システィーナがかなり規格外だったので、それに張り合おうとするなら、やっぱり規格外にしないと…!
そう思い、こうなりました。
それではよろしくお願いします。
俺は今、学院の北東にある魔術競技場にいる。
他にも参加者は皆、それぞれ準備運動をしている。
俺は特に何もしない為、ぼうっと空を見ている。
何の準備運動かと言うと、第1の試験【魔力測定】の為のものだ。
あ、先生が来た。
「さて…今日、お前達にやってもらうのは、魔力測定だ」
変な液体と結晶が入った3本のガラス円筒と、それらと繋がったモノリス型魔導演算器がある。
「やる前に、この【マウザー式魔力測定器】の使い方と仕組みを復習するぞ」
マウザー式魔力測定器とは、帝国で最も使われている、標準規格魔力測定装置だ。
これを使って、【
簡単に言うと、
一般的に男は
グレン先生が試しにやってみたが…あまりに反応に困る数値だった。
「一流と呼ばれる連中の
「せ、先生!泣かないでください!?その〜…ほら!先生は、知識とか、格闘術とか!?すごいですから!だから…!」
震え始める先生を、必死に励ますルミア。
仕方ないので俺も参戦して、なんとか泣き止ませた。
ちなみに俺達ぐらいの歳の平均は、
流石に代表候補に選ばれるだけある面子だ。
それぞれ、好成績を叩きだしている中、やはりイレギュラーというのは、いるものだ。
場が荒れたのは、システィーナの時だった。
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」」」」」
システィーナの結果が出てきた瞬間、そのあまりにぶっ飛んだ数値に、皆が驚いたのだ。
「
おいおい、システィーナ本人が1番唖然もしているじゃねぇか。
「…え?この次に俺がやるの?絶対やりたくないんだけど!?」
「…が、頑張って。アイル君」
はぁ…仕方ねぇ。
まあ、人様なんて何でもいいか。
そう思い、意識を切りかえて計測した結果
「「「「「はあぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」」」
「
とりあえず、場がシラケる様な事には、ならなかったな。
まあ結構な修羅場を潜ってきたしな。
否が応でも鍛えられたんだろう。
それに、ゾーンに入れるようになってから、魔力の流れとか、そういうのがよく分かるようになった。
最近、【アリアドネ】の魔力効率がいいのも、俺の
同じ量でも質が段違いだから、きっとこれまで以上の力を発動出来ていたのだろう。
「あれってアルザーノ校のシスティーナと、アルタイルだろ!?」
「流石、候補筆頭だな…!?」
各校、というかうちの生徒もかなり驚いてる。
そんな中、3人目のイレギュラーが現れる。
それは思わぬダークホース…エレンだった。
「
へぇ…システィーナに匹敵するじゃねぇか。
こうして大荒れの中、魔力測定の試験が終わった。
「第2の試験は、【筆記試験】だ」
次の日に行われたのは、筆記試験だ。
ここが1番嫌だ。
ほとんどの生徒がいい顔をしない。
フランシーヌとコレットなんて、死んでる。
人の事は置いといて、俺はと言うと、まあ真面目にはやった。
1000点満点中850は固いだろう。
ていうか、最後のなんだよ。
何度考えても、分からん。
あんなの誰が解けるんだよ…?
このテストはMAX950ってところだな。
結果は870点で6位と、まあ予想通りに収まった。
「あっぶね〜…ギリでギイブルに勝ったぜ」
「クッ…!」
しかしここで、ありえない事態が起こる。
1位はシスティーナだと思ってたが、そうではなく、1位を取ったのは、なんとエレンだった。
しかも1000点…満点だ。
よくあのふざけた問題が解けたな〜…。
「へ〜。お前、頭脳派だったんだな。スゲェじゃん」
「…スゴい?私が?」
俺はたまたま隣にいたエレンに声をかける。
うわ〜、相変わらず顔色悪そうな顔してるな…。
というか、ちゃんと寝てるのか?
