ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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14巻突入です!
結構書き進めてきましたね…。
まだ頑張りますよ!
それではよろしくお願いします。


代表選考会編第1話

「先生!先生!!先生ったら!!!」

 

「ん…ん〜?…」

 

眠りこけるグレン先生を、システィーナが無理矢理起こす。

少し心苦しいが、確かにそろそろ起きないと時間だ。

 

「グレン先生。しんどいのは察するけど、そろそろ時間ですよ」

 

「何だよ…白猫。アルタイルも…俺が超忙しかったの…知ってるだろう…?」

 

たしかに、あっち行ってこっち行ってだったもんな。

でも申し訳ないけど、もうすぐ他校の連中が来る。

「もう!だからって少しだらけすぎです!」

 

「まあまあシスティ。これから大変なんだから…」

 

「ん。グレン、可哀想」

 

それでもまだお小言を言おうとするシスティーナを、ルミアとリィエルが止める。

何故こうなったかと言うと、約10日前の話だ。

 

 

「【魔術祭典】?」

 

「そうよ。貴方にはその選考会に出てもらうわ」

 

【魔術祭典】とは、かつてアルザーノ帝国を有する、ここ北セルフォード大陸の諸国の間で行われていた、世界的魔術競技大会だ。

本来、魔術は他国に晒していいものでは無い。

だが、だからこそ行う意味がある。

手の内を晒してでも、恒久的平和と安寧を願う『平和の祭典』なのだ。

しかし、レザリアと揉めた以降、1度も実現していないこの大会を開催するなんて…。

なにか進展があったのだろうが、窺い知る余地はない。

 

「それで、そんな事勝手に言っていいんですか?イヴ先生」

 

そう、これは本来、今日の朝の職員会議で発表されるのだとか。

ハーレイ先生とイヴ先生は、その雛形作りの為、先に教えられたらしい。

 

「構わないわ。貴方とシスティーナは、満場一致で参加が決まってるから。それに代表になるかどうかは、貴方の頑張り次第よ」

 

ふーん、まあ、妥当か。

帝国代表はうちから20人、聖リリィから20人、クライトスから20人の、計60人の中から、10人だけ選ばれる。

その中でも、俺とシスティーナは筆頭らしい。

なんの筆頭かと言うと

 

「俺、【メイン・ウィザード】とか興味無いんだけどな…」

 

【メイン・ウィザード】とは、代表10人の中の更に代表、リーダーの事だ。

当然、魔術師として最も優秀な者が務める。

そして、それ以外の9人を【サブ・ウィザード】と呼び、リーダーの補佐をする。

つまり【魔術祭典】とは、【メイン・ウィザード】同士の、戦いでもあるのだ。

そんな立場であるが故に、国を背負うと言っても過言ではない。

そんなクソ面倒臭い立場、喜んで捨ててやる。

 

「やる気が無いのはいいけど、参加してもらうから。アルタイルだって、女王陛下の顔に、泥は塗りたくないでしょう?」

 

むぅ…それを言われると、弱い。

 

「仕方ない…まあ、システィーナとガチでバトれると思えばいいか」

 

 

 

そういう10日前の、朝の食卓での会話を思い出しつつ、俺は様子のおかしいシスティーナを見る。

 

「ルミア。システィーナの奴、何で肩肘張ってるんだ?アイツなら問題無いだろうに」

 

「えっとね。システィのお爺様…レドルフ=フィーベル様も、魔術祭典に出場してたんだって。しかも私達と同じ歳にメイン・ウィザードで」

 

そういう事かと、納得した。

 

「なるほどね…。祖父に追いつきたい一心のシスティーナにとって、ここは外せない訳か。…健気だねぇ…。それがもうちょい先生に向けば…」

 

「いいんだけどねぇ〜…」

 

俺達は現在進行形で、先生にツンツンしてるシスティーナに、軽くため息をつく。

このクラスの通過儀礼であるとは言え、こう()()()()()()()()()()()()()

そんなこんなで、他校の生徒の到着を告げるアナウンスが聞こえる。

 

「ほら!2人共!他校の連中来たぞ!」

 

「先生!早く行きますよ!」

 

「ったく…お前ら、元気だな〜…」

 

クライトスは誰が来るかまるで分からないが、聖リリィから誰が来るかは、想像がつく。

ほら、大きく手を振ってるのは

 

「お前達!久しぶりだな!」

 

