ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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はい、という訳で魔術祭典が始まります。
最近、本編終わるまでは手を出さないと決めていた、追想日誌に手を出してしまいました。
時系列はよく分かりませんが、面白いですね。
それではよろしくお願いします。


魔術祭典編第1話

「あぁぁぁ!!面倒臭ぇ!!」

 

ここは学院の魔術競技場だ。

ここでは魔術祭典帝国代表選手団が、それぞれ特訓と最終調整に入っていた。

なのだが…

 

「何で!俺が!コイツらの総監督を務めなきゃならんのだ!!!?」

 

そう、グレンは上層部らの推薦により、選手団の総監督を務める事になったのだ。

 

「あはは…私もマネージャーの1人として、一生懸命頑張りますから!」

 

その隣では、選手達の為に、飲み物など献身的に用意をしているルミアがいる。

 

(はぁ…。そろそろ腹の括り時か?ルミアばっかりなのは、かっこ悪ぃし…ていうか)

 

「馴染みすぎたろ、アイツ」

 

グレンの視線の先には

 

「ほらそこ!貴方達、とにかく判断が遅い!」

 

今回、インストラクターに任命されたイヴがいる。

軍時代の彼女からは考えられないくらい、生き生きとしている。

 

「それはともかくとして…。本当に凄いメンツが揃ったな」

 

グレンは順に視線を向けていく。

まず目に付いたのは、

 

「行くぜ!フランシーヌ!」

 

「おーほほほ!かかって来いですの!」

 

魔闘術(マジック·アーツ)】を主体とするコレットと、精霊召喚を得意とするフランシーヌが、模擬戦をしていた。

次に視線を向けたのは

 

「フッ!」

 

様々な障害物のあるコースを自在に駆け抜けるジニーだ。

手裏剣や忍法なる術を使って、次々に障害物を乗り越えていく。

次に視線を向けたのは

 

「ジャイル君!私が崩します!合わせて!」

 

「ふん」

 

練習用のゴーレムと戦うリゼとジャイルだ。

リゼは、まさに万能型のオールラウンダー。

攻撃力こそ低いが、全てを高水準でこなす。

一方のジャイルは、完全接近戦型。

持ち前のタフネスを、身体強化魔術で強化して、力でねじふせる。

次に視線を向けたのは

 

「なっ!?【二反響唱(ダブル·キャスト)】!?だったら…!」

 

「ッ!?【時間差詠唱(ディレイ·ブースト)】!?やりますね!」

 

最早学生の域を超えている、システィーナとレヴィンが模擬戦をしていた。

ただでさえ、段違いの実力をもつレヴィンと、更にその上を行くシスティーナ。

そして、もう1人の規格外、アルタイルは

 

「…」

 

周りから離れた場所で、皆に背を向け、空を睨み続ける。

何が飛び出した瞬間

 

「『雷槍』!」

 

【ライトニング・ピアス】で撃ち抜く。

 

「780メトラ、クリア!」

 

「…ふぅ」

 

長距離射撃の練習をしていた。

このメンバーで唯一欠点があるとするなら、狙撃手の不在だ。

一応システィーナや、リゼでも可能なのだが、いざと言う時の為に前衛に欲しい2人だ。

それに1番成功率が高いのが、アルタイルだったのだ。

故に急ピッチで狙撃訓練を行っているのだが、

 

「アイツ、本当になんでも出来るのな…」

 

よく考えれば、あの状況でレイクの龍鱗の剣に、攻撃出来た訳だしな。

観測手なしで、780メトラか。

このままだと1000メトラ行くかもな。

 

「先生、用意出来ました」

 

「おう、そろそろ休憩するか。…ってあれ?あの問題児は…」

 

「ひゃあぁぁぁぁぁ!無理です無理です無理です〜!!」

 

はぁ…またかよ。

そう思った時には、腰に衝撃が来る。

呆れながら見下ろすと、そこには小柄な女子生徒がいた。

首元の緑のリボンは、1年生だ。

色素の薄い桃色の髪と、首元にかけられた十字架を揺らしながら、助けを求めるコイツは

 

「今度はなんだよ、マリア!」

 

1年ながら選ばれた【マリア=ルーテル】だ。

優れた魔力容量(キャパシティ)などを誇り、特に白魔術を得意とする奴だが、如何せん実戦経験が足りない。

故にかなりハードで、かなり地味な訓練をさせている。

 

