ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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アルタイルが初めて、魔術の打ち合いをしてる気がする。
それではよろしくお願いします。


裏学院編第2話

夕方頃、各自の用意と施設の申請が終了し、動きやすい格好で、校庭に集合していた。

 

「とりあえず、それぞれの実力を見るわ。サブストルールで、1体1よ。適当に組んで始めなさい」

 

そう言われ始めた稽古だが、ハッキリ言って張合いが無い。

多分…実践系の練習が追いついてないので、皆の実力の割には、弱いのだ。

ふと周りを見ると、丁度システィーナが空いた。

俺はゆっくりと指先を向けて

 

「『雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ』」

 

わざと三節詠唱で【ショック・ボルト】を撃つ。

それに気付きたシスティーナは、慌てて避ける。

その隙に近づいて畳み掛ける。

 

「『大いなる風よ』!」

 

「『大気の壁よ』!『大いなる風よ』!」

 

「『白き冬の嵐よ』!」

 

システィーナの【ゲイル・ブロウ】と、俺の【ホワイト・アウト】が、ぶつかる。

辺りに冷気が立ち込め、見えなくなる。

俺はその中を走り抜け、一気に畳み掛ける。

しかし

 

(ッ!?読まれた!?)

 

システィーナが俺に向かって、指を向けていて

 

「『雷精の…』」

 

【ショック・ボルト】の詠唱を始めていた。

でも…

 

「『散れ』!」

 

【トライ・バニッシュ】で、先手を取る。

こっちだって、読まれる前提だっつーの!

 

「『紅蓮の炎陣よ』!」

 

「ッ!?『霧散せよ』!『白き冬の嵐よ』!」

 

「『散れ』!『雷精よ』!」

 

「『霧散せよ』!『大いなる風よ』!」

 

「『消えろ』!『風よ』!」

 

「『力よ無に帰せ』!『雷精の紫電よ』!」

 

俺とシスティーナはお互い、立ち位置を変えながら、お互いに魔術を打ち続ける。

しかし、一節詠唱を更に切り詰めてる俺の方が、起動は速く、少しずつ追い詰めつつある。

 

「『紅蓮の炎陣よ』!」

 

「『虚空に叫べ・残響為るは・風霊の咆哮』!」

 

「…え?」

 

(今のは、【トライ・バニッシュ】?次は、【ゲイル・ブロウ】?()()()()()()()()()()()()()()じゃないの?)

 

システィーナは、予想外の魔術に驚きながらも、無意識に躱す。

しかしその躱した先には、【フリーズ・ショット】の凍気弾が迫っていた。

 

「しまッ!?キャアアア!!」

 

システィーナは無防備にその攻撃をくらってしまい、吹き飛ばされる。

俺は直ぐに近づいて、目の前に立つと、指を突きつける。

 

「…降参よ」

 

俺とシスティーナの戦いは、俺の勝ちだ。

 

「す、すげぇーー!!何だよ今の!?」

 

「なんて…ハイレベルな…」

 

「キィ〜!!悔しいですわ〜!」

 

「クッ…僕もまだまだか…!?」

 

何やら周りが騒がしい。

どうやら俺達の戦いを見ていたらしい。

 

 

 

そんな周りの外では、グレンとイヴが話していた。

 

「…随分と器用ね、彼。あんな芸当私でも怪しいわよ」

 

「…そうだな。アイツは発想が柔軟ていうかなんて言うか…」

 

(ていうか、普通やるか?【トライ・バニッシュ】、【ゲイル・ブロウ】、【フリーズ・ショット】の一節詠唱を、【スタン・ボール】の三節詠唱に変換するとか?)

 

そう、アルタイルがやったのはそれぞれの呪文の一節詠唱を、別の呪文の三節詠唱で唱える事で、相手に読めなくさせたのだ。

それにより、何が来るか分からなくなったシスティーナは、無意識に避けたはいいが、最後の一撃に対応出来ず、負けたのだった。

 

「彼ら、貴方が教えてる?立ち回りが貴方に似てるけど」

 

「まあな」

 

「そう。…分かってると思うけど、システィーナの方はそろそろ頭打ちよ」

 

「…んな事は分かってる」

 

そんな話をしていると

 

「ちぃ〜す」

 

軽薄そうな声が聞こえた。

 

 

 

