ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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こういう青春送りたかったな…。
それではよろしくお願いします。


スノリア編第2話

ネグリジェ姿のその格好に、妙な緊張感を抱いてしまった。

 

「アイル君。これからシスティ達と談話室で、課題するんだけど、どうかな?」

 

課題って…秋休みの課題か?

 

「お前ら、持ってきてのか!?俺は普通に置いてきたのに…」

 

とはいえ暇だしな、付き合うか。

 

「OK。上着着てくるから、ちょっと待ってて」

 

そう言って直ぐに上着を着て、廊下に出る。

そういえば、ルミアの服の事、触れてないな。

 

「ルミア…そのネグリジェ、似合ってる」

 

「ッ!!?///もう!そういうところ!!///」

 

「どういうところ!?」

 

顔を赤くしながら、俺の腕をポカポカと殴ってくる。

いや、褒めただけじゃん?何でさ。

そのまま俺達は談話室で、課題を進める。

 

「おいお前達。何してんだ?」

 

風呂上がりのグレン先生がやってきた。

その突然の登場に、ルミアとシスティーナの2人が、前を隠す。

俺は苦笑いをしながら、ルミアに上着を被せる。

 

「あ〜と、秋休みの課題を…。まあ、俺は付き合ってるだけなんですけど」

 

「お前ら…真面目だなぁ。まあいいが、明日は銀竜祭だ。早めに寝ろよ?」

 

そう言って部屋を出ようとするグレン先生を、システィーナ達が引き止める。

 

「先生。ここなんですけど、どうしてこうなるのかが、分からなくて…」

 

それはリィエルを除いた3人で散々悩んでも、分からなかった問題だった。

しかし聞かれたグレン先生も、珍しくド忘れしたらしく、参考書片手に、アルフォネア教授の部屋に突撃しに行ってしまった。

恐らく、なけなしの教師のプライドが、傷付いたのだろう。

それしても…

 

「…だいぶ待ったけど来ないな。お前達は先に寝てていいぞ?俺は、もうちょい待っとくから」

 

そう言って3人を返したのだが、15分くらいしても戻らず、結局寝落ちしかけた俺も、部屋に戻ってしまったのだった。

 

 

翌日、早朝から行われた銀竜祭開催セレモニーが、無事終了し、本格的に始まったお祭りを、俺達は楽しんでいた、のだが…

 

「負けてられないわ!!」

 

とうとうシスティーナの、堪忍袋の緒が切れた。

 

「確かに教授は、先生にとってかけがえのない家族…。でも、いくら何でも、これじゃ完全にお邪魔虫じゃない…!これじゃ、女の子扱いどころか、いた事すら忘れらるわ!」

 

「そうだよシスティ!その意気だよ!」

 

「よく分からないけど…セリカばかり、ずるい」

 

「おーおー。このクソ寒いのにクソ暑いな〜」

 

システィーナの宣言に、ルミアが更に煽り、それにリィエルが、賛同する。

とはいえ、どうするか…?

 

「アルフォネア教授、ちょっと速すぎ。もうちょい俺らも楽しませて下さい」

 

俺はまず搦手に出た。

 

「ん?そうだったか?」

 

「当たり前だろうが。ったく…俺らだけじゃねぇんだぞ?悪ぃなアルタイル。白猫達も大変だったろ?おいセリカ、俺達はこいつらの保護者代理でもあるんだぞ。あんまお前だけ、はしゃぐんじゃねぇ」

 

「む…。そう言われると、確かにそうだな。すまなかったな。お前達」

 

「いえ、こっちは家族水入らずをお邪魔してるので、言いずらかったのですが…折角ですので、楽しみたいので」

 

よし、これでペースは掴んだ。

掌握はともかく、少なくても射程圏内に入れた。

それにしても、常々思ってたが、アルフォネア教授は権謀術数とか、弱いわけじゃないんだろうけど、苦手そうだな。

なんでもゴリ押しの人だし。

 

「す、すごい…」

 

「あのアルフォネア教授を、言葉だけで制した…」

 

「何驚いてんだよ?ほれ、チャンスだぞ。行ってこい」

 

そう言ってシスティーナとリィエルを、送り出した俺は、ルミアと一緒にそれを後ろから眺める。

 

