ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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これで14巻終わりです。
システィーナも主人公何だよなぁ…。
ヒロインなんだけど、ヒーローなんだよなぁ。
それではよろしくお願いします。


代表選考会編第4話

それなら1週間後、ついにこの時が来た。

 

「久しぶりね、エレン。助けに来たわ」

 

「…なんで?なんでここに来たのシスティーナ!貴女は出場してるはず!この大会は、貴女にとって大切なもののはず!?なのにどうして!?…あんなに酷い事言ってきたのに…どうして?」

 

エレンはまるで、システィーナに訴えかけるように悲痛な叫ぶ。

そんな叫びを受けてもなお、その心に一点の曇りもなく。

 

「正直貴女が何言ってるかは、まるで分からないわ。だって本当に久しぶりなんだもの。だから、『貴女がピンチ』。それだけで十二分よ」

 

「だからどうして!?」

 

「だって友達でしょ?私達」

 

「…あ」

 

そのたった一言が、エレンを縛り付ける全てを引きちぎる。

気付けば、その顔は辛さと後悔で泣きじゃくる、1人の女の子の顔になっていた。

 

「システィ…グスッ…システィ…!」

 

「待っててエレン!すぐに助けるから!先生!アイル!好きに暴れて!!私が支えてみせる!!」

 

「へっ、言うようになったじゃねぇか!頼りにしてるぜ、相棒!」

 

「OK。お前に全て託した。頼んだぜ!」

 

俺達はそれぞれ、銃と槍を手に、1歩前に出る。

そんな俺達を見て、ル=キルが翼をはためかせ、【滅びの風】を発動する。

それを見たシスティーナが朗々と、新たな魔術の詠唱を詠みあげる。

 

「『我に従え・風の民よ・我は風総べる姫なり』!!!」

 

その瞬間、システィーナを中心に、周囲の風が舞い上がる。

その風を以て、ル=キルが巻き起こす滅びの風を見事に防ぎ切る。

その姿はまさに、風を統べる姫の如く。

これがこの一週間の研鑽、黒魔改弐【ストーム・グラスパー】。

黒魔改【ストーム・ウォール】をさらに改良したこれの効果は、その場における、風の完全支配。

それを見たル=キルが更に爆風を巻き起こすも、それすらシスティーナは支配。

しかし、校舎までは守れずに、俺達の足場が崩れ落ちる。

 

「フッ!」

 

しかし、システィーナはそれを下から突き上げる突風で俺達を支える。

 

〖ギ…〗

 

ル=キルはエレンを抱き抱えて、上に飛ぶ。

そのまま俺達の頭上を取り、上から【滅びの風】で狙おうとする。

 

「させるか!」

 

俺はすぐに糸を放ち、強引に縛り上げる。

 

「『剣の乙女よ・空に刃振るいて・大地に踊れ』!」

 

そこに【エア・ブレード】の改変呪文【ブレード・ダンサー】が、切り刻む。

システィーナの完璧な制御により、エレンは一切傷つけず、ル=キルだけを切り刻む。

 

「シス…ああ!長い!システィ!!一気に決める!!」

 

「白猫!俺達で引きつけるぞ!」

 

「分かってます!」

 

俺を一気に、上まで飛ばして先生達は牽制している。

俺は槍をしっかりと構えて、

 

「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』」

 

俺の目に、赤い線が浮かぶ。

 

「…貴女はいいなぁ、システィ。…ねぇ、私に空はないの?」

 

そんな呟きが聞こえる。

思わずポロッと出た本音なのだろう。

 

「バーカ。何言ってんだよ?お前にもあるに決まってるだろ?…未来って空が」

 

「ッ!?」

 

「だからまずは、この籠をぶっ壊さねぇとな。行くぞ、ル=キル。この一撃、手向けと受け取れ!!」

 

…ここだ!

 

「【果てへと手向ける彼岸の槍(アリアドネ·リコリス)】!!!」

 

その一撃に気付いた時には、ル=キルの魂は、貫かれていた。

 

〖ァ…〗

 

力を失ったように、エレンを手放すル=キルは、そのまま墜落。

光の粒子となって消えていったのだった。

そうして再び回り出す世界。

それはきっと、元通りになってく為の最後の調整なのだろう。

これで全て…終わった。

 

 

「先生!先生!!先生ったら!!!」

 

「ん…ん〜?…」

 

眠りこけるグレン先生を、システィが無理矢理起こす。

少し心苦しいが、確かにそろそろ起きないと時間だ。

 

「グレン先生、しんどいのは察するけど、そろそろ時間ですよ」

 

「何だよ…白猫。アルタイルも…俺が超忙しかったの…知ってるだろう…?」

 

たしかに、アレやって、コレやってだったもんな。

申し訳ないけど、もうすぐ他校の連中が来る。

「もう!だからって少しだらけすぎです!」

 

「まあまあシスティ。これから大変なんだから…」

 

