この話、イヴの扱いがかなり高待遇になっています。
ええ、全ては20巻の良さのせいです。
それではよろしくお願いします。
「このタイミングで集会なんて…唐突よね?」
「そうだよね。前期試験中なのに…何をやるんだろうね?」
システィーナとルミアの話を聞きながら、俺はぼんやり考え事をする。
それは…この間から同居してるイヴさん…イヴ先生から、つい昨日聞いた事だ。
(あれは、本当なのか…?)
中々ショッキングな内容だった為、半信半疑だが…そんな事を考えてると、見慣れない男が壇上に上がっていた。
いかにも上流階級です、と言わんばかりの風体だが、気に入らない面してる。
周りも見慣れない人物の登場に、ザワついていると
「静粛に。…唐突だが、学院長、リック=ウォーケンは、昨日更迭処分となった。本日からはこの【マキシム=ティラーノ】が、本学院の学院長である。心するように」
周りが余りにも唐突な話に、沈黙する。
(マジだったのか…!)
俺がイヴ先生から聞いた話とは、これの事だ。
そして、一気に混乱と動揺が爆発する。
「黙りたまえ!!!」
そんな生徒達を一喝して黙らせると、更に畳み掛けてきた。
「君達に一言言おう。先の騒動で、この学院をこれ程までに損壊させたのは、ひとえに諸君らが根本的に、無能なせいだ。今の有様は、君達の怠惰と惰弱さが招いたのだよ」
…へぇ…言ってくれる。
その後も朗々と、ウザったらしく語る自分の改革案。
簡単にまとめると、戦闘に直結しないコマを減らし、直結するコマを大幅に増やす、という事らしい。
挙句の果てには、自分の私塾の生徒を【模範クラス】と称して、ここを目指す事を規範とし、全面的服従を強要してきた。
…ハッ、笑える。
その内容に、生徒だけでは無く、教師陣まで猛反論する始末。
「…納得出来ません。マキシム学院長。一体何の権利があって、根本から破壊する様なコトが、出来るのですか?このような横暴が、本当に許されるとでも?」
「君が音に聞くリゼ=フィルマーだな?言っておくが、今の理事会は全会一致で私を支持している。君の糾弾なぞ痛くも痒くもないのだよ。覚悟しておきたまえ。私が学院長になった以上、生徒会執行部なぞ、即刻叩き潰してしんぜよう」
「…ッ!?」
マキシムは、噛み付いたリゼ先輩の糾弾を一蹴して、混沌とする場をほくそ笑む。
「ちょっと待ったーーーー!!!」
そんな中、ついにあの男が動き出す。
…妙にカクカクした動きだな。
もしかして…あれ、【
相変わらずロクでなしだな!
…まあ、本物でもああするか。
決闘申し込んでるし…あ、ズラだったんだ。
なるほど…ここは…煽る!!!
「ククク…アハハハハハハハハハ!!!ズラかよ!!!そりゃ脳みそ腐ってあんな事言うわな!!!あんなもん被ってりゃあよぉ!!!ズラ外せば、少しは風通し良くなるんじゃねぇか〜!!!」
俺の徹底的な煽りをキッカケに、会場中が笑いに包まれる。
Yes…計画通り。
とりあえず、隣でアルカイックスマイルを浮かべるルミアは、無視しよう。
そのとんでもない羞恥プレイに、顔を真っ赤にして怒るマキシム。
しかし、何を思ったか、逆に冷静になった。
「いいだろう…この行く末、お望み通り、決闘で決めようではないか!」
「ほう、具体的には?」
「ここで少々話は変わるが聞きたまえ。実はな…改革の一環で、【裏学院】を開放するつもりなんだよ」
【裏学院】…それは、この学院の関係者なら、誰もが知っている言葉だろう。
次元の壁を越えた異空間に作られたもう一つの学院校舎。
それが【裏学院】だ。
初代学院長である、アリシア3世が作ったはいいが、その直後に崩御、そこに至る鍵は永遠に失われた…筈だった。
しかしこの男は…幻の24冊目の【アリシア3世の手記】を入手、それこそが鍵あると言ったのだ。
「内容は【生存戦】。私の模範クラスと、君の指導したクラスでどうかな?日時はそうだな…前期試験が終わる2週間後にしようか。もし君が勝てば、君の態度は不問とし、改革案も取り下げよう。だが私が勝てば…君には辞職してもらう」
皆が固唾を飲んで見守る中、突然煙が立ち上る。
何事かと動揺していると、煙の中からグレン先生が、現れる。
…足元のガラクタはきっと、さっきまでの複製人形なのだろう。
という事は…本物か。
先生は俺達を見る。
何かを葛藤してるのだろう。
最後に俺と目が合う。
(お好きにどうぞ)
そう思い、肩をすくめる。
別に先生が降りようが、俺が乗るだけだ。
それでも…きっと先生なら。
「いいぜ…俺のクビ、お前らに預けた!!」
そう言って左手袋を外すと、マキシムの顔面に叩きつけた。
「へっ、後悔するぜ(俺が)!?覚悟しておくんだな(主に俺が)!!テメェは、この俺が…いや、俺達がぶっ潰してやるぜ!!!(願望)」
…いらんルビが聞こえた気がしたが、気の所為だろう。
そうしておこう。
だって…学院中が沸き立ってるし。
ふと、反対側の壁に、最近見慣れた人が見えた。
(あの人にも…応援頼んでおくか)
そう思いつつ、俺はご機嫌をとるために、今日の晩飯の献立を考えるのだった。
ちなみにその後、煽った件について、ルミアにクソ叱られました。
集会後、グレン先生がクラスに連れてきたのは、イヴ先生だった。
「と、言う訳で来期からの【軍事教練】の戦術教官講師として、軍から派遣されたイヴだ」
「帝国宮廷魔導師団第8魔導兵団所属、イヴ=ディストーレ従騎士長よ。来期から【軍事教練】を、担当させて頂くわ。どうかよろしく」
そう挨拶した瞬間
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
沸き立つ男子。
流石うちのクラス、ノリは最高だ。
「うっひょー!どんなゴリラが来るかの思ったけど、滅茶苦茶美人じゃんかよー!!」
「物憂げでアンニュイな雰囲気と表情が、いいよなぁー!?」
「酸いも甘いも噛み締めた大人って感じ…!」
「だが待て!?相手は美人でも軍人だぞ!」
「酷く罵倒されたり、血反吐吐くまで、しごかれたり…」
「「「「「それはそれで、興奮するからよし!!!」」」」」
お前ら、キモイぞ。
まあ、ご機嫌とりは要らなくなったな。
「…グレン…アルタイル…このクラス…」
「うちのクラスメイトがサーセン…」
「諦めろ。…いつもこんな感じだ」
最早何をしても、野郎共にとってご褒美にしかならないので、諦めて欲しいところである。
「ちょっと男子!イヴさんに変な目を、向けないでくださいまし!」
「そうよ!イヴさんは私達の大恩人なんだから!」
おや?ウィンディとテレサが、守ってる?
