ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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これで11巻終わらせます。
ええ、結局イヴさんも、主人公みたいなんでよね。
勝手にそう思ってます。
それではよろしくお願いします。


裏学院編第4話

突然悲鳴が聞こえた。

それは余りにも不気味で、恐怖に染まった声だった。

 

「…アイル君?今のは…?」

 

「…俺の後ろにいろ。あと離れるな」

 

俺も嫌な予感がしたので、ルミアを庇うように立つ。

そうして暗闇から現れたのは、人型の何かだった。

 

「「…ッ!?」」

 

余りにも気味が悪いソレに、俺達は固まる。

 

「『雷槍よ』」

 

直ぐに俺はルール全無視の【ライトニング・ピアス】を放つも、意味は無かった。

 

「クソッ!?何だよコイツら…!?」

 

「どうしよう!?この先に誰かいるのに…!?」

 

「『我が手に星の天秤よ』!ルミア、飛ぶぞ!」

 

俺は直ぐに【グラビティ・タクト】を発動して、ルミアを抱えて、飛ぶ。

そのまま重力を操り、反応の先まで飛ぶと、そこにいたのはシスティーナだった。

あれは…煤…!?

まさか、誰か炎熱系を使ったのか!?

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

違う方からリィエルが来る。

 

「『大いなる息吹よ』!」

 

道を強引に開けて、システィーナの元まで駆けつける。

 

「シャキってしろ!!」

 

「しっかり!気を確かにして!!」

 

「…はっ!ごめんなさい!な、何なのよ、あれ!?」

 

「知らねぇよ…とにかく此処を出る!1度皆と…!?」

 

そんな時、システィーナが持つグレン先生と繋がってる宝石が鳴る。

 

⦅白猫!ルミア!リィエル!アルタイル!無事だな!⦆

 

「何とかね!それよりコレなんだよ!?」

 

⦅こっちもわからん!とにかく1度集まってくれ!2階の大講義室に集まれ!そこからは…⦆

 

先生の指示を冷静に聞く俺達。

 

⦅いいか!?無理はすんなよ!?後、絶対に炎熱系は使いな!何かルールがあるぞ!!⦆

 

そう言って通信が切れる。

 

「…話は聞いてたわね。行くわよ」

 

システィーナの号令の元、俺達は行動を開始した。

 

「俺達が最後か…」

 

「間に合ったね…」

 

周りを見ると、トータルは30人弱。

うちのクラスは大多数が残ってるが、模範クラスは半数以下になってる。

 

「…システィーナ。炎熱系を使った奴がいたな。どうなった?」

 

それを聞くと、顔を真っ青にしながら答えた。

 

「本にされて…ハサミで切り刻まれた…!」

 

余りのショッキングな内容に、ルミアが口を手で隠してしまう。

 

「なるほどな…まさに【裁断の刑】だな」

 

思わず舌打ちをしながら、先生達に近づく。

 

「グレン先生、イヴ先生、状況は?」

 

「それは私が説明します」

 

そう言い出したのは、メイベルだった。

彼女曰く、マキシムは偽の手記を握らされ、メイベル自身が本物の手記らしい。

アリシア三世はある真実を知った時、二重人格になってしまい、この裏学院を作ったのがイカれたアリシア三世らしい。

 

「その真実ってのは何だ?」

 

「分かりません。ただ…【禁忌教典(アカシックレコード)】という名前しか…」

 

(またそれか…)

 

いい加減、【禁忌教典(アカシックレコード)】とやらが何なのか知りたい。

 

「…続けますね」

 

その【禁忌教典(アカシックレコード)】に近づく為に、【Aの奥義書】とやらを作ろうとしたらしい。

それを作るのに、必要なのは…人間の人格と記憶。

それを正気のアリシア三世が止め、自殺したらしい。

そして【Aの奥義書】は裏学院に封印されたが、先の戦いで校舎が壊れた事で、封印も壊れてしまったらしい。

それによって生まれた隙間に、【Aの奥義書】は自身の断片を送り込んだ。

それが…マキシムが持ってきた【アリシア三世の手記】らしい。

そして、ここから脱出するには、彼女を倒さなくてはいけない。

同時に、本になった奴らも助けられるらしい。

倒す方法は、本としての体裁を壊す事。

その手段が、彼女の持つフロントリックピストルしかない。

炎熱系の魔術も有効だが、その場合は、【裁断の刑】に処され、完全に死ぬ。

 

「さてと、古本回収と洒落込む訳だが…」

 

