ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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という訳で、12巻に突入です。
本当はもっと早く投稿したかったんですが、色々ありまして…。
それではよろしくお願いします。


スノリア編第1話

「アイル君!一緒に旅行行かない!?」

 

「へっ?旅行?」

 

俺はあまりにも唐突すぎるルミアの発言に、思わず変な声が出てしまった。

 

「旅行って…俺達(2人)で行くのか?」

 

「へ?う、うん!私達(いつもの5人)だよ!」

 

また随分と大胆な…。

いや、何時までもチンタラしてる俺が悪いか。

ルミアが誘ってくれた訳だし、漢見せないとな!

 

「…いつ頃?バイトの調整もあるから、日取りが決まってるなら、教えて貰えると助かる」

 

「い、いいの!?やったぁ!!えっとね…」

 

嬉しそうにするルミアを見ながら、俺はフィーベル家の親御さんを思い出す。

 

「それにしても、よくレナードさん達が許したよな。あの親バカ夫婦…いや親父さんが」

 

俺は授業参観の時の事を思い出す。

あれほどの親バカは、そうそういないだろう。

 

「…へ?許す?お父様が?」

 

「ん?だってそうだろ?2人きりなんて、絶対に…あれ?」

 

もしかして…俺達、全力で食い違ってる?

その証拠に、どんどんとルミアの顔が、赤くなっていく。

 

「い、いや!?ち、違うよ!?私達っていうのは、い、いつものメンバーで!!///」

 

…やっぱり。

くっそ恥ずい。

 

「…殺してくれ…///」

 

思わず、顔を手で隠しながら、そう呻く。

だって…まるで俺だけ自意識過剰じゃん…!///

 

「そ、その〜…アイル君は…2人きりが、良かったの?///」

 

「…頼む…今は掘り下げないでくれ…!///そ、それよりも!こ、今度は違う意味でOKしたな?ほら、保護者無しってことになるだろ?」

 

旅行に行く以上、遠くに行く事になる。

そこに俺達だけってのは、いいとこのお嬢様達を、行かせる訳にはいかんだろうに。

 

「それなら…あそこ。システィが、グレン先生を誘ってるよ」

 

「なるほどね…あれなら納得だわ。…うん?」

 

何やら廊下が騒がしいな…。

そう思っていると、何者かが、グレン先生に飛びついたのだ。

 

「ぐぅ〜れぇ〜ん!!」

 

「あ、アルフォネア教授!?」

 

そう、最近まで姿を見せなかった、セリカ=アルフォネア教授だった。

そのまま、強引に旅行にグレン先生を誘うアルフォネア教授を見ながら、

 

(しまった…)

 

(何で私達…)

 

(気づかなかったんだろう…!?)

 

(((目下最大最強のライバルは…あの人じゃん!!)))

 

奇しくも、俺とルミアとシスティーナの考えが一致した瞬間だった。

システィーナの気持ちに、気づいている俺とルミアは、何とか2人を引っつけようとしている。

今回の旅行の件も、その一環なのだろう。

しかし、俺達はすっかり失念していた。

アルフォネア教授という、システィーナの完全上位互換の存在を…!

 

(ルミア!)

 

(アイル君!)

 

「あ、アルフォネア教授!いいですね旅行!羨ましいです〜!」

 

「俺達も着いて行っていいですか!?ほら!『旅は道連れ』ってやつ(使い方はおそらく違う)ですよ!」

 

すまないシスティーナ…!

俺達に打てる手はこれだけだ…!

 

「お!お前達も来るのか!いいぞいいぞ〜!この子も喜ぶしな!」

 

「だ〜か〜ら〜!離せってぇの!!」

 

全く意識すらしていないであろう、アルフォネア教授は快諾。

こうして俺達はいつものメンツ+アルフォネア教授の6名で旅行に行く事になった。

 

 

その場所とは…【スノリア】だ。

スノリアは、以前行った聖リリィ魔術女学院を擁する、リリタニア地方の東にある、8割以上を【永久雪山】と呼ばれる【シルヴァスノ山脈】を擁する場所だ。

要するに、滅茶苦茶寒い。

俺は慌てて、ガチめの防寒服を引っ張り出した。

そんな俺達は、今電車に揺られている。

 

「それにしても…何でスノリアなんだ?グレン先生じゃないけど、あそこ寒いだけだろ?」

 

「あれ?アイルは知らなかった?特に今回の目的地の【ホワイトタウン】。あそこは今、人気の観光名所なのよ?レジャーだけじゃなく、今はちょうど【銀竜祭】とよばれる、伝統的なお祭りもやってるはずよ。だからこの休暇に、スノリアに行くのは、いい選択だと思うわ」

 

なるほどね。

道理で、ベガかお土産がどうのうるさい訳だ。

そう思いつつ、俺は俺と先生が使う、防寒用マフラーを編んでいる。

 

「…で?いつの間にか、グレン先生もアルフォネア教授もいないけど、どこ行った?」

 

「…アルフォネア教授はサロン。グレン先生も防寒対策の相談をしに、追いかけたわ」

 

