ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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アルタイル君のステータスに、かなり悩みました。
システィーナがかなり規格外だったので、それに張り合おうとするなら、やっぱり規格外にしないと…!
そう思い、こうなりました。
それではよろしくお願いします。


代表選考会編第2話

俺は今、学院の北東にある魔術競技場にいる。

他にも参加者は皆、それぞれ準備運動をしている。

俺は特に何もしない為、ぼうっと空を見ている。

何の準備運動かと言うと、第1の試験【魔力測定】の為のものだ。

あ、先生が来た。

 

「さて…今日、お前達にやってもらうのは、魔力測定だ」

 

変な液体と結晶が入った3本のガラス円筒と、それらと繋がったモノリス型魔導演算器がある。

 

「やる前に、この【マウザー式魔力測定器】の使い方と仕組みを復習するぞ」

 

マウザー式魔力測定器とは、帝国で最も使われている、標準規格魔力測定装置だ。

これを使って、【魔力容量(キャパシティ)】と【魔力濃度(デンシティ)】を測る。

魔力容量(キャパシティ)とは、体内に保有出来る魔力の量を指す。

魔力濃度(デンシティ)とは、その魔力の濃さを指す。

簡単に言うと、魔力容量(キャパシティ)が大きければ、大量に呪文が撃てる。

魔力濃度(デンシティ)が高いと、一撃の威力が高くなる。

一般的に男は魔力濃度(デンシティ)に長け、女は魔力容量(キャパシティ)に長けている。

グレン先生が試しにやってみたが…あまりに反応に困る数値だった。

 

「一流と呼ばれる連中の魔力容量(キャパシティ)は約3000、魔力濃度(デンシティ)は約150だ。…あれ?なんか涙が出てきたぞぉ?ボク…」

 

「せ、先生!泣かないでください!?その〜…ほら!先生は、知識とか、格闘術とか!?すごいですから!だから…!」

 

震え始める先生を、必死に励ますルミア。

仕方ないので俺も参戦して、なんとか泣き止ませた。

ちなみに俺達ぐらいの歳の平均は、魔力容量(キャパシティ)は1300〜1400、魔力濃度(デンシティ)は50〜60とされている。

流石に代表候補に選ばれるだけある面子だ。

それぞれ、好成績を叩きだしている中、やはりイレギュラーというのは、いるものだ。

場が荒れたのは、システィーナの時だった。

 

「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」」」」」

 

システィーナの結果が出てきた瞬間、そのあまりにぶっ飛んだ数値に、皆が驚いたのだ。

 

魔力容量(キャパシティ):10820、魔力濃度(デンシティ):195…!?」

 

おいおい、システィーナ本人が1番唖然もしているじゃねぇか。

 

「…え?この次に俺がやるの?絶対やりたくないんだけど!?」

 

「…が、頑張って。アイル君」

 

はぁ…仕方ねぇ。

まあ、人様なんて何でもいいか。

そう思い、意識を切りかえて計測した結果

 

「「「「「はあぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」」」

 

魔力容量(キャパシティ):6809、魔力濃度(デンシティ):438…!?」

 

とりあえず、場がシラケる様な事には、ならなかったな。

まあ結構な修羅場を潜ってきたしな。

否が応でも鍛えられたんだろう。

それに、ゾーンに入れるようになってから、魔力の流れとか、そういうのがよく分かるようになった。

最近、【アリアドネ】の魔力効率がいいのも、俺の魔力濃度(デンシティ)が上がってたからか?

同じ量でも質が段違いだから、きっとこれまで以上の力を発動出来ていたのだろう。

 

「あれってアルザーノ校のシスティーナと、アルタイルだろ!?」

 

「流石、候補筆頭だな…!?」

 

各校、というかうちの生徒もかなり驚いてる。

そんな中、3人目のイレギュラーが現れる。

それは思わぬダークホース…エレンだった。

 

魔力容量(キャパシティ):9640、魔力濃度(デンシティ):186!?」

 

へぇ…システィーナに匹敵するじゃねぇか。

こうして大荒れの中、魔力測定の試験が終わった。

 

「第2の試験は、【筆記試験】だ」

 

次の日に行われたのは、筆記試験だ。

ここが1番嫌だ。

ほとんどの生徒がいい顔をしない。

フランシーヌとコレットなんて、死んでる。

人の事は置いといて、俺はと言うと、まあ真面目にはやった。

1000点満点中850は固いだろう。

ていうか、最後のなんだよ。

何度考えても、分からん。

あんなの誰が解けるんだよ…?