「身体強化しながら、グラウンド100周とか無理ですよ〜!」

 

「だったら何で、代表に志願したんだよ!」

 

「だってだって〜!」

 

駄々こねるマリアに呆れていると、ルミアが申し訳なさげに

 

「あの、先生…私…」

 

「ああ、行ってやれ。アイツ、熱くなりすぎるからな」

 

「あ、ルミア先輩!アルタイル先輩の所に行くんですか!私も行きます!」

 

アルタイルの所に行こうとするルミアを、マリアが追いかけていく。

というか、追い抜く。

 

「ま、待って!?マリア!」

 

それを慌てて追いかけるルミアを見ながら、俺はため息をつく。

 

「はぁ…どうなるやら…」

 

その言葉は、この大きな青空に吸い込まれるのだった。

 

 

 

「…ふぅ…」

 

だいぶ当たるようになってきたな。

ただ、これがクレーと人ではだいぶ違うだろう。

流石に人を狙い撃つ訳には行かねぇしな…。

 

「アルタイル先輩〜!!」

 

「どぉわぁ!!?」

 

腰に来る凄い衝撃と、甘ったるい声。

それだけで誰が来たか、もうよく分かる。

 

「はぁ…マリア。突撃してくんなっていつも言ってるだろ?」

 

「えへへ〜」

 

こいつは…反省してねぇな。

そう思い俺は、アイアンクローで頭を、握り潰す。

 

「痛たたたた!!?痛いです〜!!」

 

「あ、アハハ…アイル君、そこまでにしてあげて?」

 

マリアの後ろから現れたのはルミアだ。

手には色々持っている。

 

「ルミア。どうした?」

 

「そろそろ休憩しないかなって」

 

持っているのは水の入ったケトルだ。

確かにだいぶ疲れてる。

そろそろ休もうかと思ってたので、ちょうどいい。

 

「お、ありがとう!助かる!」

 

俺は補助してくれていた生徒に合図を送り、休憩を促す。

腰を下ろすと、隣にルミアが座り、水となにか四角い容器を渡してくれる。

 

「ルミア、これは?」

 

そう聞きながら蓋を開けると、そこには輪切りにされたレモンが入っていた。

 

「え〜と…作ってみたんだ、レモンの蜂蜜つけ。冷たくしてあるから、暑くなってるだろうし、どうかなって…///」

 

「ありがとう!頂きます!」

 

俺はお礼を言って早速1枚頂く。

程よい甘さとレモンの酸味。

それにプラスして、レモンそのものを冷やしてあるらしく、冷たさが火照った体に染み渡る。

 

「う、うめぇ…!」

 

思わず感嘆の声が漏れる。

いや、これ…マジでうめぇ!!

 

「ほ、本当に!?」

 

「ああ!最高!毎回食べたいくらい…!」

 

「ッ!あ、ありがとう…!///」

 

穏やかな空気が俺達を包む。

しかし、ここにそれをぶち壊す者がいた。

 

「むぅー!ズルいです!先輩ばっかり!私もルミア先輩の蜂蜜つけ、食べたいです!」

 

そう、マリアである。

コイツとは、まあひょんな事から縁があり、後輩によく話しかけれるのは、主にコイツのせいである。

 

「はぁ…その言い方だと、色々マズイだろ。というか、それはルミアに聞け」

 

「ルミア先輩!?食べてもいいですか!?」

 

「え!?えぇ〜と…!?少しなら?」

 

その返事に大喜びするマリアを他所に、俺はもう1枚食べる。

うん、やっぱ美味い。

 

「やったぁ!先輩!ア〜ン!」

 

「ア、ア〜ン!?」

 

「はぁ…ほらよ」

 

もう面倒くさくなった俺は、さっさと黙らせようと、口に放り込んでやる。

というか…我ながら、コイツに甘い気がする。

 

「うーん!美味しい!ルミア先輩、すごく美味しいです!!」

 

「あ、ありがとう…。でもマリア?少し甘えすぎじゃないかな?」

 

「ふぇ?」

 

謎の(ルミアしか分かってない)女同士のバトルを聞きながら、俺は寝っ転がる。

 

「…嵐の前の静けさってやつかね〜…」

 

