ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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こういう時、彼はすごく頭が回ります。
僅かな情報から、真実に辿り着く…。
どっかの探偵より、よっぽど向いてますね。
それではよろしくお願いします。


代表選考会編第3話

ふと気付くと、俺は教室の窓から、空を見上げていた。

 

「…今度は覚えてるぞ」

 

さてと…新たに分かった事は直接干渉はダメって事か。

ていうか、殺されてんのに、なんで俺はこんなに冷静なの?

我ながら、呆れ返るわ。

ただ…俺は先生の顔を見る。

顔色を見る限り、俺が認識していないループも存在するみたいだな。

多分だけど、俺が認識してるループは、俺が関わった時…つまり、死んだ時しか認識出来ていない。

そして、俺があそこで死んで以降、先生が俺を遠ざけるようになった。

 

「とりあえず、俺に出来る事を整理しよう」

 

まずは分かってる事からだ。

・相手は時間を巻き戻している

・相手の攻撃は、あらゆる守りを貫通する

・エレンは懐中時計を持っている

・ル=キルという、謎の古代語

時を巻き戻すという事は…

 

「時の天使【ラ=ティリカ】の関係者か?」

 

俺はそこから調べる事にした。

とりあえず、この魔力測定は適当に終わらせて、すぐに図書室に向かった。

関連書籍を一気に引っ張り出し、俺は手当り次第に調べる事にした。

 

「?これは…時計か?」

 

それは、ガチの写本に載っていた図解だ。

古代語で書かれてるため、全く読めないが、絵を見る限り、細部までほぼ同じだ。

変なデザインしていたから、よく覚えてる。

 

「これ…竜頭がついてるんだな…」

 

そもそも竜頭とは、時計の調整に使われる、なくてはならないパーツだ。

当たり前と言えば、そうなのだが…。

いや、だからか?

こんなイカれた所業、バカ正直にやってるのは、そういう事か?

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あれ?アイル?こんな所で…ってあー!貴方が借りてたのね!?」

 

「システィーナ?うるさい。ここ図書室だぞ」

 

俺は突然現れたシスティーナに、黙るように口に指を当てる。

 

「あ、ごめんなさい。…貴方は何調べてたの?」

 

「ちょっとな…。システィーナ、これって読める?」

 

俺は写本をシスティーナに見せる。

 

「これって古代語?流石に無理よ」

 

「ですよね〜…。グレン先生に相談するか」

 

「多分先生でも無理よ。それならフォーゼル先生がいるわ!」

 

げ、あの人がいるのか…。

苦手なんだよな…。

 

「仕方ない…腹を括るか。どこ?」

 

「こっちよ」

 

俺達は手早くいらない本を片付けて、フォーゼル先生の元へ急いだ。

 

「あれ?グレン先生もいるの?」

 

「おう…コイツらに連行されてな…。お前は?」

 

「どっかの誰かさんがやさぐれてるから、代わりに調べ物。フォーゼル先生、これ読める?」

 

「当然だ。ところでエステレラよ」

 

「貸さねぇよ。割とマジで」

 

この人、すぐに俺の【アリアドネ】を取ろうとするから、厄介なんだよな…。

今となっては、本気で貸す気の無い代物だし。

 

「むう。…ふむ。【滅びをもたらす風の翼(ル=キル)】これか?」

 

何でも、このル=キルはラ=ティリカの眷属の中では最強らしく、限定的に時間を操れるらしい。

クリュトゥーユ地方…今のクライトスが治める地では、よく伝わっている伝承らしい。

しかし、賢王に逆らった罪で、時間を巻き戻す時計に変えられたとか。

 

「頼む。この【ル=キル時計】を解析してくれ」

 

グレン先生がフォーゼル先生に頭を下げるも

 

「断る」

 

案の定、クズすぎる程の清々しさで、それを断る。

 

「…フォーゼル先生、俺からも頼む」

 

「私からもお願いします」

 

俺とシスティーナも、揃って頭を下げる。

もう…なりふり構ってる暇は無い。

 

「エステレラ家に伝わってた手記。…そこには、古代文明の事がかなり記されてます。それに…ロラン=エルトリアが調べていた事も。それを貸すから、どうか」

 

「私の祖父が、書いていた論文。そこにはまだ未発表の論文もあります。それの閲覧権利と引き換えに」

 

俺達はそれぞれの交渉カードを提示する。

俺の方はともかく、システィーナの方は…ヤバいだろ。

 

「お、おい!お前達!はやまるな!」

 

先生が慌てて俺達を止めるが、俺達も引き下がる気は無い。

 