「お元気ですか!皆さん!」

 

フランシーヌ、ジニー、コレットを筆頭とする連中だ。

まあ、アイツらが選ばれない訳が無い。

 

「エルザは?…エルザ…いる?」

 

リィエルがぴょんぴょん跳ねながら、エルザを探す。

そんなリィエルが微笑ましくて、つい頭を撫でてやる。

 

「ここからじゃあ、分からねぇな…。後で確認しとくよ。さてと…ルミア、格好に問題なし?」

 

「うん。バッチリ!」

 

「よし。じゃあ、行きますか」

 

そう言って俺はルミアを抱えて、飛び降りる。

何故あんなことを確認したかと言うと

 

「聖リリィ女学院の皆様。長旅ご苦労様でした。ようこそ、アルザーノ帝国魔術学院へ。本日皆様の対応をさせて頂きます、アルタイル=エステレラです。よろしくお願い致します」

 

「同じくルミア=ティンジェルです。よろしくお願い致します」

 

()()()()()口上を述べながら、一礼する。

今回ここに来る2校のうち、聖リリィの方の応対を、命じられたのだ。

ただ、相手が女性である事を考慮して、ルミアに手伝いをお願いしたのだ。

 

「まあ、これはご丁寧に。ありがとうございます」

 

そう返事をするのは、新しい学長さんだ。

まあそれはいいとして、その後ろにいる生徒達は、何故か皆顔を真っ赤にしていた。

俺は1番近くにいたジニーに確認する。

 

「ジニー?皆どうしたんだ?」

 

「…意外に罪作りな方ですね…」

 

「アイルクン?」

 

「ルミアさん…!?怖いぞ…!?」

 

後ろから来る超高密度のプレッシャーから逃げたくて、俺はすぐに話を切りかえた。

 

「それでは皆様、こちらへどうぞ」

 

そう促して、宿泊する場所へと先導していく。

まあ、それはともかく…。

さっきから何で『()()()』とか、『()()()()()』とか、思ってるんだ?

 

 

彼女達を宿泊施設へ案内した後、俺達は少し休憩してから、交流歓迎会の会場に案内した。

 

「それではこちらでお待ちください。もうじきエドワルド卿の訓示がございますので」

 

そう言って俺達は一礼した後、皆の元に戻ったのだった。

 

「ふぅ…。疲れた。こういう堅苦しいのは、苦手だぜ。まあ、それ以外でも疲れたけど」

 

「お疲れ様アイル君。…色々大変だったね…」

 

というのも、道中やたらと質問責めされたのだ。

そんなに男が珍しいのかね?

 

多分、アイル君がカッコイイからだよ…

 

「ん?何か言った?」

 

「な、何でもないよ!?///」

 

…ごめん、実は聞こえてた。

恥ずいから、聞こえないふりしてたけど。

そして始まるエドワルド卿の訓示。

()()()()()クッソ長ぇ、そしてクッソつまらねぇ。

半分寝ながら、聞き流していると

 

「それでは皆様。今夜はゆるりとご歓談ください。よい一時を」

 

リゼ先輩の手短な締めの一言で、交流歓迎会は始まったのだった。

 

「それでは、システィーナ、アルタイル、ギイブル、ウィンディ…以上5名の代表選手候補入りを祝しまして…かんぱ〜い!!」

 

「「「「「かんぱ〜い!!」」」」」

 

会場に集まった俺達2組の生徒は、候補入りした俺達5人の祝賀会をしていた。

 

「候補に入っただけなんだがな…」

 

「堅苦しい事はなしだぞ、アイル!」

 

「そうそう、あの落ちこぼれクラスって言われた、僕達のクラスから5人も出たんだからね!」

 

やれやれ、呑気というかなんというか…。

それでも祝ってくれる嬉しさを、隠しきれないのも事実だ。

 

「でも俺って聞くところによると、21番目の候補の奴が、病欠で繰り上がっただけらしいんだよな…。もちろん全力でやるけど俺みたいな田舎者じゃあな…。タハハ…」

 

おいおい、随分とらしくないじゃんか。

 

「アホだとは思ってたけど、ここまでとはな」

 

「なっ!?」

 

驚くカッシュを無視して、話し続ける。

 

「どんな理由があるかなんてどうでもいいだろ。大事なのは、お前が候補に入った…それだけだ。後は死ぬ気でやるだけだ。結果なんてやってみねぇと分かんねぇよ。グレン先生見てみろよ。あんな魔術師として三流でも、特務分室の軍人として、生き抜いたんだぜ?大事なのは、技量以上に覚悟だぜ」