とりあえず俺は、そのバトルに不干渉を決め込む事にしたのだった。

それから日は進み、俺達はついに魔術祭典の会場である、自由都市【ミラーノ】に向けて出発する日が来たのだった。

さて、そんな当日に俺は早朝の公園にいる。

何故かというと

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!」

 

「もうちょい!ファイト!」

 

マリアの走り込みに付き合っているからだ。

普段のお茶目な姿からは、想像出来ないくらいの真剣さ。

可愛いオシャレ好きのコイツからしたら、今の姿は酷く泥臭いだろう。

しかし、それを全く気にも止めず、走り続けるその姿は、惹き付けるものがある。

 

「67…68…69…」

 

ルミアが懐中時計を片手に、タイムを計る。

そしてついに

 

「ゲボッ!ゴホッ!」

 

咳込みながら、ルミアの隣に倒れ込みそうになる。

俺はそれを支えながら、ゆっくりと座らせる。

 

「うん、新記録。これで先生のノルマ達成だね!よく頑張ったね、マリア」

 

「お!本当か!やったじゃねぇか!!」

 

俺はルミアの言葉を聞いて、マリアの頭を撫で回してやる。

 

「ほ…本当…ですか!?やったぁぁぁ!ついにやりました!!ルミア先輩!アルタイル先輩!」

 

疲れてるはずなのに、大はしゃぎするマリアに俺達は、つい笑ってしまう。

 

「それもこれも、ルミア先輩とアルタイル先輩のおかげです!ありがとうございます!」

 

「あはは…ちょっとコツを教えただけだから…」

 

「俺に至っては、一緒に走っただけだしな」

 

照れくさそうに笑うルミアだが、俺に関してはいたたまれない。

こういう正統派の身体強化魔術は、実はシスティより、ルミアの方が上手い。

先生のは変則的だし、俺はそもそも糸で強化してしまう。

リィエルは直感だし。

そんな話をしていると、グレン先生がやってくる。

 

「あ、おはようございます、先生」

 

「おはようございます、先生」

 

「お〜す、お前ら。マリアは無理すんな…」

 

振り返ると、無理に挨拶しようとしたのか、かなり無理やりな息の仕方をしている。

そのまま、先生とマリアの漫才を見ていたいが、そろそろ時間だ。

 

「マリア、お前そろそろ時間だぞ」

 

「へ?…あぁぁぁ!!まだ用意終わってない!!」

 

「いや、終わってないのかよ!?」

 

アホか、コイツは!?

…いや、アホだったわ、コイツは。

そう叫んで駆け出したマリアだったか、突然止まったかと思えば、振り返りながら敬礼している。

 

「グレン先生!ルミア先輩!アルタイル先輩!ご指導ご鞭撻ありがとうございました!私!精一杯頑張ります!」

 

言うだけ言って走り去っていくマリアを見送り、俺達も帰路に着いた。

 

「…よし。全部OK」

 

家に帰り、汗を流して全ての用意を整える。

 

「アルタイル、準備はいい?」

 

「うん、大丈夫です。じゃあ、行ってくる!」

 

「行ってらっしゃい!兄様!イヴ姉様!」

 

「2人とも、気をつけるのよ」

 

「…頑張ってこい」

 

家族の声援を背に、俺達はミラーノヘ出発したのだった。

数日かけてたどり着いた街、ミラーノ。

道中、俺かグレン先生がマリアの頭をアイアンクローしながらも、美しい街並みを見ながらやってきたのは、拠点となるホテルだ。

今回この魔術祭典に参加する各国事に、建物丸々一つ貸切なのだが、

 

「…え?ここ?ここ貸切ってるの?」

 

思わず唖然としてる俺とグレン先生とジャイル。

ジャイルは没落貴族の三男坊。

俺達2人はごく普通の平民だ。

それ故、こういう場所の免疫が無い。

 

「うぅ〜!ルミア先輩!アルタイル先輩!本当にいいんですか!?私達!」

 

ああ、そういえば

 

「マリアは俺と似てて、修道院で下宿してるんだよな」

 

「え?マリアのご家庭って…」

 

「ルミア」

 

俺は本人から話は聞いているが、それをおいそれと言う気は無いし、他人が立ち入っていい話でもない。

 

