システィーナも主人公何だよなぁ…。
ヒロインなんだけど、ヒーローなんだよなぁ。
それではよろしくお願いします。
それなら1週間後、ついにこの時が来た。
「久しぶりね、エレン。助けに来たわ」
「…なんで?なんでここに来たのシスティーナ!貴女は出場してるはず!この大会は、貴女にとって大切なもののはず!?なのにどうして!?…あんなに酷い事言ってきたのに…どうして?」
エレンはまるで、システィーナに訴えかけるように悲痛な叫ぶ。
そんな叫びを受けてもなお、その心に一点の曇りもなく。
「正直貴女が何言ってるかは、まるで分からないわ。だって本当に久しぶりなんだもの。だから、『貴女がピンチ』。それだけで十二分よ」
「だからどうして!?」
「だって友達でしょ?私達」
「…あ」
そのたった一言が、エレンを縛り付ける全てを引きちぎる。
気付けば、その顔は辛さと後悔で泣きじゃくる、1人の女の子の顔になっていた。
「システィ…グスッ…システィ…!」
「待っててエレン!すぐに助けるから!先生!アイル!好きに暴れて!!私が支えてみせる!!」
「へっ、言うようになったじゃねぇか!頼りにしてるぜ、相棒!」
「OK。お前に全て託した。頼んだぜ!」
俺達はそれぞれ、銃と槍を手に、1歩前に出る。
そんな俺達を見て、ル=キルが翼をはためかせ、【滅びの風】を発動する。
それを見たシスティーナが朗々と、新たな魔術の詠唱を詠みあげる。
「『我に従え・風の民よ・我は風総べる姫なり』!!!」
その瞬間、システィーナを中心に、周囲の風が舞い上がる。
その風を以て、ル=キルが巻き起こす滅びの風を見事に防ぎ切る。
その姿はまさに、風を統べる姫の如く。
これがこの一週間の研鑽、黒魔改弐【ストーム・グラスパー】。
黒魔改【ストーム・ウォール】をさらに改良したこれの効果は、その場における、風の完全支配。
それを見たル=キルが更に爆風を巻き起こすも、それすらシスティーナは支配。
しかし、校舎までは守れずに、俺達の足場が崩れ落ちる。
「フッ!」
しかし、システィーナはそれを下から突き上げる突風で俺達を支える。
〖ギ…〗
ル=キルはエレンを抱き抱えて、上に飛ぶ。
そのまま俺達の頭上を取り、上から【滅びの風】で狙おうとする。
「させるか!」
俺はすぐに糸を放ち、強引に縛り上げる。
「『剣の乙女よ・空に刃振るいて・大地に踊れ』!」
そこに【エア・ブレード】の改変呪文【ブレード・ダンサー】が、切り刻む。
システィーナの完璧な制御により、エレンは一切傷つけず、ル=キルだけを切り刻む。
「シス…ああ!長い!システィ!!一気に決める!!」
「白猫!俺達で引きつけるぞ!」
「分かってます!」
俺を一気に、上まで飛ばして先生達は牽制している。
俺は槍をしっかりと構えて、
「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』」
俺の目に、赤い線が浮かぶ。
「…貴女はいいなぁ、システィ。…ねぇ、私に空はないの?」
そんな呟きが聞こえる。
思わずポロッと出た本音なのだろう。
「バーカ。何言ってんだよ?お前にもあるに決まってるだろ?…未来って空が」
「ッ!?」
「だからまずは、この籠をぶっ壊さねぇとな。行くぞ、ル=キル。この一撃、手向けと受け取れ!!」
…ここだ!
