ええ、結局イヴさんも、主人公みたいなんでよね。
勝手にそう思ってます。
それではよろしくお願いします。
突然悲鳴が聞こえた。
それは余りにも不気味で、恐怖に染まった声だった。
「…アイル君?今のは…?」
「…俺の後ろにいろ。あと離れるな」
俺も嫌な予感がしたので、ルミアを庇うように立つ。
そうして暗闇から現れたのは、人型の何かだった。
「「…ッ!?」」
余りにも気味が悪いソレに、俺達は固まる。
「『雷槍よ』」
直ぐに俺はルール全無視の【ライトニング・ピアス】を放つも、意味は無かった。
「クソッ!?何だよコイツら…!?」
「どうしよう!?この先に誰かいるのに…!?」
「『我が手に星の天秤よ』!ルミア、飛ぶぞ!」
俺は直ぐに【グラビティ・タクト】を発動して、ルミアを抱えて、飛ぶ。
そのまま重力を操り、反応の先まで飛ぶと、そこにいたのはシスティーナだった。
あれは…煤…!?
まさか、誰か炎熱系を使ったのか!?
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
違う方からリィエルが来る。
「『大いなる息吹よ』!」
道を強引に開けて、システィーナの元まで駆けつける。
「シャキってしろ!!」
「しっかり!気を確かにして!!」
「…はっ!ごめんなさい!な、何なのよ、あれ!?」
「知らねぇよ…とにかく此処を出る!1度皆と…!?」
そんな時、システィーナが持つグレン先生と繋がってる宝石が鳴る。
⦅白猫!ルミア!リィエル!アルタイル!無事だな!⦆
「何とかね!それよりコレなんだよ!?」
⦅こっちもわからん!とにかく1度集まってくれ!2階の大講義室に集まれ!そこからは…⦆
先生の指示を冷静に聞く俺達。
⦅いいか!?無理はすんなよ!?後、絶対に炎熱系は使いな!何かルールがあるぞ!!⦆
そう言って通信が切れる。
「…話は聞いてたわね。行くわよ」
システィーナの号令の元、俺達は行動を開始した。
「俺達が最後か…」
「間に合ったね…」
周りを見ると、トータルは30人弱。
うちのクラスは大多数が残ってるが、模範クラスは半数以下になってる。
「…システィーナ。炎熱系を使った奴がいたな。どうなった?」
それを聞くと、顔を真っ青にしながら答えた。
「本にされて…ハサミで切り刻まれた…!」
余りのショッキングな内容に、ルミアが口を手で隠してしまう。
「なるほどな…まさに【裁断の刑】だな」
思わず舌打ちをしながら、先生達に近づく。
「グレン先生、イヴ先生、状況は?」
「それは私が説明します」
そう言い出したのは、メイベルだった。
彼女曰く、マキシムは偽の手記を握らされ、メイベル自身が本物の手記らしい。
アリシア三世はある真実を知った時、二重人格になってしまい、この裏学院を作ったのがイカれたアリシア三世らしい。
「その真実ってのは何だ?」
「分かりません。ただ…【
(またそれか…)
いい加減、【
「…続けますね」
その【
それを作るのに、必要なのは…人間の人格と記憶。
それを正気のアリシア三世が止め、自殺したらしい。
そして【Aの奥義書】は裏学院に封印されたが、先の戦いで校舎が壊れた事で、封印も壊れてしまったらしい。
それによって生まれた隙間に、【Aの奥義書】は自身の断片を送り込んだ。
それが…マキシムが持ってきた【アリシア三世の手記】らしい。
そして、ここから脱出するには、彼女を倒さなくてはいけない。
同時に、本になった奴らも助けられるらしい。
倒す方法は、本としての体裁を壊す事。
その手段が、彼女の持つフロントリックピストルしかない。
炎熱系の魔術も有効だが、その場合は、【裁断の刑】に処され、完全に死ぬ。
「さてと、古本回収と洒落込む訳だが…」
「当然、俺達は行きますよ?」
俺+いつもの3人娘に、カッシュ・ギイブル・ウィンディ・テレサといった一部の2組の生徒、そしてイヴ先生で行く事になった。
マキシム達は…まあ、評判倒れもいい所だ。
「わ、私は行かないぞ!どうかしてる!」
「おいテメェ!シャキッとしやがれ!ンな情けねぇ事言ってる場合か!?」