「おーい!お前ら!俺『達』と行こうぜ!俺『達』と!」

 

妙に『達』を強調して呼ぶグレン先生。

ジャイルがすごく嫌そう。

 

「はぁ…はしゃがないでください!みっともない!ほら、行くぞ」

 

そう言って俺は2人を連れてグレン先生の所に急ぐのだった。

チェックインを済ませた俺達は、ゴンドラに乗り、会場となる【セリカ=エリエーテ大競技場】に来た。

各種手続きを済ませ、控え室に入ると、既に各国の選手らや監督らが集まっていて、独特の緊張感に包まれていた。

無理もない、ここにいるヤツらは極端な話、敵だ。

だから何だって話では無いが、フランシーヌ達みたいに、動揺しまくりなのは勘弁してくれ。

その様子に、ため息をつきながら振り返ると、1人の綺麗な女の子がいた。

 

「…で?俺に何か用?」

 

「…よく、お気づきになりましたね?」

 

「そんな熱い視線を向けられたらな」

 

そう言いながら、俺も彼女を観察する。

確か小袖、差込、狩衣だったか。

ということは

 

「陰陽師か」

 

「はい。日輪の国【天帝陰陽寮】のメイン・ウィザードを務めます、【サクヤ=コノハ】と言います。どうかお見知りおきを。失礼ですが、そのローブ、アルザーノ帝国の方ですよね?貴方がメイン・ウィザードですか?」

 

今俺達が着ているローブは、黒の白を基調とするコートローブで、帝国の伝統礼装らしい。

 

「国はあってるが、残念ながらメイン・ウィザードじゃないぞ。あっちがそうだ。…っと、名乗ってなかったな。俺はアルタイル=エステレラだ。よろしくな、サクヤ」

 

そう言って俺は握手を求めると、素直に応じてくれた。

 

「何してるの?」

 

お、噂をすればシスティが来た。

 

「紹介するよ。うちのメイン・ウィザード、システィーナ=フィーベルだ。システィ、こっちは日輪の国のメイン・ウィザード、サクヤ=コノハだって」

 

2人の橋渡しをしていると

 

「なるほど、そっちの銀髪の少女の方だったのか。2人とも格が違ったから、どっちか分からなかったよ」

 

突然、男が話に加わってくる。

格好を見る限り…砂漠の国か?

 

「ああ、失礼。僕は【アディル=アルハザッド】。サハラ…君達が砂漠の国と呼ぶ【占星天文塔】のメイン・ウィザードだ。ああ、自己紹介は聞こえていたから大丈夫だよ」

 

(…強いな、この2人)

 

そのまま、システィと会話はしているが、頭の中は全く違う事を考えていた。

これが世界か…いいな。

 

「…ふん、穢らわしい異端者共が」

 

そう吐き捨てられる。

穏やかじゃねぇなと思いつつ、そっちの方を見ると、詰襟型の僧服に身を包んだ男が、睨んできていた。

 

「…誰か分かる?」

 

「レザリア王国の生徒ですよ」

 

ヒソヒソとサクヤに確認を取る。

ああ、道理でヘイトが高い訳だ。

まあ、宗教論争なんて、欠片の興味も無い。

というか、いつの間にアディルとレザリアの奴が揉めてるんだ?

というか、コイツら殺る気じゃない?

仕方ない、俺達3人で止めようと動き出した時

 

「お止めなさい。…全く」

 

いつの間にか…本当にいつの間にか、1人の司祭が2人の間に割って入っていた。

 

「マルコフ…これは平和の祭典なのです。『己を愛するが如く、隣人を愛せよ』…主の教えを忘れましたか?」

 

「ファイス司教枢機卿猊下!!」

 

(枢機卿…結構なお偉いさんじゃねぇか!?)

 

俺は宗教に欠片も興味が無いのでよく分からないが、お偉いさんってのはわかる。

 

「…こちら側に非があったようですね。申し訳ありません」

 

「…いえ…こちらこそ…。つい頭に血が上ってしまって…すみません」

 

司教さんが、アディルに深々と頭を下げる。

システィや、グレン先生たちの様子を見る限り、かなり意外な事らしい。

そのままセレモニーの、説明と打ち合わせが始まったのだった。




宗教は本当に訳分かりませんね。
はい、僕は無神論者ですよ。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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