なるほどね…確かに死活問題だもんな…本気で。

 

「イジけんなよ、システィーナ。チャンスはこれからだぜ?」

 

そう言うと、システィーナは顔を真っ赤にさせながら、慌てて否定する。

 

「な!?い、一体何のチャンスなのよ!?意味が分からないわ!?///…それより、アイルは何してるのよ!?」

 

「これ?先生用の防寒対策のマフラー。空調調整魔術も付与してるから、無いよりマシだとは思うが…」

 

「ほ、本当に女子力高すぎない…!?」

 

俺の女子力の高さに、愕然とするシスティーナ。

そう思うなら、自分磨きをしなさい。

まずは…素直になるところからだな。

 

「で?ルミアは何を必死に読んでるんだ?」

 

「あ、アイル君!?これは…その…!?」

 

俺はルミアが読み込んでる、雑誌と思しきものを覗き込む。

 

「…?観光雑誌か?それに、随分と書き込んであるな」

 

「…うぅ…///」

 

よく見ると、大人数で楽しむというより、カップルや夫婦にオススメな場所が多かった。

俺はそれを見て、気になった場所を指さす。

 

「…俺はここが気になる。ルミア的にはここか?」

 

「う、うん!折角だし、一緒に行こうね!///」

 

「ああ、そうだな。一緒に行くか」

 

ルミアの嬉しそうな顔に、俺もつられて微笑む。

このままルミアが笑顔であり続けれられるように…そう祈りながら。

 

「…目の前でイチャついてんじゃないわよ。惚気んなら他所でやってよ」

 

システィーナが、ジト目で睨んでくる。

悔しいなら、お前はもっと素直になりなさい。

そんなこんなで辿り着いた、スノリアのホワイトタウン。

一面銀世界のその光景に、俺ですら柄にもなく、ワクワクしていた。

 

「うわぁ!ここがホワイトタウンなのね!?素敵!」

 

「ねえ見て!あそこで大道芸やってるよ!」

 

俺は、はしゃぎ倒す2人に苦笑いを浮かべながらも、注意を促す。

 

「おーい!お前ら!あんまはしゃぎ過ぎんなよ!迷子になるぞ!」

 

「「はーい!」」

 

本当に分かってるのかね、あの金銀姉妹は?

まあ、気持ちはよく分かる。

俺だってそうしたいくらいだ。

周りにある建物は煉瓦造りで、鋭角的な三角屋根に大きな煙突がある。

遠くを見れば、凍てつく純白の連峰は威圧的で圧倒的だが、その畏怖を超えた美しさがある。

駅前広場やメインストリートには、所狭しと屋台が出ており、軒先、看板、店頭など街のあらゆる場所に、色とりどりのロウソクや、着飾った雪だるまがある。

降りしきる雪に、ロウソクの火に写し出され、儚げな雰囲気を醸し出す。

そんなフィジテでは、絶対に見る事が叶わない光景に、テンションが上がるのは致し方ない。

 

「この時期のスノリアは、見所が多いぞ?」

 

「苺タルトの屋台…どこ…?」

 

そんなコアな屋台は無いだろう…。

あってもケーキ屋とかだろうな。

そんな感動気味の、俺達の後ろで

 

「さっむぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

「相変わらず台無しだよ、先生」

 

こういう時、絶対に雰囲気を台無しにする事に定評のある、グレン先生。

ていうか、そんな薄着だからだろうが。

何時もの格好に、講師用ローブを羽織って、申し訳程度の俺が作ったマフラー。

ほら見ろ、システィーナの視線が、この寒さに負けず劣らずの冷たさだぞ?

 

「先生…そんな薄着なんて…死ぬ気ですか?」

 

「うるせぇ!!宿無しの俺に、そんないい服ある訳ねぇだろ!アルタイル!セリカ!お前達の【エア・コンディション】も、突き抜けてるわ!!」

 

むぅ…確かに俺の想定に無い寒さだからな。

少し弱かったか…?

 

「ていうか、あれにも限度があるって事くらい、知ってるでしょうが」

 

「ハハハ!流石に無理だったか!まあ、後でちゃんとしたやつ買ってやるよ。ついでにもっと強いやつ付与してやる。そら!まずはチェックインに行くぞ!」

 

そんなグレン先生を、強引に引っ張っていくアルフォネア教授。

いつもに増して、積極的なアルフォネア教授に、二重の意味で、嫌な予感がする。

システィーナ的な意味でも…、何やらタウムの天文神殿の時みたいな感じでも…。

そう思いつつも、辿り着いたのは、この近辺で最高級のホテルだった。

 

「…は?ここ?…え?ここに泊まるの?」

 

「俺達みたいな下賎な平民どこきが…?」

 

俺とグレン先生は、あまりにもすごい建物に、思わず唖然としてしまい、

 

「流石にこんなにすごい宿泊施設…初めてかも…」

 

さしものシスティーナすら、緊張を隠せない。

 

「…あの…本当に私達まで良かったんですか?」

 

流石は元王女のルミアに変化はなく

 

「むぅ。でもルミア。私、皆、一緒がいい」

 

どこでも寝泊まりできるリィエルはいつも通り。

 

「ハハハ!気にするな!今回の旅行の経費は、私が持つさ。グレンが楽しむなら、お前達は必須だろう?だったら必要経費さ、遠慮するなよ!」

 

そんな俺達を豪快に笑い飛ばした、アルフォネア教授。

そのまま連れられていくと、何やら入口が騒がしかった。

 

「何事だ…?」

 

そう呟きながら、さり気なくルミアを庇いながら、ホテルに向かうと

 

「このホテルは、我々【銀竜教団(S.D.K)】が占拠した!」

 

はぁ?いきなり何だよ?