「当然、俺達は行きますよ?」

 

俺+いつもの3人娘に、カッシュ・ギイブル・ウィンディ・テレサといった一部の2組の生徒、そしてイヴ先生で行く事になった。

マキシム達は…まあ、評判倒れもいい所だ。

 

「わ、私は行かないぞ!どうかしてる!」

 

「おいテメェ!シャキッとしやがれ!ンな情けねぇ事言ってる場合か!?」

 

先生が苛立ちげにマキシムの襟首を掴み上げる。

 

「う、うるさい!そういう君こそ何故戦える!?」

 

「うるせぇな!そりゃ、俺が教師だからだよ!!」

 

マキシムの情けない質問に、ハッキリとグレン先生が答える。

 

「俺だってあんな怪物と戦いたくねぇよ!けどなぁ!俺はアイツらの教師だ!生徒を守る義務があるし…何より!アイツらが俺の背中を見てんだよ!!その背中に、真の魔術師とは何たるやと、その目で問いかけてんだよ!!!…だったらここで、みっともねぇ真似なんて出来るか。…面倒せぇ」

 

そう言い捨てて、マキシムも捨てる。

…知ってますよ、グレン先生の背中が、誰よりも魔術師然としてる事を。

俺達は…アンタの背中を、ずっと追いかけてるんだから。

そして、もう1人、尊敬に値する先生の事も。

 

「…イヴ先生、準備はいいですか?」

 

「あら、誰にモノ言ってるのよ?」

 

「…頼もしい限り。グレン先生、俺達の準備は整いました」

 

そう言って、俺達は【Aの奥義書】がいる図書室まで移動した。

その中には…大量の本の化け物がいた。

 

「行くぞぉ!!!」

 

怪物の波の中を、ひたすら駆け抜ける。

左右から押し寄せる荒波を

 

「『我が手に星の天秤を』!」

 

俺の【グラビティ・タクト】が弾き飛ばし、

 

「おぉぉぉぉ!!」

 

「いやぁぁぁ!!」

 

【ウェポン・エンチャント】を施したグレン先生の拳と、リィエルの大剣が薙ぎ払い、

 

「システィ!」

 

「ありがとうルミア!『集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えろ』!」

 

ルミアのアシストを受けたシスティーナが、魔術で吹き飛ばし、

 

「「『大いなる風よ』!」」

 

ウィンディやテレサといった面々が、弾幕を張り押し返し、

 

「『寄りて集え・土塊で作られし・白痴の巨人』」

 

ギイブルが唱えた【コール・エレメンタル】によって召喚された、土の巨人が堰き止め、

 

「『蒼銀の氷精よ・冬のワルツを奏で・静寂を捧げよ』」

 

イヴ先生の【アイシクル・コフィン】が、氷柱に閉じ込める。

しかし倒す事が出来ず、増えてく一方の敵に、辟易してきた。

 

「畜生…まじウザイ。何とかならないのかよ」

 

「先生の【イクスティンクション・レイ】はダメなんですか?」

 

「…試してみるか」

 

バ、バカか!?

俺は慌ててホローツを取り出したグレン先生の手を弾く。

 

「バカかアンタは!?試していい訳ないだろ!!」

 

そこにイヴ先生も畳み掛ける。

 

「その呪文は3属性複合でしょ!?火遊び厳禁のルールに引っかかるかもしれないし、効く保証もない!特異法則結界空間を舐めないで!!今は貴方の銃技とインク弾だけが頼りなのよ!!それを忘れないで!!」

 

「チッ…厄介な…」

 

忌々しげにホローツを仕舞う。

まだまだ先が見えないその道を走り続ける中、不意にグレン先生が何かに躓く。

 

「「「「先生!」」」」

 

俺も慌てて糸を投げるが…間に合わない!

そう思った瞬間、

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

 

カッシュが割って入り、怪物達に体当たりした。

 

「「カッシュ!?」」

 

「へへっ…俺はここまで見たいっす…」

 

「待ってろ!今助け…」

 

「バカ!」

 

助けに行こうとするグレン先生をイヴ先生が、襟首掴んで強引に投げる。

 

「あの子を心意気に報いるには…助けたいなら…この戦いに勝つしかないの!!」

 

「…ッ!!」

 

グレン先生が、この言葉に顔を歪ませる。

 

「先生ー!俺は信じてるぜ!何とかしてくれるって!イヴ先生!アイル!グレン先…」

 

それ以降の言葉は聞こえなかった。

 

「…メイベルゥゥゥ!!まだなのか!!?」

 

「ごめんなさい…!まだ先です…!」

 

「…クソッタレがァ!!!」

 

「…ッ…」

 

そして、それを皮切りに…次々と脱落していくクラスメイト達。

気付けば、何時もの5人+イヴ先生とメイベルの7人だけになっていた。

心が欠けそうになりながら、それでも走り続ける。

皆グレン先生を送り出す為に…俺達に望みを託す為に…!