このテストはMAX950ってところだな。

結果は870点で6位と、まあ予想通りに収まった。

 

「あっぶね〜…ギリでギイブルに勝ったぜ」

 

「クッ…!」

 

しかしここで、ありえない事態が起こる。

1位はシスティーナだと思ってたが、そうではなく、1位を取ったのは、なんとエレンだった。

しかも1000点…満点だ。

よくあのふざけた問題が解けたな〜…。

 

「へ〜。お前、頭脳派だったんだな。スゲェじゃん」

 

「…スゴい?私が?」

 

俺はたまたま隣にいたエレンに声をかける。

うわ〜、相変わらず顔色悪そうな顔してるな…。

というか、ちゃんと寝てるのか?

 

「だって最後の問題も解いたんだろ?なあ、あれどうやって解いたの?」

 

「…」

 

俺の質問には何も答えず、スタスタと何処かへ行ってしまう。

 

「相変わらず、感じ悪ぃな…。そんなに何を生き急いでるやら」

 

 

「ふ〜…しっかしムズすぎんだろ…あれ…」

 

俺は頭の切り替えの為、屋上で新鮮な空気でも吸おうかとここまで来たのだが、突然フェンスを殴るような音が聞こえてきた。

 

「…何事だ?」

 

俺は駆け足で階段を上ると、何故かグレン先生がいた。

 

「…は?グレン先生?」

 

「バッ!?シッ!」

 

俺が強引に引き込まれた瞬間、屋上のドアが乱暴に開かれる。

 

「「うぉ!?」」

 

「キャア!?」

 

全員が驚く中、屋上から来た少女、エレンが尻もちをつく。

 

「あ…ごめん!大丈夫?」

 

俺は慌ててエレンに手を貸す。

 

「ありがとう…。貴方…どうして?」

 

「ん?新鮮な空気を吸いに?」

 

「なんでお前は疑問形なんだよ…?それよりほら、これ落としたぞエレン」

 

そう言って先生が渡したのは、古びた懐中時計だった。

変なデザインしてるな。

そこには、古代語で何か書かれていたが、生憎と俺には読めなかった。

まあそれよりも…()()()()()竜頭がないのな。

 

「ん?【ル=キル】…?変わった名前だな」

 

「返してください!」

 

そんな懐中時計を、エレンはひったくる。

 

(そんなに大事なのか…?)

 

「失礼します」

 

「ちょっと待てよ。お前、よく最後の問題解けたな。よっぽど勉強したんだな?」

 

ん?突然何言い出したんだ?

 

「…質問の意味が分かりませんが。ええ、凄く勉強しました」

 

「そうかそうか。それは凄い。…お前、大陸最高峰【第七階梯(セプテンデ)()()()=()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…そんな訳ねぇよな?」

 

やっぱりあの底意地悪い問題、あの人なのか…。

いや、今はそこじゃない。

 

「あの問題、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()。…お前、どうやって解答を手に入れた?こうなると、全部が疑わしいぞ」

 

「私が不正をした証拠は?」

 

「ねぇよ。だから…あらゆる手段を使って調べる。セリカの問題を解いたとなりゃ、上も納得するはずだ」

 

2人の沈黙の間を、風が吹く。

ここは屋上、風が吹くのは当たり前だ。

なのに…今、ものすごい寒気がした。

 

「…はぁ。完全にアウトです」

 

何を言ってるコイツは?

そう言いたくても、口が開かない、開けない。

 

「一応善意の忠告です。…これ以上私に関わらないで下さい。でないと…死にますよ?」

 

「ッ!?先生!!!」

 

俺はエレンの最後通牒のような言葉に、やっと体が動いた。

先生を突き飛ばした途端、妙に胸がスースーした。

喉から何かがせり上がってきて、つい噎せた。

 

「ゴホッ!ゴホッ!…あ?」

 

吐き出したのは…血だ。

その時初めて気付いた。

俺の胸に大穴が空いて、ドーナツみたいになっている事に。

 

「…マジかよ…?」

 

最後に見たのは、泣き出しそうなグレン先生の顔と、半身を機械みたいにされている、変な羽を生やした少女だった。

その羽は、なんとなく

 

「ナム…ルス…?」

 

そのまま俺の意識は暗転していき…

 

 

ふと気付くと、俺は空を見上げていた。

屋上からではなく、教室の窓から。

 

「…あ?何だ?今の」

 

夢か…?それにしては妙にリアルな…?

ていうか、()()魔力測定するのか…?

 

()()…?」

 

…そうだ。

()()()()()()()()()

俺は隣に座るルミアに日付を聞いた。

 

「…ルミア。今日って何日だっけ?」

 

「え?今日は…」

 

ルミアが言った日付は…

 

 

 

5()0()4()5()()

 

「…は?」

 

〖だから、5045回。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

突然訳分からん事を言い出したナムルスに、俺は頭が痛くなった。

 

「お前、何言ってるんだ?」

 

〖うるさい。黙って話を聞きなさい!やっと接触出来たんだから…!この機は逃さないんだから…!!〗

 

そう言ってナムルスが俺に見せたのは、何十回と死ぬ俺自身だった。

1番最後に見たのは、アルタイルと共に死んだところだ。

 

「う…うおぉ…えぇ…」

 

あまりの経験に、思わず吐いてしまう。

これは…何なんだよ…!?