「それにしても…どうしたんだろう?アルフォネア教授」

 

突然、ルミアが少し怖い顔をしながら呟く。

 

「…そうだな。一見楽しげだけど…空回ってるっていうか…」

 

「すごく焦ってるって言うか…」

 

俺とルミアは、そんなアルフォネア教授の様子に、嫌な予感がしていると

 

「「ああーーーーーー!!貴女達は(お前達は)!!?」」

 

後ろから、すごいでかい声が聞こえたので振り返ると、3人の少女がいた。

それぞれ、金髪縦ロール、黒髪の男前女子、灰色の無表情女子。

その濃いメンツに、顔が青くなるのを、自覚する。

 

「…やっばぁ…」

 

「…!フランシーヌ!コレットに!ジニーも!」

 

その声にシスティーナ達も気付いたのか

 

「え!?どうして貴女達まで!?」

 

こっちを振り向いて、近寄ってくる。

 

「久しぶりだなぁ!お前ら!」

 

「お元気そうで何よりですわ!私達も、バカンスですの!」

 

何でも、白百合黒百合の有志計40名弱で、ここに来ているらしい。

今の両会は、いい意味でいがみ合ってるらしく、お互いに切磋琢磨し合ってるらしい。

 

「それにしても…まだ男のままなのですのね、アイル」

 

「アハハハ…えっと…まあ…」

 

フランシーヌの追求に、曖昧に返事をしてしまう。

むしろこれがスタンダードなんだけのな…。

 

「れ、レーン先生は…?」

 

「…あそこ」

 

俺が指さした先には、男のままのグレン先生と、腕を組んでるアルフォネア教授の姿があった。

2人でアクセサリー店を冷やかしている。

 

「レーン先生も、まだ男性のままなのね」

 

「ていうか誰だよあの金髪。馴れ馴れしいな」

 

俺は心労が耐えきれず、ついシスティーナに任せてしまう。

 

「…システィーナ、頼む」

 

「面倒くさいわね…どこから説明しようかしら…」

 

説明後、あまりの衝撃に、完全に固まってしまう皆。

 

「「レーン先生とアイルが実は男性!?うそぉ!!!?」」

 

あまりの予想通りの反応に、頭が痛くなる。

そう思いつつも、罪悪感からかつい目を逸らす。

 

「先生とアイルが男ってことは…!?」

 

「マジでワンチャンあるって事か…!?」

 

本当にタフだなコイツら。

感心するわ、そこだけは本当に。

気付けば、ルミア達が何やら作戦会議をしていた。

 

「アイル君。ちょっと…」

 

そう言って俺に耳打ちにてくるルミア。

なるほど…それは何とも…

 

「面白そうじゃん。乗った!」

 

グレン先生が俺達の飯を買いにってる間に、システィーナが切り出す。

 

「ねぇ、アルフォネア教授…私達と勝負しませんか?」

 

「ほう?突然どうしたんだ?」

 

あまりに突然すぎたのか、一瞬驚いた顔をした教授だったが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

俺は1枚のチラシを見せる。

 

「何々…【ホワイトタウン最強決定大雪合戦大会】?東の【リーネ雑木林】にて?」

 

そう、俺達が考えた作戦は、この大会を利用する事だ。

 

「色んな景品があるらしいんですが…私達は別の景品を要求します。それは…明日1日グレン先生と、銀竜祭を見て回るっていうのは、どうでしょうか?…まあ、私とアイル君は別ですけど」

 

「ん。セリカ、勝負」

 

ルミアが補足説明をする。

俺とルミアは、別にその景品はいらない。

ルミアはシスティーナの応援だが、俺は面白そうだからだし。

そんな俺達を見て、何か寂しげな顔で呟いたが、聞こえなかった。

 

「…いいぞ、その勝負受けてやる。ただし!やるからには全力だ。言っておくが、どんな勝負でも、私は強いぞ?お前達も全てを尽くせ。それこそ助っ人でも、久しぶりに会ったお友達でもな」

 

どこで情報を仕入れたのやら…。

まあいい、そういう事なら。

 

「それじゃ、遠慮なく。やるぞ」

 