 

「…アイル君。大丈夫だよ」

 

「…ッ!!ルミア…」

 

隣を走るルミアが、俺の手を握ってくれる。

気付けば、自分の握力で拳が壊れそうになるくらい、強く握りこまれていた。

 

「絶対に勝とう。勝って皆を取り戻そう。だから…落ち着いて?」

 

ルミアの声が、瞳が…笑顔が…怒りに呑まれている俺を、引き戻してくれる。

 

「…そうだな。ありがとう…」

 

「うん!」

 

前を走るイヴ先生の手も、強く握り締められており、その虚空を睨む瞳は、地獄の釜のように煮えたぎっていた。

 

 

そして遂に最奥に着く。

着いた瞬間、メイベルが腕を引きちぎって、結界を張る。

グレン先生がその事に動揺しているが、見向きもしない。

何故なら…目の前に諸悪の根源がいたからだ。

一人の女性が、羽根ペンで書き物をしている。

不意に眼鏡を外し、ゆっくりとこっちを振り向く。

コイツが…【Aの奥義書】の本体。

 

「ようこそ、我がアルザー…随分と手荒ですのね」

 

俺は糸で攻撃するも、それは案の定、意味がなかった。

 

「…うるさい。死ね。じゃなきゃ、自殺しろ」

 

「フフフ…それは出来ませんわ。安心して下さい…!皆、私の資料にしてあげますから…!アハッアハハハハハハハハ!!!」

 

彼女を守る様に、怪物達が現れる。

 

「クソ!こんなにいるのか…!やるぞ!」

 

「全員、戦闘用意!グレンの援護よ!」

 

イヴ先生の号令により、システィーナとルミアも詠唱を始め、俺とリィエルが突進した。

今、最後の戦いの火蓋が、切って落とされた。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

俺とリィエルが、密集陣形の怪物達を纏めて吹き飛ばす。

この程度の敵なら、文字通り相手にならない。

 

「『集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えろ』!」

 

「『悪辣なる鬼女よ・其の呪われし腕で・彼の者を抱擁せよ』!」

 

「『蒼銀の氷精よ・冬のワルツを奏で・静寂を捧げよ』!」

 

システィーナの風の戦鎚が、ルミアの念動場が、イヴ先生の冷凍レーザーが、蹴散らす。

 

「おぉぉぉぉ!!」

 

その隙をついた、グレン先生のクイックドロウ。

これ程のチャンス、逃すはずがないのだが、

 

「あらあら…また本を汚しちゃって…マナーのなってない子達ですね…」

 

その辺から飛んできた本で、そのインク弾を防いでしまう。

さっきから一体何回繰り返したのだろうか。

何度も守りを引き剥がしてるのに、決まらない。

この大図書室の全ての本が、コイツの盾であり、矛なのだ。

 

「ッ!?グレン先生!」

 

その証拠に、今度は本の津波がグレン先生を飲み込もうとしたので、ギリギリで糸を巻き付け、手繰り寄せる。

 

「すまねぇ!助かった!」

 

「大丈夫!それより…マジウゼェ!!どうにかならねぇのか!?」

 

「落ち着きなさい!絶対にチャンスは来るわ!焦らずに耐え凌ぐのよ!」

 

苛立ち任せに叫ぶ俺を、イヴ先生が怒る。

 

「クッソがぁ!」

 

俺の糸と重力が、グレン先生の拳が、リィエルの大剣が、イヴ先生達の魔術が、あらゆる手段を以て対抗する。

手を替え品を替え、意表を突いても、圧倒的物量には意味が無く、ただイタズラにインクと時間を浪費してしまう。

 

「これで…!」

 

グレン先生が【グラビティ・コントロール】で空高く飛び、

 

「先生!『大いなる風よ』!」

 

システィーナが【ゲイル・ブロウ】で、更に打ち上げ、頭上を取る。

アリシア三世が上に気を取られた隙に、一気に走り寄り、眼前まで近づく。

 

「ッ!?あら…」

 

「隙あり!」

 

俺は【次元跳躍】で、上にいたグレン先生をすぐ側に呼ぶ。

一気にマナが持ってかれるが、それと引き換えに、今までで1番接近する。

 