 

〖どう?やっと理解できた?〗

 

「一体…どういう事だよ!?」

 

〖前回の貴方達の死体を見つけた時の皆の反応ときたら!傑作だったわよ!特にシスティーナとルミアとリィエルときたら!後はイヴだったかしら?あの女も顔を真っ青にして!本当に可笑しいったら無いわ!!どうせすぐに…!?〗

 

「おい、やめろ」

 

思わず殺気を飛ばしながら、ナムルスを睨みつける。

その視線を受けて、ナムルスも冷静になったのか、俯いて、謝罪する。

 

〖…ごめんなさい。少し正気じゃなかったわ。でも、私視点で100年も同じ光景を見てきたんだもの。何故か、全く干渉できなかったし…寂しかったし…〗

 

拗ねたように言うその姿は、なんと言うか子供っぽかった。

 

「…とにかく、このクソッタレな状況は分かった。だが何故もっと早く教えてくれなかった?」

 

〖だから干渉出来なかったんだって…。この一週間だけ、通常の時間軸から外れてんだもの…〗

 

「どういう事だ?」

 

説明が長いので、俺なりにまとめる。

ナムルスの本体は、外宇宙にあるらしく、存在の一部を霊脈を通じて、こっちに干渉してるらしい。

何故こんな面倒臭い方法を、取っているかというと、コイツの本質を人間が理解しようとすると、イカれるらしい。

概念存在の分霊に近い存在らしい。

本来その外にいるコイツは、時間軸から外れたここに、干渉出来なかったのだが

 

〖何故か今はうっすらと繋がりが出来た。理由は私が知りたいくらいだわ。それと…前回ループで例外中の例外が発生したわ。それがアルタイルの干渉。今まで彼はこの舞台には上がってなかった…なのに、前回は上がってきた。それと、貴方達が死んだ時、犯人の姿が私には見えなかった。…何をしたの?〗

 

何をしたって…んな事言われたって

 

「俺も知らねぇよ。ただ、黒幕は分かるぞ。エレンだ」

 

〖エレン…。ああ、あの負け犬ね〗

 

あまりのナムルスの言い方に、呆れてしまうが、そこはいい。

アイツだけは、この一週間を知覚してる。

魔力の鍛錬の基本は、知覚してるか否かだ。

そりゃ100年近くやってりゃあ、あの急成長も納得がいく。

そう思っていると、突然ナムルスの体が透け出す。

 

〖チッ…時間ね。いいグレン、よく聞いて。繰り返される時間のループに、世界はもう限界が近いわ。早くこの一週間を抜け出しなさい。未来と過去の為に。そして何より…貴方自身の為に〗

 

そう言い残して、ナムルスが消えてしまう。

過去とか未来とか、よくわかんねぇけど…。

俺の脳裏に浮かぶのは、生徒達の笑顔。

 

「アイツらの未来を閉ざす訳にはいかねぇよな」

 

そう決意して、俺は踵を返すのだった。

 

 

 

「アルタイル、少しいいか?」

 

魔力測定を始める前に、先生が俺に話しかける。

 

「何ですか?」

 

「お前、変な夢見なかったか?例えば…死ぬ夢とか」

 

は?何言って…!?

それってつまり!?

 

「あれは…夢じゃないって事!?一体どういう事ですか!?」

 

「落ち着け!」

 

俺はつい先生にくってかかるも、先生に力ずくで離せる。

すぐに気持ちを落ち着かせる。

感情のコントロールは、魔術師の基本だ。

 

「!?ごめんなさい…。よし、大丈夫です」

 

「いいか、よく聞け…」

 

それから先生は、ナムルスから聞いたのだという話をしてくれる。

今まで感じていた違和感の正体はこれか…!

俺は無意識に、ほんの僅かの違和感を感じていたらしい。

 

「これから、エレンを抑える。お前は背後に回り込め」

 

「了解」

 

そのまま静かに俺はエレンの背後を取る。

先生に問い詰められたエレンは、逃走を図るもその前に俺に捕えられる。

 

「確保だ。話は署で聞こうか」

 

「ダメ!離して!その行為は完全にアウトなの!!」

 

何がアウトなのか聞こうとした瞬間、胸がスースーする。

ああ…見なくてもわかる。

死んだな、俺。

糸で守ってあったんだけどなぁ…。

よく見ると、グレン先生も同じく胸に大穴が空いてる。

皆が慌てて駆け付けてくる。

その顔は、皆泣きそうな顔だった。

ああ…胸が…痛いな…。




アルタイル君が、ループを自覚しました。
そして早い段階で、2回も死ぬアルタイル君。
ループを自覚した彼が一体どういう行動をとるのか。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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