名前、滅茶苦茶考えましたよ!
カッコイイやつ!
本当に疲れましたよ…技名。
それではよろしくお願いします。
〖心底呆れたわ。まあ、どうでもいいけど。そこでウジウジしてるくらいなら、せめて、この戦いの行く末を見届けなさい。それが、せめてもの貴方達の義務よ〗
学院の地下迷宮、そこに避難している生徒達に、ナムルスが見せたものは…
「フッ!」
私は頭上に鍵を掲げ、ぐるりと捻る。
同位相高次元領域から無限エネルギーを放出する。
その勢いは、局地的に【メギドの火】にも匹敵するのだが
〖フハハハハハ!〗
アセロ=イエロは手刀で切り裂きながら、接近してくる。
「クッ!」
私は斜めに【銀の鍵】を振るう。
そうすると、剣閃に沿って、空間が裂ける。
空間ごと切り裂く、空間断絶攻撃だ。
流石のアセロ=イエロもそれは躱し
〖『■■■』〗
代わりに、
闇で作られた数十本の剣が、私の頭上に殺到する。
「まだです」
私は【銀の鍵】を頭上に掲げて、捻る。
そこの出来た穴に、剣が吸収されて行く。
しかしその隙を狙われ、アセロ=イエロに背後を取られる。
私はすぐに鍵を捻る。
そうすると、私とアセロ=イエロの立ち位置が逆になる。
今度は私が背後を取った。
その隙に空間断絶攻撃を仕掛けるも、あっという間に離脱される。
だったら…!
「貴方を異次元に追放します!堕ちて!!」
私は床を突いて捻る。
そうすると、空間の全てがひび割れ、虚無の穴へと落ちていく。
しかし、アセロ=イエロ自身は、落ちなかった。
「ッ!?存在が大き過ぎる…!?」
そもそも【銀の鍵】は、物理的に作用してるのではなく、肉体・霊魂・精神をこの世界の縁から切り離して、別次元に追放している。
だから当然、意思と力があれば抵抗出来る。
それでも、全力だったのに…!?
〖ふっ…。気付いているのか?その見るも悍ましいその姿を…〗
私はこの時まだ気付いていなかった。
背中に、ナムルスさんと同じ羽が、生えてきてきた事に。
〖理解しているのか?その【銀の鍵】を振るう度に、人間を離れていくのだ。1度、己の魂と向き合うがいい…!〗
気付くとそこは、何も無い場所に立っていた。
私は直感的に、ここが私の精神世界だと認識した。
そして目の前には…
無数の鎖に縛られた自分は、まるで十字架に磔された聖女のようで…。
不意に、1本の鎖が千切れ、自分が目を覚ます。
〖ようやく会えたね…もう1人の私。でも、貴女の役目はもうおしまい。…後は私に任せて?〗
ほんの僅かの、阿頼耶の時の出来事。
でも、確かに私は、忌まわしい自分の出会った。
〖理解しただろう?その鍵を使い続けると、貴女という存在が消える。例え私を滅ぼしたとしても、その時には、自分は存在しない。己が身を犠牲にして、他者の幸福を願う事に、何の意味がある?それで本当に満足なのか?〗
私の中の何かが、ヒビ割れそうになる。
それでも、それには目をくれず、私は…!
「いいんです。私のせいで皆が傷ついた。…だから、私という存在1つで、皆が救われるなら…この身を捧げます。…それが私の真の願いです」
そう宣言しながら、私は【銀の鍵】を掲げる。
それでいいんだよ、って誰かが囁いた気がした。
更に【銀の鍵】の輝きが増す。
同時に、私自身が希薄になっていく喪失感。
それでも…私は…!
