ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

44 / 141
皆大好きイヴさん登場です。
この時のこの人は、どこまでも痛々しかったです。
イグナイト父…マジ許すまじ。
それではよろしくお願いします。


最悪の3日間編第3話

「アルタイル…何でジャティスといる?」

 

先生からの質問に俺は答えられず、唇を噛むだけだった。

 

「…ルミアか?」

 

「…」

 

俺は黙って頷いた。

先生もそれで理解したのか、ゆっくりと立ち上がって、俺の頭を撫でてきた。

 

「そうか…。成長したな、お前」

 

「…先生は、相変わらず凄いですね…」

 

「俺なんてまだまだだ。さてと…」

 

システィーナに連絡を取る先生。

しかし、その顔色はドンドンと青くなっていく。

 

「おい!白猫!返事しろ!白猫!…ちくしょう!!」

 

「せ、先生!?」

 

叫びながら飛び出す先生を、俺も慌てて追いかける。

察するに、システィーナの方にも何かトラブルが…!?

 

「安心しなよ、グレン。君は少し過保護がすぎる。システィーナならあの程度の試練、乗り越えられる。…そう読んでいたよ…」

 

その時ジャティスの声がする。

声の方へ向くと、一緒に泣きそうな顔をしているルミアもいた。

 

「アイル君…。先生…。無事で、良かった…」

 

「「ジャティスゥゥゥゥゥゥ!!!」」

 

俺と先生は、同時に動き出す。

先生がジャティスに殴り掛かり、俺がルミアを抱き寄せる。

 

「おっと。いきなり随分な挨拶じゃないか、グレン。システィーナといい、アルタイルといい、これがフィジテの流行りなのかい?それに、アルタイル。君は何故殴りかかってきたのかな?」

 

「…うるせぇ。反射だ」

 

ここでジャティスを倒す訳には行かないのだが、ついやってしまった。

 

「何が目的だ…!?ルミアを攫い、俺を利用し、アルタイルまで巻き込みやがって!!一体何を企んでやがる!?」

 

「無論…正義の執行さ。グレン、これは事実だ。今このフィジテは、滅びの危機に瀕している。今はその瀬戸際なんだよ」

 

いきなりそんな事を言われた先生は、呆然としている。

 

「は?フィジテが…滅びの危機?」

 

「グレン。君の手を貸してくれないか?」

 

その奈落色の瞳からは、奴の真意は何一つ、読み取れなかった。

 

「…先生、お願い。今は言う事を聞いて」

 

「お願いします。…本当に危険な状況なんです」

 

俺とルミアが何とか説得して、先生も仕方なさげに応じる。

ジャティスが、次の場所に向かう道中、情報のやり取りが行われていた。

どうやらシスティーナは超一流の外道魔術師を、単独撃破したらしい。

その後はイヴさんによって保護、命に別状はなく、警邏庁の医務室で寝ているらしい。

 

「つまり…システィーナまで巻き込んだって事か…!!」

 

先生が、烈火のような怒りを見せる。

それにもジャティスは動じない。

 

「そこまで彼女が大切かい?所詮セラの代用品だろ?」

 

「ジャティス」

 

セラって誰の事だ?

先生に聞こうとしたが…未だかつて見た事無いくらい冷たく、殺意に満ちた目に、思わず震える。

 

「それ以上言ったら…フィジテがどうなろうが知った事じゃねぇ…今、ここで…お前を殺す」

 

余りにも異質な底冷えする声に、流石のジャティスも臆しこそせずとも、押し黙った後、真面目に謝罪した。

 

「…失礼。失言だった。君と彼女…そして、セラの名誉を貶めるような真似をしてすまなかった。…心から謝罪しよう。申し訳ない」

 

(まさか…1年前の死んだ仲間って…)

 

天使の塵の時、アルベルトさん達から聞いた話を思い出した。

それが…セラって人なんだろう。

その人はきっと先生にとって…とても大切な人だったのだろう。

 

「アイル君?」

 

ルミアの声に俺は、無意識にルミアの手を握っているのに気付いた。

その手を俺はじっと見てから、ルミアに改めて約束した。

 

「…俺が守るから」

 

「…うん」

 

 

辿り着いたのは、南地区の古びた商館だ。

その中には…まさに屍山血河が築かれていた。

 

「…ジャティスゥゥゥ!!」

 

俺は抑えが効かずに、胸ぐらを掴み上げて壁まで引き摺る。

 

「おいおい。落ち着きなよ、アルタイル。ここにいるのは全員、天の知恵研究会野の人間さ」

 

「だったらあの子供はなんだ!?」

 

俺はある一点を指さす。

そこにはまだ、年端もいかない子供の死体があった。

 

「大いなる正義の前には必要経費さ」

 