現れたのは、模範クラスの連中だった。

何事かと思ったが、練習を手伝うと言い出したのだ。

ぜってー、裏がある。

ていうか、ボロクソにして見下す気満々じゃん。

暇な連中だな…。

それをイヴ先生は承諾しちゃったし。

幾ら何でもコイツらじゃ、まだ勝てんだろうに。

形式は俺を抜きにした、個人戦を20回。

そんなこんなで始まったそれは…ただの公開処刑だった。

案の定、全敗。

システィーナが負けるのは想定外だが、あのメイベルって奴…半端ねぇな。

しかし、問題はその後だった。

 

「や、止めてくださいまし!!」

 

「堅い事言うなよ、可愛い子ちゃん?俺、カッコよかったろ?これからお茶どう?」

 

「ねぇ?君もどう?」

 

模範クラスの連中が、女子に手を出し始めたのだ。

…ふーん、それがお望み…ブチコロス。

俺はテレサに絡んでた奴の顔面を、殴り飛ばそうとする。

 

「そこまでよ」

 

しかし、その直前イヴ先生に帝国式軍隊格闘術で、投げ飛ばされる。

空中で体を捻って、上手く着地する。

 

「…何すんだよ。コイツらぶちのめすって決めたんだけど」

 

「教師の目の前で、喧嘩しようとしてんじゃないわよ」

 

「喧嘩じゃねぇし。蹂躙だし」

 

「もっとダメじゃない。…はぁ。まあいいわ、それより貴方達。今は私が管轄する授業よ。協力は感謝するけど、それ以上の好き勝手は許さないわ。解散しなさい」

 

そう言われても、連中はニンマリ笑ってるだけだった。

 

「え〜と、イヴ先生でしたっけ?」

 

「確か…先の戦いで左腕使えなくなったんでしょ?」

 

「しかも、イグナイト家から勘当。百騎長から従騎士長に降格…ププ」

 

「長いものには巻かれときなよ〜」

 

…はぁ、怒る気すら失せた。

寧ろ、これから先を見たくない。

 

「はぁ〜〜〜…」

 

「ねぇ、グレン。あの人達…バカなの?」

 

「察してやれ…」

 

「俺はこれから先が見たくない…」

 

そこから先は、見るも無惨な地獄だった。

イヴ先生は、舐められるのは癪だったのか、超ハンデをつけて、模範クラスを相手取り、見事に全員〆たのだった。

 

「あら、ごめんあそばせ。アルベルト程じゃないけど、私も早撃ちは結構得意なの」

 

誇る訳でもなく、ドヤ顔を決める訳でも無い。

淡々と当たり前に言うその姿。

寧ろどっちかだった方がマシだったろうに。

 

「さてと…貴方達。やり合ってどうだった?」

 

「正直…勝てる気がしねぇっす…」

 

カッシュが自信なせげに呟く。

そうかな…俺にはそれ程差があるとは思えない。

 

「あら、そうかしら?私にはそれ程差があるとは、思えなかったけど?…アルタイル、頭は冷えたでしょ?どう見えたかしら?」

 

そこで、俺に振るか。

 

「ぶっちゃけ、差は無いと思います。後…アイツらはもう、頭打ちでしょ?」

 

「正解よ。よく見てたじゃない」

 

そんな話をしていると、ギイブルが俺に噛み付く。

 

「君は何を見てそう言ってるんだ!?」

 

「逆に聞くが、お前はどうやって負けたんだ?」

 

「そんなの決まって!…?いや、待てよ…?」

 

その一言に、皆それぞれある事に気付き出した。

 

「そ、お前らの手札のカードの強さに差はない。では何故負けたか?答えは簡単」

 

「貴方達は手札の出す速度。つまり、次の一手を打つ判断の速さで負けたのよ。…例えばシスティーナ。さっきアルタイルと戦ってたけど、確かに切り詰めてるアルタイルの方が、詠唱は速い。でもそれ以上に、アルタイルは次の一手を決断する判断が速いのよ」

 

「た、確かに…!」

 

確かにアルタイルの詠唱は短い分、速い。

でもそれはちゃんと無効化出来ていた。

なのに負けた…、それはつまり、後手に回り続けてたという事。

その事に今気付いたシスティーナは、愕然としながら、アルタイルを見る。

 

(同じ人に師事を仰いでるのに…これほどの差があるなんて…!?)