「ん。グレン、可哀想」

 

それでもまだお小言を、言おうとするシスティを、ルミアとリィエルが止める。

 

「ルミア。システィの奴、何で肩肘張ってるんだ?アイツなら問題無いだろうに」

 

「えっとね。システィのお爺様…レドルフ=フィーベル様も、魔術祭典に出場してたんだって。しかも私達と同じ歳にメイン・ウィザードで」

 

そういや、そういうだったな。

 

「なるほどね…。祖父に追いつきたい一心のシスティにとって、ここは外せない訳か。…健気だねぇ…。それがもうちょい先生に向けば…」

 

「いいんだけどねぇ〜…ってあれ?アイル君、いつの間にシスティ呼びになったの?」

 

「まあな」

 

俺達は現在進行形で、先生にツンツンしてるシスティに、軽くため息をつく。

このクラスの通過儀礼であるが、こう、ホッとする。

俺の突然のシスティ呼びに、不思議そうにするルミアを、俺はスルーする。

そんなこんなで、他校の生徒の到着を告げる、アナウンスが聞こえる。

 

「ほら!2人共!他校の連中来たぞ!…俺達、覚えてるから」

 

「先生!早く行きますよ!…相棒」

 

「ったく…お前ら、元気だな〜…って、え?」

 

唖然とする先生の顔を見て、俺達はニヤリと笑う。

 

「行くぞ、システィ。絶対に勝つ」

 

「行くわよ、アイル。絶対に勝つ」

 

お互い睨み合いながら、拳をぶつける俺達の姿を呆然と見るグレン先生だった。

その後は今まで通りの、流れと選考会だった。

違うのは、エレンがずば抜けてる訳でなかった事。

クライトス学院長が、変に焦っていた事。

後々、レナード氏に釘を刺してもらうらしい。

ちなみに、エレンはこれまでの事を覚えてないらしい。

まあ、忘れておく方がいい事もある。

エレンの周りからの評価は最悪だったが、それも模擬戦まで。

俺はレヴィンとやり合ってから戦ったが、確かに実力こそ低いが最後まで諦めず、隙あらば食らいついてくるコイツに、何度も冷や汗を流させられた。

 

「ふぅ…。お前、レヴィンよりよっぽど面倒臭い。すげぇじゃん。エレン」

 

自身が持つあらゆる手札を、必死に切って戦うその姿は、俺の憧れる魔術師そのものだった。

そしてついに

 

「…さてと、行くか」

 

俺は最後の対戦相手、システィとの戦いに赴く。

会場に着くと、既にシスティが待っていた。

 

「…よぉ、おまたせ」

 

「女子を待たせるものじゃないわよ」

 

「ヘーヘー。…そんじゃまあ」

 

「ええ。…始めましょうか!」

 

「「『大いなる風よ』!」」

 

同時に放った【ゲイル・ブロウ】が、中央で衝突して、爆発的な風を巻き起こす。

俺はそれを無視して、一気に突貫。

しかしそれはシスティに読まれていた。

 

「『魔弾よ(一つ)』!『魔弾よ(二つ)』!『魔弾よ(三つ)』!『魔弾よ(四つ)』!『魔弾よ(五つ)』!」

 

【マジック・バレット】の5連続発射。

俺はそれを

 

「『幻影の剣よ』!」

 

【マジック・バレット】を剣状に作り替え、全て斬り捨てる。

 

「なっ!?『疾ッ』!」

 

すぐに【疾風脚(シュトロム)】で逃げるシスティ。

接近戦なら俺の方が有利な為、システィ的には絶対に間合いに入られたくないだろう。

 

「逃がすか!『雷精よ(1発)』!『雷精よ(2発)』!『雷精よ(3発)』!」

 

「この!『霧散せよ』!『疾ッ』!」

 

追撃の【ショック・ボルト】を放つも、それも振り切られるが、その逃走経路を魔術罠(マジック·トラップ)へ誘導したが、着地と同時に【術式介入(スキル·インタベンション)】で、無効化される。

まあ、それを狙ってたんだけどな!

 

「『雷精よ(がら空きだ)』!」

 

「『雷精よ(そっちこそ)』!」

 

お互い狙いすましたような【ショック・ボルト】で、狙い撃つと、それは躱すし、躱される。

 

「フー…フー…」

 

「ハァ…ハァ…」

 

(…やっぱり強い。コイツには…負けたくない!)

 

(アイル…やっぱり強い!でも、絶対に勝つ!)

 

俺達の接戦に場が、ものすごく盛り上がる。

そんな割れんばかりの歓声を、ただの効果音として処理しながら、

 

「『吹雪よ』!」

 

「『霧散せよ』!『大いなる風よ』!」

 

「『大気の壁よ』!『吠えよ風霊』!」

 

「『疾ッ』!『紅蓮の炎陣よ』!」

 

「『散れ』!『雷精よ』!」

 

「『霧散せよ』!『氷弾よ』!」

 

延々と続く魔術の応酬。

痺れを切らしたか、システィが手札を切り出した。

 

「『雷精の紫電よ』!」

 

「『散れ』!ッ!?『もう1回』!」

 

ここで【二重反響(ダブル·キャスト)】!?