(「ダメだよ、ルミア」)
(「『
愛する誰かの声が聞こえた気がするが、気のせいかな。
〖 フハハハハ!〗
アセロ=イエロが、手をクロスさせて刃を放つ。
私は其れを吸い込もうとして…出来なかった。
処理しきれなかった分が、私を切り裂く。
「くぅ…!」
〖どうした?その程度か?偽りの空の巫女よ!〗
「まだまだ…!」
私はアセロ=イエロの周りの空間を一気に圧縮しようとするも、それも叶わず。
私の空間圧縮を力ずくで破られる。
「ゴホッ!?」
その反動で、壁まで吹き飛ばされる。
〖やはりその程度か。気付いているか?お前の【銀の鍵】だが、時が経つほどに、ちからが弱まっているぞ?〗
「どうして…!?」
気づいてはいた。
その輝きが、どんどんと弱まっていた事には。
どれだけ願っても答えてくれない。
「うぁ…あぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は最後の力を振り絞って振り下ろす。
だが…その輝きは遂に失われてしまった。
〖終わりだ〗
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」
アセロ=イエロは無数の剣を放ち、私の手足と羽を貫き、磔にした。
「どう…して…」
頑張ったのに…禁忌の力にまで手を出したのに。
どうして…誰も守れないの…!?
悲嘆にくれていると
〖ふむ、地上もようやく決着か〗
その言葉に思わず顔を上げる。
そこに映っていたのは
「あ、あぁ…そんな…」
学院が崩壊していく光景だった。
〖さて、終幕だ〗
アセロ=イエロがモノリスを操作した途端、突然【炎の船】全体が震える。
「まさか…!?」
〖そうだ。あの忌々しい【ルシエルの聖域】は消えた。故に【メギドの火】を以て、フィジテを灰燼に帰すのだ。…貴女はそこで己の無力さを噛み締めるがいい〗
「い…嫌ァァァァァァァァァ!!!やめてぇェェェェェェェ!!!」
私の懇願も虚しく、遂に【メギドの火】が放たれてしまった。
私の中の何かが砕けた気がした。
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
あまりの絶望感、あまりの喪失感に…もう何も分からない。
何やらアセロ=イエロが呟いてるし、近づいてくるけど…もういい。
しかし、そんな私の目に
「…!?」
信じられないものが映っていた。
〖ん?…バ!?馬鹿な!?何故だ!?あの忌まわしき【ルシエルの聖域】は、崩壊したはず!なのに何故残っている!?何故滅びずにいられるぅぅぅ!!〗
灰燼に帰したはずのフィジテは、無傷だった。
〖人間だったくせに…人間を舐めすぎなのよ、貴方。そして、その傲慢さと愚かさが…貴方を敗北させる〗
何時の間にか、そこにはナムルスさんがいた。
「な、ナムルスさん…!?」
〖耳を澄ましなさい、ルミア。聞こえるはずよ。彼らの声が〗
「え?…!?」
「ルミアって奴は、こんな情けない俺達の為に…命を捧げる覚悟で戦って…!」
「私達を救おうと必死になってる…!あんな悲しそうな顔で!!!」
「あの子は心から望んで、全てを捧げられる聖人じゃない!普通だった!聖人でも狂人でもない!ただ、人とは違う力を持っただけの…普通の子だったの!!!」
「そんな子に全部背負わせて、のうのうと生きるなんて…情けなさすぎて、死んだって出来ない!!」
「だから…もう遅いかもしれないけど…私達も戦うわ!」
1組のクライス君とエナさんの声が聞こえる。
「ルミアァァァァァ!!!頑張れぇぇぇぇぇ!!!」
「負けるなぁぁぁぁぁ!!!」
「俺達だって頑張るからさぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「異能者!?それがどうした!?クソくらえだ!!!」
「また皆で、一緒に通いましょう!!!」
2組の皆の声が聞こえる。
心に…魂に…皆の思いが響く。
「あ、あぁ…」
涙がこぼれる。
その時、いつもとは違う、慈愛に満ちたナムルスさんの声が聞こえる。
〖いい加減素直になりなさい、ルミア。
(「『
また、大好きなあの人の声が聞こえる。
もう、誤魔化せない。
だって…強烈に思ってしまったのだから。
とうとう…泣きじゃくりながら、言ってしまう。
「…嫌だ!そんなの嫌だ!自分を失いたくない!皆と一緒に居られないなんて嫌!帰りたい…帰りたいよぉ!!アイル君と、先生と、システィと、リィエルと…そして皆と!!あの大好きな学院で!!ずっと一緒にいたいよぉ!!!」
それこそが…私自身の歪みだった。
私は生まれてきてはいけなかった。
私は聖女でなくちゃいけない…なるべきなんだ。
そう思っては来たが…本当に滅私奉公の聖女様だったか?
