この時のこの人は、どこまでも痛々しかったです。
イグナイト父…マジ許すまじ。
それではよろしくお願いします。
「アルタイル…何でジャティスといる?」
先生からの質問に俺は答えられず、唇を噛むだけだった。
「…ルミアか?」
「…」
俺は黙って頷いた。
先生もそれで理解したのか、ゆっくりと立ち上がって、俺の頭を撫でてきた。
「そうか…。成長したな、お前」
「…先生は、相変わらず凄いですね…」
「俺なんてまだまだだ。さてと…」
システィーナに連絡を取る先生。
しかし、その顔色はドンドンと青くなっていく。
「おい!白猫!返事しろ!白猫!…ちくしょう!!」
「せ、先生!?」
叫びながら飛び出す先生を、俺も慌てて追いかける。
察するに、システィーナの方にも何かトラブルが…!?
「安心しなよ、グレン。君は少し過保護がすぎる。システィーナならあの程度の試練、乗り越えられる。…そう読んでいたよ…」
その時ジャティスの声がする。
声の方へ向くと、一緒に泣きそうな顔をしているルミアもいた。
「アイル君…。先生…。無事で、良かった…」
「「ジャティスゥゥゥゥゥゥ!!!」」
俺と先生は、同時に動き出す。
先生がジャティスに殴り掛かり、俺がルミアを抱き寄せる。
「おっと。いきなり随分な挨拶じゃないか、グレン。システィーナといい、アルタイルといい、これがフィジテの流行りなのかい?それに、アルタイル。君は何故殴りかかってきたのかな?」
「…うるせぇ。反射だ」
ここでジャティスを倒す訳には行かないのだが、ついやってしまった。
「何が目的だ…!?ルミアを攫い、俺を利用し、アルタイルまで巻き込みやがって!!一体何を企んでやがる!?」
「無論…正義の執行さ。グレン、これは事実だ。今このフィジテは、滅びの危機に瀕している。今はその瀬戸際なんだよ」
いきなりそんな事を言われた先生は、呆然としている。
「は?フィジテが…滅びの危機?」
「グレン。君の手を貸してくれないか?」
その奈落色の瞳からは、奴の真意は何一つ、読み取れなかった。
「…先生、お願い。今は言う事を聞いて」
「お願いします。…本当に危険な状況なんです」
俺とルミアが何とか説得して、先生も仕方なさげに応じる。
ジャティスが、次の場所に向かう道中、情報のやり取りが行われていた。
どうやらシスティーナは超一流の外道魔術師を、単独撃破したらしい。
その後はイヴさんによって保護、命に別状はなく、警邏庁の医務室で寝ているらしい。
「つまり…システィーナまで巻き込んだって事か…!!」
先生が、烈火のような怒りを見せる。
それにもジャティスは動じない。
「そこまで彼女が大切かい?所詮セラの代用品だろ?」
「ジャティス」
セラって誰の事だ?
先生に聞こうとしたが…未だかつて見た事無いくらい冷たく、殺意に満ちた目に、思わず震える。
「それ以上言ったら…フィジテがどうなろうが知った事じゃねぇ…今、ここで…お前を殺す」
余りにも異質な底冷えする声に、流石のジャティスも臆しこそせずとも、押し黙った後、真面目に謝罪した。
「…失礼。失言だった。君と彼女…そして、セラの名誉を貶めるような真似をしてすまなかった。…心から謝罪しよう。申し訳ない」
(まさか…1年前の死んだ仲間って…)
天使の塵の時、アルベルトさん達から聞いた話を思い出した。
それが…セラって人なんだろう。
その人はきっと先生にとって…とても大切な人だったのだろう。
「アイル君?」
ルミアの声に俺は、無意識にルミアの手を握っているのに気付いた。
その手を俺はじっと見てから、ルミアに改めて約束した。
「…俺が守るから」
「…うん」
辿り着いたのは、南地区の古びた商館だ。
その中には…まさに屍山血河が築かれていた。
「…ジャティスゥゥゥ!!」
俺は抑えが効かずに、胸ぐらを掴み上げて壁まで引き摺る。
「おいおい。落ち着きなよ、アルタイル。ここにいるのは全員、天の知恵研究会野の人間さ」
「だったらあの子供はなんだ!?」
俺はある一点を指さす。
そこにはまだ、年端もいかない子供の死体があった。
「大いなる正義の前には必要経費さ」
その言葉に俺は、ブチ切れた。
「だったらお前の命も必要経費だ!!!」
