ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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マリア〜…健気だよぉ…!
それではよろしくお願いします。


魔術祭典編第2話

そのまま始まったセレモニー。

適当にやり過ごしつつ、俺は先生達の方を伺う。

その時、何やらおかしな光景を目にする。

修道女らしき人と話す先生と、黒ずくめの格好をした男。

そいつが…ルミアに何かしている。

 

「…チッ」

 

1番後ろにいた俺は直ぐに、マリオネットを作って置いていき、【セルフ・トランスパレント】で姿を消し、客席に急ぐ。

 

「ッ!?アルタイル!?貴方どうして!?」

 

「イヴ先生!マリオネット置いてきた!」

 

道中イヴ先生と合流した俺は、2人ですぐに客席に走る。

 

「私が引き剥がすわ!貴方はルミアを!」

 

「了解!」

 

返事と同時に、イヴ先生が炎を放つ。

それを見てからお守りに魔力を流し、【次元跳躍】でルミアを飛ばす。

 

「ルミア!」

 

「アイル君!?」

 

そのまま後ろに庇って、2人組を睨みつける。

 

「…ルナ、潮時だ。これ以上は結界がもたない。観客にバレる」

 

「…分かったわ、チェイス。警告はしたわよ、監督さん?じゃあね」

 

そのまま消える2人組を最後まで睨みながら、息を吐く。

 

「…怪我はないか?ルミア」

 

「う、うん…」

 

「グレン、アイツらは何?只者じゃないのは分かるけど…」

 

「後で説明する。要するに…また厄介事って事だ。教会の連中、異端狩りの切り札まで引っ張ってきやがって。…あまりにも、きな臭ぇ」

 

異端狩りの切り札?

なんの事か分からないが、息を呑むイヴ先生を見る限り、相当ヤバいらしい。

どうやら今回も、何かが起こる気しか無い。

波乱と激動の魔術祭典が、ここに開催した。

 

 

次の日、イヴ先生以外の3人で、ある人に会っていた。

 

「結論から言いますと…いかなる脅しがあろうとも、帝国代表選手団を魔術祭典から辞退させる事は、このアルザーノ帝国女王、アリシア七世が許可しません」

 

「「「…」」」

 

席から立ち、そう言い切るのは、我らが女王陛下、アリシア七世だ。

俺達は昨日の件を、陛下に相談しに来たのだ。

あの時なら怒っただろうが、今なら陛下の気持ちはある程度は、予想がつく。

故に心の中にあったのは、仕方ないという納得だった。

 

「今回の王国との首脳会談。この場、この時の為に、莫大な予算と時間を費やしました。ですが、こちら側にも、向こう側にも反対派がいるのは事実。少しでも破談にする隙を狙っています。ですから…このような些事で失敗した、そのような事、あってはならないのです」

 

そう言い放つ陛下の目は、氷のように冷たかった。

しかしその手は、震えるほど握りこまれていた。

これが、為政者か…。

 

「今回の会談が成功すれば、少なくとも10年の戦争無き完全平和が実現するのです。故に、私は代表選手団に命じます。『たとえ、いかなる危険があろうとも、参加せよ』…と」

 

そこまで言い切って、不意に、力無く椅子に座り込み、苦悩の表情を浮かべながら、ため息をつく。

 

「…私は…地獄に落ちるのでしょうね…」

 

「そ、そんな事は…!?」

 

「陛下のご判断は何も…!?」

 

ルミアと俺は慌ててそれを否定するも、力無く首を振るだけだった。

 

「いえ…母親としても…人としても失格ですね。それでも…たとえ間違っていたとしても…やらないといけないのです…!」

 

「国を守る女王としては…何も間違ってませんよ」

 

今まで黙っていたグレン先生が、口を開く。

何気なく送っていた日常。

それは女王陛下が、心血、魂をも削って作ってくれた時間だ。

それを無為にするなんて…絶対にさせない。

 

「陛下。俺は貴女が女王陛下で良かった…心からそう思います」

 

「そうですよ、お母さん…」

 

俺とルミアが再び口を開く。

 

「…グレン、アルタイル、エルミアナ。ありがとう。そして…ごめんなさい」

 

そこまで言って、気持ちを切り替えたのか、毅然とした顔で決意を口にする。

 

