それではよろしくお願いします。
そんなこんなで銀竜祭1日目が終了。
「いやー!遊んだ遊んだ!」
「つ、疲れた…お風呂入りたい…」
意気揚々としているアルフォネア教授と、対照的に酷く疲れた様子のシスティーナ。
「…何だよ、俺をほっぽってって、随分と楽しそうな事しやがって…ふーんだ」
「あはは…ご、ごめんなさい…先生…」
「拗ねないで下さいよ…ね?」
俺とルミアが、拗ねる先生を宥める。
ちなみにリィエルは、疲れたのか先生の背中でぐっすりだ。
そんな俺達が帰ると、何やら屋敷が騒がしい。
「ん?どうしたんだ?市長さん」
「あ、グレンさんお帰りなさい。実は…」
何でも、3日目に行われる銀竜降臨演舞でダンサーの1人が、他のスタッフや、バックダンサー達と共に急遽抜けてしまったらしい。
しかもそのダンサーは、メインの白銀竜役を、やる予定ね人だった。
「え!?どうしてそんな事が!?」
「恐らく銀竜教団の仕業でしょう。脅迫か、買収か…。いずれにせよ、このままでは…」
「おいおい、大丈夫かよ?アレ目当ての客だって相当いるはずじゃ…」
「はい、その通りです。今回の奉納演舞は、メインイベントとして相応しいものにすべく、あの【マリー=アクトレス】を、白銀竜役として招いたのです」
全然知らない人の名前に、首を傾げていると先生が、ギョッとしていた。
「おいおい、マリー=アクトレスって、今帝都で超有名な超一流バレリーナじゃねぇか!?舞台を舞うだけで世界が変わるとか…」
へぇ、そんなにすごい人なのか…。
しかも、大々的に告知をし続けてしまったらしく、後にも引けない状況なのだとか。
座長曰く、彼女の代役に必要なのは
・他者の追随を許さない圧倒的美貌
・持って生まれた華
・立っているだけで滲み出る大スターのオーラ
確かにこんな好都合な人物…すぐには…
「いたわ。すぐそこに」
「「「「え?」」」」
皆が俺を見つめる。
俺はその視線を無視し、後ろにいた女性陣を見つめた。
「わ、私がマリーの代役!?ちょ、ちょっと…!?///」
「そ、その…私、舞踊なんてとても…///」
「よく分からないけど…照れる…///」
「ほら、アルフォネア教授がいるじゃん」
俺が推薦したのは、名高き【
ぶっちゃけこれ以上の人選は、思いつか…ん?
「どうした3人とも?」
「「ア・イ・ル(君)〜!!!///」」
「ムゥ…ちょっと残念…」
「ちょっ!?何なんだよ!?」
顔を真っ赤にしながら詰め寄ってくる、ルミアとシスティーナ。
そして少し残念そうなリィエル。
いや…まさかお前ら…
「自分達だと思ったのか…?」
「「「うぅ…」」」
「図星かよ…。いや、お前達は確かにすごく綺麗だし可愛いよ?本気で。ただ…お前ら踊れる?」
そう、コイツらには華は十二分にある。
システィーナには、凛とした綺麗さが。
ルミアには、華やかな可愛さが。
リィエルには、人形じみた美しさが。
それぞれの可愛さと美しさがあるが…ただ、それとこれは別問題だ。
「う、それは…」
「可愛いって!可愛いって!///」
「ルミア、変」
「…まあ、暴走してるルミアは置いといて、そういう事さ」
…すまん、本当は検討の余地すら無かった。
そうは言えないので、黙っておく。
結果ある条件の元、アルフォネア教授は同意。
その条件というのは…相手役の魔法使いの役を、グレン先生にやらせるというものだった。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
結果として、その条件で成立してしまったので、急遽、アルフォネア教授とグレン先生が、舞台に上がる事になったのだ。
そして俺達も補助要因、及びバックダンサーとして、手伝う事になってしまった。
翌日、舞台の練習をしていた。
アルフォネア教授は、相変わらずのチートっぷりで、劇団の座長曰く、マリーなんて目じゃない位すごいらしい。
「よし、これで全部だな」
「早く戻らないとね」
俺とルミアは、必要な小道具の買い出しに出ていた。
周りを見ると祭りを楽しむ人達で、あっちこっちで、賑わっている。
俺達もつい昨日まで、あっち側だったんだよな。
それが気付いたら、運営側とはな…。
「何か、信じらんねぇな」
「だね〜…。えっと、テントはあっちだね」
俺の言いたい事を理解したのか、ルミアが特に聞き返す事無く、同意する。
サクサクと雪を踏み締めながら、進んでいると
「やあ、そこのお2人さん。ちょっといいかな?」
不意に声をかけられた。
横をむくと、敷物を広げ、箱のような台と共に座る、1人の少年がいた。
俺達より少し年上だろうか。
民俗的な紋様が刺繍されたローブを、ゆったりと被っている。
フードから零れる銀髪に、何となく既視感を感じた。
…ああ、システィーナに似てるのか?