そうして、俺は糸で首をはねようとしたが
「アルタイル…落ち着け」
先生に痛いぐらい強く手首を掴まれ、正気を取り戻す。
「…クソが!!」
俺はジャティスを思いっきり投げ捨てる。
そのままニヤケ顔のジャテイスに、殺気をぶつける。
「…いつか…マジで殺す」
隣にいる、先生も同様に殺気をとばす。
その殺気にニヤリと笑ってから
「…こっちだよ」
何事も無いように先に進み出した。
そうして辿り着いた部屋には、恐ろしく高度な方陣が組まれていた。
「これが…【 マナ
「そうだよ…【終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし】」
ルミアのアシストを受けたジャティスが、黒魔儀【イレイズ】によって、解呪する。
「…ジャティス。説明しろ。一体何が起こってる?」
その光景を黙って見ていた先生が、ジャティスに向かって口を開く。
「やれやれ…よく見てみるんだ。君ほどの博識なら分かるはずだよ」
そう言われその方陣を見た先生は、驚愕したように、声を絞り出す。
「馬鹿な…!?【Project:Frame of megiddo】…!?【メギドの火】だと…!?」
ジャティスは俺にした説明と、ほぼ同じ内容を先生にもした。
強いて言うならより細かいって事か。
「…で?その【
そう言えば、そこを聞き忘れた気がする。
「あぁ…それは、アルザーノ帝国魔術学院だよ」
「「「ッ!?」」」
俺達3人は、息を呑んだ。
学院に、そんなものがあったのか!?
こうして俺達は直ぐに、移動を始めたのた。
俺達は、ジャティスのタルパで作った馬車で裏路地を駆け抜けていた。
俺達の眼前に広がる空は、下から立ち上る紅の閃光によって、紅蓮に染め上げられていた。
【
「…!?先生!何かが接近中!速い!」
しかし、先を急ぐ俺達の背後から何かが、高速接近していた。
「ルミア!下がってろ!アルタイル!ルミアの傍にいろ!」
先生の指示が飛んだ瞬間、多種多様な武器を持った何かが、襲いかかってきた。
「チィ!しつけぇんだよ!【
【
【
リィエルの素、イルシアが数少ない例外なのだ。
「邪魔すんじゃねえよ!!」
先生が、流れるように右から来た3人を撃ち落とす。
「シィ!」
更に、左から来た2人も撃ち落とす。
しかし、同時に後ろから襲いかかった奴に襲われそうになるのを、糸の弾で撃ち抜く。
「た、助かった!…アルタイル!?後ろだ!」
「な!?しまっ!?」
今度は俺の後ろから来ていた
「アイル君!?」
「後ろにいろ!」
強引に弾こうとした時、そいつの後ろを何かが通り過ぎ、そいつを切り裂いた。
「クク…後ろに気をつけたまえよ、アルタイル」
「…ジャティス」
やったのは、ジャティスのタルパだろう。
そのニヤケ顔にイライラしてると、銃声が響き、ジャティスの後ろにいた
「…テメェもだ、クソ野郎」
「クク…。読んでいたよ」
その後も俺達は、睨み合いながらも機械的に敵を殲滅していった。
俺と先生の連携は問題無いが、ジャティスととれるはずは無かったが
「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
「ヒャハハハハハハ!!!」
俺達は一切討ち漏らすこと無く、根こそぎ殲滅していく。
先生とジャティスが蹴散らし、その隙をついて入ってきたやつは俺が、叩き落とした。
それを繰り返す事5セット。
「これでラスト!」
先生が最後の1人を撃ち落として、やっと全て撃破した。
「はぁ…はぁ…」
「流石に…この連戦はキツい…」
「2人共!直ぐに治療します!」
俺と先生が、へばっているとルミアが、直ぐに治療してくれる。
こういう時、ルミアの存在はありがたい。
「さてと、ここまで来たらあと一息…なんだけどね。相変わらず無粋な女だよ」
そう呟いた瞬間、突然俺達に向かって、爆煙が上がる。
「「チィ!」」
俺と先生はルミアを連れて、飛び出す。
地面を削りながら、周囲を探すと
「やっと追い詰めたわ!ジャティス=ロウファン!」
そこにいたのは、イヴ=イグナイトだった。
「イヴ!?何でここに!?」
「煩いわよグレン」
そう言いながら、何かをチラつかせる。
あれは…通信器?
