それではよろしくお願いします。
「ったく…あれほど無くすなって言ったのに…」
まああの雪崩だ、仕方ないか。
あの後、続けざまにホワイトアウト状態を受けた俺達は、すぐにリィエルの作ったかまくらに避難して、何とかやり過ごした。
本当に、サバイバルに長けたリィエル様々だ。
その後、俺はルミア達をかまくらに残して、1人で捜索を始めた。
渡してあったお守りを頼りに、ここまで来たが、そこにはグレン先生達の姿はなかった。
「まあ… あの人だから大丈夫だとは思うけど…?」
語尾が変な感じになる。
というもの、ポケットに何か入って…あ!
「そうじゃん!宝石型通信機あるじゃん!」
俺達はお守りの他に、二重で連絡手段を用意してきたのだ。
普段使わないから、忘れてた…。
俺はイヴ先生がやったみたいに、逆探知で場所を割り出したのだが…
「…アイツら連れてこなくて、本当によかった」
「どう見ても事後です。本当にありがとうございました」
「まあ、ある意味事後でしょうけど…」
そこでは、グレン先生アルフォネア教授が裸…より正確には、上半身だけ裸で抱き合ってきた。
低体温症を併発していたアルフォネア教授の体温を上げるための、苦肉の策ってやつだろう。
さて、まずは現状を報告しよう。
⦅ルミア、聞こえるか?⦆
⦅アイル君!?無事!?⦆
⦅ああ、無事だ。グレン先生と、アルフォネア教授も見つけた。教授も峠は越えて、意識もハッキリしてる⦆
⦅良かった…!⦆
⦅とりあえず、こっちに呼ぶから、手筈は整えてあるか?⦆
⦅大丈夫!行けるよ!⦆
⦅よし…!行くぞ!⦆
俺は後ろの2人がちゃんと服を着てるか、確認する。
じゃなきゃ、隠す意味ないからな…。
俺は3人を、一気に【次元跳躍】させる。
今回は成功したらしい。
洞穴の入口に3人が来たのを視認する。
「「先生!教授!」」
「2人とも…大丈夫?」
こうして俺達は何とか全員、合流を果たしたのだった。
しかし問題は山積み。
大幅なタイムロスである事、ここがどの辺なのか、具体的には分からない事、体力が限界の事。
そんな議論をしていると
「ここは…まさか…!?私は…ここを…知っている!?」
「おい!セリカ!?」
そう呟いて、フラフラと奥へ進んでいくアルフォネア教授。
俺達も慌てて追いかけるとそこには、何やら開けた場所に出た。
そこは古代遺跡のようだったが、それより俺が気になったのは
「…酷いな、これは」
ミイラ化した遺体の数々だった。
よく見ると、どの遺体も、見覚えのあるローブを身にまとっていた。
「これは…銀竜教団の連中か?」
グレン先生もそこが気になったようだが、アルフォネア教授はそれにすら目をくれず、最奥まで行ってしまう。
奥にある何かをジーッと見つめながら、何かを思っているのだろうか。
すると突然
「…グレン、私は少し思い出したよ」
「「「!?」」」
また、何か思い出したのか…!?
「しっかし…参ったなぁ…。私はどうも思った以上に、ロクでもない存在だったらしいが…関係ないね」
振り返ったその顔は、いつもの自信に満ちた不敵な笑みだった。
「私は私。何者であってもお前の家族。そうなんだろ?それに…お前は私に正義の魔法使いになって欲しいんだっけ?いいぜ、ガラでもないが、なってなるよ。だから…私の事を最後まで見ていてくれ。たとえ、何があっても」
しかしグレンには、今にも泣き出しそうな笑顔に見えた。
「…大丈夫っすか?」
「ああ…さてと、お前達、準備しろ。早速だが、竜退治だ」
は?いきなり何言って…!?
「過去、因縁、怨恨、罪…そんなものはもう知らん。今を生きるお前達の為に、私は戦おう。それが…私の正義の魔法使いのしての初仕事だ。だから…力を貸してくれ」
「あ、当たり前だぜ!」
当然俺達も頷く。
やってやる、何が相手でも…!
