ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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レイク戦で、1話丸ごと使いました。
ええ、切ろうと思ったら、変な感じになったので。
初めて、三人称視点で書いた場所もあります。
それではよろしくお願いします。


最悪の3日間編第2話

「何でだ…なんでテメェが生きてやがる!?テメェはあの時、確かに死んだ!俺がこの目で確認したんだ!間違える筈がねぇ!!」

 

先生がそう叫びながら、銃口をレイクに向ける。

その手は震えており、脂汗は滝のように流れている。

 

「…【Project:ReviveLife】」

 

「ッ!?」

 

俺の呟きに、先生が何か思考する。

 

「そんな些細な事はどうでもいい。私は黄泉から舞い戻ってきた。そして…今貴様達を殺す為に、ここにいる。それが今、貴様達が直視するべき現実だ」

 

しかし、そんな事すらさせない、と言わんばかりに、レイクが睨み付けてくる。

 

「…正論どうも。とっとと、黄泉の国に戻りやがれ」

 

俺は睨みながら構えるも、その手は…震えてる。

俺はさっきまで読んでいた、レイクに関する報告書を思い出す。

フォーエンハイム家は、禁呪によって古き竜の血を入れることに成功した。

その代わりに、【竜化の呪い(ドラゴナイズド)】と呼ばれる、何時か人としての姿と理性を失い、身も心も竜へと変貌してしまう呪いを受けた。

 

「お前…今回は封印を解いてきたんだな?【竜化の呪い(ドラゴナイズド)】の…」

 

グレン先生が、確信しながら言う。

 

「…察しがいいな、魔術講師。我々の一族には、呪いの進行を防ぐため、【竜鎖封印式】を一号から三号まで施される。普段は人と変わらないが…一度封印を解けば、竜の力が顕現するのだ。今回は一号を解呪してきた。…貴様達と戦う為に」

 

そんな話を聞いた俺達は、一周まわって呆れるしか無かった。

 

「まだ後2段階あんの…ざけんなよ…」

 

「へっ…いいのかよ?それは解呪と封印を繰り返せば、呪いの進行が早まるんだろ?精神的寿命に響くぜ?」

 

「構わん、それに値する敵だ…。構えろ、グレン=レーダス。アルタイル=エステレラ。貴様達との戦いは、一体何を見せてくれる?」

 

「「チィ!!」」

 

俺達はすぐに、先手を取ろうと攻撃する。

しかし

 

「『■■■』」

 

レイクが、獣じみた何らかの言語を話した途端。

倉庫が爆光と共に、空へ吹き飛んだ。

 

 

 

「くぅ…!!」

 

アルタイルの結界が、ギリギリで間に合った。

 

「アルタイル!…おぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

グレンがアルタイルの糸と、【フィジカル・ブースト】で、身体能力を限界まで強化して、駆け抜ける。

瞬時に高速ファニング、特製の魔術火薬【灰色火薬(アッシュパウダー)】で炸裂強装弾を全弾掃射する。

並の人間なら、身体が引き千切れる程の威力に、グレンの体が後方に吹っ飛ぶ程だ。

 

「遅い」

 

しかし、そんな銃撃もレイクには通用せず。

一瞬で、全て掴み取られてしまう。

その手には傷1つついてなかった。

 

((化け物か…!?))

 

奇しくも同じ事を思うが2人だが、それでも止まれない。

アルタイルは糸を高速で放つ。

空気すら切り裂く程の勢いで迫る糸を、片腕で弾きながら

 

「『■■■』」

 

何かを言う。

 

「先生!あれ何!?」

 

「【竜言語魔術(ドラゴイッシュ)】だ!自然そのものに作用するチートだ!!」

 

そしてその説明を証明するかのように、不意に嵐が巻き起こる。

ハンマーのように雨が叩きつけ、稲妻が乱舞するように、アルタイル達に襲いかかる。

 

「クッソ!!洒落にならねぇぞ!!」

 

「先生!」

 

アルタイルは自分を守りつつ、高速で動くグレンに合わせて、簡易的な結界を張り続ける。

直接やり合うグレンとそうだが、その動きに合わせて守るアルタイルも、かなりの集中力が必要なのだ。

 