先生が苛立ちげにマキシムの襟首を掴み上げる。
「う、うるさい!そういう君こそ何故戦える!?」
「うるせぇな!そりゃ、俺が教師だからだよ!!」
マキシムの情けない質問に、ハッキリとグレン先生が答える。
「俺だってあんな怪物と戦いたくねぇよ!けどなぁ!俺はアイツらの教師だ!生徒を守る義務があるし…何より!アイツらが俺の背中を見てんだよ!!その背中に、真の魔術師とは何たるやと、その目で問いかけてんだよ!!!…だったらここで、みっともねぇ真似なんて出来るか。…面倒せぇ」
そう言い捨てて、マキシムも捨てる。
…知ってますよ、グレン先生の背中が、誰よりも魔術師然としてる事を。
俺達は…アンタの背中を、ずっと追いかけてるんだから。
そして、もう1人、尊敬に値する先生の事も。
「…イヴ先生、準備はいいですか?」
「あら、誰にモノ言ってるのよ?」
「…頼もしい限り。グレン先生、俺達の準備は整いました」
そう言って、俺達は【Aの奥義書】がいる図書室まで移動した。
その中には…大量の本の化け物がいた。
「行くぞぉ!!!」
怪物の波の中を、ひたすら駆け抜ける。
左右から押し寄せる荒波を
「『我が手に星の天秤を』!」
俺の【グラビティ・タクト】が弾き飛ばし、
「おぉぉぉぉ!!」
「いやぁぁぁ!!」
【ウェポン・エンチャント】を施したグレン先生の拳と、リィエルの大剣が薙ぎ払い、
「システィ!」
「ありがとうルミア!『集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えろ』!」
ルミアのアシストを受けたシスティーナが、魔術で吹き飛ばし、
「「『大いなる風よ』!」」
ウィンディやテレサといった面々が、弾幕を張り押し返し、
「『寄りて集え・土塊で作られし・白痴の巨人』」
ギイブルが唱えた【コール・エレメンタル】によって召喚された、土の巨人が堰き止め、
「『蒼銀の氷精よ・冬のワルツを奏で・静寂を捧げよ』」
イヴ先生の【アイシクル・コフィン】が、氷柱に閉じ込める。
しかし倒す事が出来ず、増えてく一方の敵に、辟易してきた。
「畜生…まじウザイ。何とかならないのかよ」
「先生の【イクスティンクション・レイ】はダメなんですか?」
「…試してみるか」
バ、バカか!?
俺は慌ててホローツを取り出したグレン先生の手を弾く。
「バカかアンタは!?試していい訳ないだろ!!」
そこにイヴ先生も畳み掛ける。
「その呪文は3属性複合でしょ!?火遊び厳禁のルールに引っかかるかもしれないし、効く保証もない!特異法則結界空間を舐めないで!!今は貴方の銃技とインク弾だけが頼りなのよ!!それを忘れないで!!」
「チッ…厄介な…」
忌々しげにホローツを仕舞う。
まだまだ先が見えないその道を走り続ける中、不意にグレン先生が何かに躓く。
「「「「先生!」」」」
俺も慌てて糸を投げるが…間に合わない!
そう思った瞬間、
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
カッシュが割って入り、怪物達に体当たりした。
「「カッシュ!?」」
「へへっ…俺はここまで見たいっす…」
「待ってろ!今助け…」
「バカ!」
助けに行こうとするグレン先生をイヴ先生が、襟首掴んで強引に投げる。
「あの子を心意気に報いるには…助けたいなら…この戦いに勝つしかないの!!」
「…ッ!!」
グレン先生が、この言葉に顔を歪ませる。
「先生ー!俺は信じてるぜ!何とかしてくれるって!イヴ先生!アイル!グレン先…」
それ以降の言葉は聞こえなかった。
「…メイベルゥゥゥ!!まだなのか!!?」
「ごめんなさい…!まだ先です…!」
「…クソッタレがァ!!!」
「…ッ…」
そして、それを皮切りに…次々と脱落していくクラスメイト達。
気付けば、何時もの5人+イヴ先生とメイベルの7人だけになっていた。
心が欠けそうになりながら、それでも走り続ける。
皆グレン先生を送り出す為に…俺達に望みを託す為に…!