俺達はアルフォネア教授が召喚した、古びた箒で、山頂まで飛んだ。
まあ俺は、【グラビティ・タクト】で、自力で飛んだ訳だが。
そんなこんなで何とか辿り着いた山頂で、ついに白銀竜と対面した。
「よう、白銀竜…いや、白銀竜将ル=シルバ。…決着を付けに来たぜ」
その姿は、どこまでも勇壮で、凛々しく、偉大だった。
(これが…セリカ=アルフォネアか…!)
高みは遥か高い…そう、思わざるを得ない。
〖来たか
凄まじい程の呪いを吐き捨てる竜。
しかし
「…あ?うっさいな。黙れよ、トカゲ風情が」
〖な…〗
アルフォネア教授には、なんの意味のなく
「ぶっちゃけ、お前に何したかなんて、なんも覚えてないんだ。なんかお前に色々迷惑かけたみたいでごめんね!それはそれとして…とっととくたばれ、ドラゴン」
逆に煽られるという、呆れ果てるしかない状況になってしまった。
「…はぁ…どうすんだよ…これ…」
俺は目の前で怒り狂うドラゴンを見て、ため息をつく。
そうして俺達とドラゴンの戦いが始まった。
「『『『吹き飛べ』』』!!」
たった一節で、【プラズマ・カノン】【インフェルノ・フレア】【フリージング・ヘル】の、3種類のB級軍用魔術を発動するアルフォネア教授。
これが教授を象徴する絶技【
〖カッ!!〗
白銀竜の一撃に散ってしまう。
「ほう?ならこれなら…!」
そうして次に発動したのは、【イクスティンクション・レイ】。
本家本元の神殺しの技だ。
しかしそれすら、打ち消される。
それはあらゆる運動を停止させ、結果として、
〖『■■■』〗
次に白銀竜が発動したのは、
「フッ!」
それは俺が、結界で防ぐ。
「ほう…多重装甲結界とはやるな。で?あれはどうする?アルタイル」
俺の結界を褒めた直後、顎で促す先には、こちらに直接襲いかかろうとしている白銀竜の姿。
もちろん、予測済だ。
結界を張ると同時に、俺が持つ最硬の結界を発動する準備を、整えてある。
「『七色煌めく光の華よ・その輝きを以て・ 我らに華の加護を与え・その道行を照らし護り給え』!」
固有魔術【アイギス・ブローディア】。
簡単な話、【フォース・シールド】の【
今回は氷結効果と物理効果に極振りしてある。
そこに更に、【グラビティ・タクト】の斥力を加えてあるので、従来よりかなり頑丈だ。
ゴォォォォォォォン!!!
激しい衝撃と共に、白銀竜のチャージを防ぎきったが…かなりマナも持ってかれた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「アルタイル!大丈夫か!?」
「よく防いだな。大したもんだ、本当に」
そう褒めながらも、アルフォネア教授は【イクスティンクション・レイ】を、剣状に変え、胴を切り裂く。
〖ギャアァァァァァァァア!!!おのれ…
「させ…ねぇ!『我が手に星の天秤を』!」
俺は降り注ぐ氷の刃を、最低限の分だけ重力で砕く。
その隙に、アルフォネア教授が隕石をふらせ、叩きつける。
この戦い、一見するとアルフォネア教授が優勢だが、ふとした時に趨勢は転がる。
というのも、今の教授はルミアのアシストを受けたシスティーナが、片っ端からマナを送り込んでいるから、初めて戦闘が成り立つ。
俺は少しでも負担を減らすために、防御を引き受けてるが、かなりギリギリだ。
相手は
俺はおろか、アルフォネア教授すらそこに全神経を集中させている。
当然、ワラワラと湧いてくる亡霊などには対応出来ないので、そこはグレン先生とリィエルが対応する。
このまでして初めて、成立している拮抗だ。
恐らく最初に崩れるのは…俺だ。
〖オォォォォォォォォ!!
「『しゃらくせぇ』!!」
「こっのぉ!!」
白銀竜が降らす落雷をアルフォネア教授は、同じく落雷を放ち迎撃し、俺は雷避けの結界で防ぐ。
「どうした?雷の扱いが下手だぜ?」
〖たわけ!そのような荷物がいてよく吠える!〗
そう言って骸骨達を呼び出して…狙いは俺か!?
クソ…!?迎撃が、間に合わねぇ!