いや…違う、それだけじゃない…。
何故か、頭痛がする。
「僕の芸を見ていかないかい?お暇があるなら」
よく見るとその箱は、人形劇のセットのようだ。
「え、ええと…貴方は…?」
「【フェロード・ベリフ】。しがない旅人だよ。ルミア、アルタイル」
…?俺達名乗ったか?
そう思ったのだが、何故かその疑問が霧散していく。
ドンドンと話に流れに飲まれていくルミアに、俺も黙って従っていたが…さっきから頭痛が酷い。
気付くと人形劇が始まっていたが、それどころでは無い。
「どうだい?少しは退屈しのぎになったかい?」
フードの下から覗くその笑顔と、瞳を見た瞬間、心臓がドクンッ!!と高なった。
頭痛が激しくなり…あの記憶がフラッシュバックした。
一族の悲鳴、燃える家、殺される両親。
そして…銀髪の男の優しい笑顔。
ああ…思い出した…。
「お前は…オマエハァァァァァァァァァ!!!」
俺は【アリアドネ】を起動させ、糸で一気に切り裂く。
しかしその直前、ヒラリと躱されてしまう。
「アイル君!!!?」
「…へぇ…もしかして…覚えていたのかい?」
驚くルミアを無視して、俺は目の前の男を睨みつけ、殺気を叩きつける。
しかし相変わらずの笑顔が、その優しげな翡翠色の瞳が、余計に殺意を煽ってくる。
「当たり前だろうが!!!テメェはここでぶっ殺す!!!」
そのまま一気に詰め寄り、本気で殺そうと首を狙う。
しかしその一撃は…蜃気楼のように消えた男に当たっただけだった。
「…へぇ。その糸を上手く使いこなしてるようだね。まあ、本来の用途では無いんだけどね」
何処からか響くその声の主を探す。
気配はするのに…何処からがまるで分からない。
「うるせぇ!!!何処にいやがる!!!?」
「フフフ…本当の意味でそれを使いこなしたいなら…
その言葉と共に、気配すら消えてしまう。
「待て!!!…待ちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
俺の怒りの叫びは、街の賑やかな声にかき消されただけだった。
「アイルはどうしたのよ?」
「分からない…」
買った小道具をテントに持って帰ってから、アイル君は何処かに行ってしまった。
今は…1人にした方がいいのかも。
「…まあ、アイルは裏方だしいいか。ルミア、今は合わせましょう?」
「うん…」
あの人と一体何があったのかな?
私は…なんとも言えない不安を抱えながら、システィ達と踊りの合わせの練習をした。
そして、慌ただしく2日目が終わり、今は決起集会みたいな事をやっていた。
「明日の成功を祈って!乾杯!!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
皆が楽しげに歓談する中、アイル君だけは、壁の花になっていた。
何も語らず、食べ物も飲み物も口にしない。
ただ黙り込んで、虚空を呆然と見つめるだけだった。
「ルミア。…アイツ、何があった?」
私に尋ねる先生の顔は、すごく心配そうだった。
「それが私にも…ってシスティ!?」
「もう!アイル!なに黙り込んでるのよ!」
そんな話をしていると、システィがアイル君の所に行ってしまう。
「こういう時こそ…」
「うるせぇ」
しかし、アイル君はすごく怖い目でシスティを睨んでいた。
その目は、酷く濁った目をしていて、とてつもない殺気を孕んでいた。
「ッ!?ア…イル…?」
その目にすっかり萎縮してしまったシスティだったけど、不意に突然驚いた顔をするアイル君。
「…システィーナ。お前、自分によく似た、近い歳の男の親戚いるか?」
「…へ?いな…い…けど…?」
「…そうか…。ゴメン。ビビらせた。少し1人にしてくれ」
突然どうしたんだろう?