「これで…ガハッ!?」

 

「何ッ!?っうお!?」

 

突然グレン先生の体が、俺の方に押し出される。

 

「嘘…!?先生が外した!?」

 

「違う!外されたのよ!」

 

よく見ると、グレン先生の脇腹に本がめり込み、そのまま俺ごと本の津波に飲まれてしまう。

 

「先生!アイル君!『見えざる手よ』!」

 

ルミアの【サイ・テレキネシス】が、俺達を引っ張りだす。

俺は何とか結晶を取り出し、マナを回復する。

 

「グレン先生…ワタ…し…ソロソロ…限界…デす…」

 

よく見ると、身体中ボロボロに引きちぎったメイベルが、掠れた声で話している。

メイベルもそうだが、それよりも弾切れになりそうだ。

 

「そうだわ!インクで汚した人も【裁断の刑】の対象にしましょう!」

 

さもいい事を思いついたように、とんでもない事言うアリシア三世。

 

「させるか…!」

 

俺は超高速で糸を放つも、それは本に阻まれる。

 

「クソ…!どうする…!手の施しようが…!」

 

いや、厳密には1つだけある。

何せ、わざわざ禁止にするほどだ。

…背に腹はかえられない…か…!

 

「ルミア…香油持ってる?」

 

「…持ってるけど…どうするの?」

 

その目は鋭く俺を睨んでる。

どうやら…俺が何がしたいか、分かったらしい。

 

「…聞くって事は、分かってるんだろ?」

 

「だったら、私が貸す訳ない事も分かってるよね」

 

「じゃあ、どうするんだ?もう希望に縋ってる暇は無いぞ?」

 

「そんな言い訳は聞いてないよ!絶対にダメ!」

 

俺とルミアの話し合いは完全に平行線だ。

…これはダメか。

だったら…他の…!

 

「…グレン先生、銃は大丈夫だったんですよね?」

 

「…それがどうした?」

 

「ここの法則って…当時のルールにしか則ってないんじゃないですか?だから銃は大丈夫だった。…その当時、銃なんて無かったから」

 

そう、俺はそこが気になっていた。

もしかして…この法則は、魔術ないし、当時あった技術にしか対応してないんじゃないのか?

 

「…!?確かに…そういう事なら説明がつく。だがどうやって…」

 

「俺の糸にルミアの香油を染み込ませる。そこに先生の弾丸に入ってる火薬を【ショック・ボルト】で引火させる。これなら…ワンチャンいけるんじゃない?」

 

「確かに…だが、1つだけ欠点があるぞ。…時間がかかる事だ。多分…間に合わない」

 

そう、そこがネックなのだ。

この作戦は一見リスクが低い様で高い。

なんせ、時間がかかりすぎるのだ。

誰かが足止めしなくちゃいけないから、はっきり言って無謀な賭けだ。

そう考えてると、突然グレン先生が、イヴ先生に話しかける。

 

「おいイヴ、銃は使えたよな?」

 

「…使えるけど、それが?」

 

「なら後は頼む。…俺が炎熱系魔術を使う」

 

「「「ダメ!!」」」

 

俺達が止めるが、先生は聞く耳を持たずに銃を、イヴ先生に押し付けた。

 

「イヴ!後は任せた!生徒達を頼む!」

 

 

 

「…ええ、いいわよ?」

 

この時、私の脳裏を過ったのは、

 

(イヴ先生!アイル!グレン先…)

 

(グレン先生…イヴ先生…どうか…)

 

(そうだね、グレン先生!イヴ先生!後はよろしくお願いしま…)

 

「ええ、私はイグナイトだもの。上手くやるわ…」

 

この2週間共に過ごした、2組の子達だった。

 

(よ、よろしくお願いします!イヴ先生!)

 

(やったぁ!俺達強くなってるよ!)

 

(グレン先生とイヴ先生のおかぜだよな!)

 

(ありがとうございます!イヴ先生!)

 

そして、居候先の兄妹だった。

 

(これから公私共々よろしく。イヴ先生!)

 

(あ、ありがとうございます…イヴ様!)

 

「安心して任せない。ただし…こっちの方をね」

 

私は銃を差し出すグレンの手を無視して。

私は…()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「…え?イヴ…先生…?」

 

「バカ!?お前、何してる!?」

 

イヴ先生は銃を受け取らず、代わりに炎を生み出した。

そんな事したら…イヴ先生が…!