「だって最後の問題も解いたんだろ?なあ、あれどうやって解いたの?」
「…」
俺の質問には何も答えず、スタスタと何処かへ行ってしまう。
「相変わらず、感じ悪ぃな…。そんなに何を生き急いでるやら」
「ふ〜…しっかしムズすぎんだろ…あれ…」
俺は頭の切り替えの為、屋上で新鮮な空気でも吸おうかとここまで来たのだが、突然フェンスを殴るような音が聞こえてきた。
「…何事だ?」
俺は駆け足で階段を上ると、何故かグレン先生がいた。
「…は?グレン先生?」
「バッ!?シッ!」
俺が強引に引き込まれた瞬間、屋上のドアが乱暴に開かれる。
「「うぉ!?」」
「キャア!?」
全員が驚く中、屋上から来た少女、エレンが尻もちをつく。
「あ…ごめん!大丈夫?」
俺は慌ててエレンに手を貸す。
「ありがとう…。貴方…どうして?」
「ん?新鮮な空気を吸いに?」
「なんでお前は疑問形なんだよ…?それよりほら、これ落としたぞエレン」
そう言って先生が渡したのは、古びた懐中時計だった。
変なデザインしてるな。
そこには、古代語で何か書かれていたが、生憎と俺には読めなかった。
まあそれよりも…
「ん?【ル=キル】…?変わった名前だな」
「返してください!」
そんな懐中時計を、エレンはひったくる。
(そんなに大事なのか…?)
「失礼します」
「ちょっと待てよ。お前、よく最後の問題解けたな。よっぽど勉強したんだな?」
ん?突然何言い出したんだ?
「…質問の意味が分かりませんが。ええ、凄く勉強しました」
「そうかそうか。それは凄い。…お前、大陸最高峰【
やっぱりあの底意地悪い問題、あの人なのか…。
いや、今はそこじゃない。
「あの問題、
「私が不正をした証拠は?」
「ねぇよ。だから…あらゆる手段を使って調べる。セリカの問題を解いたとなりゃ、上も納得するはずだ」
2人の沈黙の間を、風が吹く。
ここは屋上、風が吹くのは当たり前だ。
なのに…今、ものすごい寒気がした。
「…はぁ。完全にアウトです」
何を言ってるコイツは?
そう言いたくても、口が開かない、開けない。
「一応善意の忠告です。…これ以上私に関わらないで下さい。でないと…死にますよ?」
「ッ!?先生!!!」
俺はエレンの最後通牒のような言葉に、やっと体が動いた。
先生を突き飛ばした途端、妙に胸がスースーした。
喉から何かがせり上がってきて、つい噎せた。
「ゴホッ!ゴホッ!…あ?」
吐き出したのは…血だ。
その時初めて気付いた。
俺の胸に大穴が空いて、ドーナツみたいになっている事に。
「…マジかよ…?」
最後に見たのは、泣き出しそうなグレン先生の顔と、半身を機械みたいにされている、変な羽を生やした少女だった。
その羽は、なんとなく
「ナム…ルス…?」
そのまま俺の意識は暗転していき…
ふと気付くと、俺は空を見上げていた。
屋上からではなく、教室の窓から。
「…あ?何だ?今の」
夢か…?それにしては妙にリアルな…?
ていうか、
「
…そうだ。
俺は隣に座るルミアに日付を聞いた。
「…ルミア。今日って何日だっけ?」
「え?今日は…」
ルミアが言った日付は…
〖
「…は?」
〖だから、5045回。
突然訳分からん事を言い出したナムルスに、俺は頭が痛くなった。
「お前、何言ってるんだ?」
〖うるさい。黙って話を聞きなさい!やっと接触出来たんだから…!この機は逃さないんだから…!!〗
そう言ってナムルスが俺に見せたのは、何十回と死ぬ俺自身だった。
1番最後に見たのは、アルタイルと共に死んだところだ。
「う…うおぉ…えぇ…」
あまりの経験に、思わず吐いてしまう。
これは…何なんだよ…!?