「もう時間が無いんでしょ!だったらなりふり構ってられるか!」

 

「それに先生にとって、それだけ大事な事なんですよね?多分…アイルにとっても」

 

「僕を見くびるなよ。システィーナ=フィーベル、アルタイル=エステレラ」

 

フォーゼル先生が口を開いたのは、その時だった。

 

「僕が他者からの施しを受けると思うか?それに、人の研究を奪うような真似、僕自身が認めない。それは()()()()()だ」

 

「「ッ!?」」

 

「…とはいえ、君達の覚悟と心粋は気に入った。今回は、タダでやってやる」

 

それからは分かった事は

・この時計の機能は全て、竜頭に集約されている

・主の命令を機械的にこなすしか出来ない

つまり、竜頭さえ押さえれば、なんとでもなるってことだ。

ここまで分かれば、犯人は自ずと見えてくる。

 

「システィーナ…話がある…」

 

再び世界が回り出す。

ああ、またループが始まる。

だけど…既に仕込みは済んだ。

次で最後だ、覚悟してとけよ。

 

「【ゲルソン=ル=クライトス】」

 

 

 

気付けば、草原にいた。

全く見覚えのない場所だ。

ふと右手をフサフサした何かが撫でる。

見下ろすと、立派な毛並みをした大型の黒い狼が、こっちを見上げている。

その眼差しに、何故かあの()()()()()()()がチラついた。

狼が目線を下げた先には、俺達の足元にじゃれつく、金色の子犬がいる。

今度は()()()()()()()がチラついた。

不意に視界の端に、青い何かが動く。

よく見ると、俺の肩に青い子リスが乗っていた。

次に、チラついたのは、()()()()()だ。

最後に見えたのは、綺麗な銀色の猫だ。

少し先にいるソイツは、こっちをちらっと見た後、直ぐにそっぽ向く。

まるで、()()()だな。

 

〖ここは貴方の精神世界よ。夢と現、意識と無意識の狭間にある場所よ。とはいえ、少し違う意識も混ざってるみたいだけど〗

 

後ろから声をかけてくるのは、ナムルスだ。

その視線の先には、狼と猫がいる。

猫はじっとこっちを見て、狼は知らぬ存ぜぬと言わんばかりに、腹ばいに寝ている。

 

「お前本当に何でもありだよな…。で?見てたのか?」

 

〖ええ。ル=キル。…あの子が元凶だったのね〗

 

ナムルスの変な言い回しに、首を捻っていると、ナムルスから切り出される。

 

〖今のル=キルに理性は無いわ。ただ与えれた命令を元に、その延長線上の事をこなすしか出来ないわ。つまり…〗

 

「ただ1週間を繰り返すだけの存在って事か」

 

〖そうよ。…ル=キルを倒すのよグレン。貴方なら出来るわ〗

 

いや、出来たら苦労しんわ。

思わずため息が出る。

 

「それが出来ないから、困ってるんだが?時間操作?滅びの風?アホかよ」

 

〖今のあの子にかつての権能は無いわ。厄介なのは、あの翼が起こす【滅びの風】だけよ〗

 

「だからそれが絶望的なんだが?」

 

あの風は、あらゆる防御系呪文の矛盾を突いてくる。

いかなる障壁も付与も基本は遮断と強化。

つまり防御そのものが攻撃に触れてしまうのは、避けられないのだ。

この風はそこを見事に突いている最強の攻撃なのだ。

 

〖…そうね。グレン、貴方は時間には滅びの概念があるのを知ってる?〗

 

当たり前だ。

どんなものでも、劣化していくものだ。

 

〖あの風は、その概念を極微小の根源素粒子…第三虚数質量物質【時素(ルイン)】として物質化。それを風に乗せて飛ばしてるだけよ。しかもその概念故に、この物質は直ぐに消えるわ〗

 

「…つまり、出始めの風に当たらきゃいいって事か?」

 

俺は辛うじて理解できたナムルスの解説を、できるだけ分かりやすくまとめる。

 

〖そういう事よ。グレン、貴方なら出来るわ。私が出てきた理由は…分かるわね〗

 

「もう、限界か」

 

〖ええ、恐らく次が最後よ。それに、アルタイルも次に全てを懸けて仕掛けるわ。お願いグレン。…あの子を楽にしてあげて〗

 

「…善処はする」

 

そう言って全ての光景が遠ざかっていく。

俺が最後に聞いたのは、狼の遠吠えだった。

 

 

 

ふと気付くと、俺は教室の窓から、空を見上げていた。

 

「…ここで終わらせる」

 

そう呟いて立ち上がると

 

「アイル、少しいい?」

 