「…ほう、素晴らしい。あの時は何も知らない猪武者のようだと思ったが…あの時とは段違いに成長したようだな。学院生」

 

「うるっさい!!」

 

レイクは、アルタイルの成長ぶりに感心していたが、アルタイルは、その言葉がカンに触ったか、守りつつも糸の弾や糸の鞭を使って、遠距離攻撃を仕掛ける。

その隙に、方陣をこっそりと張り

 

「『金色の雷獣よ・地を疾く駆けよ・天に舞って踊れ』!」

 

B級軍用魔術【プラズマ・フィールド】で、薙ぎ払おうとする。

雨によって濡れた地面や、降りしきる雨そのものにすら、感電していき、通常以上の威力を以て、焼き払おうとする。

 

「お前!?いつの間にB級軍用魔術なんて!?」

 

グレンはそんな高等魔術をいつの間にか使える、アルタイルに驚愕する。

それはレイクも同じだが

 

「!?これは…!?見事だ。だが『■■■』」

 

竜言語魔術(ドラゴイッシュ)でそれすら防いでしまう。

それどころか、周囲の瓦礫や倉庫を竜巻で吸い上げ、それを薪に今度は炎で襲いかかってくる。

 

「今度は山火事かよぉぉぉぉ!!!?」

 

「この…!『我が手に星の天秤を』!」

 

アルタイルは略式詠唱で発動した【グラビティ・タクト】で、燃えている瓦礫を、レイクにぶつける。

 

「何!?」

 

想定外だったのか、反応が遅れ瓦礫に潰されるレイク。

そのまま、一気に推し潰そうとするアルタイルだったが

 

「脆い」

 

先に瓦礫が崩されてしまい、レイクが逃げ出してしまう。

最初からレイク自身は有効範囲外なので、彼自身に重力は仕掛けられない。

しかし、それが隙にはなった。

 

「これでどうだ!!」

 

グレンが、愚者のアルカナを掲げる。

その位置は既に半径50メトラ以内。

固有魔術(オリジナル)【愚者の世界】、発動。

 

「…やはりそう来るか」

 

「何が竜言語だ!こっちは肉体言語で、片をつけてやるよ!」

 

忌々しく呟くレイクに、突貫するグレン。

その後ろから、一気に近づくアルタイル。

アルタイルの【グラビティ・タクト】は、既に起動済み。

つまり、グレンの【愚者の世界】の影響は、受けない。

 

「良いだろう。手合わせ願おうか」

 

しかし、レイクも落ち着いて剣を抜く。

その剣は真銀や【日緋色金(オリハルコン)】と並ぶと謂われる、【竜鱗の剣】だ。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

気合一閃。

その一撃はとてつもない衝撃波を生み、倉庫街を文字通り2つに割った。

グレンは最初から躱すつもりだったか、横に飛んで躱したが、アルタイルは重力で受け止めようとして

 

「な!?マジ…かよ!?うおぉぉぉぉ!」

 

受け止めきれず、逆に吹き飛ばされてしまう。

 

「な…!?アルタイル!!」

 

グレンはそちらに気を取られてしまい

 

「気にしている場合か?魔術講師」

 

「チィ!?」

 

レイクに背後をとる隙を許してしまう。

 

(避けきれない…!?)

 

グレンが、諦めかけたその時

 

「…うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「!?何!?グボォ!!!?」

 

アルタイルが、大砲のような勢いで戻ってきて、レイクの横腹に飛び蹴りをかました。

アルタイルは飛ばされながら、柱に糸を引っ掛け、それをゴムのように使い、プラスで重力で速度を上乗せして戻ってきたのだ。

想定外の速さと威力に、反応出来ず吹き飛ばされるレイクに、糸を巻きつけておく。

その威力は先程の竜鱗の剣とほぼ同等。

しかし吹き飛んでいくレイクは、気付いたら元の場所に戻ってきていた。

 

「ッ!?」

 

その正体は【アリアドネ】を使った【次元跳躍】だ。

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

驚愕するレイクを他所に、グレンとアルタイルは渾身の一撃をレイクに叩きつけた。

 

「がはぁ!!!」

 

