本当はもっと早く投稿したかったんですが、色々ありまして…。
それではよろしくお願いします。
「アイル君!一緒に旅行行かない!?」
「へっ?旅行?」
俺はあまりにも唐突すぎるルミアの発言に、思わず変な声が出てしまった。
「旅行って…
「へ?う、うん!
また随分と大胆な…。
いや、何時までもチンタラしてる俺が悪いか。
ルミアが誘ってくれた訳だし、漢見せないとな!
「…いつ頃?バイトの調整もあるから、日取りが決まってるなら、教えて貰えると助かる」
「い、いいの!?やったぁ!!えっとね…」
嬉しそうにするルミアを見ながら、俺はフィーベル家の親御さんを思い出す。
「それにしても、よくレナードさん達が許したよな。あの親バカ夫婦…いや親父さんが」
俺は授業参観の時の事を思い出す。
あれほどの親バカは、そうそういないだろう。
「…へ?許す?お父様が?」
「ん?だってそうだろ?2人きりなんて、絶対に…あれ?」
もしかして…俺達、全力で食い違ってる?
その証拠に、どんどんとルミアの顔が、赤くなっていく。
「い、いや!?ち、違うよ!?私達っていうのは、い、いつものメンバーで!!///」
…やっぱり。
くっそ恥ずい。
「…殺してくれ…///」
思わず、顔を手で隠しながら、そう呻く。
だって…まるで俺だけ自意識過剰じゃん…!///
「そ、その〜…アイル君は…2人きりが、良かったの?///」
「…頼む…今は掘り下げないでくれ…!///そ、それよりも!こ、今度は違う意味でOKしたな?ほら、保護者無しってことになるだろ?」
旅行に行く以上、遠くに行く事になる。
そこに俺達だけってのは、いいとこのお嬢様達を、行かせる訳にはいかんだろうに。
「それなら…あそこ。システィが、グレン先生を誘ってるよ」
「なるほどね…あれなら納得だわ。…うん?」
何やら廊下が騒がしいな…。
そう思っていると、何者かが、グレン先生に飛びついたのだ。
「ぐぅ〜れぇ〜ん!!」
「あ、アルフォネア教授!?」
そう、最近まで姿を見せなかった、セリカ=アルフォネア教授だった。
そのまま、強引に旅行にグレン先生を誘うアルフォネア教授を見ながら、
(しまった…)
(何で私達…)
(気づかなかったんだろう…!?)
(((目下最大最強のライバルは…あの人じゃん!!)))
奇しくも、俺とルミアとシスティーナの考えが一致した瞬間だった。
システィーナの気持ちに、気づいている俺とルミアは、何とか2人を引っつけようとしている。
今回の旅行の件も、その一環なのだろう。
しかし、俺達はすっかり失念していた。
アルフォネア教授という、システィーナの完全上位互換の存在を…!
(ルミア!)
(アイル君!)
「あ、アルフォネア教授!いいですね旅行!羨ましいです〜!」
「俺達も着いて行っていいですか!?ほら!『旅は道連れ』ってやつ(使い方はおそらく違う)ですよ!」
すまないシスティーナ…!
俺達に打てる手はこれだけだ…!
「お!お前達も来るのか!いいぞいいぞ〜!この子も喜ぶしな!」
「だ〜か〜ら〜!離せってぇの!!」
全く意識すらしていないであろう、アルフォネア教授は快諾。
こうして俺達はいつものメンツ+アルフォネア教授の6名で旅行に行く事になった。
その場所とは…【スノリア】だ。
スノリアは、以前行った聖リリィ魔術女学院を擁する、リリタニア地方の東にある、8割以上を【永久雪山】と呼ばれる【シルヴァスノ山脈】を擁する場所だ。
要するに、滅茶苦茶寒い。
俺は慌てて、ガチめの防寒服を引っ張り出した。
そんな俺達は、今電車に揺られている。
「それにしても…何でスノリアなんだ?グレン先生じゃないけど、あそこ寒いだけだろ?」
「あれ?アイルは知らなかった?特に今回の目的地の【ホワイトタウン】。あそこは今、人気の観光名所なのよ?レジャーだけじゃなく、今はちょうど【銀竜祭】とよばれる、伝統的なお祭りもやってるはずよ。だからこの休暇に、スノリアに行くのは、いい選択だと思うわ」
なるほどね。
道理で、ベガかお土産がどうのうるさい訳だ。
そう思いつつ、俺は俺と先生が使う、防寒用マフラーを編んでいる。
「…で?いつの間にか、グレン先生もアルフォネア教授もいないけど、どこ行った?」
「…アルフォネア教授はサロン。グレン先生も防寒対策の相談をしに、追いかけたわ」
なるほどね…確かに死活問題だもんな…本気で。
「イジけんなよ、システィーナ。チャンスはこれからだぜ?」
そう言うと、システィーナは顔を真っ赤にさせながら、慌てて否定する。
「な!?い、一体何のチャンスなのよ!?意味が分からないわ!?///…それより、アイルは何してるのよ!?」
「これ?先生用の防寒対策のマフラー。空調調整魔術も付与してるから、無いよりマシだとは思うが…」