俺の言葉に、3人とも頷いて、エントリー会場に向かう。

…グレン先生を忘れて。

 

そうして無事エントリーを終えた俺達は、ルール説明を聞いていた。

・雪玉を当てられると、次第に重くなる魔術的仕組みを利用した、ゼッケンを着用。

・無断でゼッケンを外した場合、失格。

・フィールドは雑木林全体、もちろんフィールドの外に出ても失格。

・時間経過毎にフィールドを、規制線で縮小していくので、エリア外にいても失格。

・攻撃手段は雪玉オンリー、それ以外は失格。

・以上を守れば何でもOK、最後に立っていた者が勝者。

…結構ハードな内容だな。

そして、宣言後、俺達は一気に走り抜ける。

 

「さてとまずは…邪魔者から排除だな…」

 

そうして俺達は目的の為ならば、手段を選ばずに、ひたすら敵を殲滅していく。

奇襲、隠密、狙撃…何でもござれだ。

勝てばよかろうなのだよ。

 

「アイル君…すごく悪い顔してるよ…?」

 

「あんなにイキイキした悪い笑み、初めて見た」

 

うるせぇ、誰の為にやってやってんだよ。

こうして、粗方片付けた俺達はついに、本命を堕としにかかった。

とはいえ、俺達は混戦のさなか、他のメンツとはぐれてしまい、探しつつも、合流を計っていたのだが、

 

「あ、ジニーがいた…よ!?」

 

しまった!アルフォネア教授もだ!

俺達は慌てて身を隠したが、ジニーのバカ、何堂々と名乗りあげてんだよ!?

ん?アルフォネア教授が何かを取り出して

 

「『罪深き我・逢魔の黄昏に独り・汝を偲ぶ』」

 

「は?【ロード・エクスペリエンス】…!?」

 

風に乗って聞こえた詠唱は、まさかの【ロード・エクスペリエンス】。

てことは、取り出したのはエリエーテの剣の欠片か!?

バカか!?あんなの勝ち目あるかよ!?

 

「ッ!撤退!今は退くぞ!」

 

「逃がさないぞ、お前達」

 

その声と共に、一気に襲いかかる雪玉の暴風雨。

げ!?もうバレて…いや、索敵魔術で最初からか!?

俺はすぐに【アリアドネ】を装着、結界を張り同時に、ルミアを抱える。

 

「わっ『我が手に星の天秤を』ッ!」

 

「しっ『疾風よ』ぉぉぉ!」

 

俺とシスティーナが直ぐに、それぞれの方法で逃げる。

 

「だあぁぁぁぁ!!こうなりゃヤケクソだァァァァァァァ!!!」

 

「上等よォォォ!!世界最強にどれだけやれるか…試してやるぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

そうして俺達は何とか振り切り、他のメンツと合流、戦略もへったくれもない、ガチンコバトルを始めたのだ。

 

「『集い戯れよ・雪より生まれし・白き姫達』行って!」

 

フランシーヌの【コール・ファミリア】によって、生み出された妖精達が、アルフォネア教授に襲いかかるも

 

「『温いぜ』」

 

【フォーム・エレメント】によって形質変換された雪が、氷の槍となって、一匹残らず貫いていく。

 

「これならどうだ!」

 

コレットが【フィジカル・ブースト】で強化された膂力で、思いっきりぶん投げる。

 

「『見えざる手よ』!」

 

それを【サイ・テレネキシス】で、軌道を滅茶苦茶にするも

 

「バーカ、そんなの割り込んでくれって言ってるようなものだ」

 

そう呟いた途端、突然雪玉が動きを止め、逆にコレットに襲いかかる。

 

「まさか、【詠唱割込(スペル·インターセプト)】!?」

 

詠唱割込(スペル·インターセプト)】。

相手の魔術を利用し、逆に魔術を起動させ、相手ごと掌握する、とんでもない技術。

超が3つほど付く、とんでもない激ムズテクニックだ。

何せ相手の口の動きから、魔術を先読みしなくてはならないからだ。

恐らくは、アルフォネア教授にしか、出来ないだろう。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

今度はリィエルが、超巨大雪玉を力技で投げ飛ばす。

 

「流石にこれは、念動力では無理だな」

 

何かしらの方法で迎撃される前に

 

「…フッ!!」

 

俺はアルフォネア教授を狙撃する。

アルフォネア教授が、【コール・エレメンタル】で、雪の巨人を召喚し砕く前に、俺の豪速球が、リィエルの雪玉を貫き、アルフォネア教授の頭に当たる…しかしその直前、躱される。

あれを躱すのか…!?