「【
その一撃に気付いた時には、ル=キルの魂は、貫かれていた。
〖ァ…〗
力を失ったように、エレンを手放すル=キルは、そのまま墜落。
光の粒子となって消えていったのだった。
そうして再び回り出す世界。
それはきっと、元通りになってく為の最後の調整なのだろう。
これで全て…終わった。
「先生!先生!!先生ったら!!!」
「ん…ん〜?…」
眠りこけるグレン先生を、システィが無理矢理起こす。
少し心苦しいが、確かにそろそろ起きないと時間だ。
「グレン先生、しんどいのは察するけど、そろそろ時間ですよ」
「何だよ…白猫。アルタイルも…俺が超忙しかったの…知ってるだろう…?」
たしかに、アレやって、コレやってだったもんな。
申し訳ないけど、もうすぐ他校の連中が来る。
「もう!だからって少しだらけすぎです!」
「まあまあシスティ。これから大変なんだから…」
「ん。グレン、可哀想」
それでもまだお小言を、言おうとするシスティを、ルミアとリィエルが止める。
「ルミア。システィの奴、何で肩肘張ってるんだ?アイツなら問題無いだろうに」
「えっとね。システィのお爺様…レドルフ=フィーベル様も、魔術祭典に出場してたんだって。しかも私達と同じ歳にメイン・ウィザードで」
そういや、そういうだったな。
「なるほどね…。祖父に追いつきたい一心のシスティにとって、ここは外せない訳か。…健気だねぇ…。それがもうちょい先生に向けば…」
「いいんだけどねぇ〜…ってあれ?アイル君、いつの間にシスティ呼びになったの?」
「まあな」
俺達は現在進行形で、先生にツンツンしてるシスティに、軽くため息をつく。
このクラスの通過儀礼であるが、こう、ホッとする。
俺の突然のシスティ呼びに、不思議そうにするルミアを、俺はスルーする。
そんなこんなで、他校の生徒の到着を告げる、アナウンスが聞こえる。
「ほら!2人共!他校の連中来たぞ!…俺達、覚えてるから」
「先生!早く行きますよ!…相棒」
「ったく…お前ら、元気だな〜…って、え?」
唖然とする先生の顔を見て、俺達はニヤリと笑う。
「行くぞ、システィ。絶対に勝つ」
「行くわよ、アイル。絶対に勝つ」
お互い睨み合いながら、拳をぶつける俺達の姿を呆然と見るグレン先生だった。
その後は今まで通りの、流れと選考会だった。
違うのは、エレンがずば抜けてる訳でなかった事。
クライトス学院長が、変に焦っていた事。
後々、レナード氏に釘を刺してもらうらしい。
ちなみに、エレンはこれまでの事を覚えてないらしい。
まあ、忘れておく方がいい事もある。
エレンの周りからの評価は最悪だったが、それも模擬戦まで。
俺はレヴィンとやり合ってから戦ったが、確かに実力こそ低いが最後まで諦めず、隙あらば食らいついてくるコイツに、何度も冷や汗を流させられた。
「ふぅ…。お前、レヴィンよりよっぽど面倒臭い。すげぇじゃん。エレン」
自身が持つあらゆる手札を、必死に切って戦うその姿は、俺の憧れる魔術師そのものだった。
そしてついに
「…さてと、行くか」
俺は最後の対戦相手、システィとの戦いに赴く。
会場に着くと、既にシスティが待っていた。
「…よぉ、おまたせ」
「女子を待たせるものじゃないわよ」
「ヘーヘー。…そんじゃまあ」
「ええ。…始めましょうか!」
「「『大いなる風よ』!」」
同時に放った【ゲイル・ブロウ】が、中央で衝突して、爆発的な風を巻き起こす。
俺はそれを無視して、一気に突貫。
しかしそれはシスティに読まれていた。
「『
【マジック・バレット】の5連続発射。
俺はそれを
「『幻影の剣よ』!」
【マジック・バレット】を剣状に作り替え、全て斬り捨てる。
「なっ!?『疾ッ』!」
すぐに【
接近戦なら俺の方が有利な為、システィ的には絶対に間合いに入られたくないだろう。
「逃がすか!『
「この!『霧散せよ』!『疾ッ』!」
追撃の【ショック・ボルト】を放つも、それも振り切られるが、その逃走経路を
まあ、それを狙ってたんだけどな!
「『
「『
お互い狙いすましたような【ショック・ボルト】で、狙い撃つと、それは躱すし、躱される。
「フー…フー…」
「ハァ…ハァ…」
(…やっぱり強い。コイツには…負けたくない!)
(アイル…やっぱり強い!でも、絶対に勝つ!)