全身白のローブに身を包み、白い頭巾を被った連中が、入口を陣取っていた。

 

「このスノリアは、白銀竜様が護る神聖なる聖域!」

 

「貴様ら余所者が足を踏み入れ、享楽を貪るなぞ言語道断!」

 

「余所者はこの土地から去れ!偽りの【銀竜祭】を即刻中止せよ!」

 

「欺瞞に満ちた銀竜祭を奉る者達に、竜罰を!」

 

「「「「「「S.D.K!!S.D.K!!」」」」」」

 

そんな連中は、変なプラカードを掲げ、バリケードで囲むスノリアの警備官隊と、一触即発の睨み合いをしていた。

 

「…な、何なのこれ?」

 

システィーナが呆れたように呟くと、その答えは先生から帰ってきた。

 

「まさかここで銀竜教団の登場とはな…」

 

「何ですかアイツら?」

 

銀竜教団(Silver.Dragon.Clan)。略してS.D.K。【白銀竜信仰】っていう、土着の新興宗教を極端に拗らせた連中が作った、宗教系秘密結社だ。だが、こういう怪しげな非公認非営利団体は、常に監視の対象になってるはずなんだが…よし!これは無理そうだな!帰るか!」

 

どれだけ帰りたいんだよ…。

まあ、手遅れなんだけどさ。

 

「ちょっと先生!あれを放っておくんですか!?」

 

「いやシスティーナ。かえって手を出す方が、マズイんじゃないか?」

 

俺は乗り込もうとするシスティーナを、止める。

何より…コイツの身が危険だ。

 

「そうだな。これはここの警備官の仕事だ。それにコイツらは、テロリストっていうよりは、市民団体みたいなものだ。絶対に滅ぼさなくちゃいけない邪悪じゃない」

 

確かにやってる事は、ただのシュプレヒコールだけだしな。

最も…あの人の前じゃ、何をしても、同じだろうがな。

そろそろ、教えておくか。

 

「まあ、帰る気満々なのはいいけどさ?既に手遅れだよ?だってほら…」

 

そう言って俺が指さす先には

 

「アルフォネア教授、周りの状況一切気にせず、行っちゃったし」

 

「「何してるの!!?」」

 

その後?決まってるだろ?

警備官隊も銀竜教団も、全部吹き飛ばしたよ。

ついでにホテルも、地図上から消したよ。

死者0人だったのが、唯一の救いだったなぁ…。

 

 

「いやぁ、まさか貴女が名高き【第七階梯(セプテンデ)】のセリカ=アルフォネアさんだったとは」

 

そう話すのは、御歳35歳になる、この街の若き市長である【ジョン=マイヤール】氏だ。

ホテル事件の後、俺達は彼の家に招待され、晩餐の歓待を受けたのだ。

 

「貴女のおかげで、銀竜教団とのイザコザを早期解決出来ましたし、軟禁された方々も無事に解放されました。何とか銀竜祭を開催出来そうです」

 

「フッ、そうか。それは良かった…」

 

何か言ったのだろが、ここからでは聞こえなかった。

でも、グレン先生の顔色を見ればわかる。

間違えなく、ロクでもない事だろう。

その後もギリギリのグレン先生のフォローにより、何とか崩壊させた犯人を隠し通せた。

…相当の良心の呵責と引き替えに。

 

「あの、1つ聞きたいんですが…そもそも銀竜祭って何ですか?」

 

「銀竜祭とは、遥か大昔、この地方一帯には、白銀竜という竜の神様の加護があったと、されていました。その白銀竜信仰にあやかった儀式なのですよ」

 

なるほど、簡潔で分かりやすい。

そして、銀竜教団はその信仰の、最右翼集団なんだとか。

思ってたより根が深い問題らしい。

それはともかくとして、こっちでの必要経費は全て、市長さんが出してくれるらしい。

本当に良心の呵責がハンパない。

挙げ句の果てに、部屋まで用意してくれた。

アルフォネア教授、グレン先生、俺には個室。

ルミア達3人娘は、大部屋を用意してくれた。

もちろん、俺の部屋が1番狭く、1番質素だ。

それでも貴族の家なので、かなり立派だ。

風呂にも入り、のんびりしていると、ノック音がする。

 

「ん?はい?」

 

ドアを開けると、そこにはルミアがいた。




珍しくアルタイル君を赤面させました。
というか、ルミアとアルタイルの絡みが、書いてて1番楽しいです。
青春っていうかそういうのが、楽しいです。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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