その威力に流石のレイクもひとたまりもなく、倒れふす。

しかし、竜の力を持つレイクを本当の意味で倒すには、些か弱かった。

それを知っているのか、2人が追撃を叩き込もうとしようとした瞬間

 

「ガアァァァァァァア!!」

 

竜鱗の剣を振るい、2人を散らける。

咄嗟に躱し、挟み込むように構える2人。

アルタイルの【グラビティ・タクト】も、効果が切れる。

直ぐに再起動は簡単だが、ここは【愚者の世界】の範囲内。

それは出来ない。

 

「ちっ…切れたか。下がりたいけど…隙がないな〜…」

 

「あれをまともに受けて…まだ動けるのか…!?」

 

「いや…貴様達の攻撃は、中々に効いたぞ」

 

レイクは悠然と立ち上がり、2人を睨みつける。

それぞれ身構えた所で、レイクも剣を構える。

 

「…来い」

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

そのまま2人は拳を振り上げ、レイクに突進するのだった。

 

 

 

「シッ!」

 

「温い」

 

俺は糸を放って剣を叩き落とそうとする。

しかし、勢いが足りず、簡単に防がれてしまう。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

先生が背中から、殴り掛かる。

拳には既に、俺の糸が巻かれている。

しかし、レイクの体の前では、拳を守る用途にしか使えなかった。

 

「遅いぞ、魔術講師」

 

レイクが剣を振り上げるのを見てた俺は、後ろから剣に糸を巻き付ける。

 

「させ…ない!」

 

俺は振り下ろさせないように、思いっきり引っ張るが、膂力が違いすぎたのか、まるでビクともしない。

 

「…この程度か?学院生!」

 

そのまま力ずくで振り下ろされた反動で、俺の体は宙に放り出させる。

その浮いている俺をレイクは斬ろうと狙ってくる。

 

「アルタイル!」

 

「!先生!」

 

先生の声に応じて、俺は糸を先生に伸ばす。

その糸を掴んだ先生が、思いっきり引っ張り下ろしてくれる。

その瞬間、いた場所に衝撃が飛んできて、倉庫が、斬られる。

受身を取った俺は、すぐに体勢を立て直す。

 

「無事か!?」

 

「何とか!」

 

俺達はそれぞれ調子を確認しあい構えていると、愚者のアルカナの輝きが消える。

 

「…どうやら【愚者の世界】の効果は切れたようだな。では行くぞ『■■■』」

 

そして顕現する、氷原地獄。

息をするだけで喉の肺がやられるであろう冷気に

 

「走れぇ!!止まれば死ぬぞ!!」

 

先生の叱責が響く。

俺は直ぐに走り出し、そのまま攻撃を続ける。

 

「『雷槍よ(1発)』!『雷槍よ(2発)』!『雷槍よ(3発)』!」

 

俺は【ライトニング・ピアス】を3連発で撃つが、それは肌に当たった瞬間霧散する。

 

「全く手応えなしか…!」

 

「無駄だ…逝け!」

 

レイクの言葉と共に、巨大な氷塊が降り注ぐ。

俺は糸を使って、切り払うが全く手が足りない。

 

「アルタイル!糸を巻き付けて、寄越せ!」

 

先生が、何やらそう指示を出してくるので、言葉通りにする。

降り注ぐ氷塊に糸を巻き付け、それを先生に渡す。

 

「よし!『紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吼え狂え』!」

 

先生の【ブレイズ・バースト】が、糸を伝って氷を破壊する。

 

「へっ!威力がクソでもこうすれば段違いだぜ!」

 

「本当に…戦い方の上手い人…!」

 

思わず感心する。

こういう所が、型破りなんだよな、この人。

 

「あの手この手で、よく凌ぐ。しかし、お前達の攻撃は先程の打撃以外、通ってないぞ!」

 

そう言いながら、今度は氷の礫を乱れ打ちしてくる。

咄嗟に身を隠し、やり過ごそうとすると、徐々に、壁が崩れてきている。

 

「マジでどうするか…!?」

 

「先生…俺が少し時間を稼ぎます。何とか思いついて下さい」

 

俺は結界を張りつつ、そう提案する。

 

「バカ野郎!!こんな奴1人で…」

 