〖どう?やっと理解できた?〗
「一体…どういう事だよ!?」
〖前回の貴方達の死体を見つけた時の皆の反応ときたら!傑作だったわよ!特にシスティーナとルミアとリィエルときたら!後はイヴだったかしら?あの女も顔を真っ青にして!本当に可笑しいったら無いわ!!どうせすぐに…!?〗
「おい、やめろ」
思わず殺気を飛ばしながら、ナムルスを睨みつける。
その視線を受けて、ナムルスも冷静になったのか、俯いて、謝罪する。
〖…ごめんなさい。少し正気じゃなかったわ。でも、私視点で100年も同じ光景を見てきたんだもの。何故か、全く干渉できなかったし…寂しかったし…〗
拗ねたように言うその姿は、なんと言うか子供っぽかった。
「…とにかく、このクソッタレな状況は分かった。だが何故もっと早く教えてくれなかった?」
〖だから干渉出来なかったんだって…。この一週間だけ、通常の時間軸から外れてんだもの…〗
「どういう事だ?」
説明が長いので、俺なりにまとめる。
ナムルスの本体は、外宇宙にあるらしく、存在の一部を霊脈を通じて、こっちに干渉してるらしい。
何故こんな面倒臭い方法を、取っているかというと、コイツの本質を人間が理解しようとすると、イカれるらしい。
概念存在の分霊に近い存在らしい。
本来その外にいるコイツは、時間軸から外れたここに、干渉出来なかったのだが
〖何故か今はうっすらと繋がりが出来た。理由は私が知りたいくらいだわ。それと…前回ループで例外中の例外が発生したわ。それがアルタイルの干渉。今まで彼はこの舞台には上がってなかった…なのに、前回は上がってきた。それと、貴方達が死んだ時、犯人の姿が私には見えなかった。…何をしたの?〗
何をしたって…んな事言われたって
「俺も知らねぇよ。ただ、黒幕は分かるぞ。エレンだ」
〖エレン…。ああ、あの負け犬ね〗
あまりのナムルスの言い方に、呆れてしまうが、そこはいい。
アイツだけは、この一週間を知覚してる。
魔力の鍛錬の基本は、知覚してるか否かだ。
そりゃ100年近くやってりゃあ、あの急成長も納得がいく。
そう思っていると、突然ナムルスの体が透け出す。
〖チッ…時間ね。いいグレン、よく聞いて。繰り返される時間のループに、世界はもう限界が近いわ。早くこの一週間を抜け出しなさい。未来と過去の為に。そして何より…貴方自身の為に〗
そう言い残して、ナムルスが消えてしまう。
過去とか未来とか、よくわかんねぇけど…。
俺の脳裏に浮かぶのは、生徒達の笑顔。
「アイツらの未来を閉ざす訳にはいかねぇよな」
そう決意して、俺は踵を返すのだった。
「アルタイル、少しいいか?」
魔力測定を始める前に、先生が俺に話しかける。
「何ですか?」
「お前、変な夢見なかったか?例えば…死ぬ夢とか」
は?何言って…!?
それってつまり!?
「あれは…夢じゃないって事!?一体どういう事ですか!?」
「落ち着け!」
俺はつい先生にくってかかるも、先生に力ずくで離せる。
すぐに気持ちを落ち着かせる。
感情のコントロールは、魔術師の基本だ。
「!?ごめんなさい…。よし、大丈夫です」
「いいか、よく聞け…」
それから先生は、ナムルスから聞いたのだという話をしてくれる。
今まで感じていた違和感の正体はこれか…!
俺は無意識に、ほんの僅かの違和感を感じていたらしい。
「これから、エレンを抑える。お前は背後に回り込め」
「了解」
そのまま静かに俺はエレンの背後を取る。
先生に問い詰められたエレンは、逃走を図るもその前に俺に捕えられる。
「確保だ。話は署で聞こうか」
「ダメ!離して!その行為は完全にアウトなの!!」
何がアウトなのか聞こうとした瞬間、胸がスースーする。
ああ…見なくてもわかる。
死んだな、俺。
糸で守ってあったんだけどなぁ…。
よく見ると、グレン先生も同じく胸に大穴が空いてる。
皆が慌てて駆け付けてくる。
その顔は、皆泣きそうな顔だった。
ああ…胸が…痛いな…。
アルタイル君が、ループを自覚しました。
そして早い段階で、2回も死ぬアルタイル君。
ループを自覚した彼が一体どういう行動をとるのか。
それでは失礼します。
ありがとうございました。