 

「貴方の炎で何が出来るのよ?強力な炎熱系は、私かアルタイルしか撃てないでしょう?…はぁ、私もヤキが回ったものね」

 

「何言ってんだよ!?だったら俺が!?」

 

「バカね。それこそ何言ってるのよ?アルタイル。…教師が生徒を犠牲にする訳には…いかないでしょう?」

 

…ギルティ。

何処からかそんな声が聞こえる。

その時には手遅れで、既に手足の本化が始まっていた。

 

「グレン、あの子達には貴方が必要よ。アルタイル、ベガに謝っておいて?買い物行けなくてごめんって」

 

「「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

俺達の制止も聞かず

 

「『真紅の炎帝よ・劫火の軍旗掲げ・朱に蹂躙せよ』!!!」

 

俺のとは比べ物にならないほど気高く美しい、【インフェルノ・フレア】が、全てを焼き尽くす。

 

 

 

イヴは、切り刻まれながら、この2週間と少しの事を思い出す。

こんな自分に、懐いてくれた生徒達。

今まさに、涙を流してくれる3人娘。

居候先の老夫婦と、何だかんだ可愛がった兄妹。

そして…元同僚のドヤ顔。

 

(ああ…何だか…悪くない。悪くないって…そう思ったの。…アルタイル…ベガ…実は私…貴方達の事…弟妹みたいに想ってたのよ?…グレン…これでも私…本当は…)

 

「イヴ先生…実は俺…」

 

「イヴ…これでも俺…」

 

アルタイルは喚き散らすアリシア三世を縛りあげ、グレンの前に転がす。

グレンはそんなアリシア三世の額に、銃口を突きつけ、

 

(貴方の事…嫌いじゃ…なかった…わよ…)

 

「…貴女の事、姉貴みたいって想ってたよ」

 

「…本当はお前の事、嫌いじゃなかったよ」

 

無慈悲に、引き金を引いた。

 

 

 

俺達は呆然と、さっきまでイヴ先生だった、紙くずを見つめていた。

システィーナとルミアが静かに泣き、リィエルが涙を流し、グレン先生が銃のグリップを握り締め、俺は…唇を噛み締めて、拳を握り込む。

 

「…おーい!!!」

 

声の方を向くと、カッシュ達が走りよってくる。

 

「グレン先生!皆!やったんだな!!」

 

「信じてましたわ!!」

 

それぞれが俺らを激励してくれるが、誰も答えない。

こんなのが…勝利と…言えるのか…?

 

「で?イヴ先生は?」

 

「その…紙くずは?」

 

「「「「「ーッ!!!?」」」」」

 

俺達は核心を突かれ、何も言えない。

何も言わない俺達に、嫌な予感がしたのか、カッシュが震える声で、俺達に聞く。

 

「…おいアイル。グレン先生…冗談だよな?…何かのドッキリなんだよな…!?なぁ!?何か言えよ!!!?」

 

肩を掴まれ揺さぶられる俺は、ボソボソと呟く。

 

「イヴ先生は…どうしようも無い状況を…覆すために…炎熱系魔術を使って…ッ!俺達は…何とか…!!」

 

「嘘…だろ…!」

 

「そんな…!」

 

皆現状が追いついたのか、足元の紙くずを見て、涙を流す。

 

「…皆さん…」

 

「黙ってろ。…お前に言っても仕方ねぇ事だってのは、分かってる。だけど…黙っててくれ」

 

グレン先生が、メイベルの言葉を止める。

 

「…私は、皆さんのお陰で、アリシア三世となれました。故に最後の償いをさせて下さい。…『アリシア三世の名において、貴方達を不問と処し、赦します』」

 

そう言った途端、突然紙くずが光だし、独りでに動き出す。

それはやがて、人の形を形成し…イヴ先生が元の姿に戻った。

 

「…?あれ…私…確か…?貴方達…何で泣いて…」

 

「「「「「「「…イヴ先生〜〜〜〜!!!」」」」」」」

 

皆が一気に抱き着く。

そうか、この学院はアリシア三世によって、支配されている。

今回はそれをいい方に利用して…恩赦を与えたのか。

 

「キャアアア!!!?ちょっと貴方達!?いきなり何よ!?」

 

「「「「「「「良かったよ〜〜〜〜!!!」」」」」」」

 

「ちょっと…離しなさ〜い!!!」




ここで、イヴとアルタイルの距離感が近い理由が、分かりました。
ええ、ヒロインではありません、姉です。
姉ビームなんです。
こんな姉なら欲しかった…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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