そう思っていると、そのままアイル君は、会場を出ていってしまった。
それを見送ったシスティは、膝をついて体を震わせていた。
「システィ!大丈夫!?」
「私…あんなに怖い…アイル…初めてで…」
ここから見てるだけで怖かったんだ。
きっと直接睨まれたシスティはもっと…。
「アイツ…何してんだよ…!?」
そんな先生の声は、さっきの顔同様、心配そうな感じだった。
そうして、翌日ついに銀竜降臨演舞が始まった。
演武用の衣装に身を包んだアルフォネア教授は、まるでこの世のものとは思えない、美しさがあった。
そしてその舞もまた、とても美しく、この世全てを魅了すると言っても、過言ではないだろう。
これの相手とか…グレン先生、ドンマイ。
骨は拾ってやるよ。
そう思いながら、ボンヤリと舞台を見ていると、突然アルフォネア教授の動きが止まった。
慌ててグレン先生が舞台にあがり、アルフォネア教授を舞台袖へと連れていこうとした瞬間、突然何かの咆哮が響き渡った。
その咆哮は、天を裂き、地を震わせるような恐ろしさを感じた。
「…なんだ?」
俺はすぐに【アリアドネ】を装着し、ルミアの側まで駆け寄る。
その時、不意に吹雪出した。
ドンドンと勢いが増すその吹雪の奥から、何かが飛んでくる。
その姿を見た時、俺達は呆然としてしまう。
山の如き巨体に、大樹の如き手足。
その鋭い翼は天を覆い隠さんが如く、その蒼眼はこの凍てつく空気よりも、なお冷たく鋭い。
それは絶対的強者にして、食物連鎖の頂点。
竜、即ち
「「「「「白銀竜!!!?」」」」」
伝説の白銀竜が、目の前に現れた。
そんな俺達の事など一切気にせず、そのデカい顎を広げて、何かしようのする。
「ヤバい!?お前達!!今すぐ精神防御を固めろォ!!!?」
先生がそう叫んだ途端、竜も叫んだ。
その咆哮を聞いた途端、観客やダンサー達が一斉に気を失った。
あらゆる感覚を奪いとる、
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!クッソがァァァァァ!!!」
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だあぁぁぁぁぁぁ!!!うるせぇぇぇぇぇ!!!」
俺と先生とリィエルは意地と気迫で、何とか乗り切る。
「はぁ…!?はぁ…!?」
システィーナはギリギリで、精神防御の魔術の発動に成功。
それでも、かなりギリギリの状態だ。
「こ、これは…!?どういう事!?」
何もしてないのに、平然としているルミア。
本当に…メンタル強すぎるだろ。
「「「…」」」
フランシーヌ、コレット、ジニーは耐えきれず、失神こそしてないが、呆然としている。
〖久しいな…
何?コイツは…アルフォネア教授を知っている?
〖さあ!貴様が我が身に刻んだ、罪の精算の時だ!我が積年の憎悪を、無念を!晴らす時が来たのだ!!〗
そんなアルフォネア教授は、愕然としながら叫ぶ。
「知らない…!私はお前なんて、知らないぞ!」
〖知らぬなら…忘れたと言うなら、今一度我が名を、その身魂に刻め!我が名は【ル=シルバ】!!白銀竜将ル=シルバ!!!〗
「何!?ル=シルバだと!?」
また…【メルガリウスの魔法使い】かよ!!
あれは…やっぱりただの童話じゃないのか!!