「当たり前です。1人で戦う気はありません。でもこのままここにいても、嬲り殺しされるだけ」

 

そう、これは何も決死の無謀な特攻ではない。

生き残る為の戦略、ただの時間稼ぎだ。

 

「だったら知識量の多い先生が、何か作戦を立てた方がマシです。その間の時間稼ぎは…何とかしてみせます」

 

その言葉に先生が黙り込み

 

「…わかった。無理はすんな。死ぬんじゃねぇぞ」

 

「当然!」

 

俺は結界を何重にも張り直し、突撃する。

 

「何のつもりだ…学院生!」

 

「時間稼ぎだよ!バーカ!」

 

俺は再び、この強敵を前にサシで戦う。

しかしその難易度は、あの時とは…桁違いだった。

 

「あぁぁぁぁぁ!『真紅の炎帝よ・劫火の軍旗掲げ・朱に蹂躙せよ』!」

 

俺は【インフェルノ・フレア】で、一気に氷礫を、焼き尽くす。

そのまま水蒸気を隠れ蓑に突撃して、一気に糸で斬り掛かる。

 

「『我が手に星の天秤を』!おぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「遅い!」

 

当然反応され、防がれるが【グラビティ・タクト】で、動きを牽制する。

 

「ぬ…!これは…!」

 

「重力だよ!幾らお前でも、重力からは逃げられねぇ!」

 

俺は動きが制限されているレイクに、一気に畳み掛ける。

その一撃事に、重力を乗せているからか、レイクにもそれなりのダメージは蓄積されていく。

しかし

 

「〜ッ!!舐めるな!『■■■』」

 

至近距離の竜言語魔術(ドラゴイッシュ)に、咄嗟に重力で逃げれたが巻き込まれ、余波だけで吹き飛ばされる。

 

「ガ!?くっそぉ…」

 

そのまま、落雷が降り注ぐが、咄嗟に結界で何とか防ぐ。

 

「チッ!このぉ…!」

 

俺はその辺の瓦礫を浮かせて、糸を巻き付けてから、一気に放つ。

 

「ぬん!」

 

しかし、そんな一撃もレイクの膂力の前では石ころ同然だった。

 

「まだだ!」

 

俺は糸を放つも、それはあっさり落とされる。

 

「無駄な事を…」

 

「そうかな!?」

 

俺は落とされた糸を張り詰めて、弾く。

その瞬間、超至近距離の【ブレイズ・バースト】と【ライトニング・ピアス】が炸裂。

 

「何!?」

 

レイクを吹き飛ばしたが、やはり体に傷は付けられず、よろけさせる程度だった。

その瞬間、1発の銃声が聞こえる。

いくつかの跳弾の音の後、レイクの背後から銃弾が迫るが、あっさりと躱す。

 

(躱した?あの程度の銃弾を?)

 

後ろを振り向いて、撃ったグレン先生を確認する。

 

「今更そんな豆鉄砲が、何の役に立つ?」

 

「だが躱したよなぁ?見たぜ?全身のお肌が、竜鱗並のレイクさんよぉ。…何でこんな豆鉄砲を、躱したんだ?」

 

グレン先生はゆっくりと俺も元に近づきながら、言い放つ。

 

「テメェにもあるんだろ?ドラゴン唯一の弱点、【逆鱗】がよォ!!お前は万が一を恐れた、そうだろう!?そいつを撃ち抜けばあら不思議、一発逆転、俺らの勝利だ!どうだ?勝負はこれから…そうだろう?」

 

(そうだったっけ?)

 

逆鱗とは竜の身体構造上、発生するもののはず。

人間であるレイクには無いかもしれないが…?

でも【竜化の呪い】は体にも作用する訳だし…?

その吹雪の奥のレイクの顔は…一瞬強ばった。

 

(どっちだ!?今のはどっちの反応だ!?)