「ほ、本当に女子力高すぎない…!?」
俺の女子力の高さに、愕然とするシスティーナ。
そう思うなら、自分磨きをしなさい。
まずは…素直になるところからだな。
「で?ルミアは何を必死に読んでるんだ?」
「あ、アイル君!?これは…その…!?」
俺はルミアが読み込んでる、雑誌と思しきものを覗き込む。
「…?観光雑誌か?それに、随分と書き込んであるな」
「…うぅ…///」
よく見ると、大人数で楽しむというより、カップルや夫婦にオススメな場所が多かった。
俺はそれを見て、気になった場所を指さす。
「…俺はここが気になる。ルミア的にはここか?」
「う、うん!折角だし、一緒に行こうね!///」
「ああ、そうだな。一緒に行くか」
ルミアの嬉しそうな顔に、俺もつられて微笑む。
このままルミアが笑顔であり続けれられるように…そう祈りながら。
「…目の前でイチャついてんじゃないわよ。惚気んなら他所でやってよ」
システィーナが、ジト目で睨んでくる。
悔しいなら、お前はもっと素直になりなさい。
そんなこんなで辿り着いた、スノリアのホワイトタウン。
一面銀世界のその光景に、俺ですら柄にもなく、ワクワクしていた。
「うわぁ!ここがホワイトタウンなのね!?素敵!」
「ねえ見て!あそこで大道芸やってるよ!」
俺は、はしゃぎ倒す2人に苦笑いを浮かべながらも、注意を促す。
「おーい!お前ら!あんまはしゃぎ過ぎんなよ!迷子になるぞ!」
「「はーい!」」
本当に分かってるのかね、あの金銀姉妹は?
まあ、気持ちはよく分かる。
俺だってそうしたいくらいだ。
周りにある建物は煉瓦造りで、鋭角的な三角屋根に大きな煙突がある。
遠くを見れば、凍てつく純白の連峰は威圧的で圧倒的だが、その畏怖を超えた美しさがある。
駅前広場やメインストリートには、所狭しと屋台が出ており、軒先、看板、店頭など街のあらゆる場所に、色とりどりのロウソクや、着飾った雪だるまがある。
降りしきる雪に、ロウソクの火に写し出され、儚げな雰囲気を醸し出す。
そんなフィジテでは、絶対に見る事が叶わない光景に、テンションが上がるのは致し方ない。
「この時期のスノリアは、見所が多いぞ?」
「苺タルトの屋台…どこ…?」
そんなコアな屋台は無いだろう…。
あってもケーキ屋とかだろうな。
そんな感動気味の、俺達の後ろで
「さっむぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「相変わらず台無しだよ、先生」
こういう時、絶対に雰囲気を台無しにする事に定評のある、グレン先生。
ていうか、そんな薄着だからだろうが。
何時もの格好に、講師用ローブを羽織って、申し訳程度の俺が作ったマフラー。
ほら見ろ、システィーナの視線が、この寒さに負けず劣らずの冷たさだぞ?
「先生…そんな薄着なんて…死ぬ気ですか?」
「うるせぇ!!宿無しの俺に、そんないい服ある訳ねぇだろ!アルタイル!セリカ!お前達の【エア・コンディション】も、突き抜けてるわ!!」
むぅ…確かに俺の想定に無い寒さだからな。
少し弱かったか…?
「ていうか、あれにも限度があるって事くらい、知ってるでしょうが」
「ハハハ!流石に無理だったか!まあ、後でちゃんとしたやつ買ってやるよ。ついでにもっと強いやつ付与してやる。そら!まずはチェックインに行くぞ!」
そんなグレン先生を、強引に引っ張っていくアルフォネア教授。
いつもに増して、積極的なアルフォネア教授に、二重の意味で、嫌な予感がする。
システィーナ的な意味でも…、何やらタウムの天文神殿の時みたいな感じでも…。
そう思いつつも、辿り着いたのは、この近辺で最高級のホテルだった。
「…は?ここ?…え?ここに泊まるの?」
「俺達みたいな下賎な平民どこきが…?」
俺とグレン先生は、あまりにもすごい建物に、思わず唖然としてしまい、
「流石にこんなにすごい宿泊施設…初めてかも…」
さしものシスティーナすら、緊張を隠せない。
「…あの…本当に私達まで良かったんですか?」
流石は元王女のルミアに変化はなく
「むぅ。でもルミア。私、皆、一緒がいい」
どこでも寝泊まりできるリィエルはいつも通り。
「ハハハ!気にするな!今回の旅行の経費は、私が持つさ。グレンが楽しむなら、お前達は必須だろう?だったら必要経費さ、遠慮するなよ!」
そんな俺達を豪快に笑い飛ばした、アルフォネア教授。
そのまま連れられていくと、何やら入口が騒がしかった。
「何事だ…?」
そう呟きながら、さり気なくルミアを庇いながら、ホテルに向かうと
「このホテルは、我々【銀竜教団(S.D.K)】が占拠した!」
はぁ?いきなり何だよ?
