それではよろしくお願いします。
ようやく辿り着いた俺達の前には、学院を埋め尽くすような巨大な魔術方陣と、その中央で陣どる1人の銀騎士だった。
「単刀直入に聞くぜ?お前が黒幕だな…!?」
「いかにも。天の知恵研究会【
威風堂々と名乗るその姿と名前に、俺は絶句した。
「ラザール…!?【六英雄】の1人、【鋼の聖騎士】、【ラザール=アスティール】!!!?」
唐突だが、この世界には【六英雄】と呼ばれる者達がいる。
200年前の外宇宙の邪神の眷属達との戦いで、人類側の切り札だった者達だ。
・【灰燼の魔女】セリカ=アルフォネア。
・【剣の姫】エリエーテ=ヘイヴン。
・【聖賢】ロイド=ホルスタイン。
・【戦天使】イシェル=クロイツ。
・【銀狼】サラス=シルヴァース。
そしてもう1人、それがこの男。
・【鋼の聖騎士】ラザール=アスティール。
「先生!!コイツは…ヤバい!!アルフォネア教授と、同格だ!!」
「あ、アイル君…!?先生…!?」
ルミアが、焦る様に俺達の服の裾を掴む。
俺は優しく頭を撫でながら、気休め程度に励ます。
「大丈夫…下がってて」
「クソ…!?こんなのが出てくるなんてな…!?アルタイル!!俺達で何とかぶっ倒すぞ!!」
俺達が、半ばヤケクソ気味に仕掛けようとした時
「待て!お前達!」
全身ボロボロで、片膝をついてるハーレイ先生が止める。
「事情は知っているようだな!なら、話は早い!奴はこの【
「その通りだ!ここは我々に任せたまえ!」
「ハーレイ先生…ツェスト男爵…!」
若き【
しかし、グレン先生は不安があるのか、一瞬迷いを見せた。
「迷っている暇があると思うか?」
その声と共に、ラザールが目の前に現れた。
「ッな!?」
あまりに突然過ぎて、反応が遅れる先生。
その隙に、先生に槍が振り下ろさせる。
(跳躍も詠唱も、間に合わない…!なら!!)
俺は強引に割り込んで、その槍を真正面から受け止める。
「ッ!?アルタイル!!!」
ドンッ!!!!!!
「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!?」
声が出せない程の衝撃。
糸を何重にも巻き付けているのにも関わらず、その衝撃は、五臓六腑に響いた。
両腕の骨が折れた。
両足の骨も折れた。
内臓にまでダメージがいった。
それでも…死ぬ訳には…行かない!!!
「…アァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「ほう…我が槍をよく受け止めた。では…貴様から逝け!!」
「「アルタイル(アイル君)!!!」」
先生とルミアの悲鳴じみた声が聞こえる。
上から何やら分からない力を感じる。
その力が俺を押し潰そうとした瞬間、蒼銀の閃光が槍を弾き飛ばした。
そして
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「何!?」
蒼の衝撃が、全てを圧殺しようとする。
しかしそれは、7色の光を放つ盾によって阻まれる。
俺が呆然と見るその姿は、燦然と輝く黄金色の髪を靡かせていた。
「全く…揃いも揃って、子供に助けられるなよ。良くやったな、アルタイル」
そう言いながら、俺も前に立つその人は
「さてと…第2ラウンドだ。行こうか、リィエル」
「ん!」
剣を担いだアルフォネア教授と、リィエルだった。
「セリカ!?生きてたのか!?」
「リィエル!?無事だったの!?」
先生とルミアが、驚く。
「はっ!私があれくらいで死ぬと思ったのか?」
その様子に時計を見せながら、呆れたように言う教授と
「ん!なんか寝たら治った!」
実にいつも通りのリィエル。
「さてと…とりあえず、ツェスト男爵。アルタイルを頼む」
「よかろう」
そう言って男爵がステッキを振るった瞬間、景色が急に変わった。
短距離の転送魔術か…ただの変態じゃねぇんだな、あのエロ男爵。
倒れている大人達。
よく見ると、学院の講師のローブを着ている。
その様子はさながら野戦病院だが、見覚えのある場所だった。
「…医務室?」
そこは学院の医務室だった。
「新しい急患!?大丈夫ですか!?ってエステレラ君!?しかもかなり重症!?」
「セシリア先生…」
そこに走ってきたのは、保健医のセシリア先生だ。
ルミアかそれ以上に、法医呪文を得意とする、凄腕だ。
…まあ、直ぐに血を吐く超虚弱体質なのが欠点だが。
今日は、この人にしてはよく持っているのだろう。
「待ってて!直ぐに手当しますからね!!」
そう言いながら治癒してくれるが、俺自身に治癒限界が近く、中々治りが悪い。
「もう限界が…!?一体何をしてたの!?」
「アハハ…ちょっと…」
何とか、骨は繋がった。
「…ありがとう、セシリア先生」
お礼を言いながら、俺は立ち上がった。
「!?ダメです!?まだ行っちゃダメです!絶対安静!!」
セシリア先生が、俺を強引に寝かせようとするも、力では叶う訳もなく。
「でも!皆が戦ってるんだ!俺も行かないと…!?」
「今の君が行って何が出来るんです…!?」
押し問答を繰り返していると、突然マナが溢れ出した。
俺達は直ぐに窓から外を覗いた。
「え!?何が起こってるの!?」
「【臨界活性マナ】?…まさか、【マナ
ジャティスめ…やっぱり騙してやがったな!!