 

俺はわざとグレン先生を矢面にあげ、揶揄う。

軽く睨まれるが、スルーする。

 

「ま、君は出自的に魔術の勉強が遅かっただけだ。ここまで来るだけの、センスはある」

 

「そうよね。私達みたいに、子供の頃から勉強してた訳じゃないし…イヴさんも言ってたわよ。本当に惜しいって」

 

ギイブルとシスティーナも、そう言って励ます。

俺にはギイブルみたいな、ハングリー精神は無い。

システィーナみたいな、追い求める夢や理想も無い。

ウィンディみたいな、貴族としての誇りも無い。

いや、厳密には誇りはあるが、ここに求めるものでは無い。

 

「なあ!アイルはどう思ってるんだよ?」

 

それぞれの気持ちを聞いたカッシュが、俺にも尋ねる。

 

「そうだな…。メイン・ウィザードとか、正直興味は無い。でも…やるからには勝つ。それだけ」

 

そう、ただの負けず嫌い…それだけだ。

その顔を浮かぶ笑みは、不敵で、獰猛な笑みだった。

俺は周りを見渡して、代表候補を見渡しながら、考え事をする。

 

(リゼ先輩は当然。ジャイルやハインケルも妥当だろう。ていうか、リィエルはいつの間にジャイルと仲良くなったんだ?他の3年はよく分からないけど…そういえば、アイツも候補入りしたんだっけ?)

 

「「「「「「「「戦争じゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」」

 

「うぉわ!!!?何事!!?」

 

凄い爆弾発言に、ビックリした俺は慌てて振り返る。

そこには、アルザーノ帝国魔術学院生VS聖リリィ女学院生による、乱闘が始まっていた。

よく見ると、システィーナとルミアも混ざってる。

 

「…は?何事?」

 

「あはは…何事かしら?」

 

いつの間にか隣に来ていた、リゼ先輩がそう返すが、その顔は微妙に引き攣っていた。

その時、不意に何か予感が走る。

 

「失礼、リゼ先輩」

 

「アルタイル!?」

 

俺はすぐにリゼ先輩を抱き寄せ、そのまま上に飛んで、シャンデリアに捕まる。

その瞬間

 

「『お静かに』」

 

一節詠唱で何かが詠唱され、魔法陣が形成される。

そこから伸びる蔦が、乱闘騒ぎをしていた生徒達のほとんどを、雁字搦めにする。

 

「皆さん、折角の歓迎会です。今宵はもっと、穏やかに交流しましょう。何せ…貴方達が楽しめるのは、今宵が最後なのですから」

 

(何あの2枚目?スゲェカッコつけてるけど)

 

(彼は…【レヴィン=クライトス】)

 

クライトスね…。

あのレオスの親戚かなんかか。

 

「正直…ガッカリです。こんな小技で気圧されるなんて。ここに来れば、ライバルに会えると思ったんですが…」

 

「うわっ!くっさ!臭すぎでしょそれ!」

 

「ちょっ!?アルタイル!?」

 

思わず声に出てしまった正直な感想。

いやだって…ねぇ?

俺の声が聞こえたのか、こっちを見上げるレヴィン。

どうやら気づいていなかったようだ。

 

「おや…まさか逃げている者がいたとは…」

 

「いや、自分で出した魔術だろ。しっかり把握しとけよ。魔術は、おもちゃじゃねえんだぞ」

 

そう言いながら、俺はシャンデリアから手を離し、降り立つ。

 

「で?イキがってるところ悪いけど…調子乗んなよ、クソガキ」

 

そう言った瞬間、レヴィンの後ろで、風が舞い上がる。

それは…ルミアを横抱きにしたシスティーナだ。

疾風脚(シュトロム)】で、逃れた唯一の生徒だ。

 

「まさか…【疾風脚(シュトロム)】?それも、人を抱えて…貴女達…一体?」

 

「システィーナ=フィーベルよ」

 

「アルタイル=エステレラ」

 

その名前に…特にシスティーナに覚えがあったのか、妙に納得した顔をする。

 

「なるほど…貴女が従兄弟の婚約者だった…」

 

「まあ、そこはいいんだけど…正直、ガッカリだよ。こんな雑な小技でイキがるなんて」

 