 

最近追いついてきたと思っていただけあって、ショックは大きい。

 

(絶対に負けない…!)

 

しかしその分、勝ちたい気持ちも大きくなる。

 

「彼らはある程度手札を作ったら、ひたすら切る速度を上げてきた。だから判断が速い。一方貴方達は、グレンの指導の元、手札を増やし続けた。つまり…()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。違いはそこよ」

 

イヴ先生はハッキリと言い切る。

皆が納得仕掛けるが、ギイブルがまだ噛み付く。

 

「…だから何なんですか?アイツらが強いことには…」

 

「アルタイルが言ったでしょ?彼らはもう頭打ち。これ以上強くはならないわ。でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。逆に彼らの土台は脆いわ。脆弱な土台で乗せられるものは、限られてる」

 

ギイブルの言葉を無視して、続けるイヴ先生。

 

「…グレンに感謝する事ね。魔術師にとって、土台作りは時間がかかる上に、成長が実感できないから、かなり苦になる作業なのよ。でもグレンは三流だから、上に積む所まで手が回らなかった。…だから、そこを私がやってあげる。断言するわ、2週間あれば、段違いに伸びるわよ。貴方達」

 

皆呆然とイヴ先生を見つめる。

 

「まあ?こんな左遷された軍人に出しゃばられたくないなら…」

 

「「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」」

 

皆揃ってイヴ先生に頭を下げる。

まあ、こうなるわな。

皆にわちゃわちゃされるイヴ先生に、グレン先生が近づき、何か話してる。

おや、少し雰囲気が…あ、キレた。

肩振るってるし…、我慢してるのか?

また何を言ったんだよあの人は。

 

「『死ね』!!」

 

とうとう、限界を迎えたな。

爆破されてお空に飛んでったな。

 

「何しやがる!?この冷血ヒス女!」

 

「何ですって!?このデリカシー死滅男!」

 

「ちょっと見直してやったら、すぐこれだ!この行き遅れ女!」

 

「少し認めてやったら、やっぱりこれよ!この最低男!」

 

はぁ…世話がやけるな〜。

 

「だ〜か〜ら〜!皆の前でやるなって!ガキかあんたら!!」

 

「「アルタイル!お前(貴方)はどう思う!?」」

 

「どっちもどっちだ阿呆ども!!!」

 

 

 

(ま、マズイわ…!?将来的に敵になる予感しかない!!何の敵かは分かんないけど!?分かんないけど!?)

 

(マズイ…どんどん距離感が縮まってきてる!このペースだと、いつ転がるか分からないかも…!)

 

システィーナが、背中を焼くような焦燥感に駆らていると、同じく焦っていたルミア、深刻そうな顔で話しかける。

 

「システィ…共同戦線を張ろう?多分私達のペースじゃマズイ気がする 」

 

「き、共同戦線って何よ!?意味わかんないな〜!!!」

 

相変わらずの蚊帳の外であるリィエルは、不思議そうに首を傾げるのだった。

 

 

 

(私…自惚れてた…まだまだよね…)

 

次の日の朝、私は久しぶりに行われるグレン先生との稽古に向かっていた。

父からは、知らず知らずの内に天狗になってしまう、と言われていたがその通りだった。

 

(もっと気を引き締めて、強くならないと!)

 

しっかりと気合いを入れ直し、指定された場所に向かうと、既に先生とアイルがいた。

 

「すみません!遅く…?」

 

いや、よく見ると、もう1人いる。

 

「よう」

 

「おっす、システィーナ」

 

「おはよう、システィーナ。ご機嫌いかがかしら」

 

そこにいたのは、イヴ先生だった。

 

「い、イヴさん…?どうして…?」

 

急に紛れ込んだ異物…そう感じてしまった。

どうしてここに?

そもそも2人の関係性が分からない。

相当の確執があったらしいけど…?

そんな困惑する私に、先生がキッパリハッキリ言い切った。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「…へ?」

 

 

 

空気がB級軍用魔術もびっくりなくらい凍った。

イヴ先生すら、唖然としている。

そのまま、グレン先生とシスティーナの話し合いが続く。

とうとうシスティーナが涙を浮かべ出した瞬間

 

「「…ッ!」」

 

スパァァン!!!

ドゴォン!!!