「…アイル君。大丈夫だよ」
「…ッ!!ルミア…」
隣を走るルミアが、俺の手を握ってくれる。
気付けば、自分の握力で拳が壊れそうになるくらい、強く握りこまれていた。
「絶対に勝とう。勝って皆を取り戻そう。だから…落ち着いて?」
ルミアの声が、瞳が…笑顔が…怒りに呑まれている俺を、引き戻してくれる。
「…そうだな。ありがとう…」
「うん!」
前を走るイヴ先生の手も、強く握り締められており、その虚空を睨む瞳は、地獄の釜のように煮えたぎっていた。
そして遂に最奥に着く。
着いた瞬間、メイベルが腕を引きちぎって、結界を張る。
グレン先生がその事に動揺しているが、見向きもしない。
何故なら…目の前に諸悪の根源がいたからだ。
一人の女性が、羽根ペンで書き物をしている。
不意に眼鏡を外し、ゆっくりとこっちを振り向く。
コイツが…【Aの奥義書】の本体。
「ようこそ、我がアルザー…随分と手荒ですのね」
俺は糸で攻撃するも、それは案の定、意味がなかった。
「…うるさい。死ね。じゃなきゃ、自殺しろ」
「フフフ…それは出来ませんわ。安心して下さい…!皆、私の資料にしてあげますから…!アハッアハハハハハハハハ!!!」
彼女を守る様に、怪物達が現れる。
「クソ!こんなにいるのか…!やるぞ!」
「全員、戦闘用意!グレンの援護よ!」
イヴ先生の号令により、システィーナとルミアも詠唱を始め、俺とリィエルが突進した。
今、最後の戦いの火蓋が、切って落とされた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺とリィエルが、密集陣形の怪物達を纏めて吹き飛ばす。
この程度の敵なら、文字通り相手にならない。
「『集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えろ』!」
「『悪辣なる鬼女よ・其の呪われし腕で・彼の者を抱擁せよ』!」
「『蒼銀の氷精よ・冬のワルツを奏で・静寂を捧げよ』!」
システィーナの風の戦鎚が、ルミアの念動場が、イヴ先生の冷凍レーザーが、蹴散らす。
「おぉぉぉぉ!!」
その隙をついた、グレン先生のクイックドロウ。
これ程のチャンス、逃すはずがないのだが、
「あらあら…また本を汚しちゃって…マナーのなってない子達ですね…」
その辺から飛んできた本で、そのインク弾を防いでしまう。
さっきから一体何回繰り返したのだろうか。
何度も守りを引き剥がしてるのに、決まらない。
この大図書室の全ての本が、コイツの盾であり、矛なのだ。
「ッ!?グレン先生!」
その証拠に、今度は本の津波がグレン先生を飲み込もうとしたので、ギリギリで糸を巻き付け、手繰り寄せる。
「すまねぇ!助かった!」
「大丈夫!それより…マジウゼェ!!どうにかならねぇのか!?」
「落ち着きなさい!絶対にチャンスは来るわ!焦らずに耐え凌ぐのよ!」
苛立ち任せに叫ぶ俺を、イヴ先生が怒る。
「クッソがぁ!」
俺の糸と重力が、グレン先生の拳が、リィエルの大剣が、イヴ先生達の魔術が、あらゆる手段を以て対抗する。
手を替え品を替え、意表を突いても、圧倒的物量には意味が無く、ただイタズラにインクと時間を浪費してしまう。
「これで…!」
グレン先生が【グラビティ・コントロール】で空高く飛び、
「先生!『大いなる風よ』!」
システィーナが【ゲイル・ブロウ】で、更に打ち上げ、頭上を取る。
アリシア三世が上に気を取られた隙に、一気に走り寄り、眼前まで近づく。
「ッ!?あら…」
「隙あり!」
俺は【次元跳躍】で、上にいたグレン先生をすぐ側に呼ぶ。
一気にマナが持ってかれるが、それと引き換えに、今までで1番接近する。
「これで…ガハッ!?」
「何ッ!?っうお!?」
突然グレン先生の体が、俺の方に押し出される。
「嘘…!?先生が外した!?」
「違う!外されたのよ!」
よく見ると、グレン先生の脇腹に本がめり込み、そのまま俺ごと本の津波に飲まれてしまう。
「先生!アイル君!『見えざる手よ』!」
ルミアの【サイ・テレキネシス】が、俺達を引っ張りだす。
俺は何とか結晶を取り出し、マナを回復する。
「グレン先生…ワタ…し…ソロソロ…限界…デす…」
よく見ると、身体中ボロボロに引きちぎったメイベルが、掠れた声で話している。
メイベルもそうだが、それよりも弾切れになりそうだ。
「そうだわ!インクで汚した人も【裁断の刑】の対象にしましょう!」
さもいい事を思いついたように、とんでもない事言うアリシア三世。
「させるか…!」
俺は超高速で糸を放つも、それは本に阻まれる。
「クソ…!どうする…!手の施しようが…!」
いや、厳密には1つだけある。
何せ、わざわざ禁止にするほどだ。
…背に腹はかえられない…か…!
