僅かな情報から、真実に辿り着く…。
どっかの探偵より、よっぽど向いてますね。
それではよろしくお願いします。
ふと気付くと、俺は教室の窓から、空を見上げていた。
「…今度は覚えてるぞ」
さてと…新たに分かった事は直接干渉はダメって事か。
ていうか、殺されてんのに、なんで俺はこんなに冷静なの?
我ながら、呆れ返るわ。
ただ…俺は先生の顔を見る。
顔色を見る限り、俺が認識していないループも存在するみたいだな。
多分だけど、俺が認識してるループは、俺が関わった時…つまり、死んだ時しか認識出来ていない。
そして、俺があそこで死んで以降、先生が俺を遠ざけるようになった。
「とりあえず、俺に出来る事を整理しよう」
まずは分かってる事からだ。
・相手は時間を巻き戻している
・相手の攻撃は、あらゆる守りを貫通する
・エレンは懐中時計を持っている
・ル=キルという、謎の古代語
時を巻き戻すという事は…
「時の天使【ラ=ティリカ】の関係者か?」
俺はそこから調べる事にした。
とりあえず、この魔力測定は適当に終わらせて、すぐに図書室に向かった。
関連書籍を一気に引っ張り出し、俺は手当り次第に調べる事にした。
「?これは…時計か?」
それは、ガチの写本に載っていた図解だ。
古代語で書かれてるため、全く読めないが、絵を見る限り、細部までほぼ同じだ。
変なデザインしていたから、よく覚えてる。
「これ…竜頭がついてるんだな…」
そもそも竜頭とは、時計の調整に使われる、なくてはならないパーツだ。
当たり前と言えば、そうなのだが…。
いや、だからか?
こんなイカれた所業、バカ正直にやってるのは、そういう事か?
「あれ?アイル?こんな所で…ってあー!貴方が借りてたのね!?」
「システィーナ?うるさい。ここ図書室だぞ」
俺は突然現れたシスティーナに、黙るように口に指を当てる。
「あ、ごめんなさい。…貴方は何調べてたの?」
「ちょっとな…。システィーナ、これって読める?」
俺は写本をシスティーナに見せる。
「これって古代語?流石に無理よ」
「ですよね〜…。グレン先生に相談するか」
「多分先生でも無理よ。それならフォーゼル先生がいるわ!」
げ、あの人がいるのか…。
苦手なんだよな…。
「仕方ない…腹を括るか。どこ?」
「こっちよ」
俺達は手早くいらない本を片付けて、フォーゼル先生の元へ急いだ。
「あれ?グレン先生もいるの?」
「おう…コイツらに連行されてな…。お前は?」
「どっかの誰かさんがやさぐれてるから、代わりに調べ物。フォーゼル先生、これ読める?」
「当然だ。ところでエステレラよ」
「貸さねぇよ。割とマジで」
この人、すぐに俺の【アリアドネ】を取ろうとするから、厄介なんだよな…。
今となっては、本気で貸す気の無い代物だし。
「むう。…ふむ。【
何でも、このル=キルはラ=ティリカの眷属の中では最強らしく、限定的に時間を操れるらしい。
クリュトゥーユ地方…今のクライトスが治める地では、よく伝わっている伝承らしい。
しかし、賢王に逆らった罪で、時間を巻き戻す時計に変えられたとか。
「頼む。この【ル=キル時計】を解析してくれ」
グレン先生がフォーゼル先生に頭を下げるも
「断る」
案の定、クズすぎる程の清々しさで、それを断る。
「…フォーゼル先生、俺からも頼む」
「私からもお願いします」
俺とシスティーナも、揃って頭を下げる。
もう…なりふり構ってる暇は無い。
「エステレラ家に伝わってた手記。…そこには、古代文明の事がかなり記されてます。それに…ロラン=エルトリアが調べていた事も。それを貸すから、どうか」
「私の祖父が、書いていた論文。そこにはまだ未発表の論文もあります。それの閲覧権利と引き換えに」
俺達はそれぞれの交渉カードを提示する。
俺の方はともかく、システィーナの方は…ヤバいだろ。
「お、おい!お前達!はやまるな!」
先生が慌てて俺達を止めるが、俺達も引き下がる気は無い。
「もう時間が無いんでしょ!だったらなりふり構ってられるか!」