その言葉に俺は、ブチ切れた。

 

「だったらお前の命も必要経費だ!!!」

 

そうして、俺は糸で首をはねようとしたが

 

「アルタイル…落ち着け」

 

先生に痛いぐらい強く手首を掴まれ、正気を取り戻す。

 

「…クソが!!」

 

俺はジャティスを思いっきり投げ捨てる。

そのままニヤケ顔のジャテイスに、殺気をぶつける。

 

「…いつか…マジで殺す」

 

隣にいる、先生も同様に殺気をとばす。

その殺気にニヤリと笑ってから

 

「…こっちだよ」

 

何事も無いように先に進み出した。

そうして辿り着いた部屋には、恐ろしく高度な方陣が組まれていた。

 

「これが…【 マナ活性供給式(ブーストサプライザー)】」

 

「そうだよ…【終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし】」

 

ルミアのアシストを受けたジャティスが、黒魔儀【イレイズ】によって、解呪する。

 

「…ジャティス。説明しろ。一体何が起こってる?」

 

その光景を黙って見ていた先生が、ジャティスに向かって口を開く。

 

「やれやれ…よく見てみるんだ。君ほどの博識なら分かるはずだよ」

 

そう言われその方陣を見た先生は、驚愕したように、声を絞り出す。

 

「馬鹿な…!?【Project:Frame of megiddo】…!?【メギドの火】だと…!?」

 

 

ジャティスは俺にした説明と、ほぼ同じ内容を先生にもした。

強いて言うならより細かいって事か。

 

「…で?その【核熱点火式(イグニッション·プラグ)】は何処にある?」

 

そう言えば、そこを聞き忘れた気がする。

 

「あぁ…それは、アルザーノ帝国魔術学院だよ」

 

「「「ッ!?」」」

 

俺達3人は、息を呑んだ。

学院に、そんなものがあったのか!?

こうして俺達は直ぐに、移動を始めたのた。

 

俺達は、ジャティスのタルパで作った馬車で裏路地を駆け抜けていた。

俺達の眼前に広がる空は、下から立ち上る紅の閃光によって、紅蓮に染め上げられていた。

核熱点火式(イグニッション·プラグ)】の【二次起動(セミ·ブースト)】が、始まったのだ。

 

「…!?先生!何かが接近中!速い!」

 

しかし、先を急ぐ俺達の背後から何かが、高速接近していた。

 

「ルミア!下がってろ!アルタイル!ルミアの傍にいろ!」

 

先生の指示が飛んだ瞬間、多種多様な武器を持った何かが、襲いかかってきた。

 

「チィ!しつけぇんだよ!【掃除屋(スイーパー)】共が!!」

 

掃除屋(スイーパー)】とは、天の知恵研究会の暗殺部隊の事らしい。

隠す爪(ハイドゥン·クロウ)】を武器に、機械的に襲いかかってくる廃人集団だ。

リィエルの素、イルシアが数少ない例外なのだ。

 

「邪魔すんじゃねえよ!!」

 

先生が、流れるように右から来た3人を撃ち落とす。

 

「シィ!」

 

更に、左から来た2人も撃ち落とす。

しかし、同時に後ろから襲いかかった奴に襲われそうになるのを、糸の弾で撃ち抜く。

 

「た、助かった!…アルタイル!?後ろだ!」

 

「な!?しまっ!?」

 

今度は俺の後ろから来ていた掃除屋(スイーパー)に気付かず、咄嗟にルミアを庇いながら、糸で防いだ。

 

「アイル君!?」

 

「後ろにいろ!」

 

強引に弾こうとした時、そいつの後ろを何かが通り過ぎ、そいつを切り裂いた。

 

「クク…後ろに気をつけたまえよ、アルタイル」

 

「…ジャティス」

 

やったのは、ジャティスのタルパだろう。

そのニヤケ顔にイライラしてると、銃声が響き、ジャティスの後ろにいた掃除屋(スイーパー)を、先生が撃ち抜いていた。

 

「…テメェもだ、クソ野郎」

 

「クク…。読んでいたよ」

 

その後も俺達は、睨み合いながらも機械的に敵を殲滅していった。

俺と先生の連携は問題無いが、ジャティスととれるはずは無かったが

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

「ヒャハハハハハハ!!!」

 

俺達は一切討ち漏らすこと無く、根こそぎ殲滅していく。

先生とジャティスが蹴散らし、その隙をついて入ってきたやつは俺が、叩き落とした。

それを繰り返す事5セット。

 

「これでラスト!」

 

先生が最後の1人を撃ち落として、やっと全て撃破した。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「流石に…この連戦はキツい…」

 

「2人共!直ぐに治療します!」

 

俺と先生が、へばっているとルミアが、直ぐに治療してくれる。

こういう時、ルミアの存在はありがたい。

 

「さてと、ここまで来たらあと一息…なんだけどね。相変わらず無粋な女だよ」

 

そう呟いた瞬間、突然俺達に向かって、爆煙が上がる。

 

「「チィ!」」

 

俺と先生はルミアを連れて、飛び出す。

地面を削りながら、周囲を探すと

 

「やっと追い詰めたわ!ジャティス=ロウファン!」

 

そこにいたのは、イヴ=イグナイトだった。

 

「イヴ!?何でここに!?」

 

「煩いわよグレン」

 

そう言いながら、何かをチラつかせる。

あれは…通信器?