クソ、崩された…!?

 

「そこ!『大いなる風よ』!」

 

「舐めんな!『疾ッ』!」

 

俺だって【疾風脚(シュトロム)】は使える。

ただ、システィと比べるには、あまりにもお粗末なので、使わないだけ。

ただここで、俺の【マナ・バイオリズム】が崩れる。

これが崩れると、一気に魔術が使えなくなる。

強引に使ったせいで、【カオス状態】が酷くなってしまった。

 

「『秩序在れ(キャンセル)』!」

 

それを治すのが【リズム・キャンセル】だ。

負担はでかい分、一気に魔術が発動可能になる【ロウ状態】まで持っていく。

 

「『雷精よ』!」

 

「なんの!ッ!?『霧散せよ』!」

 

(【ショック・ボルト】だけじゃない!【ホワイト・アウト】の【時間差詠唱(ディレイ·ブースト)】!?いつの間に【予唱呪文(ストック)】してたの!?)

 

お互いの切り札を切ってから、もう一度睨み合う。

…いや、もう1つ俺には切り札がある。

仕方ない…切るか。

深呼吸してから、俺はゾーンに入った。

 

「ッ!?『疾ッ』!」

 

俺がゾーンに入った事に気づいたのだろう、システィが、すぐに【疾風脚(シュトロム)】を発動する。

 

「『逃がすか』」

 

俺は改変した【フィジカル・ブースト】で強化して、すぐに追いかける。

 

「『雷精よ(アインツ)』!『雷精よ(ツヴァイ)』!『雷精よ(ドライ)』!」

 

「遅い」

 

俺は3連射の【ショック・ボルト】を躱して、そのまま走り続ける。

 

「『雷精よ(1発)』『雷精よ(2発)』『雷精よ(3発)』」

 

「この…ッ!『霧散せよ』!」

 

そのままシスティは、躱しながら、最後の1発を打ち消す。

 

「こんのぉ!!」

 

「逃がすか!!」

 

俺とシスティのデットヒートは、まだ続く。

システィはとにかく疾い。

この【疾風脚(シュトロム)】、基本的に一直線にしか動けない。

それ故、曲がる時に必ず減速するのだ。

なのにコイツは、その減速がほぼ無い。

とても滑らかに、自由に動き回るのだ。

 

「『雷精よ』!」

 

「『散れ』!『氷弾よ』!」

 

「『霧散せよ』!『疾ッ』!」

 

クソ…!

速度はほぼ変わらん。

なのに…追いつけない!

このままだと…ジリ貧だ!

 

 

 

私はアイルの動きをしっかり見切ってる。

なのに…気づいたら、そこまで迫って来てる。

位置取りと、仕掛けるタイミングが上手いんだ。

 

「『紅蓮の炎陣よ』!」

 

だから、少しでも牽制する。

そして体力を消耗させる。

走りながら、タイミングと場所を考え…!?

 

「嘘!?この炎を突っ込んできたの!?」

 

やられた!

まさか突っ込んでくるなんて!?

私はそのまま、アイルのタックルを受けて、馬乗りになられる。

 

 

 

「ようやっと捕まえたぞ。コイツめ」

 

強引な手に出てよかった。

おかけでシスティを

 

「限界いっぱいまで…」

 

「は?」

 

突然何言い出したんだ?

 

「限界いっぱいまで、勝ちを追求して。そして私は…()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

何言ってんのか、訳分からん。

そう思った時には、空高く飛ばされていた。

 

「…は?これは…!?」

 

まさか【スタン・フロア】!?

コイツ、まさか自分ごと魔術罠(マジック·トラップ)で吹き飛ばしたのか!?

追いつく事を優先して、そこまで強固な魔術防御は張ってない。

これが…仇になった。

 

「バカ…かよ…!?」

 

「ええ、自分でもそう思うわ」

 

後ろから声が聞こえる。

振り返ると、こっちに指を向けるシスティ。

コイツ、始めから、めちゃくちゃ魔術防御を固めてたのか…!?

 

「だから…『肉を切らせて骨を断つ』。これしか無かったのよ!」

 

こうして俺は、空中で【ショック・ボルト】で撃ち抜かれたのだった。

こうして、模擬戦の勝者はシスティとなり、俺達のメイン・ウィザードも、システィに決定したのだった。




1番書きたかった話。
それがアルタイルVSシスティーナです。
ライバル関係でもある2人の、ガチンコバトル。
この2人は、グレンとアルベルトみたいな関係性を目指してます。
同じ理由で、同じ師匠に弟子入りし、それぞれ違う方向性に成長した2人。
ずっと何処かで戦わせたかった2人を、ここで戦わせました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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