「ッ!?」

 

その煽りに、顔を赤くしながら睨みつけてくるレヴィン。

 

「アイル、煽らない。それとレヴィンさん。つい気分が高揚して、大人気なくはしゃいじゃってごめんなさい。もう落ち着いたから、そろそろ解いてあげてくれませんか?」

 

そう言いながら、俺とシスティーナは同時に、踵を鳴らす。

その瞬間、皆を縛っていた蔦が、嘘のように消える。

その光景に、流石のレヴィンも、目を剥くしかない。

 

「なッ!!これは…【術式介入(スキル·インタベンション)】…!?」

 

術式介入(スペル・インタベンション)】。

駐在型魔術式に干渉して、制御を奪う高等魔術技巧だ。

もちろん、【詠唱割込(スペル・インターセプト)】には劣るが。

それを俺達は分担してやった。

本来一人でやった方が安全だ。

別々の魔力を流すと、干渉し合って何が起こるか分からないのだ。

しかしそこは、一緒に戦ってきた戦友だ。

お互いの事は、手に取るように分かる。

知識も理解も問題なし。

プロテクトを破る魔力は、レヴィンのいる位置を境界に分担。

そうする事で、お互いの魔力が干渉し合うことなく、成立させる事が出来たのだ。

ここまで、一切の打ち合わせなし。

ただのアイコンタクトだ。

 

「フフ。まだ交流会は始まったばかりです。精一杯楽しみましょう?レヴィン」

 

「…貴女達がいてくれてよかった。どうやら退屈せずに済みそうだ。アルタイル。君も油断しないように。この程度が僕の実力だと思っていると…寝首を掻かれますよ?」

 

「ふ〜ん…。面白ぇじゃん。やれるもんならやってみな」

 

睨み合った後、レヴィンがお仲間の所に戻っていくのを、見送るとシスティーナが額の汗を拭いながら、脱力していた。

 

「おいおい、あの程度に気張りすぎなんだよ」

 

「あの程度って…」

 

「あれの底は見えた。敵じゃねぇよ」

 

悪いが、これは慢心でも油断でもない。

純然たる事実だ。

というか、あの程度に臆してる暇も、手こずる暇も俺には無い。

 

 

円もたけなわとなり、交流会は終了。

俺達は帰り道を歩いていた。

 

「それにしても、アルタイルはともかく。白猫があんな真似するとは意外だったな」

 

突然グレン先生が、そんな事を言い出した。

 

「あんな事?」

 

「レヴィン相手に実力を見せつける様な真似だよ」

 

なるほど、それは確かにそうかも。

俺は煽る為にやる事がたまにあるからな。

 

「う…やっぱり私…傲慢だったんでしょうか…」

 

どうやら、少し身に覚えがあるらしいシスティーナが、バツの悪そうな顔で俯く。

 

「バーカ。傲慢じゃねぇ魔術師はいねぇよ。そもそも神が創りたもうたこの世界の法則に介入しようってのが魔術だ。何かを掴もうとするから、魔術を志すんだ。空を飛べる翼に憧れない人間はいない。人生っていう大きな空を飛ぶ為に、魔術はあるんだよ」

 

へぇ…なんか意外…。

 

「先生が、先生してる…」

 

「初めから先生だっつーの!」

 

だから殴るなよ、痛いな〜!

 

「そうよね…貴女は誰よりも高く飛ぶ子だったわ。システィーナ」

 

暗闇から誰かの声がする。

俺はルミアを隠しながら、身構える。

そこから現れたのは、金髪の美少女だった。

 

「貴女は…エレン!?」

 

システィーナは目を見開きながら、驚く。

 

「…白猫、知り合いか?」

 

それに答えたのは、彼女自身だった。

 

「私の名前はエレン。【エレン=クライトス】。貴方達には、こう言った方がいいかしら。クライトス家主家筋、レオス=クライトスの実の妹よ」

 

こりゃまた、面倒くさそうなのが来たな。

ネチネチとシスティーナに僻みばっかり…。

()()()()()()()()()()()()()

呆れていると、気づいたら終わっていた。

 

「…アホらし」

 

それにしても…妙な違和感があった。

()()()』、『()()()()()』、『()()()()()』…。

何か、何かおかしい。

そんな気がしてならなかった。




何かに気付いているアルタイル。
一体何が気になるのか…!?
それは自覚してないので、まだ分かってません。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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