 

「チッ…白猫のやつから逆探知したのか…」

 

なるほど、それなら話は速い。

 

「おいイヴ!お前、状況は分かってるのか!?」

 

「ええ、当然よ」

 

「よし!なら…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()

 

「…は?」

 

今…なんて言った…?

ジャティスを…捕まえる?

今、このタイミングで?

 

「お前…本当に状況が分かってるのか!?【メギドの火】が、稼働するまで時間が無いんだぞ!?」

 

「そんな事どうでもいいわ。今最優先すべきは、裏切り者の【正義】の確保、もしくは抹殺。【メギドの火】なんて、二の次よ」

 

「「「…」」」

 

俺達はあまりに意味不明な発言に、唖然とした。

そして、その後

 

「…お前?マジで言ってんの?本当に状況分かってんのか?まさか、この期に及んで、クソくだらねぇ手柄に固執してるのか?俺はお前が大嫌いだ。だが…超えちゃいけねぇ一線は超えねぇ…そんな奴だって思ってた」

 

そういうグレン先生の声は、心底失望したような、呆れたような声だった。

その声を聞いたイヴさんが、突然慌てたように弁明を始めた。

 

「も、もちろんこのままにする気は無いわ!でもジャティスが優先よ!ここは【第七園】の中!既に、私の勝ちは確定してるわ!」

 

「馬鹿野郎!現実を見ろ!コイツの強さは、単純な戦闘能力じゃねぇ!今、コイツに構ってる暇はない!」

 

「煩い!!私はイグナイトなのよ!!どっちも出来る!!そうに決まってるの!!だから命令よグレン!!アルタイル!!貴方もよ!!今ここで、ジャティスを…倒すのよ!!優先すべきは【メギドの火】ですって…!?そんなの分かってるのよ!!それでも…私は…!?」

 

その目は、混沌色に燃えて、どこか常軌を逸していた。

まるで子供の癇癪と言うよりは…強迫観念に駆られているような。

 

「…諦めろ、イヴ。今は【メギドの火】を優先しようぜ?」

 

その様子に先生も、少し毒気抜かれたか、優しく話しかける。

しかしその言葉も、今のイヴさんには届かない。

 

「どうして!?貴方は私と同じくらい、ソイツが憎いはずよ!なのに、何故…!?」

 

「ああ、憎いさ。すぐにでもぶち殺してぇ。でもな…」

 

それがグレンの本心。

しかし、それでも。

思い出されるは、銀髪の少女の笑顔。

 

(そっちに行っちゃダメ…行かないで。私の、私たちの知っている先生は、そんな人じゃないです。戦うなら…いつもの様に、誰かを助ける為に、戦って下さい…)

 

その言葉がある限り、あの温もりがある限り、グレンは道を間違えない。

 

「…関係ねぇんだよ。今は生徒達の方が大事だ」

 

「…!?」

 

「…ルミア、アルタイル。行くぞ」

 

「あっ…その…はい…」

 

ルミアは戸惑ったように2人を見比べて、イヴさんに一礼してから、先生について行く。

 

「イヴさん。…ご武運を」

 

俺もそう言い残して、2人を追いかけたのだった。

 

 

「『我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・素は摂理の円環へと帰還せよ・五素成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁はこ乖離すべし・いざ森羅の万象は須くここに斬滅せよ・遥かな虚無の果てに』!」

 

「な!?【イクスティンクション・レイ】だと!?」

 

盾を持った騎士が、それを防ぎ切る。

 

「な!?防いだのかよ!?マジか!?…まあ、いいや」

 

妙に締りが悪い登場の仕方をしたのは

 

「「「「「グレン先生!!!?」」」」」

 

「「「「「ルミア!?」」」」」

 

「「「「「アイルまで!?」」」」」

 

グレン=レーダスと、アルタイル=エステレラと、ルミア=ティンジェルだった。




この時もそうですが、初対面から一貫して、アルタイル君はイヴに対しての、嫌悪感とかはありません。
痛々しい…哀れ…そんな感情で彼は見てます。
描写はしてないんですけどね。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。