を送ったが、落第退学は取り消しだとよ」
「「「良かった〜…」」」
俺達はすっかり肩の力が抜けてしまった。
「セリカのやつ…連中の悔しそうな間抜け面をそれはそれは大層大笑いしてたそうな…」
容易に想像つくなそれ。
システィーナは呆れてるし、ルミアも苦笑い、俺もジト目で、想像のアルフォネア教授を見ていた。
「それはそうと…リィエルのやつどこ行った?」
先生に言われて、初めてリィエルが、いないことに気付く。
「そういえば…エルザもいないですね」
「2人なら、さっき散歩に行ったわよ」
俺とグレン先生の疑問に、システィーナが答える。
「2人で?」
「ええ?まあ、エルザさんはリィエルと特に仲良かったし、積もる話でもあるんじゃない?」
まあ、あの2人仲良かったし別にいいか。
なんやかんか色んな事が起きたけど、まあ最終的には、何とかなったし…、終わりよければ…。
急に、何か不安が過ぎる。
何か…何か忘れてる気が…。
思い出せ…思い出せ…!
この10数日の記憶を、ずっと振り返ってくる。
『狙い済ました様はタイミングで、聖リリィ魔術女学院からのオファー…妙だとは思わないか?』
『かつて帝国魔術界再暗部にして、奴等すら関わった禁呪。…俺には上層部以外の思惑があるとしか思えんのだ』
「…しまった!」
「ど、どうしたの!?」
突然俺が立ち上がった事に、ルミアが驚く。
「ヤバい…今が絶好にチャンスだ!」
「ち、チャンスって?」
「それはルミアあれよ!私の鋭敏で精度抜群の恋愛センサーでも…」
…何言ってんだこの色ボケした駄猫は?
「そんなザルなスイーツ脳なセンサーの話をしてんじゃねぇよバカ!!元々、
俺の声を聞いてたか、フランシーヌ達を相手していた先生が、こっちを見る。
「…やっべぇな…完全に忘れてた…!今がチャンスじゃねえか!」
「〜ッ!先生!ルミア!システィーナ!これを持ってて!ルミアは俺と!システィーナは先生と!2手別れて探そう!」
俺は3人に適当に作ったお守りを渡してから、ルミアを連れて店を飛び出す。
それから数分、ルミアを抱えながらあっちこっち走り回ったが、見つからない。
「クソ…どこに…!?」
「こっちもいないよ…!」
⦅アルタイル!聞こえるか!⦆
グレン先生からお守り越しに通信が入る。
⦅先生!見つかった!?⦆
⦅まだだ…だが、ジニーが手がかりを見つけてくれた!それと怪我が酷い!すぐに店まで戻ってきてくれ!⦆
「ルミア!ジニーが大怪我した!すぐに戻るぞ!」
「わかった!」
俺達はすぐに店に引き返した。
「先生!」
「ジニーさん!すぐに手当てをします!」
着いてすぐにルミアが法医呪文を施す。
その間に、話を聞くと…
「は?【
突然都市伝説レベルの組織がでてきて、訳分からんくなる。
しかもマリアンヌ学長とエルザが、一部の生徒を連れて、リィエルを誘拐した。
その存在は都市伝説程度でしかなく、しかも天の知恵研究会とも繋がっているなど、まあ黒い噂しか聞かないのだ。
そこまで考えて、ふと思う。
世界有数の国力を誇るこの国がどうして、たかが一テロ組織に、翻弄され続けているのか。
(まさか…そういう事…なのか…!?)
そこまで考えて、強引に思考を変える。
「列車で移動してるとなると、かなりヤバいですよ。どうします?」
「白百合会!協力して下さいますわよね!」
「黒百合会!アイツらを見捨てる訳ねぇよな!」
「「「もちろんですわ!」」」
その場にいた月組の生徒達が突然協力すると言い出した。
「お、お前ら…」
「どうして…」
呆気に取られる俺達に
「さあ先生!一緒に!」
「助けに行こうぜ!」
フランシーヌとコレットが、手を差し伸べた。
という訳で、無事に(?)男に戻ったアイル君達でした。
グレンだけにしようかと思いましたが、今後のストーリー展開上、男に戻しておいたほうが良さそうだったので、そうする事にしました。
男口調については、かなり強引に設定しました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。