答えは…否だ。
人並みの幸せなんて諦めないといけない…そう思っても無理だった。
だって…これまでの生活で、それは滲み出てたんだから。
ダラダラと生徒を続け、決断を先延ばしにして、去る事が出来なかった学院。
幸せは諦めないと、そう思いながら、何時までもアイル君に甘えていた自分。
どこまでも、自分の幸せを諦めきれない、醜い自分。
だからせめて、いざと言う時は、この身を犠牲にして、聖女になろう…そう思ってても、結局出来なかった。
もう認めよう、私はいい子でも強い子でも無い。
私は…
自分の醜さから逃げ続けた、普通の女の子だ。
向き合おう、戦おう。
自分の弱さ、醜さと。
そして探すんだ、私が幸せになる方法を。
考えて、立ち向かって、戦って…勝ち取るんだ。
〖それでいいのよ…。貴女はあの子とは違うんだから…。さあ、ルミア。言ってみて、本当の願いを〗
「…え?」
〖言ったでしょう?その【鍵】は魔術よりも、もっと旧い力。魔術が、人の純粋たる願いを叶えるだけだった頃の…【原初の力】。理性と理屈で操る魔術がとは違うわ。願いと本能で操る魔法よ。今の貴女なら、大丈夫よ〗
私はゆっくりと鍵を抱きしめ、心の底からの願いを口にする。
「『皆と一緒に生きたい…大好きな、この優しい世界で』…」
その輝きは今までで一番の輝きで
(ああ、残念。結局私は貴女になれなかったのね。さようなら。またいつか)
誰かの声が聞こえた瞬間、【銀の鍵】が砕け散った。
静寂が包む中、アセロ=イエロの低い嗤い声が響いた。
〖ククク…消えたぞ?【銀の鍵】が。一体私とどうやって戦う気だ?〗
その言葉に反論したのは、ナムルスさんだ。
〖バカね、もういいのよ。…だって必要ないから〗
その時、私の頭上に巨大な門が現れ、開かれる。
彼方と此方を繋ぐ一本道を、駆け抜ける赤き彗星。
「…だあぁぁぁぁぁぁらあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その気迫は、全てをねじ伏せ。
その速さは、全てを置き去り。
その全てを以て、アセロ=イエロという理不尽を、全力で吹き飛ばした。
「ルミアァァァァァ!!!」
「遅れてごめん!!!」
「ん!後は任せて!!!」
先生が、システィが、リィエルが駆けつけてくれて。
そして、最初に落ちてきた彗星は、
「…ッ!!!」
直ぐにこっちに振り向いたと思った時には、抱きしめられていた。
「…『何処にも行かないで』なんて言いながら、お前がいなくなるなよ…馬鹿野郎」
そんな彼の声はすごく優しく、暖かくて、頼もしかった。
ああ…私が一番聞きたかった声。
一番、感じたかった温もり。
一番、大好きな匂い。
一番、会いたかった人。
一番…心から愛してる人。
「まあいい…助けに来たぜ、ルミア」
「アイル君…!!!」
彗星の正体は、アルタイル=エステレラだった。
〖何故だ…!?お前達は、次元の狭間に追放したはず!?一体何故だぁぁぁ!?〗
さっきの不意打ちを食らっても、何事もなく立ち上がったアセロ=イエロが、慌てている。
うるせぇな、何でもいいだろうが。
そんな事よりも…
「テメェ、覚悟出来てんだろうなぁ?…ぶち殺す」
全力で殺気を叩きつけながら、睨む。
俺の殺気に当てられてか、僅かに後ずさるアセロ=イエロ。
「ルミアは休んでろ!アルタイル、白猫、リィエル!行けるな!」
俺達は先生の号令の元、戦闘態勢に入る。
「私も一緒に…!私の力、受け取って!!」
ルミアの両手から、黄金の光が溢れ出し、俺達に降り注ぎ、宿っていく。
「これは…!?」
「【
〖バカな!!?何故その力をぉ!!?〗