 

「まだやれるか?アルタイル」

 

とりあえず、まだ止まれない。

 

「…大丈夫。まだ行けます!」

 

そう答えてから、先生は予備のシリンダーに何かしら、魔術を付与する。

 

「させん!『■■■』」

 

今度は大洪水が襲いかかる。

俺達は咄嗟に瓦礫に飛び乗り逃れると

 

「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

何度目かの特攻を仕掛けるのだった。

 

 

 

「…くそぉ…」

 

「…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

片や全身ボロボロ、立ってるのすら困難なグレンと、壁に凭れてしゃがみこみ、動けなくなっているアルタイル。

 

「…見事だ。グレン=レーダス。アルタイル=エステレラ」

 

片やまるで無傷で、最初の存在感を纏ったままのレイク。

事ここに至って、勝敗が今、着きそうになっていた。

 

「アルタイル=エステレラ。この戦いによく最後まで着いてきた。それどころか、今の私に攻撃を何回も入れられる程の強さ、見事だ。そしてグレン=レーダス。様々な手練手管の数々で、よくこの戦力差を埋めた。…しかし、私の方が一枚上手だったな」

 

「…何だと?」

 

素直に賞賛するような口ぶりだったが、最後に不穏な空気を残す。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あれは竜の身体的構造によって生じるものだ。私には関係ない。貴様達の目論見など、最初からお見通しであり、それを利用させて貰った」

 

「…な…に…?」

 

思わず呟くアルタイル。

 

(やっぱり…無かった…?)

 

「だが私は貴様達に敬意を表する。貴様達は、私の見たかった、世界の一端を垣間見さ…」

 

「…()()()()

 

「…何?」

 

「…せ、先生…?」

 

突然グレンが、そう呟いた。

その事にレイクとアルタイルは、驚いた様にグレンを見る。

その顔は…不敵な笑みだった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()テメェの呪いの出処を考えりゃあな…」

 

そのままアルタイルにニヤリと笑いかけながら、話し出す。

 

「【Project:ReviveLife】。お前はそれを使って復活してきた。それしかねぇよな?そこでだ…魂と肉体は別物なお前に、どうして【竜化の呪い(ドラゴナイズド)】が残ってるんだ?もし肉体か魂に根ざしたものなら、復活した時に消えてる筈だ。なのに残っている…。アルタイル。答えは何だと思う?」

 

突然アルタイルに話を振るグレン。

アルタイルは呆気に取られながらも、必死に頭を回転させる。

 

「…そうか!精神!【アストラル・コード】!」

 

「正解だ。お前の呪いは精神に根ざしたものだったんだ。知ってるか?東方の【鬼】ってやつは、元は人間らしい。そいつの歪んだ精神性が、肉体をも作り替えてしまうらしいが…お前のもその類なんだろ?」

 

「…だからどうした?少ない情報で我が一族の秘儀を見破ったのは見事だ。しかし、それが分かってどうする?」

 

その答えにグレンは、愚者のアルカナを掲げる事で答えた。

固有魔術(オリジナル)【愚者の世界】、再度発動。

 

(ここに来て…【愚者の世界】?…まさか!?)

 

アルタイルは狙いを悟り、こっそりと最後の力を振り絞る。

 

「ここに来て【愚者の世界】だと…!?まさか!?」

 

レイクもグレンの狙いを悟った。

 

「来な。どっちが速ぇか…勝負だ」

 

その声に応じるように、駆け出すレイク。

手には竜鱗の剣。

あらゆるものを切り裂くそれが、人外の速度を以て、グレンに肉薄する。

対するグレンも、身を翻して、構える。

手には魔銃ペネトレイター。

その銃口が、人外の速度で迫るレイクを捉える。

そして、指を構え、息を潜めるアルタイル。

その手には魔法遺産(アーティファクト)【アリアドネ】。

しっかりと狙いを定め、その一撃のタイミングを、今かと待ち続ける。

刹那、空間を切り裂く孤月の斬光。

刹那、空間を引き裂く炸裂の銃声。

刹那、空間を撃ち抜く真紅の閃光。

そして…交差するグレンとレイク。

その結末は…

 

 

 

「貴様達の勝ちだ…グレン=レーダス。アルタイル=エステレラ」

 

レイクが手放した竜鱗の剣は…半ば折れており、交差する2人の間に折れた剣先が刺さっていた。

 

「白魔【マインド・アップ】を付与した弾か…。これを撃って俺の精神力を上げるとはな…」

 

フゥ…、と軽く息を吐くグレンは振り返る。

 

「テメェの呪いが精神に宿るものなら、()()()()()()()()()()()()()()()、【竜化の呪い(ドラゴナイズド)】は()()()…そこを狙えばいいって事だ。簡単な理屈だろ?」

 

「…戯けが…」

 

(何て…無茶苦茶な…!?)