〖決着をつけよう
そう言って、再び飛び去っていく白銀竜。
「ま、待てよ!?お前は…私は、なんなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
そんなアルフォネア教授の声は、吹雪にかき消されたのだった。
それから一夜が過ぎ、状況は最悪のままだ。
謎の大寒波は留まること無く、今なお吹雪き続けている。
間違えなく白銀竜将の仕業だろう。
この状況を打開する方法は1つ。
白銀竜将を倒す事だ。
しかし今そんな事出来るのは、アルフォネア教授ただ1人。
なのにその教授は、あの後気を失い、眠ったままだ。
結果俺達と女学院組、及びアルフォネア教授で、竜討伐に行く事になったのだが…
「いない!?何してんだよ!?あの人は!」
「どこ行っちゃったんですか!?」
その時、急に地響きがした。
「今度はなんだよ!?」
そう言いながら、飛び出すと何か明かりが見えた。
「あれは…アヴェスタ山峰の麓の方ですね」
市長さんのその言葉に俺達は、ハッとする。
「まさかあの人…!?」
「1人でケリつけに行きやがった…!」
「大変だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ああもう!次から次に!今度は何!?」
やって来たのは警備団や自警団の人達だ。
「化け物たちが…アヴェスタ山峰の方から…!」
「何ですって!」
俺達はすぐに街の方に駆け出した。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺と槍とグレン先生の拳とリィエルの大剣が、敵を貫き、砕き、吹き飛ばす。
「『紅蓮の獅子よ・正しき怒りのままに・吼え狂え』!」
「『聖なる送り火よ・彼等を黄泉へ導け・その旅路を照らし賜え』!」
システィーナの黒魔改【セイクリッド・バースト】と、ルミアの【セイント・ファイア】が焼き尽くす。
一体一体は弱いが、いかんせん数が多い。
それにこの環境だ、すぐに俺達の限界が来る。
そんな焦りを感じていると
「うおぉぉぉぉぉ!!」
コレットがその手に炎を灯し、【
「シッ!」
ジニーがルーンを刻んだクナイで、正確に眉間を貫き、消滅させる。
「『鏡除くは我・映るは汝・我等表裏に在りて・真理目指す輩』」
フランシーヌが【コール・エゴ・エドヴェント】によって呼び出した【
「ここは私達に!」
「先生達はアルフォネア教授を、助けに行ってくれ!」
「このまま死なれても、寝覚めが悪いので」
フランシーヌ達の力強い応援に、グレン先生が笑う。
「分かった!頼むぞお前達!白猫、ルミア、リィエル、アルタイル!行くぞ!」
その声と共に、俺達はその場を後にする。
「さてと…ここからだな」
市長さんが用意してくれた、最低限の装備を背に、俺達は登山口に着いた。
「準備はいいか、お前達。【エア・コンディション】は切らすなよ?だが、気張りすぎもダメだ。魔力が枯渇しちまうからな。ここは
「ん」
「分かりました」
「ま、任せて下さい」
「OK。任せて」
「…よし、行くぞ」
こうして俺達の、雪山登頂が始まった。
戦闘自体は少なかった。
道中の殆どの敵を、アルフォネア教授が片付けていたからだ。
それでも、慣れない環境での戦闘はいつも以上に、疲れる。
道中、リィエルが作ったかまくらで、一休みしたりしながら、登っていく。
そして遂に
「追い付いた…!」
しかしそこに居たのはバカでかい亡霊だった。
「デッカ!」
「あれは…集合体だ!ここら一帯の奴らが、集まったんだ!」
そのデカさを見て、俺達は慌てて加勢しようとするが
「『くたばれ』ぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うそーん」
なんと流石は我らがアルフォネア教授、力技で消し飛ばしたのだ。
ズッコケるグレン先生。
なんとも言えない空気が漂っていると、不意にアルフォネア教授が倒れた。
「ッ!?セリカ!?」
慌てて俺達が駆け寄ると、顔は真っ青で呼吸も荒い。
「まさか…マナ欠乏症!?」
「それだけじゃねぇ!低体温症まで起こしたやがる!このままだと…!?」
不意に先生の言葉が止まる。
何事かと思うと、
「…まさか…?」
上を見ると、
「クソ!セリカのバカが遠慮なしに、バカスカ撃つからだ!!」
先生が周りをキョロキョロして、何かを見つける。
「お前達はあそこの尾根に向かえ!俺はセリカを何とかする!」
俺は糸を先生に渡す。
「これをアルフォネア教授と結んで!着いたらまとめて飛ばします!」
「頼む!」
俺達はすぐに行動を開始した。
「『我が手に星の天秤を』!」
「『疾風よ』!」
俺がルミアを抱え、一気に尾根まで目指した。
途中ふらつくシスティーナを重力で支えながら、何とか辿り着く。
⦅先生!すぐに…!⦆
すぐに通信を試みたが、その時には既に、目の前まで雪崩が迫っていた。
「先生!!」
「ダメ!システィ、ダメ!!」
「バカ野郎!!」
駆けつけようとするシスティーナを、ルミアと2人で慌てて止めていた隙に
「先生!先生ぇぇぇぇぇぇ!!!」
グレン先生とアルフォネア教授は、そのまま雪崩に飲まれてしまった。
彼らの一族を滅ぼしたのは…フェロードでした。
どうしようかと思ったけど、彼に決定しました。
仇を前に、アルタイルがどうなるか…見物です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。