「ルミア…香油持ってる?」
「…持ってるけど…どうするの?」
その目は鋭く俺を睨んでる。
どうやら…俺が何がしたいか、分かったらしい。
「…聞くって事は、分かってるんだろ?」
「だったら、私が貸す訳ない事も分かってるよね」
「じゃあ、どうするんだ?もう希望に縋ってる暇は無いぞ?」
「そんな言い訳は聞いてないよ!絶対にダメ!」
俺とルミアの話し合いは完全に平行線だ。
…これはダメか。
だったら…他の…!
「…グレン先生、銃は大丈夫だったんですよね?」
「…それがどうした?」
「ここの法則って…当時のルールにしか則ってないんじゃないですか?だから銃は大丈夫だった。…その当時、銃なんて無かったから」
そう、俺はそこが気になっていた。
もしかして…この法則は、魔術ないし、当時あった技術にしか対応してないんじゃないのか?
「…!?確かに…そういう事なら説明がつく。だがどうやって…」
「俺の糸にルミアの香油を染み込ませる。そこに先生の弾丸に入ってる火薬を【ショック・ボルト】で引火させる。これなら…ワンチャンいけるんじゃない?」
「確かに…だが、1つだけ欠点があるぞ。…時間がかかる事だ。多分…間に合わない」
そう、そこがネックなのだ。
この作戦は一見リスクが低い様で高い。
なんせ、時間がかかりすぎるのだ。
誰かが足止めしなくちゃいけないから、はっきり言って無謀な賭けだ。
そう考えてると、突然グレン先生が、イヴ先生に話しかける。
「おいイヴ、銃は使えたよな?」
「…使えるけど、それが?」
「なら後は頼む。…俺が炎熱系魔術を使う」
「「「ダメ!!」」」
俺達が止めるが、先生は聞く耳を持たずに銃を、イヴ先生に押し付けた。
「イヴ!後は任せた!生徒達を頼む!」
「…ええ、いいわよ?」
この時、私の脳裏を過ったのは、
(イヴ先生!アイル!グレン先…)
(グレン先生…イヴ先生…どうか…)
(そうだね、グレン先生!イヴ先生!後はよろしくお願いしま…)
「ええ、私はイグナイトだもの。上手くやるわ…」
この2週間共に過ごした、2組の子達だった。
(よ、よろしくお願いします!イヴ先生!)
(やったぁ!俺達強くなってるよ!)
(グレン先生とイヴ先生のおかぜだよな!)
(ありがとうございます!イヴ先生!)
そして、居候先の兄妹だった。
(これから公私共々よろしく。イヴ先生!)
(あ、ありがとうございます…イヴ様!)
「安心して任せない。ただし…こっちの方をね」
私は銃を差し出すグレンの手を無視して。
私は…
「…え?イヴ…先生…?」
「バカ!?お前、何してる!?」
イヴ先生は銃を受け取らず、代わりに炎を生み出した。
そんな事したら…イヴ先生が…!