「それに先生にとって、それだけ大事な事なんですよね?多分…アイルにとっても」
「僕を見くびるなよ。システィーナ=フィーベル、アルタイル=エステレラ」
フォーゼル先生が口を開いたのは、その時だった。
「僕が他者からの施しを受けると思うか?それに、人の研究を奪うような真似、僕自身が認めない。それは
「「ッ!?」」
「…とはいえ、君達の覚悟と心粋は気に入った。今回は、タダでやってやる」
それからは分かった事は
・この時計の機能は全て、竜頭に集約されている
・主の命令を機械的にこなすしか出来ない
つまり、竜頭さえ押さえれば、なんとでもなるってことだ。
ここまで分かれば、犯人は自ずと見えてくる。
「システィーナ…話がある…」
再び世界が回り出す。
ああ、またループが始まる。
だけど…既に仕込みは済んだ。
次で最後だ、覚悟してとけよ。
「【ゲルソン=ル=クライトス】」
気付けば、草原にいた。
全く見覚えのない場所だ。
ふと右手をフサフサした何かが撫でる。
見下ろすと、立派な毛並みをした大型の黒い狼が、こっちを見上げている。
その眼差しに、何故かあの
狼が目線を下げた先には、俺達の足元にじゃれつく、金色の子犬がいる。
今度は
不意に視界の端に、青い何かが動く。
よく見ると、俺の肩に青い子リスが乗っていた。
次に、チラついたのは、
最後に見えたのは、綺麗な銀色の猫だ。
少し先にいるソイツは、こっちをちらっと見た後、直ぐにそっぽ向く。
まるで、
〖ここは貴方の精神世界よ。夢と現、意識と無意識の狭間にある場所よ。とはいえ、少し違う意識も混ざってるみたいだけど〗
後ろから声をかけてくるのは、ナムルスだ。
その視線の先には、狼と猫がいる。
猫はじっとこっちを見て、狼は知らぬ存ぜぬと言わんばかりに、腹ばいに寝ている。
「お前本当に何でもありだよな…。で?見てたのか?」
〖ええ。ル=キル。…あの子が元凶だったのね〗
ナムルスの変な言い回しに、首を捻っていると、ナムルスから切り出される。
〖今のル=キルに理性は無いわ。ただ与えれた命令を元に、その延長線上の事をこなすしか出来ないわ。つまり…〗
「ただ1週間を繰り返すだけの存在って事か」
〖そうよ。…ル=キルを倒すのよグレン。貴方なら出来るわ〗
いや、出来たら苦労しんわ。
思わずため息が出る。
「それが出来ないから、困ってるんだが?時間操作?滅びの風?アホかよ」
〖今のあの子にかつての権能は無いわ。厄介なのは、あの翼が起こす【滅びの風】だけよ〗
「だからそれが絶望的なんだが?」
あの風は、あらゆる防御系呪文の矛盾を突いてくる。
いかなる障壁も付与も基本は遮断と強化。
つまり防御そのものが攻撃に触れてしまうのは、避けられないのだ。
この風はそこを見事に突いている最強の攻撃なのだ。
〖…そうね。グレン、貴方は時間には滅びの概念があるのを知ってる?〗
当たり前だ。
どんなものでも、劣化していくものだ。
〖あの風は、その概念を極微小の根源素粒子…第三虚数質量物質【
「…つまり、出始めの風に当たらきゃいいって事か?」
俺は辛うじて理解できたナムルスの解説を、できるだけ分かりやすくまとめる。
〖そういう事よ。グレン、貴方なら出来るわ。私が出てきた理由は…分かるわね〗
「もう、限界か」
〖ええ、恐らく次が最後よ。それに、アルタイルも次に全てを懸けて仕掛けるわ。お願いグレン。…あの子を楽にしてあげて〗
「…善処はする」
そう言って全ての光景が遠ざかっていく。
俺が最後に聞いたのは、狼の遠吠えだった。
ふと気付くと、俺は教室の窓から、空を見上げていた。
「…ここで終わらせる」
そう呟いて立ち上がると
「アイル、少しいい?」
システィーナに呼び止められる。
「…どうした?」
「あれって…何なの?現実なの?」
どうやら、俺は賭けに勝ったらしい。
「…現実だ。おめでとう、これでお前も役者だ。ここからはアドリブ合戦だぜ」
「…上等よ。やってやるわ」
とりあえずいつも通り、起こしに行きますか。
「先生、ちょっといいですか?」