全身白のローブに身を包み、白い頭巾を被った連中が、入口を陣取っていた。
「このスノリアは、白銀竜様が護る神聖なる聖域!」
「貴様ら余所者が足を踏み入れ、享楽を貪るなぞ言語道断!」
「余所者はこの土地から去れ!偽りの【銀竜祭】を即刻中止せよ!」
「欺瞞に満ちた銀竜祭を奉る者達に、竜罰を!」
「「「「「「S.D.K!!S.D.K!!」」」」」」
そんな連中は、変なプラカードを掲げ、バリケードで囲むスノリアの警備官隊と、一触即発の睨み合いをしていた。
「…な、何なのこれ?」
システィーナが呆れたように呟くと、その答えは先生から帰ってきた。
「まさかここで銀竜教団の登場とはな…」
「何ですかアイツら?」
「
どれだけ帰りたいんだよ…。
まあ、手遅れなんだけどさ。
「ちょっと先生!あれを放っておくんですか!?」
「いやシスティーナ。かえって手を出す方が、マズイんじゃないか?」
俺は乗り込もうとするシスティーナを、止める。
何より…コイツの身が危険だ。
「そうだな。これはここの警備官の仕事だ。それにコイツらは、テロリストっていうよりは、市民団体みたいなものだ。絶対に滅ぼさなくちゃいけない邪悪じゃない」
確かにやってる事は、ただのシュプレヒコールだけだしな。
最も…あの人の前じゃ、何をしても、同じだろうがな。
そろそろ、教えておくか。
「まあ、帰る気満々なのはいいけどさ?既に手遅れだよ?だってほら…」
そう言って俺が指さす先には
「アルフォネア教授、周りの状況一切気にせず、行っちゃったし」
「「何してるの!!?」」
その後?決まってるだろ?
警備官隊も銀竜教団も、全部吹き飛ばしたよ。
ついでにホテルも、地図上から消したよ。
死者0人だったのが、唯一の救いだったなぁ…。
「いやぁ、まさか貴女が名高き【
そう話すのは、御歳35歳になる、この街の若き市長である【ジョン=マイヤール】氏だ。
ホテル事件の後、俺達は彼の家に招待され、晩餐の歓待を受けたのだ。
「貴女のおかげで、銀竜教団とのイザコザを早期解決出来ましたし、軟禁された方々も無事に解放されました。何とか銀竜祭を開催出来そうです」
「フッ、そうか。それは良かった…」
何か言ったのだろが、ここからでは聞こえなかった。
でも、グレン先生の顔色を見ればわかる。
間違えなく、ロクでもない事だろう。
その後もギリギリのグレン先生のフォローにより、何とか崩壊させた犯人を隠し通せた。
…相当の良心の呵責と引き替えに。
「あの、1つ聞きたいんですが…そもそも銀竜祭って何ですか?」
「銀竜祭とは、遥か大昔、この地方一帯には、白銀竜という竜の神様の加護があったと、されていました。その白銀竜信仰にあやかった儀式なのですよ」
なるほど、簡潔で分かりやすい。
そして、銀竜教団はその信仰の、最右翼集団なんだとか。
思ってたより根が深い問題らしい。
それはともかくとして、こっちでの必要経費は全て、市長さんが出してくれるらしい。
本当に良心の呵責がハンパない。
挙げ句の果てに、部屋まで用意してくれた。
アルフォネア教授、グレン先生、俺には個室。
ルミア達3人娘は、大部屋を用意してくれた。
もちろん、俺の部屋が1番狭く、1番質素だ。
それでも貴族の家なので、かなり立派だ。
風呂にも入り、のんびりしていると、ノック音がする。
「ん?はい?」
ドアを開けると、そこにはルミアがいた。
珍しくアルタイル君を赤面させました。
というか、ルミアとアルタイルの絡みが、書いてて1番楽しいです。
青春っていうかそういうのが、楽しいです。
それでは失礼します。
ありがとうございました。