ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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遂に!アルタイル君の一撃がお披露目です!
名前、滅茶苦茶考えましたよ!
カッコイイやつ!
本当に疲れましたよ…技名。
それではよろしくお願いします。


最悪の3日間編第7話

〖心底呆れたわ。まあ、どうでもいいけど。そこでウジウジしてるくらいなら、せめて、この戦いの行く末を見届けなさい。それが、せめてもの貴方達の義務よ〗

 

学院の地下迷宮、そこに避難している生徒達に、ナムルスが見せたものは…

 

 

 

 

「フッ!」

 

私は頭上に鍵を掲げ、ぐるりと捻る。

同位相高次元領域から無限エネルギーを放出する。

その勢いは、局地的に【メギドの火】にも匹敵するのだが

 

〖フハハハハハ!〗

 

アセロ=イエロは手刀で切り裂きながら、接近してくる。

 

「クッ!」

 

私は斜めに【銀の鍵】を振るう。

そうすると、剣閃に沿って、空間が裂ける。

空間ごと切り裂く、空間断絶攻撃だ。

流石のアセロ=イエロもそれは躱し

 

〖『■■■』〗

 

代わりに、古代魔術(エンシャント)を唱える。

闇で作られた数十本の剣が、私の頭上に殺到する。

 

「まだです」

 

私は【銀の鍵】を頭上に掲げて、捻る。

そこの出来た穴に、剣が吸収されて行く。

しかしその隙を狙われ、アセロ=イエロに背後を取られる。

私はすぐに鍵を捻る。

そうすると、私とアセロ=イエロの立ち位置が逆になる。

今度は私が背後を取った。

その隙に空間断絶攻撃を仕掛けるも、あっという間に離脱される。

だったら…!

 

「貴方を異次元に追放します!堕ちて!!」

 

私は床を突いて捻る。

そうすると、空間の全てがひび割れ、虚無の穴へと落ちていく。

しかし、アセロ=イエロ自身は、落ちなかった。

 

「ッ!?存在が大き過ぎる…!?」

 

そもそも【銀の鍵】は、物理的に作用してるのではなく、肉体・霊魂・精神をこの世界の縁から切り離して、別次元に追放している。

だから当然、意思と力があれば抵抗出来る。

それでも、全力だったのに…!?

 

〖ふっ…。気付いているのか?その見るも悍ましいその姿を…〗

 

私はこの時まだ気付いていなかった。

背中に、ナムルスさんと同じ羽が、生えてきてきた事に。

 

〖理解しているのか?その【銀の鍵】を振るう度に、人間を離れていくのだ。1度、己の魂と向き合うがいい…!〗

 

気付くとそこは、何も無い場所に立っていた。

私は直感的に、ここが私の精神世界だと認識した。

そして目の前には…()()1()()()()()

無数の鎖に縛られた自分は、まるで十字架に磔された聖女のようで…。

不意に、1本の鎖が千切れ、自分が目を覚ます。

 

〖ようやく会えたね…もう1人の私。でも、貴女の役目はもうおしまい。…後は私に任せて?〗

 

ほんの僅かの、阿頼耶の時の出来事。

でも、確かに私は、忌まわしい自分の出会った。

 

〖理解しただろう?その鍵を使い続けると、貴女という存在が消える。例え私を滅ぼしたとしても、その時には、自分は存在しない。己が身を犠牲にして、他者の幸福を願う事に、何の意味がある?それで本当に満足なのか?〗

 

私の中の何かが、ヒビ割れそうになる。

それでも、それには目をくれず、私は…!

 

「いいんです。私のせいで皆が傷ついた。…だから、私という存在1つで、皆が救われるなら…この身を捧げます。…それが私の真の願いです」

 

そう宣言しながら、私は【銀の鍵】を掲げる。

それでいいんだよ、って誰かが囁いた気がした。

更に【銀の鍵】の輝きが増す。

同時に、私自身が希薄になっていく喪失感。

それでも…私は…!