 

俺は絶句した。

確かに理屈は簡単だ。

しかしそんな隙、コンマ数秒の世界だ。

『言うは易く行うは難し』と言うように、そんな事、分かっていても出来ない。

しかし先生の銃技術が、それを可能にした。

三連掃射(トリプル·ショット)】。

1発撃った後、左親指と左薬指を使って瞬時にリロード、3発分の音が1発分に聞こえる程の速度で放つ高等技術だ。

どんな状況でも、諦めない精神性。

99.9%負けるであろう戦いでも、0.1%の勝利を掴み取る。

 

(これが…グレン=レーダス!!!)

 

俺は目を見開いて、凝視している。

 

(…やっぱりすげぇな…この人は…それに比べて…)

 

俺は自分の体たらくと見比べてしまう。

諦めてはいなかったが、それでも全く届かなかった。

気持ちばかりが先行して…力が追いついていない。

 

(もっと…もっと…!!)

 

強くならないと。

そう思っていると…

 

「貴様もだ…アルタイル=エステレラ…。よく私の竜鱗の剣を…砕いた…」

 

レイクが、俺を見ながら言う。

 

「…大した事じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それでも、罅を入れただけだった。結局は、お前の力による自壊だよ」

 

俺は事もなさげに言う。

先生に比べれば…

 

「…阿呆か…この2人は…」

 

(こいつ…マジかよ…!?)

 

しかしグレンもまた、同様に絶句した。

レイクの剣速は、銃弾なんて比じゃない。

それを最も勢いが乗る瞬間、つまり間合いに入ったタイミングで、あの頑丈な剣の構造上弱い部分なんて、見える筈がない。

見えた所でそれを撃ち抜くのは、ほぼ不可能だ。

【心眼】。

多くの強者と出会い、傷つきながらも、諦めずに戦い続け、鍛えられた戦闘IQ。

その蓄積された経験値が、不可能を可能にした。

どんな状況でも、諦めない精神性。

0.1%の可能性でも、それを100%可能にする。

 

(これが…アルタイル=エステレラ!!!)

 

グレンはアルタイルを凝視する。

 

(こいつ…ここまで…成長してたのか…)

 

グレンは自分の戦いを省みる。

常に余裕なんてない。

アルタイル程、緻密な計算もしていない。

いつも身を削り、分の悪い賭けばかりだ。

図体ばかりで…精神がまるで子供だ。

 

(もっと…強くならないとな…)

 

「フッ…阿呆共が。こんな芸当、貴様らにしか出来ないだろうに…」

 

レイクは2人の葛藤に気づいたのか、皮肉げに笑うが、2人は気づいていない。

 

「…【イヴ・カイズルの玉薬】を、持ってこい。グレン=レーダス」

 

「ッ!?」

 

(【イヴ=カイズルの玉薬】?)

 

俺ははなんの事だが分からなかったが、先生の顔色は真っ青になっていた

 

「帝国宮廷魔導師団特務分室執行官NO.0【愚者】…彼の者を語るには、【愚者の世界】ともうひとつ。【イヴ=カイズルの玉薬】こそ貴様の最後の切り札だろう…」

 

「…」

 

グレンは無表情に…しかし何処か苦々しい、複雑な表情をしていた。

 

「この私は終わりだが…次の私には…更なる世界を見せてみろ…!」

 

そうして遂に…レイクは力尽き、絶命した。

 

「…好き勝手いいやがって…」

 

「3回目は…勘弁してくれ…」

 

そう呟いた俺達の顔は、きっと酷く疲れきっていてただろう。




常に一番最初に勝つ可能性を引っ張ってくるグレンと、ここ一番で、勝率を100%にするアルタイル君。
お互い主人公補正バリバリですが、アルタイル君は、1人だと、負けてます。
誰かと一緒に戦って初めて、対等に戦える子なのです。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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