「私の護衛を貴方達にも回します。どうか皆を守ってあげてください」

 

その決意に、待ったをかけたのが

 

「そりゃ、お勧めしかねるなぁ。アリシアちゃん」

 

「恐れながら、反対派にとって一番確実な手は、女王陛下の暗殺です。ただでさえ、刺激しないように数を絞ってここに来たのです」

 

特務分室のバーナードさんとクリストフだ。

そして部屋の隅には、アルベルトさんがいる。

この3人が今回の直近の護衛なのだ。

しかし、陛下も1歩も引かない。

 

「子供達に命を懸けさせてるのに、私が懸けなくてどうするのですか。それに…貴方達を信じてますから」

 

ここまで言われては3人共否定出来ず、陛下の命令に従う事になった。

 

「しかしグレン、お前は随分と厄介な相手に絡まれたな。【第十三聖伐実行隊(ラスト·クルセイダース)】…敵対するならこれ以上に最悪の敵はいない」

 

あのアルベルトさんが、そんな事言うなんて。

それはルミアも同じらしく、かなり驚いていた。

 

「あの人達、そんなに凄い人達何ですか?」

 

「その通りです。エルミアナ王女殿下」

 

恭しくその質問に答えたのは、クリストフだった。

 

「【第十三聖伐実行隊(ラスト·クルセイダース)】…聖エルサレム教会教皇庁が誇る、聖堂騎士団の中でも、最強の処刑部隊です。…たった2人からなる部隊ですけどね」

 

「は?たった2人?アイツらだけなのか?」

 

てっきり隊長クラス2人かと思ってたが…

 

「うん。たった2人だけどその強さは、何百、何千からなる他の部隊を押し退けて、そう呼ばれてるんだ。その強さは推して測るべきだよ」

 

「マジかよ…!?」

 

「教皇庁の連中に抗議すればいいだろ!?」

 

「無駄だ」

 

グレン先生の苛立ちげな発言を、アルベルトさんが冷静に否定する。

 

「『十三』…神の子を十字架刑に追いやった裏切り者【ユーダ】の数字。エルサレム教において、忌み数だ。そんな数字を冠する部隊が教会にあるなんて、認めるはずが無い。知らぬ存ぜぬで突っぱねられるだけだ」

 

故に存在しない十三(インビジブル·サーティーン)、存在しない部隊って事か…。

 

「クリストフ、あの2人…ルナとチェイスだっけか?何か情報は?」

 

「それが…帝国の情報局に緊急アクセスして調べたんだけど…確かに【ルナ=フレアー】、【チェイス=フォスター】両名の名前は確認出来たんだけど…彼ら4年前に死んでる事になってるんだ」

 

は?4年前に死んでる…?

 

「4年前と言えば、現教皇フューネラルが教皇選挙(コンクラーベ)で、奇跡的な逆転勝利した時だな」

 

「いや、そこじゃねえぞ!ちょっと待て!?アイツら、ピンピンしてたぞ!?」

 

グレン先生が、口を挟む。

 

「それともう1つ。確かにチェイスはエース級だったようなんですが…ルナの方は、落ちこぼれの三流騎士だったらしくて…」

 

「…おい、情報室の連中も当てにならねぇな。アイツの何処が、落ちこぼれだよ?プレッシャーだけで死ぬかと思ったわ!」

 

グレン先生の言葉に、重苦しくなる空気を変えるべく、陛下が口を開く。

 

「話を戻しましょう。何故彼らが出てきたのかは、分かりません。反対派が暴走して、辞退させる事で、賛成派のこちらへの心証を悪くしようとしている。…そう捉える事も出来ますが、少し決め手としては、弱いかもしれません」

 

「確かにそうじゃのう…。やり方なら他にも幾らでもあるからのう…」

 

「警告だけっていうのも不自然ですね。見敵必殺、即悪斬が彼らの教理(ドクドリン)ですから…」

 

「だったら、私達の中で参加して欲しくない人がいるとか…」

 

「だったら誰だ?1番可能性が高いのはルミア、お前なんだが、お前は選手じゃないしな…。そもそもアイツら、ルミアに無関心だったしな」

 