 

(「ダメだよ、ルミア」)

 

(「『()()()()()()』って言い聞かせないと出来ない使命なら、そんなもの捨てちまえ」)

 

愛する誰かの声が聞こえた気がするが、気のせいかな。

 

〖 フハハハハ!〗

 

アセロ=イエロが、手をクロスさせて刃を放つ。

私は其れを吸い込もうとして…出来なかった。

処理しきれなかった分が、私を切り裂く。

 

「くぅ…!」

 

〖どうした?その程度か?偽りの空の巫女よ!〗

 

「まだまだ…!」

 

私はアセロ=イエロの周りの空間を一気に圧縮しようとするも、それも叶わず。

私の空間圧縮を力ずくで破られる。

 

「ゴホッ!?」

 

その反動で、壁まで吹き飛ばされる。

 

〖やはりその程度か。気付いているか?お前の【銀の鍵】だが、時が経つほどに、ちからが弱まっているぞ?〗

 

「どうして…!?」

 

気づいてはいた。

その輝きが、どんどんと弱まっていた事には。

どれだけ願っても答えてくれない。

 

「うぁ…あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

私は最後の力を振り絞って振り下ろす。

だが…その輝きは遂に失われてしまった。

 

〖終わりだ〗

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

アセロ=イエロは無数の剣を放ち、私の手足と羽を貫き、磔にした。

 

「どう…して…」

 

頑張ったのに…禁忌の力にまで手を出したのに。

どうして…誰も守れないの…!?

悲嘆にくれていると

 

〖ふむ、地上もようやく決着か〗

 

その言葉に思わず顔を上げる。

そこに映っていたのは

 

「あ、あぁ…そんな…」

 

学院が崩壊していく光景だった。

 

〖さて、終幕だ〗

 

アセロ=イエロがモノリスを操作した途端、突然【炎の船】全体が震える。

 

「まさか…!?」

 

〖そうだ。あの忌々しい【ルシエルの聖域】は消えた。故に【メギドの火】を以て、フィジテを灰燼に帰すのだ。…貴女はそこで己の無力さを噛み締めるがいい〗

 

「い…嫌ァァァァァァァァァ!!!やめてぇェェェェェェェ!!!」

 

私の懇願も虚しく、遂に【メギドの火】が放たれてしまった。

私の中の何かが砕けた気がした。

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

あまりの絶望感、あまりの喪失感に…もう何も分からない。

何やらアセロ=イエロが呟いてるし、近づいてくるけど…もういい。

しかし、そんな私の目に

 

「…!?」

 

信じられないものが映っていた。

 

〖ん?…バ!?馬鹿な!?何故だ!?あの忌まわしき【ルシエルの聖域】は、崩壊したはず!なのに何故残っている!?何故滅びずにいられるぅぅぅ!!〗

 

灰燼に帰したはずのフィジテは、無傷だった。

 

〖人間だったくせに…人間を舐めすぎなのよ、貴方。そして、その傲慢さと愚かさが…貴方を敗北させる〗

 

何時の間にか、そこにはナムルスさんがいた。

 

「な、ナムルスさん…!?」

 

〖耳を澄ましなさい、ルミア。聞こえるはずよ。彼らの声が〗

 

「え?…!?」

 

 

「ルミアって奴は、こんな情けない俺達の為に…命を捧げる覚悟で戦って…!」

 

「私達を救おうと必死になってる…!あんな悲しそうな顔で!!!」

 

「あの子は心から望んで、全てを捧げられる聖人じゃない!普通だった!聖人でも狂人でもない!ただ、人とは違う力を持っただけの…普通の子だったの!!!」

 

「そんな子に全部背負わせて、のうのうと生きるなんて…情けなさすぎて、死んだって出来ない!!」

 

「だから…もう遅いかもしれないけど…私達も戦うわ!」

 

1組のクライス君とエナさんの声が聞こえる。

 

 

「ルミアァァァァァ!!!頑張れぇぇぇぇぇ!!!」

 

「負けるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

「俺達だって頑張るからさぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「異能者!?それがどうした!?クソくらえだ!!!」

 

「また皆で、一緒に通いましょう!!!」

 

2組の皆の声が聞こえる。

心に…魂に…皆の思いが響く。

 

 

「あ、あぁ…」

 

涙がこぼれる。

その時、いつもとは違う、慈愛に満ちたナムルスさんの声が聞こえる。

 

〖いい加減素直になりなさい、ルミア。()()()()()()()()()()

 

(「『()()()()()()』って言い聞かせないと出来ない使命なら、そんなもの捨てちまえ」)

 

また、大好きなあの人の声が聞こえる。

もう、誤魔化せない。

だって…強烈に思ってしまったのだから。

とうとう…泣きじゃくりながら、言ってしまう。

 

「…嫌だ!そんなの嫌だ!自分を失いたくない!皆と一緒に居られないなんて嫌!帰りたい…帰りたいよぉ!!アイル君と、先生と、システィと、リィエルと…そして皆と!!あの大好きな学院で!!ずっと一緒にいたいよぉ!!!」

 

それこそが…私自身の歪みだった。

私は生まれてきてはいけなかった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そう思ってきた。

私は聖女でなくちゃいけない…なるべきなんだ。

そう思っては来たが…本当に滅私奉公の聖女様だったか?