システィーナに呼び止められる。

 

「…どうした?」

 

「あれって…何なの?現実なの?」

 

どうやら、俺は賭けに勝ったらしい。

 

「…現実だ。おめでとう、これでお前も役者だ。ここからはアドリブ合戦だぜ」

 

「…上等よ。やってやるわ」

 

とりあえずいつも通り、起こしに行きますか。

 

「先生、ちょっといいですか?」

 

「俺達とお話、しようぜ」

 

俺達は先生を強引に、裏庭まで連れてきた。

 

「ったく、何の用だよ…?俺は忙しい…」

 

「システィーナを巻き込んだから」

 

「…は?」

 

先生に話をさせないようにする為、一気に畳み掛ける。

時間が無い、だったらもう要件だけ告げる。

 

「先生、私…夢を見たんです。その中に古い友人がいて、先生が助けようと、何か恐ろしい怪物と戦っていたんですが…力及ばず…その…すごく、リアルな夢でした。夢とは思えないくらい、真に迫った…。あの異形の怪物を放ってはいけない。そう、己の深い所で確信できるくらい」

 

「お前…」

 

「…先生、俺は自分が関わった時しか分からない。だけど俺の知らないループがあったんだよね?でも、助けを求めない…。それはつまり、第三者に言ったらその人が死ぬんじゃない?だから俺は前回、わざとシスティーナをあそこに行かせた。当事者にする為に」

 

そう、前回のループの時、俺は自分が認識しているループについて、考えた。

分かったのは、自分が巻き込まれた時しか覚えてない、という事だ。

だったら、他の奴もそうなんじゃないのか?

そう思い、俺はシスティーナに賭けた。

もし成功したら、システィーナ程の頼れる奴はいない。

 

「だから、巻き込んだのか?アルタイル!!!」

 

先生は俺の胸ぐらをつかみあげ、壁に叩きつける。

 

「先生!?」

 

「お前は分かってるだろ!!アイツがどれだけ強いのか!?あんな危険な奴と殺り合うのに、どうしてシスティーナを巻き込んだ!!?」

 

分かってる…。

そんなのは言われなくても分かってる。

それでも…!

 

「じゃあ、どうするだよ!!!」

 

俺は逆に掴まれる腕を握りしめる。

 

「どう足掻いても、俺達じゃ叶わない!!目には目を!風には風を!!アイツに勝つには、風しかない!!でも俺達じゃ力不足だ!!システィーナ以外に、誰が出来るんだ!!?」

 

俺だって巻き込みたくなかった。

でも、こうするしか無かったんだ。

 

「…こうするしか、無かったんだよ…」

 

唇を噛み締める。

血が出てくるが、気にしてる余裕は無い。

…悔しい。

守るといいながら、危険に巻き込んでる自分が、悔しい…!

 

「グレン先生。何が起きてるのか、もう言わなくてもいいです。だから…何をすべきなのか、教えて下さい。だって…先生は、言わないんじゃなくて、言えないんでしょう?」

 

その言葉に先生がハッとする。

そのまま俺から手を離す。

 

「私だってその…それくらいは、…先生の事、信頼してるって事なんですから!?///言わせないでください!!///」

 

やれやれ、どいつもこいつも素直じゃない…。

システィーナの言葉を受け、やっと先生も腹を括ったのか

 

「システィーナ。アルタイルも。…選抜会を辞退してくれ」

 

「「…はい。分かりました」」

 

そうアッサリと了承すると、それが大層意外だったのか、ズッコケるグレン先生。

 

「なっ!?おい、いいのかよ!?アルタイルはともかく、システィーナ!お前はメイン・ウィザードを目指してたんだろ!?爺さんに追いつきたいんだろ!?」

 

「なんでその事を知ってるのか不思議ですが…先生だから。これだけで十分でしょう?」

 

「…」

 

あまりにも眩しいその笑顔に、思わず黙ってしまうグレン先生。

システィーナ…それはまるで…告白だぞ?

こうして俺達は、揃って参加辞退を叩きつけたのだった。




どうやってシスティーナが巻き込まれたのか…。
それを考えた時、ふと思ったのがアルタイルみたいに、死んだ時とかかなって思いました。
グレンが死んだ時とかは、システィーナ達は認識してませんでした。
でも、ループ前にシスティーナが屋上に来て、そしてうっすらと自覚したシスティーナ。
だったらアルタイルみたいに、死んだら自覚出来るのでは?
そう思い、アルタイルは嘘をついて、システィーナを屋上に行かせました。
無事システィーナを巻き込んだアルタイル達。
ついに、新魔術お披露目です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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