 

「ッ!?ほう…?やるじゃないか、アルタイル!」

 

今のでどこにいるのか、見当がついたのか俺の方を睨むアルフォネア教授。

しかし、よそ見は禁物だぜ?

 

「教授!ごめんなさい!」

 

「ほう?これは…黒魔【フリーズ・フロア】か」

 

そう、全てはこの布石。

アルフォネア教授の足元を封じる為に、わざと大振りな技で誤魔化したのだ。

 

「今だ!一気に押し切れ!」

 

「教授!お覚悟!」

 

俺達は一気に雪玉を投げつける。

四方八方、360°全てを埋め尽くす。

これなら…!

 

「まあ、読んでたけどな」

 

カチッ!!

時計の針の音が聞こえた途端、アルフォネア教授の姿が無くなる。

 

「…は?」

 

俺達は唖然としていると

 

「ハッハッハ!惜しかったなお前達!」

 

「…バカかよ」

 

俺の真後ろから、聞こえる高笑いに、思わず呟く。

振り向くとそこには、古びた懐中時計を弄ぶアルフォネア教授がいた。

グレン先生に聞いた事がある。

この人は

 

「【私の世界】に、ようこそ」

 

時間停止魔術を使えるのだと。

 

「ち、ちょっと大人気なさ過ぎません!!?こんなお遊びに、そんな貴重な魔術触媒使います!!?」

 

思わず頭を抱えながら、叫ぶシスティーナ。

 

「何言ってる?言っただろ、全力だって。それよりほら、まだ終わってないぞ?お楽しみはこれからじゃないか?」

 

ああ…ドンドン1人でに雪玉が練られていく。

 

「構えろよ。…息を整えろ、雪玉を作れ、魔力を練り上げろ、叡智を絞れ。…『汝、望まば、他者の望みを炉にくべよ』。それこそが魔術師だろ?クックック…さあ、その望みで雪玉を固め、叡智を捻り出し、私の喉元に届かせてみせろ、魔術師!!命を燃やせ、人間!!私は!!【灰燼の魔女】は!!お前達の倒すべき仇敵はここにいるぞぉぉ!!!ハハハハハハハハ!!!」

 

両腕を広げ、俺達を睥睨するアルフォネア教授。

ノリノリな悪の魔王ムーブが似合いすぎて、笑えない。

 

「アイル君!!絶対に助けるからね!!」

 

う〜ん、ルミア。

ありがたいけど、それはちょっと…俺が恥ずかしいかな。

後、それ俺が言うべきセリフ。

そしてこの状況で言うと…リアリティが増す。

まるで平和な【メルガリウスの魔法使い】だな。

こうして俺達は、最後の足掻きをした。

 

「ま、こうなるわな」

 

「分かりきった結末よね…」

 

結果は言うに及ばず、俺達は敗北した。

そして何故か、首から下だけ雪だるまにされた。

 

「アハハハ!お前達中々いい線行ってたぞ!だがまだまだだな!」

 

そんな俺達を高笑いしながら、見下ろすアルフォネア教授。

そんな彼女に、運営の人が近づく。

 

「えっと…ゼッケン番号135番のセリカさん?」

 

「お!そうか!私が優勝だもんな!どうしようかな〜!?グレンのやつ、大喜び…」

 

「貴女、失格」

 

「ですよね〜♪」

 

当然のジャッジに、教授はテヘペロってしてる。

流石は絶世の美人、何しても良く似合う。

 

「もちろん、君達も失格」

 

「「「「「「ですよね〜♪」」」」」」

 

当然のジャッジに、俺達もテヘペロ。

こうして今大会は、盛大な徒労に終わった。

これを機に、来年以降から『あらゆる魔術の使用禁止』が、ルールに明文化された事となったとか何とか。




こんな雪合戦は嫌だ。
チート過ぎるやろ、セリカ。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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