答えは…否だ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

人並みの幸せなんて諦めないといけない…そう思っても無理だった。

だって…これまでの生活で、それは滲み出てたんだから。

ダラダラと生徒を続け、決断を先延ばしにして、去る事が出来なかった学院。

幸せは諦めないと、そう思いながら、何時までもアイル君に甘えていた自分。

どこまでも、自分の幸せを諦めきれない、醜い自分。

だからせめて、いざと言う時は、この身を犠牲にして、聖女になろう…そう思ってても、結局出来なかった。

もう認めよう、私はいい子でも強い子でも無い。

私は…()()()()()()だ。

自分の醜さから逃げ続けた、普通の女の子だ。

向き合おう、戦おう。

自分の弱さ、醜さと。

そして探すんだ、私が幸せになる方法を。

考えて、立ち向かって、戦って…勝ち取るんだ。

 

〖それでいいのよ…。貴女はあの子とは違うんだから…。さあ、ルミア。言ってみて、本当の願いを〗

 

「…え?」

 

〖言ったでしょう?その【鍵】は魔術よりも、もっと旧い力。魔術が、人の純粋たる願いを叶えるだけだった頃の…【原初の力】。理性と理屈で操る魔術がとは違うわ。願いと本能で操る魔法よ。今の貴女なら、大丈夫よ〗

 

私はゆっくりと鍵を抱きしめ、心の底からの願いを口にする。

 

「『皆と一緒に生きたい…大好きな、この優しい世界で』…」

 

その輝きは今までで一番の輝きで

 

(ああ、残念。結局私は貴女になれなかったのね。さようなら。またいつか)

 

誰かの声が聞こえた瞬間、【銀の鍵】が砕け散った。

静寂が包む中、アセロ=イエロの低い嗤い声が響いた。

 

〖ククク…消えたぞ?【銀の鍵】が。一体私とどうやって戦う気だ?〗

 

その言葉に反論したのは、ナムルスさんだ。

 

〖バカね、もういいのよ。…だって必要ないから〗

 

その時、私の頭上に巨大な門が現れ、開かれる。

彼方と此方を繋ぐ一本道を、駆け抜ける赤き彗星。

 

「…だあぁぁぁぁぁぁらあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その気迫は、全てをねじ伏せ。

その速さは、全てを置き去り。

その全てを以て、アセロ=イエロという理不尽を、全力で吹き飛ばした。

 

「ルミアァァァァァ!!!」

 

「遅れてごめん!!!」

 

「ん!後は任せて!!!」

 

先生が、システィが、リィエルが駆けつけてくれて。

そして、最初に落ちてきた彗星は、

 

「…ッ!!!」

 

直ぐにこっちに振り向いたと思った時には、抱きしめられていた。

 

「…『何処にも行かないで』なんて言いながら、お前がいなくなるなよ…馬鹿野郎」

 

そんな彼の声はすごく優しく、暖かくて、頼もしかった。

ああ…私が一番聞きたかった声。

一番、感じたかった温もり。

一番、大好きな匂い。

一番、会いたかった人。

一番…心から愛してる人。

 

「まあいい…助けに来たぜ、ルミア」

 

「アイル君…!!!」

 

彗星の正体は、アルタイル=エステレラだった。

 

 

 

〖何故だ…!?お前達は、次元の狭間に追放したはず!?一体何故だぁぁぁ!?〗

 

さっきの不意打ちを食らっても、何事もなく立ち上がったアセロ=イエロが、慌てている。

うるせぇな、何でもいいだろうが。

そんな事よりも…

 

「テメェ、覚悟出来てんだろうなぁ?…ぶち殺す」

 

全力で殺気を叩きつけながら、睨む。

俺の殺気に当てられてか、僅かに後ずさるアセロ=イエロ。

 

「ルミアは休んでろ!アルタイル、白猫、リィエル!行けるな!」

 