「俺達とお話、しようぜ」
俺達は先生を強引に、裏庭まで連れてきた。
「ったく、何の用だよ…?俺は忙しい…」
「システィーナを巻き込んだから」
「…は?」
先生に話をさせないようにする為、一気に畳み掛ける。
時間が無い、だったらもう要件だけ告げる。
「先生、私…夢を見たんです。その中に古い友人がいて、先生が助けようと、何か恐ろしい怪物と戦っていたんですが…力及ばず…その…すごく、リアルな夢でした。夢とは思えないくらい、真に迫った…。あの異形の怪物を放ってはいけない。そう、己の深い所で確信できるくらい」
「お前…」
「…先生、俺は自分が関わった時しか分からない。だけど俺の知らないループがあったんだよね?でも、助けを求めない…。それはつまり、第三者に言ったらその人が死ぬんじゃない?だから俺は前回、わざとシスティーナをあそこに行かせた。当事者にする為に」
そう、前回のループの時、俺は自分が認識しているループについて、考えた。
分かったのは、自分が巻き込まれた時しか覚えてない、という事だ。
だったら、他の奴もそうなんじゃないのか?
そう思い、俺はシスティーナに賭けた。
もし成功したら、システィーナ程の頼れる奴はいない。
「だから、巻き込んだのか?アルタイル!!!」
先生は俺の胸ぐらをつかみあげ、壁に叩きつける。
「先生!?」
「お前は分かってるだろ!!アイツがどれだけ強いのか!?あんな危険な奴と殺り合うのに、どうしてシスティーナを巻き込んだ!!?」
分かってる…。
そんなのは言われなくても分かってる。
それでも…!
「じゃあ、どうするだよ!!!」
俺は逆に掴まれる腕を握りしめる。
「どう足掻いても、俺達じゃ叶わない!!目には目を!風には風を!!アイツに勝つには、風しかない!!でも俺達じゃ力不足だ!!システィーナ以外に、誰が出来るんだ!!?」
俺だって巻き込みたくなかった。
でも、こうするしか無かったんだ。
「…こうするしか、無かったんだよ…」
唇を噛み締める。
血が出てくるが、気にしてる余裕は無い。
…悔しい。
守るといいながら、危険に巻き込んでる自分が、悔しい…!
「グレン先生。何が起きてるのか、もう言わなくてもいいです。だから…何をすべきなのか、教えて下さい。だって…先生は、言わないんじゃなくて、言えないんでしょう?」
その言葉に先生がハッとする。
そのまま俺から手を離す。
「私だってその…それくらいは、…先生の事、信頼してるって事なんですから!?///言わせないでください!!///」
やれやれ、どいつもこいつも素直じゃない…。
システィーナの言葉を受け、やっと先生も腹を括ったのか
「システィーナ。アルタイルも。…選抜会を辞退してくれ」
「「…はい。分かりました」」
そうアッサリと了承すると、それが大層意外だったのか、ズッコケるグレン先生。
「なっ!?おい、いいのかよ!?アルタイルはともかく、システィーナ!お前はメイン・ウィザードを目指してたんだろ!?爺さんに追いつきたいんだろ!?」
「なんでその事を知ってるのか不思議ですが…先生だから。これだけで十分でしょう?」
「…」
あまりにも眩しいその笑顔に、思わず黙ってしまうグレン先生。
システィーナ…それはまるで…告白だぞ?
こうして俺達は、揃って参加辞退を叩きつけたのだった。
どうやってシスティーナが巻き込まれたのか…。
それを考えた時、ふと思ったのがアルタイルみたいに、死んだ時とかかなって思いました。
グレンが死んだ時とかは、システィーナ達は認識してませんでした。
でも、ループ前にシスティーナが屋上に来て、そしてうっすらと自覚したシスティーナ。
だったらアルタイルみたいに、死んだら自覚出来るのでは?
そう思い、アルタイルは嘘をついて、システィーナを屋上に行かせました。
無事システィーナを巻き込んだアルタイル達。
ついに、新魔術お披露目です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。