イヴ先生の鞭のようなローキックと、俺のハンマーみたいなボディブローが、炸裂した。

 

「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!」

 

「バカなの!?ねぇバカなの!!?」

 

「本当にデリカシー無いわね!!わざとやってる!?」

 

「そんな物言いじゃあ、勘違いするだろうが!!」

 

「何で貴方は女心が分かんないのよ!!」

 

俺とイヴ先生で、ひたすら罵倒する。

本当に世話がやける…!!

 

「え?誤解…?」

 

システィーナが、目をパチパチさせる。

 

「勘違いすんなよ?愛想尽かしたわけじゃないからな?次のステップに進める為に、イヴ先生に託しただけだからな?」

 

俺は優しく涙を拭ってやりながら、話す。

それを聞いて、イヴ先生が話を繋ぐ。

 

「単純に言うとね。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!?」

 

そう、これはシスティーナでは無く、グレン先生の方が限界なのだ。

先生はあくまで邪道タイプの魔術師。

一方のシスティーナは、正統派魔術師だ。

つまり真反対なのだが、今までどうにかこうにか教えてきたのだが、ついに限界を迎えてしまった。

そこで白羽の矢が立ったのが、イヴ先生だった。

彼女はシスティーナと同タイプの正統派魔術師。

スタイルは違うか、根っこの所は同じ。

ある程度教わったら、それを中心にグレン先生が、また鍛え直す。

そういう風にシフトしていくのだ。

ちなみに俺は、足して2で割った感じ。

つまり俺の今後のメニューは

 

「アルタイルは私とガチめの模擬戦。その後、グレンと訓練よ」

 

…地獄の方がマシなメニューである。

朝から、イヴ先生とガチのタイマン。

一応サブストルールだが、ルールはそれだけ。

当然ボロボロにやられ、その後グレン先生とのハードな訓練。

文字通り、精も根も尽き果ててから学校。

そして放課後には、俺だけまたサシで模擬戦。

そんなルーティンで行くらしい。

なるほど…いや、殺す気かよ。

そう抗議すると、2人揃って

 

「「いけるだろ(いけるでしょ)」」

 

「こんな時ばかり仲良くしてんじゃねーよ!このバカップル!!」

 

「「誰がバカップルだ(よ)!?」」

 

「テメェらだよ!!!」

 

そんなこんなで始まる朝練だが、本当にめんどくさい人だよ、イヴ先生は。

だって、1度は突っぱねないと気が済まない、とんだ天邪鬼なんだよ。

その気は無いくせに突っぱねて、それでもなんやかんや面倒見がいい。

しかし…本気で容赦が無い。

1回の模擬戦に何度死を覚悟した事か。

とにかく必死に食らいつく。

それでも…ハンデを抱えていても強い。

俺は地面に転がらされ、肩で息するのが一杯だった。

 

「ハッ…ハッ…ハッ…」

 

「…ここまでね。思ったよりやるわね。学生相手に、私が汗かいたわ。今日はここまで。システィーナは私についてきて。クラスの子達を起こして、朝練開始よ。グレン、アルタイルは任せたわ」

 

そう言ってさっさと歩いていく、イヴ先生とシスティーナ。

 

「…よく頑張ったな。イヴ相手にあそこまでやるとはな」

 

「結局…1発も…当たってないけど…」

 

「相手は【紅焔公(ロード·スカーレッド)】だ。当然だな。…さてと、とりあえずお前は今のスタイルのまま、強くなれ。これがイヴと俺の見解だ」

 

それってつまり…

 

「このまま暫くはボロ雑巾になれって事?」

 

「そういう事だ。勿論、反省点はある」

 

そう言って、先生との反省会が続く。

なるほど…気付かなかった。

まだ伸びしろがある…それだけで、十分だ。

気合を入れて立ち上がる。

 

「よし!やるぞ!!」

 

「おう、始めるか」

 

こうして俺と先生の訓練が始まる。

当然、ここでもボロボロにされました。

それからの日々は、まさに地獄。

朝はイヴ先生とのタイマンと、グレン先生との訓練。

昼は休み、放課後はまたタイマン。

俺以外の皆は、朝の2組vsイヴ先生の地稽古、その後グレン先生との反省会。

昼は徹底的な反復練習した後、放課後は朝と同じメニュー。

皆の方は知らないが、俺の方のタイマンは、実は徒手空拳も有りの、最早喧嘩だ。

放課後のタイマンを見たクラスメイトからは、同情の顔を向けられた。

最初は全員死に体で、テストも散々。

お通夜もかくやと言わんばかりの、重苦しい空気だったが、周りの応援や、不器用ながら感じる、イヴ先生の優しさ気付いていた事もあり、誰も泣き言1つ言わずに、ついてきた。