ああ、南の担当だったか。
そこで、皆思い出してきたのか、徐々に尊敬の眼差しを向けられ、居心地悪そうに顔をひきつらせる。
「な、何よその目?勘違いしない事ね。あの時は無能な私には、それしか出来なかっただけよ」
うわぁ…。
卑屈+ツンデレとか、すげー高等テクニックだ。
「おぉ…誇らず、恩に着せず、なんて奥ゆかしい…!」
「ヤベェ…惚れそう…」
「これが…真の帝国軍人…!」
そんな事したら余計にこうなるに決まってるのに。
不器用な人。
この人、間違えなく褒められ慣れてない。
そんな状況を変えようと、咳払いをして、本題に切り込む。
「さてと、本題に入るわよ。貴方達、マキシムの模範クラスと生存戦するらしいけど…ハッキリ言うわ。
「「「「「「…ッ!!!?」」」」」」
ま、だろうな。
自惚れてるし、コイツら。
「今の顔を見てれば、分かるわ。明らかに勝算の無い戦いをするっていうのに、緊張感が足りない。先の戦いを生き残った自負?頼れるグレン先生がいる?断言するわ、
さっきまで賑やかだったクラスが、シーンと静まり返る。
「だから、私がここにいる。グレン1人で回しきれない。だから教官として、力を貸してあげるわ。今日から泊まり込みで、強化合宿するわ。寝る間も惜しんで、死ぬ気でついてこればあるいは…」
それから先の言葉を紡ぐ前に、
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
皆が立ち上がって、頭を下げる。
そんなに予想外のリアクションに驚いてると、グレン先生が話しかける。
「勝たせたくなるだろ?」
「知らないわよ。まあ、物好きだとは思うけど」
あらあら、ツンツンしちゃて。
「ったく、軍時代から相変わらず可愛くねぇ女だな!だから、行き遅れんだよ!」
「はぁ!?余計なお世話よ!?ていうか、わたしはまだ19だし!?」
って気付いたら喧嘩始まってるし!?
はぁ…やっぱり始まった。
講師になるって聞いてから、こうなる気はしたんだよな…。
容姿褒めながら罵倒するとか、器用だな2人揃って。
仕方ない、グレン先生の弟子であり、イヴ先生の同居人である俺が、止めるしかないか。
「ハイハイ!2人共、そこまで!皆の前でしょ!褒めるのか貶すのか、どっちかにしなって!!」
(あ、あれ…?)
システィーナは妙な違和感を感じた。
基本的飄々としてるグレンだけど、イヴにだけは、素で真っ向からぶつかってる。
クールで硬派なイヴも、グレンにだけは遠慮が無い。
あの2人…何故かヤバい予感がする。
(何だろう…!?何かを切っ掛けにコロッと何かが、ひっくり返りそうな…そんな予感がする!?何かはよく分かんないけど!分かんないけど!)
一方、ルミアも同様な予感があった。
正確には若干違って、イヴとアルタイルの距離感の近さだった。
(な、何か…2人の距離感近くない?)
そう、この数日の同居生活で、精神的距離が少し縮まったせいか、この2人の距離感が近くなっているのだ。
具体的な事を言えば、今まであった互いへの配慮が少し、薄れているのだ。
アルタイルのグレンへの物言いに、遠慮がないのは前からだが、それが少しずつイヴにも遠慮が無くなってきている。
「…システィ、お互いにとって、手強いライバル登場かも…」
「ら、ライバルって何よ!?私はぜ、全然関係ないし!?そもそも、ライバルって言われても、意味わかんないし!」
ルミアがボソリと呟くと、システィーナはしどろもどろになりながら、慌て始める。
そんな2人を不思議そうに見ているリィエルだった。
という訳でね、何かとイヴと仲良しなアイル君です。
色々思うところはあるものの、別にグレンみたいに憎い訳では無いので、まあそんなもんですよね。
彼のイヴへのヘイトは一過性のものです。
それでは失礼します。
ありがとうございました。