しかし、問題はその後だった。
「な、何だ…あれ…?」
空に突然、赤い稲妻が走る。
その稲妻は徐々に輪郭を形作っていく。
少しづつ収まっていきやがて…1隻の箱舟が浮かんでいた。
その姿は…最近見たある物に酷似していた。
その名は…
「バカな…あれは…【
魔将星が1人、【鉄騎剛将】、【アセロ=イエロ】が乗っていたとされる、3日で国を焼き払うと言われる
俺は未だ呆然としているセシリア先生の隙を見て、こっそりと医務室を出る。
「ッ!?まだ…走れないか…!?」
俺は出来るだけ速く、しかしゆっくりと皆の元に向かった。
「速く…速く…!」
そうして、やっと辿り着いたそこには
「…え?」
絶望が広がっていた。
教授が、リィエルが、男爵が、ハーレイ先生が、いつの間にか来ていたシスティーナが、バーナードさんが、クリストフが、 皆倒れていた。
幸い死んではないが、ある者は肉体の限界が、ある者はマナ欠乏症、ある者はダメージを受け、力尽きていた。
唯一立っていたのは、グレン先生と、アルベルトさん、そして守られていたルミアだった。
そして悠然と立っているのは、黒い鎧に身を包んだ、人型の闇そのものだった。
「『我が手に星の天秤を』!!」
俺は重力を一気に叩きつける。
そんじゃそこらの奴なら、吹き飛ばされるが、微動だにしない。
〖ほう、まだいたか。…しかし無駄だ。我が【
「アイル君!?どうして!?」
「アルタイル!?馬鹿野郎!なんで戻ってきた!?」
「ルミア放っておける訳無いでしょ…。しかし【
【
超魔法文明の技術が編み出したとされる、究極の魔法金属。
闇のような黒い光沢のそれは、不滅の物質であり、水銀のような流動性と、龍鱗よりも堅いという矛盾を内包する金属である。
一説によれば、
文献などにしか表記はなく、幻の金属と呼ばれていたのだ。
「実在したんだあれ…。という事は、アイツやっぱりアセロ=イエロって事?」
「ああ、そう名乗ってたぞ…。アルベルト!アルタイル!動けるな!?」
「無論だ」
「行ける」
「ならやるぞ!俺達しか動けねぇんだ!何がなんでも、やるしかねぇ!!」
俺達は身構える。
しかし、先生は右手を、アルベルトさんは左手を、俺は両腕足を痛めている。
「…ここまで勝算がない戦いは久しぶりだな…」
「これ以上にヤバい状況あります…?」
「吹いてんじゃねえ…初めての間違えだろうが」
俺達は何故か知らないが、軽口を叩いていた。
ほんの一縷の望みを見つけ出す…!
そう思い、全身全霊を懸けようとしたその時
〖待ちなさい。アセロ=イエロ〗
そんな絶望的な状況で現れたのは…ナムルスだった。
〖む…貴女は…!?〗
〖ナムルスよ。今はそう名乗ってるわ…今は退きなさい〗
〖今は退け…?交渉とは、同等の者同士で行う者だぞ…〗
ナムルスの言葉を受け、殺気を膨れさせるアセロ=イエロだ。
〖舐めないで。坊や〗
だがそれ以上の殺気で黙らせるナムルス。
その手には…黄金の鍵が握られていた。
〖 バカな…それは…!?〗
〖今の私でも、貴方と刺し違える事くらい出来るわ…たかが人間辞めた程度で、イキがらないで〗
黄金の鍵を見て、恐れるアセロ=イエロ。
〖…よかろう。『■■■』〗
何か呟いた途端、突然世界が真っ赤に染る。
「何しやがったテメェ!?」
「…フィジテが結界に覆われた…!?」
俺達は、突然の事に驚きながらアセロ=イエロを睨みつける。
〖さらばだ愚者の民草共よ。精々、残り少ない生を謳歌するがいい〗
そう言って、姿を消したアセロ=イエロ。
「逃げやがったか、アイツ…!?」
〖行ったわね…。ふん、こんなハリボテでも役に立つわね〗
「ハリボテ!?え!?ハッタリだったのか!?」
〖当然じゃない〗
知るか、そんな当然。
「フィジテを囲って一体何を…!?」
〖簡単よ。【メギドの火】を使ってこの街を焼き払うのよ〗
「「【メギドの火】!?」」
ナムルス曰く、俺達が追っていた【メギドの火】は、劣化レプリカであり、オリジナルの【メギドの火】は、空にある【炎の船】の主砲らしい。
【炎の船】とは、街を囲ってその中を焼き払う、対国家用制圧戦略兵器らしい。
そして…それを放つまで、あと2日半。
つまり明後日の正午までは猶予がある。
それまでに、倒す算段をつけなければならない。
そして…唯一倒せる手段を持っているのは、グレン先生だけだとの事。
「は?俺だけ?どういう事だ?」
〖そんなの私が聞きたいわよ。一体どうしたら、あのアセロ=イエロを倒せるのよ?〗
「また訳わかんねぇ事を…いい加減にしろよ、偽ルミア」
先生が疲れたように呟く。
しかし、ナムルスは態度を変える事は無く、
〖言ったでしょう?…これは試練よ、グレン。貴方はこれから起こる災厄を生き延びなければならない。未来と…そして過去の為に〗
そう言い残して、ナムルスも消えた。
過去の為に…か。
相変わらず訳分からないが、生き延びる事は出来たらしい。
残された俺達に残ったのは…疲労感と絶望感だけだった。
どこにアルタイル君挟もうかなって思ったんですが、ラザール戦も、核熱点火式の解呪も、アセロ=イエロ戦も、どれにも参加させないという、荒業を使いました。
ここから10巻に突入しますよ!
それでは失礼します。
ありがとうございました。