俺達は先生の号令の元、戦闘態勢に入る。

 

「私も一緒に…!私の力、受け取って!!」

 

ルミアの両手から、黄金の光が溢れ出し、俺達に降り注ぎ、宿っていく。

 

「これは…!?」

 

「【王者の法(アルス·マグナ)】!今の私は、触れなくても皆に付与できるの!」

 

〖バカな!!?何故その力をぉ!!?〗

 

何やら騒いでるが、無視をする。

 

「よく分かんねぇけど…!」

 

「ああ、力が漲ってくる!うおぉぉぉぉ!!」

 

そのまま先生が、拳を振り上げ

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

リィエルが、大剣を錬成して突撃し

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は槍を生成して、突撃する。

 

先陣を切った先生の拳と、アセロ=イエロの拳が衝突。

空間を歪ませるほどの衝撃を撒き散らして

 

〖なん…だとぉ…!!?〗

 

「…へっ…」

 

アセロ=イエロと拮抗していた。

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

俺とリィエルが同時に、それぞれ顔面とボディに、全力の一撃を叩き込む。

空間をバラバラに破壊するような、衝撃波と衝撃音を撒き散らしながら、アセロ=イエロを吹き飛ばす。

 

〖ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?〗

 

「『集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えよ』!『撃て(ツヴァイ)』!!『撃て(ドライ)』!!!」

 

システィーナの追撃で放つ風の破城槌が、周りのモノリスごと、アセロ=イエロを吹き飛ばす。

 

〖何故!?何故だぁ!?何故我が神鉄の身体をぉ!!?〗

 

「うるせぇ!!とっとと、くたばりやがれぇ!!!」

 

俺の槍が、先生の拳が、リィエルの大剣が、システィーナの呪文が、狼狽えるアセロ=イエロに、容赦なく叩き付けられる。

 

〖オノレェェェェェ!!〗

 

アセロ=イエロは、手刀の斬撃で俺達を追い払う。

 

〖人間共め!!何故貴様ら如きが食い下がれる!?私は…人間を超越したのだぞ!!なのに何故…!?私には【禁忌教典(アカシックレコード)】を、大導師様に捧げる使命があるのだ!!その崇高な使命の、邪魔をするなァァ!!!〗

 

また出てきたな、禁忌教典(アカシックレコード)

だけど…関係ねぇ。

 

「【禁忌教典(アカシックレコード)】だが、何だが知らねぇがな…」

 

「…バカ騒ぎは、これで終いだ…『0の専心(セット)』」

 

先生が銃を頭上に掲げ、俺はゾーンに入る。

 

〖何だそれは…?貴様の切り札か?〗

 

「ああ…お前を倒す、魔法の弾丸さ」

 

その言葉と漂わせる不穏な魔力が、狼狽えていたアセロ=イエロを、正気にさせる。

極限まで張り詰めた緊張が、大気を震わせる。

 

「…ッ!シッ!!!」

 

その緊張を破ったのは俺だった。

全力の踏み込みと刺突。

それはまさに閃光の如く速さだったが、見切られて躱される。

しかしそれは…織り込み済み。

 

「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』」

 

その場で、すぐに振り向き、詠唱して構える。

赤い線が目に映る。

先生が銃弾を放つも、神鉄に弾かれる。

しかし、先生は余裕の笑み。

それもそのはず

 

「かかったな…『0の専心(セット)』!」

 

〖なッ!!!?〗

 

先生はわざと一発目は弾かせたのだ。

今だ、踏み込め!

俺は一気に踏み込み、その魔槍を解放する。

 

「「固有魔術(オリジナル)…」」

 

「【愚者の一刺し(ペネトレイター)ァァァァァァァァ】!!!!!!」

 

「【果てへと手向ける彼岸の槍(アリアドネ·リコリス)ゥゥゥゥゥゥゥゥ】!!!!!!」

 

俺達の切り札が、アセロ=イエロに炸裂した。




ルミアの本当の気持ちに、アルタイル君は気付いていた訳ではありません。
ただ、無理してるっていうのには気付いていました。
だからこそ、『命を代えても』と言って、無理矢理自分に言い聞かせていたルミアを止める為に言いました。
それが、彼女の最後の楔のなるように願いながら。
そして何気なくゾーンに入っているアルタイル君。
黒バスの火神みたいなものです。
ゾーンに入らないと、使えない必殺技です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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