「チッ…白猫のやつから逆探知したのか…」
なるほど、それなら話は速い。
「おいイヴ!お前、状況は分かってるのか!?」
「ええ、当然よ」
「よし!なら…」
「
「
「…は?」
今…なんて言った…?
ジャティスを…捕まえる?
今、このタイミングで?
「お前…本当に状況が分かってるのか!?【メギドの火】が、稼働するまで時間が無いんだぞ!?」
「そんな事どうでもいいわ。今最優先すべきは、裏切り者の【正義】の確保、もしくは抹殺。【メギドの火】なんて、二の次よ」
「「「…」」」
俺達はあまりに意味不明な発言に、唖然とした。
そして、その後
「…お前?マジで言ってんの?本当に状況分かってんのか?まさか、この期に及んで、クソくだらねぇ手柄に固執してるのか?俺はお前が大嫌いだ。だが…超えちゃいけねぇ一線は超えねぇ…そんな奴だって思ってた」
そういうグレン先生の声は、心底失望したような、呆れたような声だった。
その声を聞いたイヴさんが、突然慌てたように弁明を始めた。
「も、もちろんこのままにする気は無いわ!でもジャティスが優先よ!ここは【第七園】の中!既に、私の勝ちは確定してるわ!」
「馬鹿野郎!現実を見ろ!コイツの強さは、単純な戦闘能力じゃねぇ!今、コイツに構ってる暇はない!」
「煩い!!私はイグナイトなのよ!!どっちも出来る!!そうに決まってるの!!だから命令よグレン!!アルタイル!!貴方もよ!!今ここで、ジャティスを…倒すのよ!!優先すべきは【メギドの火】ですって…!?そんなの分かってるのよ!!それでも…私は…!?」
その目は、混沌色に燃えて、どこか常軌を逸していた。
まるで子供の癇癪と言うよりは…強迫観念に駆られているような。
「…諦めろ、イヴ。今は【メギドの火】を優先しようぜ?」
その様子に先生も、少し毒気抜かれたか、優しく話しかける。
しかしその言葉も、今のイヴさんには届かない。
「どうして!?貴方は私と同じくらい、ソイツが憎いはずよ!なのに、何故…!?」
「ああ、憎いさ。すぐにでもぶち殺してぇ。でもな…」
それがグレンの本心。
しかし、それでも。
思い出されるは、銀髪の少女の笑顔。
(そっちに行っちゃダメ…行かないで。私の、私たちの知っている先生は、そんな人じゃないです。戦うなら…いつもの様に、誰かを助ける為に、戦って下さい…)
その言葉がある限り、あの温もりがある限り、グレンは道を間違えない。
「…関係ねぇんだよ。今は生徒達の方が大事だ」
「…!?」
「…ルミア、アルタイル。行くぞ」
「あっ…その…はい…」
ルミアは戸惑ったように2人を見比べて、イヴさんに一礼してから、先生について行く。
「イヴさん。…ご武運を」
俺もそう言い残して、2人を追いかけたのだった。
「『我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・素は摂理の円環へと帰還せよ・五素成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁はこ乖離すべし・いざ森羅の万象は須くここに斬滅せよ・遥かな虚無の果てに』!」
「な!?【イクスティンクション・レイ】だと!?」
盾を持った騎士が、それを防ぎ切る。
「な!?防いだのかよ!?マジか!?…まあ、いいや」
妙に締りが悪い登場の仕方をしたのは
「「「「「グレン先生!!!?」」」」」
「「「「「ルミア!?」」」」」
「「「「「アイルまで!?」」」」」
グレン=レーダスと、アルタイル=エステレラと、ルミア=ティンジェルだった。
この時もそうですが、初対面から一貫して、アルタイル君はイヴに対しての、嫌悪感とかはありません。
痛々しい…哀れ…そんな感情で彼は見てます。
描写はしてないんですけどね。
それでは失礼します。
ありがとうございました。