陛下、バーナードさん、クリストフ、ルミア、グレン先生が、どんどんと考察して行くが、どれも決め手に欠ける。

どんどん煮詰まってきた所で、1度俺は手を叩く。

 

「よし!もうやめ!」

 

「「「「「は?」」」」」

 

皆が俺の方を一斉に見る。

そんなに見られると落ち着かないんだけど…。

 

「分かんない事をどれだけ考えても、分かんないんだがら、諦めましょう!」

 

「お、お前なぁ…」

 

「分かってるのは、このまま行けば、間違えなく連中と事を構えるってだけ。だったらそれでいい。降りかかる火の粉は払うだけ。邪魔する奴は蹴散らすだけ」

 

その言葉に、1番最初に反応したのは、陛下だった。

 

「…そうですね、今考えても何も分かりません。大事なのは、この会談が終わるまで、代表選手団を守り抜く事、これだけです」

 

そう言って陛下は俺とグレン先生に頭を下げる。

 

「グレン。退役してる貴方に、こんな事を頼むのは申し訳なく…。どうか子供達を守ってあげてください。アルタイル、本来守られる側の貴方に頼むのも、大変心苦しいですが、どうかグレンと共に…」

 

「わぁぁぁぁぁ!?へ、陛下!?だからこんなクソガキに頭下げちゃダメですって!?」

 

「そ、そうですよ!?俺みたいなゴミに頭下げちゃダメですって!?」

 

俺達は必死に、陛下の頭を上げてもらうようお願いする。

本当に…心臓に悪い…!

 

「…ありがとうございます。2人共。…エルミアナ、こちらへ」

 

突然、ルミアを呼び出したと思ったら、少し話してから、急に顔を真っ赤にしだすルミア。

俺は何事かと傍による。

 

「ルミア?どうした?大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫だよ!?///問題なし!!///」

 

いや大ありの顔だけど…?

その時、今度は俺に矛先が向く。

その笑顔は、酷く悪戯気な悪い笑みだった。

 

「アルタイル、丁度いい所に。以前私が言った事、覚えてる?…ちゃんと気付いてあげた?」

 

そう言われた途端、競技祭の時言われた事を、思い出す。

一気に顔が熱くなる。

 

「え!?え〜と…それは…まぁ…///」

 

恥ずかしくなって、顔を隠しながら背ける。

しかし背けた先にルミアの顔があり、ちょうど目が合ってしまう。

耳まで真っ赤にしているルミアと、そのルミアの目に映る、同じく耳まで真っ赤にした俺。

 

「「ッ!!?///」」

 

それを自覚した途端、お互い同時に顔を反対に向ける。

 

(しまった…!///)

 

(こんな事したら…!///)

 

((バレバレじゃん!!///))

 

片手で顔を隠す俺と、顔を両手で隠すルミア。

それを見た陛下は

 

「あら♪あらあら♪あらあらあら♪」

 

凄く楽しそうに、笑っている。

その甘酸っぱい光景を、穏やかに見る先生達。

俺達の謁見は、何とも変な空気で終わった。

 

 

部屋を後にし、変な髭面のおっさんとすれ違ったり、アルベルトさんから陛下の敵が多いという話を聞いたりした俺達は、とりあえず皆に合流しようと、競技場に向かったのだが、

 

「あれ?先生、アイル君。あれって…」

 

ルミアが指さす先には

 

「げ!?マリア!?」

 

何故か単独行動しているマリアがいた。

 

「あのバカ!皆と一緒にいろって言っただろうが!?」

 

「追いかけよう!」

 

そうしてマリアを追いかけ始めた俺達がたどり着いたのは、教会だった。

 

「あれは…【聖ポーリィス聖堂】だな」

 

「そういえば、聖堂巡りがしたいって…」

 

「いや、ここは確か…」

 

何となく何しに来たかは、察した。

中に入ると、両膝をつき、手を組み、頭を垂れ、一心不乱に祈るマリアの姿があった。

天井のステンドガラスから、陽光が差すその姿は、まるで1人の聖女のようで、俺達は黙って見守るしか出来なかった。

 

「…ふぅ…」

 

やがてお祈りが終わり、振り返ったマリアと

 

「「「…」」」

 

じっと見守っていた俺達の目が合う。

 

「は、はうぅぅぅぅぅぅぅ!!!?」

 