俺達の接戦に場が、ものすごく盛り上がる。
そんな割れんばかりの歓声を、ただの効果音として処理しながら、
「『吹雪よ』!」
「『霧散せよ』!『大いなる風よ』!」
「『大気の壁よ』!『吠えよ風霊』!」
「『疾ッ』!『紅蓮の炎陣よ』!」
「『散れ』!『雷精よ』!」
「『霧散せよ』!『氷弾よ』!」
延々と続く魔術の応酬。
痺れを切らしたか、システィが手札を切り出した。
「『雷精の紫電よ』!」
「『散れ』!ッ!?『もう1回』!」
ここで【
クソ、崩された…!?
「そこ!『大いなる風よ』!」
「舐めんな!『疾ッ』!」
俺だって【
ただ、システィと比べるには、あまりにもお粗末なので、使わないだけ。
ただここで、俺の【マナ・バイオリズム】が崩れる。
これが崩れると、一気に魔術が使えなくなる。
強引に使ったせいで、【カオス状態】が酷くなってしまった。
「『
それを治すのが【リズム・キャンセル】だ。
負担はでかい分、一気に魔術が発動可能になる【ロウ状態】まで持っていく。
「『雷精よ』!」
「なんの!ッ!?『霧散せよ』!」
(【ショック・ボルト】だけじゃない!【ホワイト・アウト】の【
お互いの切り札を切ってから、もう一度睨み合う。
…いや、もう1つ俺には切り札がある。
仕方ない…切るか。
深呼吸してから、俺はゾーンに入った。
「ッ!?『疾ッ』!」
俺がゾーンに入った事に気づいたのだろう、システィが、すぐに【
「『逃がすか』」
俺は改変した【フィジカル・ブースト】で強化して、すぐに追いかける。
「『
「遅い」
俺は3連射の【ショック・ボルト】を躱して、そのまま走り続ける。
「『
「この…ッ!『霧散せよ』!」
そのままシスティは、躱しながら、最後の1発を打ち消す。
「こんのぉ!!」
「逃がすか!!」
俺とシスティのデットヒートは、まだ続く。
システィはとにかく疾い。
この【
それ故、曲がる時に必ず減速するのだ。
なのにコイツは、その減速がほぼ無い。
とても滑らかに、自由に動き回るのだ。
「『雷精よ』!」
「『散れ』!『氷弾よ』!」
「『霧散せよ』!『疾ッ』!」
クソ…!
速度はほぼ変わらん。
なのに…追いつけない!
このままだと…ジリ貧だ!
私はアイルの動きをしっかり見切ってる。
なのに…気づいたら、そこまで迫って来てる。
位置取りと、仕掛けるタイミングが上手いんだ。
「『紅蓮の炎陣よ』!」
だから、少しでも牽制する。
そして体力を消耗させる。
走りながら、タイミングと場所を考え…!?
「嘘!?この炎を突っ込んできたの!?」
やられた!
まさか突っ込んでくるなんて!?
私はそのまま、アイルのタックルを受けて、馬乗りになられる。
「ようやっと捕まえたぞ。コイツめ」
強引な手に出てよかった。
おかけでシスティを
「限界いっぱいまで…」
「は?」
突然何言い出したんだ?
「限界いっぱいまで、勝ちを追求して。そして私は…
何言ってんのか、訳分からん。
そう思った時には、空高く飛ばされていた。
「…は?これは…!?」
まさか【スタン・フロア】!?
コイツ、まさか自分ごと
追いつく事を優先して、そこまで強固な魔術防御は張ってない。
これが…仇になった。
「バカ…かよ…!?」
「ええ、自分でもそう思うわ」
後ろから声が聞こえる。
振り返ると、こっちに指を向けるシスティ。
コイツ、始めから、めちゃくちゃ魔術防御を固めてたのか…!?
「だから…『肉を切らせて骨を断つ』。これしか無かったのよ!」
こうして俺は、空中で【ショック・ボルト】で撃ち抜かれたのだった。
こうして、模擬戦の勝者はシスティとなり、俺達のメイン・ウィザードも、システィに決定したのだった。
1番書きたかった話。
それがアルタイルVSシスティーナです。
ライバル関係でもある2人の、ガチンコバトル。
この2人は、グレンとアルベルトみたいな関係性を目指してます。
同じ理由で、同じ師匠に弟子入りし、それぞれ違う方向性に成長した2人。
ずっと何処かで戦わせたかった2人を、ここで戦わせました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。