俺は、そのまま持っていた剣で腹を貫かれる。
「しまった!?アルタイル!」
「ガハァ!?…こんのぉぉぉぉぉ!!!」
アルフォネア教授もグレン先生も、俺が狙われるとは思っていなかったらしく、反応が遅れる。
俺は結界を維持しながら、思いっきり蹴り飛ばす。
そのまま、糸を振るって切り刻む。
腹に刺さったままの剣を、糸で剣ごと縛って、出血を出来るだけ抑える。
「ボサってしないで!!早く倒して下さい!!!」
「ッ!!グレン!やれぇ!」
「ク…うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
グレン先生が走りより、改変した【愚者の世界】を発動する。
上方向に改変されたそれは、
「『■■■』」
「…え?」
今、アルフォネア教授…なんて…?
まるで理解できなかったそれは…
それが冗談でない事を証明するように、とてつもない高温の炎の槍が生み出され、
「穿て!【クトガの牙】!!!」
その槍は…白銀竜の心臓を貫いた。
〖ギャアァァァァァァァァァ!!!〗
「やったのか…?」
その雄叫びを最後に、白銀竜は消え、それと同時に、吹雪も止んだのだった。
その後、ルミアから治療を受けていた俺が見たのは、白い幼女を抱いたアルフォネア教授だった。
何でも白銀竜が消えた場所にいて、アルフォネア教授が、引き取るらしい。
そんなこんなで、無事危機を脱した俺達はというと
「んー?どっちがいいと思う?」
「そっちのヘヤピンじゃないかな?」
ベガへのお土産選びをしていた。
本当はイヴ先生にもなのだが、そこはコソッと買おう。
「ていうか…なんでアイツはこう…ペアルックとか好きなんだか…」
ベガはペアルックとか好きで、よくお揃いのものを買っている。
流石にベガの趣味では、俺に似合うものがないのが難点だ。
「でもこれなら、男の人でも大丈夫そうだよ?」
そう言ってルミアが見せてくれたのは、シルバーアクセサリーだ。
確かにこれなら、シンプルで俺にも合うデザインがある。
「んー…そうだな。この紫の石が入ってるのは?」
「あ、いいかも。アイル君は…赤かな?」
「それ、手袋だけだろ」
「かもね!」
お互いそんな軽い事を話しながら、実は内心バクバクだったりする。
(考えなくても…初デートだよな?これ)
そう思うと妙に緊張して…?
あ、これは…。
俺はそっとそれを手に取り、他のお土産を買い漁ることにした。
「よし!終了!満足!」
「良かった!帰ろっか!」
こうして皆に合流した俺達は、電車に乗り込み、出発する。
俺は1人、サロンでのんびりする事にした。
「アルタイル。少しいいか?」
「ん?なんですか、グレン先生?」
そこへやってきたのはグレン先生とルミア。
他のみんなは別々らしい。
「…お前、2日目から何があった?」
その言葉に押し黙る。
グレン先生には、俺達の事をそれとなく話してある。
なので隠す必要は無いのだが…
「アイル君…あの人と何があったの?」
ルミアには、相当心配かけたな。
はぁ…仕方ないか。
「…親の、一族の仇にあった。それだけ」
「「!!!?」」
ルミアと先生は、目を見開いて驚く。
「仇って…あの人が!?」
「ああ、あの顔…忘れたくても忘れねぇ。フェロード=ベリフ…!」
俺は無意識に拳を握りしめる。
アイツは…必ず…!
「そうか…。とりあえずは体を休めろ。後…すまなかった。お前を守れなかった」
「…それは大丈夫です。あの状況じゃ、1番の足手まといは俺ですし」
そう言って立ち去るグレン先生を見送ってから、俺はあるものをルミアの前に置く。
「ん?これは?」
「いいから開けてみろ」
不思議そうに開けるルミア。
中身を開けるとそこには
「…イヤリングだ。綺麗…」
ピンク色の雪の結晶を模した、イヤリングだ。
先程買い物中に見つけ、似合うと思い買ったのだ。
ルミアは早速イヤリングを着けて、見せてくれる。
「…どう?///」
「よく似合ってる。可愛い」
「かわっ!?///」
顔を真っ赤にしてるルミアを眺めながら、俺はある事を考えていた。
「…『歴史を遡れ』か…」
あの野郎の言う事を聞くなんて癪だが、調べてみるか。
そう思いつつ、俺はすっかり冷めたコーヒーを啜るのだった。
アルタイルの新呪文炸裂しました。
今までとは違う、守りの一手です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。