ものすごく変な奇声を上げて驚くな、コイツ。

 

「せ、先生!?先輩方まで!?ど、どうしてここに!?」

 

「それ、俺らのセリフ。勝手な行動はするな」

 

「も、もしかして!見ちゃいましたか!?」

 

「ああ、バッチリと。お前…旧教信者(カノン派)だったんだな。かなりガチめの」

 

「…はうぅぅぅ…」

 

グレン先生の言葉に、隠す事が出来ないと悟ったか、力なく項垂れるマリア。

 

「で?なんで隠してんだよ?」

 

俺達は礼拝堂の長椅子に腰掛け、事情聴取をしていた。

 

「だって…可愛くないじゃないですか?せっかく垢抜けた都会派女子を目指してたのに、実は芋臭いガチ信者なんて…。幻滅したでしょう?」

 

ん?何訳分からん事言ってるんだ?

 

「んな事ねぇよ。その目指す女子像よりも、そっちの方が大事だったから、捨てられなかったんだろ?お前はお前だ。もっと胸を張りな」

 

おぉ…、先生が先生らしい事を言ってる。

違和感しかないが、俺もフォローしてやるか。

 

「俺はそもそも知ってたしな。お前が自分から言ってたし」

 

そう言いながら肩を竦める。

 

「そういえば、アイル君っていつから仲良いんだっけ?」

 

ルミアが不思議そうに俺に聞いてくる。

 

「え〜と、2年に上がってすぐくらいかな?ナンパされたるのを助けたんだよ。そのままコイツの下宿先の修道院に連れて帰って、その時ちょうどお祈りの時間だったんだよ」

 

「修道院…?」

 

あ〜…ここからは俺からは言えないな。

そう思いマリアを見ると、どうやら話す気らしい。

 

「私…捨て子なんです…」

 

「「え?」」

 

「もっと言えば…レザリア出身なんです。私」

 

「…何?」

 

そこは俺も初耳だった。

何でも父親が神父だったらしく、こっちにいた時から、父親と一緒にお祈りをしてたらしい。

だからこのお祈りは、マリアにとって父親との繋がりみたいなものらしい。

実家も何処か覚えてないらしく、この情勢の最中の為、帰る事も諦めてるらしい。

 

「…だから私!一生懸命頑張ったんです!!」

 

突然マリアが元気一杯に立ち上がる。

 

「この魔術祭典は世界中が注目してます!もちろん、レザリア王国の人も!ひょっとしたら、お父さんも見てるかもしれません!私が舞台に上がれば、ひょっとしたら気付いてくれるかもしれません!」

 

そこまで言い切って、少し暗くなる。

 

「…ひょっとしたら…また、会えるかも…しれません…。あはは…『ひょっとしたら』ばかりで…子供みたいですね。それでも私…」

 

茶目っ気たっぷりに、でも何処か寂しげな笑みを浮かべるマリアに

 

「そんな事ないよ!!」

 

今度はルミアが立ち上がり、強くマリアの手を握る。

 

「マリアのお父さんは、きっと見てるよ。マリアを見てれば分かる。きっとお父さんはマリアを愛してたんだって。だから…きっとその祈りは届くよ」

 

言いたい事言われちゃったな。

…そうか、この2人は似てるんだ。

俺は頭を撫でながら、優しく言ってやる。

 

「神を信じる心で…親父さんを信じてやれ。そして、ここまで走り続けた自分を信じろ」

 

「先輩方…ありがとうございます!ようし!明日からの試合、頑張るぞぉ!!」

 

「…ああ、勝つぞ!」

 

俺はマリアの背中を叩きながら、皆の元に帰るのだった。

…ちなみにその後単独行動をしたマリアは、イヴ先生とシスティにこってりと絞られ、試合前とは思えないハードな練習をするハメになり

 

「助けて、死んじゃう、帰りたい、もう魔術祭典なんてコリゴリ〜」

 

などと泣きわめくのだが、そこは自業自得って事にして貰おう。




陛下に対しての好感度が、最初よりかなり爆上げされている、アルタイル。
でも、国に尽くす気は無いが陛下自信には尽くす気はあるアルタイルです。
それはともかく…一体いつくっつけようかな、この2人。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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