何やら騒いでるが、無視をする。
「よく分かんねぇけど…!」
「ああ、力が漲ってくる!うおぉぉぉぉ!!」
そのまま先生が、拳を振り上げ
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
リィエルが、大剣を錬成して突撃し
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は槍を生成して、突撃する。
先陣を切った先生の拳と、アセロ=イエロの拳が衝突。
空間を歪ませるほどの衝撃を撒き散らして
〖なん…だとぉ…!!?〗
「…へっ…」
アセロ=イエロと拮抗していた。
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
俺とリィエルが同時に、それぞれ顔面とボディに、全力の一撃を叩き込む。
空間をバラバラに破壊するような、衝撃波と衝撃音を撒き散らしながら、アセロ=イエロを吹き飛ばす。
〖ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?〗
「『集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えよ』!『
システィーナの追撃で放つ風の破城槌が、周りのモノリスごと、アセロ=イエロを吹き飛ばす。
〖何故!?何故だぁ!?何故我が神鉄の身体をぉ!!?〗
「うるせぇ!!とっとと、くたばりやがれぇ!!!」
俺の槍が、先生の拳が、リィエルの大剣が、システィーナの呪文が、狼狽えるアセロ=イエロに、容赦なく叩き付けられる。
〖オノレェェェェェ!!〗
アセロ=イエロは、手刀の斬撃で俺達を追い払う。
〖人間共め!!何故貴様ら如きが食い下がれる!?私は…人間を超越したのだぞ!!なのに何故…!?私には【
また出てきたな、
だけど…関係ねぇ。
「【
「…バカ騒ぎは、これで終いだ…『
先生が銃を頭上に掲げ、俺はゾーンに入る。
〖何だそれは…?貴様の切り札か?〗
「ああ…お前を倒す、魔法の弾丸さ」
その言葉と漂わせる不穏な魔力が、狼狽えていたアセロ=イエロを、正気にさせる。
極限まで張り詰めた緊張が、大気を震わせる。
「…ッ!シッ!!!」
その緊張を破ったのは俺だった。
全力の踏み込みと刺突。
それはまさに閃光の如く速さだったが、見切られて躱される。
しかしそれは…織り込み済み。
「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』」
その場で、すぐに振り向き、詠唱して構える。
赤い線が目に映る。
先生が銃弾を放つも、神鉄に弾かれる。
しかし、先生は余裕の笑み。
それもそのはず
「かかったな…『
〖なッ!!!?〗
先生はわざと一発目は弾かせたのだ。
今だ、踏み込め!
俺は一気に踏み込み、その魔槍を解放する。
「「
「【
「【
俺達の切り札が、アセロ=イエロに炸裂した。
ルミアの本当の気持ちに、アルタイル君は気付いていた訳ではありません。
ただ、無理してるっていうのには気付いていました。
だからこそ、『命を代えても』と言って、無理矢理自分に言い聞かせていたルミアを止める為に言いました。
それが、彼女の最後の楔のなるように願いながら。
そして何気なくゾーンに入っているアルタイル君。
黒バスの火神みたいなものです。
ゾーンに入らないと、使えない必殺技です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。