それに人間、3日もすれば慣れるものだ。

最初は飯も入らなかったのに、今では飢えた獣みたいにガッツいてる。

そして俺に変化が起きたのは、1週間たった頃だった。

 

「『雷精よ』!」

 

「『霧散せよ』!『雷精よ』!」

 

「『散れ』!『吹雪よ』!」

 

「『大いなる風よ』!」

 

「『雷精よ(1発)』!『雷精よ(2発)』!『雷精よ(3発)』!」

 

「『雷精よ(アインツ)』!『雷精よ(ツヴァイ)』!『雷精よ(ドライ)』!」

 

2発の【ショック・ボルト】が衝突し、最後の【ショック・ボルト】が、お互いの頬を掠める。

 

「すごい…!互角…!!」

 

システィーナが、思わず呟く。

そう、今ハッキリと拮抗している。

とはいえ、今のイヴ先生は全快時とは程遠い。

これだけのハンデを積まれた状態で互角って、余りに嬉しくない。

息を整えて、作戦を立てる。

 

「休ませないわよ。『大いなる風よ』!」

 

「チッ!『大気の壁よ』!『雷精よ』!」

 

「『霧散せよ』!『紅蓮の炎陣よ』!」

 

「『散れ』!『風よ』!」

 

俺は更に、その影に隠れて【フィジカル・ブースト】をかけて、走り出す。

 

「チッ!『大気の壁』!」

 

イヴ先生も舌打ちを打ちつつ、格闘戦で対応する。

この1週間、俺が戦ってきて分かった事が1つ。

それは、体術ならそう大差はないという事。

 

「オラァ!」

 

「グッ!」

 

思いっきり、ハイキックで蹴り飛ばす。

ガードした左腕がイッたな。

 

「こっの!」

 

「ツッ!」

 

鞭みたいなハイキックが俺の腕を打つ。

すげぇ痺れる…超痛い。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「フゥ…フゥ…」

 

そろそろキツイな…イヴ先生はまだ、少し余裕がありそうだけど。

流石に現役軍人、クソ強ぇ。

そろそろ…仕掛けるか。

 

「『氷弾!』」

 

「『霧散せよ』!『白き冬の嵐よ』!」

 

「『紅蓮の炎陣よ』!」

 

俺はイヴ先生の【ホワイト・アウト】を、【ファイア・ウォール】で防いで、水蒸気を生み出す。

その隙に俺は、カードを切る。

 

「『拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを』!」

 

「なっ!?何よこれ!?」

 

知らないだろうな、これは。

何故ならこれは

 

「【ストーム・ウォール】!?何でアイルがそれを!?」

 

そう、これは()()()()()()()()()()()()()()だ。

当然、イヴ先生が知るはずが無い。

俺がこれを使った理由は2つ。

 

「ッ!?砂が…!?」

 

1つは砂を巻いあげ、視界を奪う。

そしてもう1つ、それは…

 

「『紅蓮の炎陣よ』」

 

「…ッ!?」

 

【ファイア・ウォール】を被せることで、火力を跳ね上げさせる事だ。

その跳ね上がった火力が、イヴ先生を焼き払う。

 

「『光の障壁よ』!」

 

当然それを使うだろうな。

【トライ・バニッシュ】も【ディスペル・フォース】も、どっちも使わないとこれは防げない。

しかし、【エア・スクリーン】では心許ない。

だから、1番強い守りを選ぶはず。

故に俺は…【トライ・レジスト】を何重にもかけて、爆煙の中に突っ込んだ。

【フォース・シールド】の欠点は動けない事だ。

 

「な!?」

 

光の壁をそのまま乗り越え、首を掴み、そのまま馬乗りになる。

そして左手の指をイヴ先生の眉間に、突きつける。

 

「…降参よ」

 

苦節1週間、やっとイヴ先生から勝利をもぎ取った。




…よく考えると、彼相当脳筋でしたね。
糸を使った接近戦ばかりで、殆ど魔術戦してないので、これからさせていこうと思います。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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