「貴方の炎で何が出来るのよ?強力な炎熱系は、私かアルタイルしか撃てないでしょう?…はぁ、私もヤキが回ったものね」
「何言ってんだよ!?だったら俺が!?」
「バカね。それこそ何言ってるのよ?アルタイル。…教師が生徒を犠牲にする訳には…いかないでしょう?」
…ギルティ。
何処からかそんな声が聞こえる。
その時には手遅れで、既に手足の本化が始まっていた。
「グレン、あの子達には貴方が必要よ。アルタイル、ベガに謝っておいて?買い物行けなくてごめんって」
「「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
俺達の制止も聞かず
「『真紅の炎帝よ・劫火の軍旗掲げ・朱に蹂躙せよ』!!!」
俺のとは比べ物にならないほど気高く美しい、【インフェルノ・フレア】が、全てを焼き尽くす。
イヴは、切り刻まれながら、この2週間と少しの事を思い出す。
こんな自分に、懐いてくれた生徒達。
今まさに、涙を流してくれる3人娘。
居候先の老夫婦と、何だかんだ可愛がった兄妹。
そして…元同僚のドヤ顔。
(ああ…何だか…悪くない。悪くないって…そう思ったの。…アルタイル…ベガ…実は私…貴方達の事…弟妹みたいに想ってたのよ?…グレン…これでも私…本当は…)
「イヴ先生…実は俺…」
「イヴ…これでも俺…」
アルタイルは喚き散らすアリシア三世を縛りあげ、グレンの前に転がす。
グレンはそんなアリシア三世の額に、銃口を突きつけ、
(貴方の事…嫌いじゃ…なかった…わよ…)
「…貴女の事、姉貴みたいって想ってたよ」
「…本当はお前の事、嫌いじゃなかったよ」
無慈悲に、引き金を引いた。
俺達は呆然と、さっきまでイヴ先生だった、紙くずを見つめていた。
システィーナとルミアが静かに泣き、リィエルが涙を流し、グレン先生が銃のグリップを握り締め、俺は…唇を噛み締めて、拳を握り込む。
「…おーい!!!」
声の方を向くと、カッシュ達が走りよってくる。
「グレン先生!皆!やったんだな!!」
「信じてましたわ!!」
それぞれが俺らを激励してくれるが、誰も答えない。
こんなのが…勝利と…言えるのか…?
「で?イヴ先生は?」
「その…紙くずは?」
「「「「「ーッ!!!?」」」」」
俺達は核心を突かれ、何も言えない。
何も言わない俺達に、嫌な予感がしたのか、カッシュが震える声で、俺達に聞く。
「…おいアイル。グレン先生…冗談だよな?…何かのドッキリなんだよな…!?なぁ!?何か言えよ!!!?」
肩を掴まれ揺さぶられる俺は、ボソボソと呟く。
「イヴ先生は…どうしようも無い状況を…覆すために…炎熱系魔術を使って…ッ!俺達は…何とか…!!」
「嘘…だろ…!」
「そんな…!」
皆現状が追いついたのか、足元の紙くずを見て、涙を流す。
「…皆さん…」
「黙ってろ。…お前に言っても仕方ねぇ事だってのは、分かってる。だけど…黙っててくれ」
グレン先生が、メイベルの言葉を止める。
「…私は、皆さんのお陰で、アリシア三世となれました。故に最後の償いをさせて下さい。…『アリシア三世の名において、貴方達を不問と処し、赦します』」
そう言った途端、突然紙くずが光だし、独りでに動き出す。
それはやがて、人の形を形成し…イヴ先生が元の姿に戻った。
「…?あれ…私…確か…?貴方達…何で泣いて…」
「「「「「「「…イヴ先生〜〜〜〜!!!」」」」」」」
皆が一気に抱き着く。
そうか、この学院はアリシア三世によって、支配されている。
今回はそれをいい方に利用して…恩赦を与えたのか。
「キャアアア!!!?ちょっと貴方達!?いきなり何よ!?」
「「「「「「「良かったよ〜〜〜〜!!!」」」」」」」
「ちょっと…離しなさ〜い!!!」
ここで、イヴとアルタイルの距離感が近い理由が、分かりました。
ええ、ヒロインではありません、姉です。
姉ビームなんです。
こんな姉なら欲しかった…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。